屋敷に戻って、お風呂にったあたりからが熱いじがした。

長湯をしたつもりはないのに、顔が火照っている。

冷たいお水を飲んだあと、部屋でぼーっとしているうちに夕食の時間になった。

食堂までの足取りは心なしかおぼつかず、気を抜いたら壁にぶち當たってしまいそうだった。

もはや、普段の調ではない事は明白だった。

しかし、ソフィアがそれを周りに訴える気にはなれなかった。

（思った以上に、疲れているだけ……うん、そうに違いないわ）

自分にそう言い聞かせた。

実家にいた頃、調が良くないと家族に伝えても心配されるどころか、面倒臭そうに対応されていた。

『貧弱なお前が悪い』『忙しい時に面倒事を持ち込むな』と一蹴された。

いつしかソフィアは、調に異常をきたしても周囲に打ち明けず、自然治癒に任せるようになった。

流石にしんどい中で仕事をしてぶっ倒れた時は、使用人に自室に押し込まれ寢かされたが。

その時も、家族が心配して見に來てはくれなかった

そんな経緯があったため、いつしかソフィアは『周りに迷をかけないために自分の調の不良を黙る癖』がついてしまった。

（大丈夫……ちょっとは熱いけど、歩けているし、意識もある）

以前、ぶっ倒れた時と比べたら全然ましだ。

気合をれ直し、ソフィアは歩を進める。

夕食を食べたら、今日はすぐに寢よう。

それだけ決めて食堂へ向かった。

「來たか」

食堂にはすでにアランがいて、待っていたと言わんばかりの表を浮かべる。

それを見るだけで、しだけ気分が楽になったような気がした。

テーブルに目を向けると、今日も今日とて味しそうな料理の數々。

いつもならここでお腹を鳴らすところだが、不思議と食が湧いてこない。

食べて栄養を摂取したいというよりも、早くベッドに寢転がってを休ませたいというが勝っていた。

おそらく、今日は全く量を食べれないだろう。

そんな確信があった。

（せっかく、用意してくれたのに……）

ソフィアのの中に、申し訳ない気持ちが溢れる。

「どうした、ボーッとして」

「あっ、ごめんなさい」

慌ててソフィアはアランの隣の席に著く。

いつもの定位置。

「なんだか、今日はいつもより豪勢ですね」

大きなテーブルに並べられたラインナップを見て、ソフィアが呟く。

「今日は課題クリアの記念日だからな。シェフにはいっそう、腕を振るってもらった」

「わあ……ありがとうございます」

アランの気遣いに、ソフィアの口角が自然と持ち上がった。

しかし心は、複雑な心境であった。

食への祈りを捧げた後、夕食が始まる。

しかし予想通り、いつもよりも食指がかない。

ネズミの如く、ちびちびとしか食べられなかった。

（どれも、味しいのに……）

罪悪。

焦りが、申し訳なさが、ソフィアの鼓をしずつ早くする。

連して、の調子がどんどん悪い方向へ向かっていっている実があった。

自然と、水を飲む頻度が高くなる。

クラリスに何度も水を注いでもらって申し訳なくなる。

そのせいで余計に、熱が上がっていって……。

「ソフィア、何か考え事か？」

「えっ」

「あまり、食が進んでいないように見えるが」

ソフィアの異変に、アランが気づいた。

「あっ……えっと、その……」

ここで素直に、調が悪いですと口にする事がソフィアには出來なかった。

大丈夫です。

しぼーっとしていただけです。

ちょっと疲れで食が……。

といった、取り繕う言葉ばかり浮かんで。

だけどアランに誤魔化しの言葉をかけるのはなんだか嫌で。

あうあうと、思考をショートさせたソフィアは口をぱくぱくさせるばかりであった。

そんなソフィアの挙を見ていたアランが目を細める。

それから“もしや”といった表を浮かべて──。

「失禮する」

それは、突然の事だった。

「へぁっ……？」

ぴとりと、アランがソフィアのおでこに、自分のおでこをくっつけてきた。

【お知らせ】

重大告知です。

『竜神様に見初められまして』ですが、書籍化・コミカライズが決定いたしました！

竜姿のアランが！！

もふもふのハナコが！！

クラリスの貓耳が！！

絵になるよ！

もふもふ！！

嬉しい！！

皆様の応援のおかげです！

本當にありがとうございます！

一冊の本として、そして漫畫としてもしっかりと面白く読めるよう書籍作業頑張って參りますので、

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

レーベルやイラストレーター、発売日などはまた追って告知させていただければと思います。

「面白い！」「続きが気になる！」「書籍化おめでとう！」など思ってくださりましたら、ブクマや↓の☆☆☆☆☆で評価頂けると勵みになります……！

また次話ですが、諸事により8日の更新が厳しいかもしれません。

こちらお待たせし恐れりますがご認識いただけますと幸いです。