《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》13 晩餐
12話でようやくヒロイン候補が登場、その後は一どうなるかというと……
桜と明日香ちゃんは相変わらずリビングでたわいもない話を続けている。
聡史は自分の部屋に戻って機に教科書と參考書を広げている。一応今日行われた學科の授業の復習をしながら鈴からのメールを待つよう。
夕方6時を回った時間になって彼のスマホが著信を告げる。開いてみると想像通り鈴からの久しぶりのメール。
聡史は食堂で待ち合わせする容を返信すると、桜たちが待っているリビングへ向かう。
「桜、明日香ちゃん、食堂のり口で待ち合わせだから今から向かおう」
「お兄様、ちょうどお腹が減ってきましたからナイスタイミングですわ」
「誰が待っているのか、ちょっと興味が湧きますよ~」
三人ともすでに私服に著替えている。季節はすでに初夏に差し掛かっているので、聡史はジーンズにTシャツという大してセンスをじないラフな服裝。
桜はジーンズのショートパンツを穿いて、水のキャミソールの上から半袖のパーカーを羽織った活的なコーディネートを選択。元々ファッションに大して興味がなくきやすい活的な服を好むので、普段からこんな裝いで過ごしている。こんな雰囲気の私服で歩いていると制服姿よりも年下に見られる場合が多いが、本人は一向に気にしてはいないらしい。
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対して明日香ちゃんは、めいっぱいフリフリがあしらわれているワンピース姿。なぜこのような格好なのかはいずれ明らかになる。
魔法學院の主な施設は、正門に近い順に校舎、研究棟、學生寮が並んでおり、グラウンドや屋外訓練場が南側に広がっている。
學生食堂は研究棟の一階に設けられており、校舎と學生寮雙方に連絡通路が設置されている。この學院は全寮制なので、所屬する學生は、朝、晝、晩の三食をこの學生食堂で摂っている。レベルが高い學科の授業や力を消耗する実技実習が続く中で、學生たちが最も息を抜ける場所こそがこの食堂といえよう。
エレベーターで最上階から降りてくると、そこには學生食堂のり口がある研究棟のエントランスが広がる。ちょうど夕食時ということもあって空きっ腹を抱えた男子生徒が連れ立って食堂に向かう姿や誰かを待っている子生徒のグループが黃い笑い聲をあげている景が、そこいら中に見られる。
その中にポツンとひとりで壁際に立ってスマホの作をしている鈴の姿が飛び込んでくる。彼は他の大部分の學生が私服姿の中にあって、まだ制服を著てカバンを持ったまま待ち合わせの場に來ている。
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聡史たちが彼に近付いても、スマホに視線を向けている鈴はまったく気が付く様子がない。
「鈴、お待たせ」
聡史の聲に鈴がハッとした表で顔を上げる。その表は一瞬喜びに頬を染めるが、すぐに微妙な様子へと変化。鈴の視線は聡史の隣に並んでいる子二人に向けられている。
「聡史君、ご一緒の方はどなたなのかしら?」
目の前に現れた聡史が子生徒を二人同行させていることに対して、鈴は一誰だろうと訝しむ目を向ける。
「お兄様、まさか鈴ちゃんとこの學院でお會いできるとは思ってもみませんでしたわ」
「桜、どうやら鈴はお前が誰なのか気が付いていないようだぞ」
イタズラっぽく笑う兄妹に今度は鈴が「まさか」という表に変わる。
「も、もしかして桜ちゃんなの?」
鈴の記憶の中で桜は真っ黒に日焼けして網を持ってセミを追いかけて走り回っていた印象が強く殘っている。聡史の橫に並んでいる黒髪で白のが本の桜だと気が付くには、々時間が必要であった。
ようやく事態を理解した鈴に桜はニッコリ微笑みながら挨拶する。その表を一目見たら、大抵の男子生徒の脳みそを一撃で崩壊するような破壊力最兇の笑顔だった。
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「鈴ちゃん、本當にお久しぶりです。小學校の頃みたいに仲良くしてくださいね」
「桜ちゃんは、ずいぶん変わったのね。本當にビックリしちゃったわ。男の子みたいだったのに、なんだか話し方までお嬢様風になっているし…」
鈴は想い出の中にあった子供時代の桜の印象と現在の姿のギャップにいまだ脳の処理が追い付かないらしい。すっかり別人になった桜を相當な時間まじまじと見つめっ放しのまま。
すると、そこへ…
「桜ちゃん、桜ちゃん、西川副會長とどういう関係なんですか?」
ここまで蚊帳の外に置かれていた明日香ちゃんが好奇心丸出しの表で桜に喰らい付く。クラスが違っていても、生徒會副會長の顔は彼ももちろん知っていた。
「鈴ちゃんは小學校を卒業するまでお隣に住んでいた仲良しだったんですよ。ほら以前明日香ちゃんが家に來た時に、空き家になっていたお隣の話をしましたよね」
「ああ、そのお話は覚えていますよ~。その仲良しがまさかの副會長だったんですね」
桜と明日香ちゃんは中學1年の新しいクラスで知り合いになっており、それ以降の付き合い。ちょうど鈴とれ替わりになるかのように… 桜はその辺の事を説明する。
「鈴ちゃん、こちらは二宮明日香ちゃんです。中學で知り合った私の親友で、今日の朝突然聲を掛けられて本當にビックリしましたわ」
「どうも、一年Eクラスの二宮です」
「こちらこそよろしくお願いします。お顔は知っていましたが、こうしてお話しするのは初めてですね」
鈴は生徒會役員という職務上、1年生全生徒200人の顔と名前をすべて記憶している。クラスが違うので話をする機會こそなかったが、明日香ちゃんの能力データまで実は把握済み。
「挨拶が長引いたな。夕食をとりながらゆっくり話をしよう」
「お兄様、そうでしたわ。もうお腹がペコペコですの」
もちろんこの提案に桜はを乗り出して食いつくのは言うまでもない。こうして四人は空いているテーブルをキープして各自の食事をカウンターに取りにいく。
「ちょっと待って、桜ちゃん。トレーに乗っている食事の量がどう考えてもおかしいんだけど?」
「鈴ちゃん、人は時間の経過とともに長するものですわ」
「長の仕方を間違えているぞ~」
鈴が桜の行に目を見開き、桜が平然と返して、聡史が突っ込むというサイクルは、小學校の頃に確立された當時のまま。三人で昔を思い出して思わず吹き出している。さらにこのやり取りを混ぜ返すがごとくに、橫から明日香ちゃんが食い込んでくる。
「桜ちゃんはこれだけ大量に食べているのに、なんで太らないのか本當に疑問ですよ~」
「明日香ちゃん、をかしていれば食べた分は全て消化するんです。あなたも明日から私と一緒にをかして、ダイエットに取り組みましょう」
「絶対に嫌です。桜ちゃんと一緒に運なんかしたら理的に死にますよ~」
明日香ちゃんは桜の実態をよくわかっている。家族以外で最も桜を理解しているのは彼に他ならないだろう。それゆえに高速で首を橫に振って桜の提案を撥ね付けようとしている。現実問題として本當に死なない保証がどこにもないから、彼も必死な様子。
その橫では聡史と鈴が見つめ合いながら、子供の頃のの想い出や互いの近況などをわしている。
「ところで鈴はどうしてこの學院に學したんだ?」
「中學の時にたまたま魔力測定をしたら、有だという判定が出て推薦をけたの」
「ということは魔法が専門なのか?」
「専門かどうかはまだ何とも言えないわ。式を組み上げるのさえもそうそう簡単にはいかないし…」
「いやいや魔法なんか簡単だろう。よかったら俺が教えようか?」
「聡史君は魔法が使えるの?」
「初級魔法なら大概は何とかなるかな。屬は一通り網羅している」
「そ、それはどういうこと? 通常の場合個人に適がある屬は一つか二つでしょう?」
鈴の聲に驚きと聡史の言葉を果たして信用していいのかという疑念を含んだニュアンスがこもっている。だがその疑念を払拭するかのように桜が橫から口を挾む。
「鈴ちゃん、お兄様の魔法はそこそこ信頼がおけますわ。大抵の魔でしたら一撃で倒しますから」
「魔? 一撃? 桜ちゃん、それはどういうことかしら?」
鈴の頭の上には???が大量に浮かんでいる。桜の発言そのものの意味が鈴には理解不能らしい。
だがこのり行きを聡史は不味いとじている。桜がウッカリ口をらせたのは異世界での話だった。この場で二人が召喚された件まで話が及ぶのはどう考えても問題がある。仕方がないからかねてから用意していた言い訳を口にする。
「実は俺たち二人は海外のダンジョンにアタックしていたんだ。ほら日本のダンジョンは18歳にならないとれなくなっただろう。だから俺たちは海外にしばらく行っていた。日本に戻ってきたのはつい一昨日の話だ」
「桜ちゃんのお兄さん、もしかして桜ちゃんが海外留學していたと話していたのは、ダンジョン留學だったんですか?」
ここで明日香ちゃんがまたまた橫から割り込んでくる。々と好奇心の塊のような格なので、何でも知りたがるのだ。
「まあ、そうだな。しっかり語學力もに著けたぞ」
聡史の回答は実は正確ではない。異世界召喚特典で言語理解スキルを得て、異世界の言葉だろうが、英語だろうが、フランス語だろうが、會話が可能になっただけ。
「そうだったの。すでにダンジョンデビューしていたのね。明日から聡史君に魔法を教えてもらおうかしら」
「いいぞ、俺たちは実技実習を免除されているから鈴の魔法の練習にずっと付き合ってやるよ」
「ずっと付き合って… いやいや、何でもないから。聡史君、ど、どうか誤解しないで」
「んん? 何を誤解するんだ?」
聡史の『ずっと付き合って』というフレーズに敏に反応してしまった失態に鈴は耳まで真っ赤になりながら、恥ずかしさのあまりに両手で顔を覆っている。だが鈴が周囲にバレバレの態度でなんとか誤魔化そうとした心の奧にめた気持ちに聡史が気付くことは一切なかった模様。
鈍男これに極まれり! 鈍萬歳! 一生貞でいるつもりか! こんなを表面に丸出しにしながら桜が兄に諦めたかのように語り掛ける。
「本當にお兄様ったら… 私でしたら目の前に転がっているオイシい餌にパクっと食いついているのに…」
妹から憐みの表を向けられているが、それでも聡史は何も気づく様子はない。そこにすかさず明日香ちゃんが…
「私も、お兄さんに魔法を教えてもらおうかな?」
「明日香ちゃんは私がマンツーマンでビシッとシゴキ倒します」
「絶対に嫌ですぅぅ!」
鬼軍曹のような表を浮かべた桜の提案に、明日香ちゃんの心からのびが食堂に響くのだった。
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