《【書籍化・コミカライズ】竜神様に見初められまして~げられ令嬢は霊王國にて三食もふもふ溺付きの生活を送り幸せになる~》第52話 ぬくもり

お願いと稱して肩に頭を乗せてきたソフィアに、クラリスは困する。

「……ソフィア様」

「重くない? 大丈夫?」

「むしろ軽すぎると思いますが……」

「ごめんね、ちょっとだけ……寄りかかってみたくて」

「…………」

クラリスの肩口に顔を埋めるようにしてソフィアは言う。

「今日はモーリスにも、アラン様にも、たくさんの優しくして貰って……こんな私でも、しくらいは甘えても良いのかなって、思ったというか……ごめんね、うまく纏まってなくて」

「いえ……」

ただ、肩に頭を乗せるだけ。

そんな控えめで些細な事を甘えると言う主人。

ちくりと、クラリスのに針で刺したような痛みが走った。

「失禮します」

「……っ」

ソフィアの頭を肩に乗せたまま、クラリスはその小さな背中に両腕を回した。

そのまま、包み込むようにソフィアを抱き締める。

「ク、クラリス……?」

突然の抱擁に戸うソフィア。

「出すぎた真似を申し訳ございません。……ですが、ソフィア様は控えめで、本音を隠すところがございます。なので、このくらいがちょうど良いかと思いまして」

そう言って、クラリスの言葉に、ソフィアはどきりとする。

「先ほども申し上げましたが、遠慮はしないでください。しじゃなくていいです。甘えたい時は甘えてもいいのです。その方が、私としても嬉しいので」

クラリスはソフィアを抱き締める腕に力を込めた。

自分の意思とは関係ない力に引っ張られるように、ソフィアもクラリスの背中に腕を回す。

(溫かい……)

人の溫なんて、いつぶりだろうか。

れの音、自分以外の吐息、熱、鼓

そして、優しくて落ち著く匂い。

ながらも自分よりもしっかりとしたクラリスの軀はお日様のように溫かくて、ずっと寄りかかっていたくなるような安心があった。

「……ずっと、こうして差し上げたかった」

使用人としてではなく、クラリス個人としてであろう言葉と共に、背中を優しくとんとんされる。

その途端、ソフィアのの中で濁流のようなが湧き起こった。

ずっと押し込んで蓋をしていたモノが溢れ出るような覚。

噓偽りないクラリスの純粋な優しさに、凍りついていた心の一部がゆっくりと溶けていく。

目の奧に熱が燈った。

油斷したら何かが溢れてきそう。

今日は涙腺が弱い日なのかもしれない。

(だめ……こんなところで……)

泣いたって何も解決しない。

むしろ、周りを苛立たせて余計に辛い目に遭う。

何度も繰り返してきた事だった。

ソフィアは理を鋼のようにして、込み上げてくる激を抑え込んだ。

(……ソフィア様)

クラリスの瞳が心配げに揺れる。

微かな啜り聲。

そしてほんのし、ソフィアのから震えが伝わってくる。

その事からなんとなく、ソフィアが涙腺と攻防を繰り広げている事にクラリスは気づいていた。

だがこれ以上は、クラリスは何も言わなかった。

ソフィアがエルメルに來てまだ三日目だ。

実家にいた長い時間の中で幾重にも連なった鎖を無理矢理引きちぎるのは良くないだろうし、それに……。

(ソフィア様の心を丸にするのは、私の役目ではありません……)

脳裏に竜神の姿を思い浮かべ、クラリスは改めてそう思った。

代わりに、自分の率直な思いを口にする。

「今までお辛い思いをたくさんしてきたのでしょうから……微力ながら、ほんのしでも、癒しになれたらと思っております」

に満ちた聲。

ソフィアの背中を、クラリスは優しくでた。

まるで、泣いている子供を落ち著かせる母のように。

「うん……」

クラリスの背中に、回した腕に力を込める。

「ありがとう、クラリス」

仕事ですので、といつもの返しをクラリスは口にはせず。

「どういたしまして」

溫かくて抑揚のある聲で言った。

しばらくの間、ソフィアはクラリスのを預け、大人しくでられ続けた。

とても優しくて、心地よくて。

溫かい、時間だった。

「……本當は私ではなく、アラン様に甘えられればいいのですが」

「え?」

「なんでもございません」

こほんと、クラリスは咳払いをした。

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