《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》5 タクシー代を工面しよう!
ダンジョンへの場を斷られた聡史と桜はトボトボと家路に就こうとする。だが桜が…
「お兄様、神的なショックで歩けません。オンブしてください」
ダンジョン管理事務所から外に出て數歩歩いただけでヘナヘナとしゃがみ込んでしまった桜。その表はかつて聡史が目にしたことがないほどにヤツれ切っている。顔が真っ青で、パッと見では重病を患ったかのような生気のない表に変わり果てている。
「ダンジョンにれないくらいで大袈裟なヤツだな。ほら、手を貸すから自分で立ち上がるんだ」
聡史が手を取ってを引き起こそうとするが、桜自がどうにも力がらない様子で再びその場にしゃがみ込んでしまう。ようやく聡史にも相當の重癥だと納得がいく。
常日頃から健康と有り余る力が取り柄であった桜がこのような姿になり果てるのは、おそらくの異常ではない。あれだけ楽しみにしていたダンジョンへの場を斷られて、神的なタガが外れてしまったのだろう。急激に生じた一時的な鬱狀態とでも言えばいいのだろうか…
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桜を背負おうとするものの、腕の力がすっかり抜けてしまって聡史の首に摑まることもできない有様。致し方なしに聡史は妹の小柄なを抱え上げる。そのままお姫様抱っこで持ち上げて、管理事務所のベンチに座らせようと再び出り口へと踵を返す。
「うふふ… お兄様に抱っこされたのは久しぶりですね」
「そうだな~… お前が小さい頃は、しょっちゅう抱っこしてくれってせがまれていたな」
同じ日に生まれてはいるが、桜は兄の聡史に対しての依存心が強い。要するに甘えん坊な面が未だに殘っているのだ。これは異世界で數多の冒険を繰り返した現在でもい頃と大差はない。
兄の腕に抱えあげられた桜はちょっとだけ嬉しそうな表をしている。
一旦桜をベンチに座らせると、聡史は思案に暮れる。このまま妹を抱っこして家に帰るには々距離が遠すぎにじる。その気になれば電車で約45分の道のりは、聡史のレベルを考えれば不可能ではないだろう。だが彼自、街を歩く人々から突き刺さる視線に堪え切れる自信はなかった。
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「タクシーを呼んでもらおうか」
そう呟いて聡史はハタと気が付いた。財布の中には3千円程度の現金しかっていない。この額では家まで辿り著くのは相當厳しいだろう。母親に連絡して家の前で待っていてもらってもいいのだが、なんだか無駄な心配を掛けるようで気が引ける。
何とかならないかと考え込んでいるうちに天啓のように聡史の頭に閃きが齎される。
「そうだった。手持ちのアイテムを売ればタクシー代なら何とかなるだろう。桜、もうちょっと待っていてくれ」
アイテムボックスを探ってそこそこの大きさの魔石を取り出すと、聡史は再びカウンターへと向かう。
「すいません、アイテムの買い取りは可能ですか?」
「はい、18歳未満の方でも過去に手したアイテムはこちらで引き取ります」
聡史の予想通りであった。ダンジョンに場を止された18歳未満の人間に対してアイテムの売買まで止したら、彼らが手持ちのドロップアイテムは死蔵されてしまう。ダンジョンに出現する魔を討伐した結果得られる魔石は魔法の研究開発やエネルギー源として活用されるので、引き取り手は數多いのだ。
ちなみに魔石は魔力の含有量によって相場に照らし合わせた代金で引き取ってもらえる。
聡史はこの魔石の代金でタクシー代を捻出しようと考えた。そう、それはごくごく軽い気持ちで…
「それじゃあ、この魔石を引き取ってもらえますか」
聡史は過去に何度もこのような合に管理事務所のカウンターでドロップアイテムを引き取ってもらっていた。當然ながら相応の代金を得られて、その大半は反省會と稱する帰りのファミレスでの飲み食いに費やされた。桜が當たり前のような表で3~4人前のメニューを注文するので、苦労して得た諭吉さん1枚程度の金額など瞬く間に消えてなくなっていくのだった。
「ずいぶん大きな魔石ですね。それでは、含有する魔力を測定します」
カウンター嬢は手慣れた手付きでけ取った魔石を魔力測定裝置にかける。そして、見る見るその表が驚愕に染まっていく。
「そ、そんなはずは… 魔力量が13000を超えるなんて、有り得ない…」
カウンター嬢はサンプルの別の魔石を取り出すと、そちらの測定を開始する。どうやら測定裝置の誤作を疑ったようだ。
「正常値を確認。ということは、誤作ではない…」
裝置のデジタル表示は、この日の朝一番にマニュアルに従って検査した時の數値と同じ320をぴったりと示している。この出來事に冷靜に対応するというカウンター嬢の勤務マニュアルなどかなぐり捨てて、鼻息も荒くカウンターからを乗り出して聡史に詰め寄る。その態度は「絶対に逃がす者か」と、今にも聡史に摑み掛ろうとする食獣のようだ。
おそらくおしとやかな外見とは裏腹に、常日頃は食系子なのだろうと想定される。
「どこで、どこで、この魔石を手にれたんですかぁ」
冒険者が2、3人、別のカウンターに並んでいたが、彼らが全員振り向く勢いでカウンター嬢の聲が付エントランス中に響き渡った。
この時聡史は自分が犯した失態にようやく気が付いた。
魔石などどれも似たようなものだろうと一緒くたにアイテムボックスに放り込んでいた。そしてたまたま彼が取り出したのは、異世界の魔境と呼ばれる並の冒険者は絶対に近づかない場所で討伐したワイルドウルフ変異種のさらにボスから得た魔石に他ならない。
このダンジョンで現在攻略されているのは13階層。その最深の階層で得られる魔石が含有している魔力は1000に満たない。それだけにこの13000オーバーという數字は、破格中の破格のとんでもない數値といえよう。
聡史は日本に発生したダンジョンの常識を本から崩壊させてしまうこの事態にしどろもどろになりながら、何とか誤魔化そうと試み始める。
「えーと… こ、この魔石は… その辺で採れました」
「その辺に転がっているような代ではないでしょうがぁ」
ヤバい、実にヤバい狀況だ! 聡史はこの場をどう切り抜けようかと、気持ちだけが焦っていく。まさか「異世界産です」などと正直には答えられないのは重々承知。
焦る気持ちが先走って、聡史はカウンター嬢からその魔石を取り上げてしまう。現がなかったらノーカウントとでも言いたそうな態度だった。スポーツの世界だったらレッドカードが提示されて、この場からお引き取り願われてしまう塩対応を食らうのは必然だろう。
「今のは単なるイタズラ… じゃなくって、バグ。そう、バグですよ。そしてこれが本です」
聡史が新たな魔石を取り出す。だが不幸なことに、今度は異世界ダンジョンの最下層から4段上の階層にいた口から炎を吐き出す大トカゲ、サラマンダーの魔石だった。
「今度は22000じゃないですかぁ。さっきよりも上がっているじゃないですかぁ」
カウンター嬢からは、渾のツッコミがる。この人の冷靜でおしとやかキャラが絶賛崩壊している現狀を悲しいことに本人だけが気付いていない。
「いやいや、ちょっと間違えました。これこそが本ですから」
聡史は選びに選び抜いた小粒の魔石を差し出す。今度は他の魔石と比べて3分の1の大きさだった。これならば、そんなバカげた魔力を検知されないだろうと慮を重ねた結果だ。
自信に満ちた表の聡史から魔石をけ取ると、カウンター嬢はやや投げやりな雰囲気で裝置にかける。
「はい、68000です。ええ、わかっていましたよ… どうせこんな結果で私を驚かそうとしたんでしょうが、そうはいきませんよ」
カウンター嬢がすっかりヤサグレている。今度はダンジョンボスだったクイーンメデューサの魔石だった。
石自が小さいのはメデューサのが単に小柄だったからで、そこに込められている魔力と魔石の大きさは相関関係がなかったらしい。
こんなやり取りを繰り返すこと12回、ようやく聡史は當たりの魔石を取り出すことに功する。
「魔力量は800ですね。買取金額は、7200円です」
「どうも」
二人とも完全に無表になっている。11回もとんでもない魔力をめた魔石が次々に取り出されれば、大概のカウンター嬢はいい加減驚かなくなる。
買取渉を開始してから30分、ようやく聡史はタクシー代を手にした。彼はスマホのアプリを使用して管理事務所前にタクシーの配車を要請すると、けない桜を乗せて帰っていくのだった。
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