お風呂上がり。

所でバスタオルを巻いていると、クラリスがやってきた。

「上がりましたか、ソフィアさっ……」

ソフィアの姿を見るなり、クラリスは目を見開いた。

「あっ、はい、さっき上がったところです。それよりも、シャンプーってすごいですね！　髪に馴染ませて水で流すと、信じられないほど艶が出ました！　このようながあると噂には聞いていましたが、こんなにも凄いとは思っても……あの、どうかしましたか、クラリスさん？」

石魔法にかけられたみたいに直するクラリスに尋ねる。

何か、相をしてしまったのだろうかと不安になった。

「いえ、久しぶりに腕が鳴るな、と」

「う、腕？」

「お気になさらず。では、こちらにお著替えください」

そう言ってクラリスに渡されたのは、一眼で上等な素材で拵えたとわかるエメラルドグリーンのドレス。

「こ、こんな上等なドレス……わ、私には似合いませんよ……」

無能の烙印を押されて以降、ロクに食事を取ることも著飾ることも許されなかった故に、ソフィアの見てくれはお世辭には良いとはいえなかった。

周りからも、地味だの暗いだのヒョロいだの散々言われ続けたため、ソフィアの自の容姿に対する評価は最底辺に近い。

故に、見るからに高そうなこのドレスをにつけるのはソフィアにとって非常にハードルが高くじられていた。

「大丈夫です、ソフィア様。私にお任せください

」

そんなソフィアに、クラリスは語りかける。

「浴して、髪をシャンプーで洗い流しただけでこの変わりよう……本來のソフィア様は、とても可らしいお顔立ちをしております。私が保証いたします。し細っておられるので、付き面ではし足りなさはあるかもしれませんが、お化粧もして、ちゃんと著飾れば必ず麗しくなられますよ」

「か、可らしいだなんて……」

俄には信じられない、けど。

クラリスがこのような事で噓をつくような人ではない、というのはこの短い間でもなんとなくわかっていた。

それでも、やはり何年もかけてソフィアの心に刻みついた劣等は簡単に拭いされるではない。

著飾っても殘念なままだったら……という恐怖はあった。

けど。

「…………わかったわ」

クラリスを、信じる事にした。

「ありがとうございます。ささ、まずはドレスを著付けいたしましょう。それからお化粧です。夕食はアラン様もいらっしゃるので、驚かせてあげましょう」

「え、待って、聞いてない！　夕食にはアラン様も同席するの……！？」

「そりゃ夫婦なんですから、お食事を一緒に取られるのはごく自然なことかと」

「うっ……そうよね、そうなりますよね……ちょっと、心の準備が……」

「今更何をおっしゃいますか。さあ、変のお時間ですよ」

何やら俄然やる気になったクラリスによって、ソフィアはバスタオルを剝がされるのであった。