《【書籍化・コミカライズ】竜神様に見初められまして~げられ令嬢は霊王國にて三食もふもふ溺付きの生活を送り幸せになる~》第45話 土の霊魔法

「大丈夫、モーリス?」

土の水晶を真っ二つにかち割ってから頭を抱え始めたモーリスに、ソフィアは心配そうに尋ねる。

「お気になさらず……今、頭を整理しているので」

自分の目の前にいる、蟲も殺せなさそうな令嬢が歴史に名を殘すレベルの霊魔法の才を持っていた。

その事実に、普段冷靜沈著なモーリスも流石に揺していた。

畏怖、興、混、尊敬、戦慄。

様々なの中を渦巻いて思考が纏まらない。

この仕事に対する責任がとてつもない重さでのしかかってきて、正直息が詰まりそうな想いだった。

しかしここで狼狽えて何も出來なくなるほどモーリスは無能ではない。

優秀な彼は瞬時にを落ち著かせ、強固な理を以て思考を走らせる。

諸々の報、狀況を整理し、これからどうするべきかを導き出した。

……その間、モーリスは尾をぶんぶんと高速でぶん回していて、ソフィアが何やらうずうずしていた様子だったがスルーしておく。

Advertisement

「一旦、ソフィア様の常識外れな才能については橫に置いておきましょう」

今日の訓練の趣旨は、霊魔法の制だ。

ソフィアの才能についてあれこれ言葉をわす時間ではない。

「う、うん。その方がいいと思うわ」

初志貫徹。

思考を切り替え、眼鏡を持ち上げてからモーリスは口を開く。

「何はともあれ、これでソフィア様に最も適正のある屬がわかりました」

「土の霊、よね?」

「ええ」

こくりと、モーリスは頷く。

「正確には火、水、風の適正も非常に高いレベルで持っていて、その中でも土の屬が飛び抜けている、というなんとも非現実的な結果ではありますが……一旦は、土の霊魔法の制からやっていきましょう」

「うん、よろしくお願いね」

モーリスとクラリスの慌てようっぷりから一時はどうなるかと思ったが、とりあえず方針が決まったようでソフィアはホッとする。

とは言うものの……。

「土の霊魔法、ってどんな事ができるの?」

「そうですね……簡単な所でいうと土や石を創造したり、凸凹の地面を平にしたり、攻撃手段としては巖石を撃ち放ったり……」

「ふむふむ」

「あとは、荒れ果てた大地や植を生き返らせる力もありますね。土の霊は別名、恵みの霊とも言われていて、農家や畜産業においては非常に重寶されます」

「なるほどなるほど……!!」

ソフィアの目がきらっきらに輝く一方で、モーリスは目を伏せ言いづらそうに言葉を並べる。

「土の霊魔法は正直、四大霊の中では日常において“地味”とか“あまり使い道が無い”と言われている屬でもあるので、ソフィア様的にもちょっと違うなと思うのでしたら、他の屬霊魔法を先に練習するのも一手……」

「地味なんて、そんな事全然ないわ!」

モーリスの言葉の途中で、ソフィアは斷言する。

「確かに火や水とかと比べると派手さや華やかさは無いかもしれないけど、たくさんの人を笑顔に出來る霊魔法だと思うの。一度死んだ大地を再び息づかせるなんて、私はとっても素敵だし、是非マスターしたい屬だと思うわ」

噓偽りのない純樸な雙眸で言うソフィアに、モーリスは息を呑む。

実際ソフィアは土の霊魔法に対してすっかり好を持っていたし、それに、なぜか土の霊魔法に関しては覚的に『いいな』と思っていた。

理屈はない。

土の水晶に霊力を流し込んだ際に、懐かしいような、溫かいような……そんな覚を抱いたのだ。

「申し訳ございません、私の視野が狹かったです」

「ああっ、謝らなくていいわ。怒ってるとかじゃ、全然ないから」

「寛大なお言葉、謝いたします」

に手を當て、モーリスは綺麗にお辭儀をした。

「ではまずは簡単に、縦一メートル、橫一メートルの土の塊を作ることから始めてみましょうか」

「あら、割と大きなサイズなのね」

「ソフィア様は保有している霊力が尋常ではないので、まずは大きいを、そして徐々に小さくしていく、という」

「確かに! そう言われるとそうね」

うんうんと、しきりに頷くソフィア。

「ありがとう、モーリス。ちゃんと考えてくれているのね」

「いえ、私はそんな……」

急にお禮を言われて、微かに揺を見せるモーリス。

いち使用人に過ぎない自分に対しても踏ん反りかえる事なく、敬意を持って接してくれるソフィアという令嬢の人間の部分に対して、モーリスはしずつ好を抱きつつあった。

本當に小さいけども、今日初めてかもしれない笑みを浮かべて、モーリスは言った。

「では、頑張りましょう」

「はい!」

アランから貰った加護の指を付け直して、ソフィアは威勢よく聲を張った。

「面白い」「続きが気になる」「ソフィアちゃん……良い子……!!」など思ってくださりましたら、ブクマや↓の☆☆☆☆☆で評価頂けると勵みになります!

    人が読んでいる<【書籍化・コミカライズ】竜神様に見初められまして~虐げられ令嬢は精霊王國にて三食もふもふ溺愛付きの生活を送り幸せになる~>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください