《星の家族:シャルダンによるΩ點―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困する外科醫の愉快な日々ー》俺の子どもたち

葬儀から三日後。俺は山中家を訪れた。

その間、何度か咲子さんと亜紀ちゃんとは電話でいろいろと話していた。

亜紀ちゃんはその度に泣きそうな聲で俺に禮と申し訳ないと謝ってきた。

玄関では咲子さんと亜紀ちゃんに出迎えられた。

足立區にある、小さな借家の一軒家。

子どもが四人もいるにしては、々手狹だったと思われる。

山中は同じ病院に勤める大學時代の同期で、俺の方が出世はしたが、山中も決して一般のサラリーマンに比較すれば劣っていた収ではない。

しかし四人もの子どもを育てる出費と、もう一つ、山中の研究熱心な格が災いしていただろうことは想像できる。

あいつは醫者と言うよりは、研究者だった。

現場で患者と接するのではなく、研究棟で基礎醫療に沒頭していた。

醫學というのは、最も難解な分野と言える。

俺たちの母校である東大醫學部でも、その道に進むのは相當優秀な頭脳と変態とも言える研究職への適正が求められた。

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最終學年で東大病院での実習の際、他の科ではそこそこの実習とレポートを求められるが、醫學の科だけは

「どうせお前らでは何も分からないし、手伝えることもない。毎朝決まった時間に來るだけでいいぞ」

と言われた。

日本で最難関と言われる東大醫學部にった優秀であるはずの學生たちが、まったく期待もされずに放り投げられるのだ。

その道に山中は進んだ。彼は俺などよりも余程頭のいい人間で、やる気もあった。

格や好みは異なる二人だったが、お互い魅かれるものがあった。

もう一人、堂という男と俺たちは三人で共に大學生活を通して親友であった。

今でもその絆は続いている。

山中も堂も卒業後間もなく結婚し、それぞれ暖かな家庭を築いた。

俺は結婚はしなかったが、彼らの家を訪れるたびに、家族というものの良さをじさせてもらっていた。

ちなみに堂は郷里で開業醫をしていて、仕事の都合で葬儀には參列できなかった。

電話で山中の子どもたちを俺が引き取ることを報告すると、最初は反対するようなことも言ったが、

「そうか。どうか宜しく頼む」

と言っていた。

任せろと言って、後日詳しいことをまた連絡すると約束した。

既に移の準備は出來ていた。

ほとんどは子どもたちの服だけだ。

あとは本や勉強道など、それほどの量はない。

ベッドやデスクなどは、俺が買い揃えている。

「亜紀ちゃん、後からでいいから、思い出の品は全部うちへ運べよな」

「石神さん……」

「家でもなんでも。みんなの思い出が詰まっているだろう。全部運ぶんだぞ」

「分かりました。ありがとうございます」

晝時だったので、そのまま出前で壽司をとった。

もちろん、俺が支払った。

食事の間、亜紀ちゃんがしばかり口を開いただけで、他の三人の子どもたちは黙ったままだった。

一番下の雙子は、壽司を半分も食べなかった。

食なのだろうか。

まあ、後に激変した悪魔の正を見ることになるのだが。

食事が終わり、咲子さんが煎れてくれたお茶を飲みながら、俺は言った。

「今日から俺の家に來てもらうわけだけど、その前に幾つか言っておくことがある」

子どもたちは神妙な顔で俺を見つめている。

「一つは、この家だ。君たちには思い出が深い家だとは分かる。だけどここは借りている家だから、君たちはここに帰ってくることはできなくなる」

分かってはいたのだろうが、みんな悲しそうな顔になった。

それはそうだろう。

大好きな両親とこれまで暮らしていた空間が無くなってしまうのだ。

大きなショックだとは思う。

「それと、名前だ。君たちは俺の養子になってもらうから、「山中」ではなくなるよ。今日から「石神」になるんだ。これも嫌だと言ってもれてもらうしかない」

厳しい話だからこそ、俺は強い口調で宣言した。

迷う余地を殘しては、かえって苦しめてしまう。

余命宣告と同じだ。

分かってはいたこととはいえ、子どもたちの表は暗い。

雙子が泣き出すので、咲子さんが傍に寄る。

「最後に、俺に任せろ!」

「今は辛いだろうが、俺は必ずみんなを守る。これまでさぞ辛かっただろう。みんながバラバラになると聞いて、死にたくなるくらいに悲しかっただろう。でも安心しろ! もう大丈夫だ。俺が君たちを必ず守る。辛い日は終わりだ。それにこれからどんなことがあっても、俺がいる。絶対になんとかしてやるから、もう安心しろ!」

雙子が泣き止んだ。

皇紀も顔を上げて俺を見た。

亜紀ちゃんは反対に泣き出した。

山中、奧さん、お前たちの子どもは俺に任せてくれ。

絶対になんとかするから。

絶対だ。

その後、し雑談をして子どもたちが落ち著いた頃合で、家を出ることとした。

家の近くの駐車場に停めてあったハマーH2に、みんなの荷を積み込もうとしたが、なぜかかない。

直している。

確かに大きい車だ。

通常のハマーH2を大々的に改造し、エンジンや足回りはとんでもなく強化されている。

それにリムジン仕様にしており、全長は6メートルを超える。

そのため、タイヤは6だ。

「あの、石神さん、この車ですか?」

恐る恐るというじで咲子さんが尋ねてくる。

「そうですけど?」

「私、あんな車見たこともありません」

子どもたちも後ろで頷いている。

「何かヘンですかね」

「ヘンも何も、なんですか、タイヤが多いですよね? なんか、ライトも一杯ついてますけど」

「何臺か車は持っているんですが、子どもたち全員が乗れるものがなかったんで、こないだ買いました。ちょっと急いでいたんで、至急手にるものがディーラーに売れ殘っていたスペシャル・モデルだったんですよ。アハハハ」

「ちょっと石神さんに子どもたちを預けるのが不安になってきました」

俺は笑ってみんなに乗るように言った。

亜紀ちゃんを助手席に乗せ、シートベルトを締めてやる。

シートは三人用のものが二列。

後部にベンチシートが両側にあり、12人が乗れる。

「これは何ていう車ですか?」

皇紀がちょっと嬉しそうな顔をして聞いてきた。

「これはなぁ。ハマーという車で、米軍の軍用車ハンヴィーを民間仕様にしたものなんだよ。これはハマーH2というモデルで、エンジンはなぁ、V8の超スゴイ、ガソリンをガブガブ飲み込む…」

「軍用しゃー!?」

咲子さんがんだ。

「皇紀、黙れ!」

「えぇー!」

何にしても、俺たちは始めるのだ。

読んでくださって、ありがとうございます。

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それを力にして、頑張っていきます。

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