「おや、貴方は……」

唐突に響いた中的な聲に振り向く。

視線の先に、すらりと細い男が立っていた。

クラリスが軽く頭を下げる。

その姿を見るに、べらぼうに地位の高い者ではなさそうだと考えた。

歳はソフィアよりもひとまわり上くらいだろうか。

どこか年ぽさを殘した整った顔立ちに、ソフィアよりも頭ひとつ分は高い背丈。

しいブロンドの髪は長めで前髪を両サイドに分けている。

執事服のような、黒いスーツを著用していた。

そして何よりも目を引くのが……。

「ツノ……しっぽ……」

「はい？」

相手が誰なのか、よりも先に人族にはついていないオブジェクトが気になった。

額の上らへんからびている鋭い一本ツノ。

腰からは筆先のようふさふさな尾がびている。

「ユニコーン？」

一本ツノに尾。

この二つが満たす生きは、ソフィアの中ではそれしか思い浮かばない。

「そうですね、モーリス様はユニコーン族でございます」

「やっぱり……！！」

ということは。

擬人化モードを解いたら、それはそれはもう立派なもふもふに変するに違いない。

ソフィアのボルテージがグイーンと上がった。

「あの、自己紹介をさせていただいても？」

「あ、はい！　お願いします」

ソフィアが言うと、モーリスは眉を顰めながらも言葉を並べる。

「初めまして、アラン様の書を務めさせていただいております、モーリスと申します。以後、お見知りおきを」

「書……」

言われて、々と納得がいく。

アランは一國の軍務を統括する多忙のだ。

むしろ雑務をこなしてくれる者がいない方が不思議だろう。

「失禮ながら、貴はアラン様の妻ソフィア様とお見けいたします。合っておりますでしょうか？」

「はい。昨日よりお邪魔させていただいておりますソフィア、と申します。これからどうぞよろ……」

「ソフィア様、敬語」

「……よろしく頼むわ」

（うう〜慣れない……）

意識しないとすぐに敬語に戻ってしまう。

「……なるほど。噂通りのお方ですね」

どこか愉快そうにモーリスが言う

（一、どんな噂だろう……）

気になっていると、クラリスが口を開いた。

「モーリス様、ソフィア様のご晝食の準備がありますので、そろそろ」

「なるほど、失禮いたしました。教えてくれてありがとう、クラリス」

モーリスが微笑みを浮かべて言うと。

「お気になさらず、仕事ですので」

心なしか、クラリスの聲の溫度が低くなったようなじがした。

「ではソフィア様、私はこれで。引き止めてしまい申し訳ございません」

「構わないわ。ちょうど時間が空いたところだったの。お仕事、がんばってね」

ソフィアが言うと、モーリスは一瞬驚いたように目を丸めたが、すぐに表を戻して。

「に余るお言葉でございます」

恭しく一禮して、その場を去っていった。

（なんだか……摑みどころのない人だなあ……）

そんな印象を、ソフィアはモーリスに対して抱いた。

隙がない、とも言うべきか。

軍務大臣の書ということで仕事はバリバリに出來るのだろうけど……それ以外の印象は、こちらもとんでもない青年ということと、ツノと尾しか殘っていない。

なんとなくだけど……彼とはこれからも、どこかで関わり合うような気がした。

そんなことを考えるソフィアにクラリスが言う。

「そろそろお晝の時間です。參りましょう、ソフィア様」

「わかったわ」

先導するクラリスの後ろを、ソフィアはひよこのように付いていった。

【お知らせ】

私事で恐なのですが、本日コロナ判定けました。

熱自は下がったのですが今後調がどう変化するか読めないので、本日より10日程度不定期更新になります。

読者の皆様にはお待たせしかつ、ご心配をおかけし恐れりますが、ご認識ご了承のほど何卒よろしくお願い致します。