《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》8 編試験
施設見學が終わるといよいよ編試験の時間となる。兄妹は筆記試験は免除となっており、実技の一発勝負で合否を判定されると昨日學院長から説明をけていた。
第3屋演習室にやってきた兄妹に三人の試験擔當教員の注目が集まる。
正式な規則ではないが、魔法學院は原則として途中編を過去に認めてこなかった。その原則を破ってまで學院長が無理を通そうとする二人の験者。それがどのような能力を所持しているのか、興味津々な目で二人を見ている。
もちろん教員には、ダンジョン対策室での話し合いなどは伝えられてはいない。兄妹の背後には、政府の強い意向が働いているなど、この時點では教員といえども知る由もなかった。
殊に擔當教員の一人は反學院長の派閥に屬しており、今回のゴリ押しを學院長糾弾のタネにしようと虎視眈々と狙っている。
「試験は簡単だ。ここからあの的を目掛けて魔法を放ってもらいたい。威力と発時間と正確が、評価の基準となる」
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「ひとつ確認してももいいですか?」
ここで聡史が擔當教員に質問を投げ掛ける。
「なんだね?」
「この部屋の周囲には対魔法防シールドが展開されているようですが、俺の目から見ると強度が不足しているように映ります。自分で補強していいでしょうか?」
「な、なんだって」
擔當教員は聡史の斜め上の提案に絶句するしかなかった。試験を実施するフィールドは、魔石から取り出した魔力によって明な対魔法シールドに包まれている。その強度は通常の魔法では絶対に壊れないレベルとされているだけに、「強度不足」という発言は教員たちの想像の外であった。
「い、いいだろう。評価のポイントとはならないが、好きにして構わない」
「わかりました。結界構築」
対魔法シールドと結界魔法は形と効果が似ているものの、式の中や構築の難易度はまったくの別。
理シールド、魔法シールドともに、言ってみれば魔力で作った使い捨てのバリアに過ぎない。対して結界とは、自分の領域を指定して外とは明確に區切る魔法である。したがって後からでも自由自在に魔力を込めて強化できるし、範囲そのものを拡大小が可能だった。
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「なんという高度な魔法」
「えっ、この程度の初級魔法なんて誰でも使用可能じゃないんですか?」
「こんな簡単に結界を構築する式のどこが初級なんだぁ」
擔當教員の魂のびがフィールドに響くが、まだこの時點でも聡史は気が付いていなかった。
何千年もかけて魔法を発達させた異世界と5年前にようやく魔法の存在が明らかになった現代日本では、そもそも本的な魔法技が三段階ほど違っているのだ。
すなわち、異世界の初級魔法は、現代日本の上級魔法か、もう1ランク上の超級魔法に當たる。聡史が何気なく使用した結界魔法は、いまだに日本では実現不可能な超高難度な式であった。
「お兄様、ナイスです!。これで印象點を大幅に稼ぎました。スイートルームに一歩近づきましたわ」
試験のポイントには加味しないと言われてはいるが、桜が指摘するように擔當教員の印象は大幅にアップしているのは間違いない。
ただし「スイートルームが近づきました」は、逆に印象を悪くするかもしれない。だが目の前にぶら下げられている餌に周りが見えなくなっている桜は、そんな些細な點など一向に気にしてはいなかった。
「それでは改めて魔法を撃ちます」
結界魔法に度肝を抜かれた教員たちも、仕切り直しとばかりに開始戦に立つ聡史に注目する。そして…
「ファイアーボール」
その聲とともに、バスケットボール大の火球が聡史の手から勢いよく飛び出していく。コンマ何秒で的に著弾すると…
ドガガーーン
想定を大幅に上回る激しい発音が演習場に響き渡る。その轟音に教員たちは耳を押さえて蹲っている。しばらくは何も聞こえない狀態だろう。
當然ながら日本の魔法界でもファイアーボールは最もポピュラーな式として初級魔法に認定されている。だがそれは飛翔する炎を作り出す式であって、的にぶつかった瞬間に大発する代とはまったくの別種であった。
聡史が放った自稱ファイアーボールは、いまだ日本で扱える者は誰もいない飛炎裂(ファイアーボンバー)に相當する超級魔法式であった。
「お兄様はいいじに魔法を放ちましたわ。これは私も負けていられません」
今度は桜が、気合を漲らせて開始戦に立つ。中から闘気を噴き出して、その勢いでスカートや肩までびた黒髪がヒラヒラと舞い上がっているが、本人は神を集中しているので一向に気にする様子がない。
今の彼の頭にあるのは、兄を上回る威力を叩き出すという一點につきるのだった。ところで桜は理一辺倒で、本人が認めているように魔法は扱えないはず。それでも自信満々な態度で30メートル先にある的を見つめている。
一どうするつもりであろう?
的を見つめたままの桜は、オーラのようにに纏い付く闘気を右手に集めるとさらに凝していく。これはの闘気を撃ち出す桜の必殺技のひとつだ。その最大威力は、異世界において山を一つ消し去った記録が殘されている。いわゆる〔かめは〇波〕系の技である。
「いかぁぁぁん、桜、待つんだぁぁぁ!」
その様子に、聡史は大聲を張り上げながら慌てて結界を強化する。
だが、すでに手遅れであった。桜は闘気で出來上がった塊を腰をわずかに落とした姿勢から思いっきり撃ち出していく
「太極破ぁぁぁぁぁぁぁ!」
音速を超えて撃ち出された闘気は衝撃波を伴いながら100分の1秒後に的に到達する。
ズゴゴゴゴゴーーン!
聡史が強化した結界もろとも吹き飛ばして演習室の壁と屋の一部を崩壊させながら、桜の編試験は終了した。もしも聡史が咄嗟に結界を強化していなかったら、さらなる大慘事に発展していたことであろう。
「お兄様、これで合格間違いなしですわ」
「俺なら不合格にするわぁぁ」
こうして決して無事とは言えないままに兄妹の試験は終了する。被害は室演習室半壊、骨折した教員1名、打撲2名であった。
試験を終えた二人は母親が待機している応接室へと向かう。やってしまったと気落ちする兄と、晴れ晴れとした表の妹が並んで応接室に戻って來る。
「二人とも試験はどうだったのかしら?」
心配顔の母親が、問い掛けてくる。
「お母様、思い殘すことなく力を出し切りました」
「力を出し切る方向が間違っているぞ。『思い殘すことなく』というのは、絶対そういう意味じゃないから」
本日も兄のツッコミが冴え渡っている。気合がりすぎると必ずやらかしてしまう妹を止められなかった無力を噛み締めながら、渾のツッコミを放っているのだった。反対に桜は兄の言葉など全く気にした風もなく、ケロリとしている。
そこへ試験結果を伝えに、副學院長がやってくる。當然ながらその表は、苦蟲を噛み潰してさらに青を十回くらいお替わりをした、ある意味表現に困る顔をしている。
「おめでとうございます。お二人とも合格ですので、明日から當學院への編が可能です」
「ありがとうございます」
「これで食べ放題とスイートルームとダンジョンにる権利を手にしましたわ」
対照的に桜の表は真夏の太のような明るさだ。橫に座っている聡史は、そこまで能天気にはなれないので神妙な顔をしている。
副學院長は「余談なのですが」と斷ってから、さらに話を続ける。
「今回の試験による被害総額は2億3千萬円と推定されます。ええ政府の予算から補填されますからね、気にしなくていいんですよ。本當に気にしないでください」
そういっている當の副學院長の表には、気にしているがアリアリだった。演習場を建て直すために方々の役所に頭を下げなくてはならない今後の苦労を考えると、胃がキリキリ痛んでくる思いであろう。
こうして、兄妹は家路につく。
もちろん合格祝いと稱して桜が母親を言葉巧みにレストランに導して、腹いっぱいになるまで晝食をたかったのは至極當然であった。
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