《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》12 副會長

第3訓練場にった瞬間、この學院の生徒會副會長を務める西川(にしかわ)鈴(みすず)の目にはやや長で木剣を手にした男子生徒の姿が飛び込んでくる。

その姿を見た途端に鈴のきが停まる。同時に無意識に右手を當てた口元から本人すら意識していない呟きが零れる。

「うそ… そんな、ま、まさか…」

鈴自何を口にしているのかわからない小聲とともに、彼の目には涙が滲み出す。その涙は過去の懐かしくてまるで寶石のように心の中に煌めいていた淡い記憶を鮮明にフラッシュバックさせた。

━━━ 今から4年前の3月、小學校の卒業式を終えて鈴は旅立ちの日を迎えていた。彼の父親の仕事の都合で一家揃って靜岡へ引っ越しの當日を迎えている。

赤丸が記されたカレンダーを見つめながら今日という日が永遠に來ないように願っても、それは所詮葉わぬ夢。時の流れは容赦なく、あっという間に引っ越しの日がやってくる。

鈴、元気でな」

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鈴ちゃん、いつでも遊びに來てよ」

これから出発しようと待機している車の前で、隣の家に住んでいる雙子の兄妹が最後の別れの言葉を送ってくれる。

稚園から始まり、ついこの間卒業した小學校にも毎日三人で手を繋いで登校していた。學校から戻っても大抵どちらかの家にり浸って、宿題をしたりゲームをしたり、おやつを一緒に食べたり、時には手が早い雙子の妹に橫取りされたり…

三人で他もなく笑い合う日々がずっと続くと思っていた。そのはずだと鈴自思い込みたかった。

だが突然の父親の転勤。転居先は父親の実家の近くであったため、一家揃って引っ越しすることとに決まる。

そしてついに迎えた別れの日。鈴の目は止め処なく流れる涙で雙子の顔がはっきりと見えない。泣きながらワンボックスの開け放たれたドアに俯むいて乗り込んでいく自分の姿。

に片足を掛けて振り返る。そして雙子に最後に殘した言葉…

「メールするから。絶対に毎日メールするから」

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本當は雙子の兄に対して違う言葉を告げようと心に決めていた。だが最後の最後になって勇気を出せなかった。あの時、あとちょっとの勇気があったら…

過去を振り返ってそんなことを思わなくもない。だがそれは子供時代の懐かしい思い出だと、しばらく後になってから鈴なりに一つの區切りをつけていた。

本當の最後に二人を見掛けたのは、出発した車の車窓から振り返って自分が遠ざかってもいつまでも手を振り続ける姿。

その後も幾度かメールでもやり取りも続けたが、中學に學すると勉強や部活で何かと忙しくなる。1年も経たないうちに次第に音信が途絶えてしまうのだった。

◇◇◇◇◇

過去の映像が脳裏に蘇って、立ち止まったままの鈴の耳に風紀委員長の聲が屆く。

「全員、ご苦労だった。今からこの場で発生した闘騒ぎに関する事を聴取する」

その聲にハッとして現実に戻ってきた鈴、だが涙が滲むその目は依然として長の男子生徒に向けられたまま。

彼の口が小さくく。

鈴…」

聲は聞こえない。だが涙の向こう側でその口がハッキリと自分の名前を呼ぶようにいていた。

(覚えていてくれた)

鈴の心のに熱いものが込み上げてくる。それと同時にその瞳から大粒の涙が零れ落ちた。

(ダメ… これ以上聡史君を見ていたら、私、本當に大聲で泣いちゃう…)

生徒會副會長の立場を鈴は完全に見失っている。それほど突然目の前に現れた聡史の姿は、彼に大きな衝撃を與えていた。

もし會えたらこんなことを話そうとか、あんなことを聞いてみようと、彼を思い出すたびに考えたこともある。だが今となってはそのすべてが無駄に終わりそう。

(嬉しすぎて、が苦しい)

鈴は聲も出せないまま、心の底から湧き上がるに今この場で直面している。それは到底理屈などでは語れない、世界の何もかもが引っ繰り返るような激しいであった。

「副會長、手分けして事を聴取する。私はあそこで正座をしている連中から話を聞くから、そこに突っ立っている男子から聴取してくれ」

「は、はい」

上手く働かない頭でかろうじて返事をすると、鈴はゆっくりと聡史に近付いていく。聡史は鈴を懐かしそうな表で見つめたまま。

鈴、しばらくぶりだな。ずっと會えなかったが、すぐにわかったぞ」

「聡史君…」

自分に語り掛ける口調や眼差しの溫かさ… 全部昔のままだと鈴はじた。全然変わっていない。だからこそそれが嬉しい。

何か言いたい… でも、止め処なく流れて止まらない涙で聲にならない。

「もうちょっと落ち著いてからゆっくり話をしよう。俺のアドレスは昔のままだから連絡してくれ。ああ、それから桜も一緒にこの學院に學している」

聡史の知らせに鈴は泣きじゃくりながら頷いた。

そこに…

「おーい、副會長、聴取は終わったか? 連中は訓練の一環で怪我をしたと言っているが、そちらはどうだ?」

風紀院長が鈴と聡史が立っている場所にやってくる。だが鈴がボロボロ涙を流している様子に彼は表を変える。

「おい、そこの男子、なぜ、事聴取をしている副會長が泣いているのか私が理解できるように説明してもらおうか。事と次第によっては大問題になると覚悟しておけよ」

「えーと、それは大きな誤解です。俺と鈴は小學校を卒業するまで隣に住んでいた馴染みで、偶然こんな場所での対面を果たしたばっかりです」

の眼差しを向ける風紀委員長に対して、聡史は後ろめたいことはないとの潔白を主張する。

「副會長、今の話は本當か?」

鈴が頷く様子を見た風紀委員長はどうやら納得したようだ。

「正座している連中は訓練の結果怪我をしたと言っている。君はどうなんだ?」

「もちろん俺が稽古をつけてやったんですよ。怪我といっても小手を軽く叩いただけですから、骨には異狀ないはずです」

「十二人を相手にして、ひとりで捻じ伏せたのか?」

「もちろんですよ。このくらい簡単にやってのけないと一人前の冒険者ではないですから」

聡史の主張は確かにもっともらしく聞こえる。十二人を相手に簡単に勝つという部分を除けばだが…

「よし、事件はないと判斷する。全員部署に戻ってくれ。副會長は顔を洗ってから生徒會室に戻ったほうがいいぞ」

こうして風紀委員長の號令で鈴を含めた委員全員は戻っていく。

聡史は正座していたAクラスの生徒たちを解放してから軽く頼朝たちと剣を打ち合って、寮に戻っていくのだった。

◇◇◇◇◇

特待生寮では…

聡史が自室のドアを開くと、リビングから話し聲が聞こえてくる。

「あら、お兄様、おかえりなさいませ」

「桜ちゃんのお兄さん、どうもお邪魔しています」

「ああ、いらっしゃい」

リビングで桜とおしゃべりに興じていたのは紛れもなく明日香ちゃん。學生食堂で二人仲良くオヤツを食べた流れで、こうして部屋に招待されたらしい。

ちなみに明日香ちゃんは、中學時代に桜がしょっちゅう家に連れてきていたので聡史も話をする程度には顔見知りの間柄。

「それにしても、すごい部屋ですね~。寢室が一部屋余っているから私もここに住みたいですよ~」

「たまに遊びに來て泊まるくらいならいいだろうけど、ここに住み著くのは子寮の関係者からクレームが來そうだぞ」

「お兄様、週に一回くらいだったらよろしいと思いますわ」

桜も仲良しが一緒にいると比較的大人しくしているから、まあそのくらいだったらと聡史も首を縦に振る。ソファーには通學カバンと類が詰まった袋が置いてあるところを見ると、さっそく今夜桜主催のお泊り會を開催する模様が窺える。

その點を確認してみたところ、予想通り明日香ちゃんは外泊屆を提出済みのよう。そこで聡史は思い付く。

「そうだ、今夜ここに招待したい人がいるんだけど、呼んでもいいかな?」

「まあ、お兄様、一どなたですか?」

「さっき懐かしい人に再會したんだ。メールが來たらってみようかと思っている」

「懐かしい人? どなたか楽しみですわ」

「お兄さん、賑やかなほうが楽しいですから、今夜はパーッと盛り上がりましょう」

予期せぬ流れではあるが、鈴もこの部屋に招待される運びとなるのであった。

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