ざばばばばばばばばーーーーーーーん！！

「きゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！？？？？」

突如として降りかかってきた大量の水にソフィアは悲鳴を上げた。

「あぶっ……！！」

しかしその悲鳴はすぐにかき消される。

よっぽど水が多過ぎるのか、もしくは絶え間なく水が雪崩れ落ちているのか。

ソフィアはまるで川で溺れたような狀態になっていた。

（息が……出來ないっ……！！）

焦り、慌てふためくも水流での自由が効かない。

このままでは窒息すると直的に悟る。

なんの前れもなく降って沸いた死への恐怖にの芯が冷たくなった。

（誰か……助け……アラン様……！！）

頭に、アランの顔を浮かべたその瞬間──誰かがソフィアをを抱えるように掬った。

重力に逆らうように引き上げられ、視界が開ける。

追って訪れる宙に浮かぶ覚。

「……ぷはっ！！」

息苦しさが無くなって酸素を肺に取り込む余裕が出來る。

視線を上げると。

「おい無事か、大丈夫か！？」

そうな鱗に覆われたスマートな顔立ち、黃くる雙眸。

竜人モードのアランが焦った様子で聲を上げていた。

「な……なんとか大丈夫です……」

「……そうか、なら良かった」

竜人モードのため表の変化はわからないが、聲からホッとしているようだった。

自分のを即座に案じてくれた事に、ソフィアののあたりが溫かくなる。

アランは背中からびた大きな翼をバッサバッサと上下に振るって空を飛んでいて、両手でお姫様抱っこをするように抱えられたソフィアも上空から地上の様子を伺えた。

見ると、自分がいた場所の數メートル上空から、今もなお大量の水がドドドドと流れ出ている。

何もない空間から滝のように流れ出る水、というのはとても異様な景だった。

「あれ……私がやったんですか？」

「ああ、紛れもない君の力だ」

落ち著いた聲でアランはそう言うが、未だに実がなかった。

あんな量の水を一度に大量発生させられるなんて、フェルミほどの凄腕の魔法師でも不可能だ。

だがそれを、実現した。

魔力がゼロだ、無能だと言われ続けた紛れもない自分が。

俄には信じがたい事だった。

「まずはあの水を止めないとな。じゃないと、屋敷が沈沒する」

「ああっ、そうですよねそうですよね……！！　えっと……」

──消す時には消えるイメージを浮かべれば消える。

先程のアランの言葉に従って、イメージする。

目を閉じ、手を合わせて祈る。

（水の霊さん……水を、止めて下さい……）

変化は一目瞭然だった。

がさーっと引いていくように、あれだけ大量発生していた水がぴたりと止んだ。

「……初めてでこれか、途方もない才能だ」

アランの小さな呟きは、水を止めることに集中していたソフィアには聞こえなかった。

「これで……良い、ですかね？」

「ああ、上出來だ」

問題が解けた子供に向けるようなアランの優しい言葉に、ようやくホッとするソフィア。

そして今更ながら、アランにお姫様抱っこをされている事に対する恥が湧いてきて、ソフィアはみるみるのうちに顔をりんごに染めてしまうのだった。

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