《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》18 大山ダンジョン 1

ようやくダンジョンへ……

桜に引っ張られるようにして四人は大山ダンジョン管理事務所へとやってくる。

ダンジョン管理事務所の設立主は日本政府であるが、運営は市町村から委託された第3セクターとなっている。日本においてはこの事務所が異世界でいうところの冒険者ギルドの代役に相當する。

主な業務はダンジョンに出りする調査員の管理である。ちなみにこの調査員というのがダンジョンを探索する人々の公式名稱であるが、一般的には冒険者と呼ばれるケースが多い。

その他に事務所から冒険者宛てにクエストが告示される場合もある。ダンジョンで手にる薬草を採取してほしいとか、特定の魔の魔石がしいなどという依頼を事務所が理して、冒険者がダンジョンにって依頼をこなすシステムが出來上がっている。

ところで、なぜ日本においてダンジョンの活が冒険者に委ねられているのだろうか?

ダンジョンが形された初期の頃には、自衛隊が部にって魔の討伐を行っていた時代があった。だが、自衛隊の武裝は狹いダンジョンの通路には不向きな作りとなっている。戦車や裝甲車はもちろん、大型の重火すら持ち込みが難しいのだ。

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必然的に、アサルトライフルやマシンガンといった、歩兵手持ちの銃が主要武となる。だが、さらなる問題が生じる。銃には弾丸が必要で、手持ちの銃弾を撃ち切ってしまえば役に立たない。何階層にも及ぶダンジョンにおいて、一人の自衛隊員が運べる弾數におのずと限界がある以上、そこから先の補給が困難なのだ。

もちろん武弾薬だけではなくて水や食料も背負うことを考えると、現代武の使用は困難と結論付けざるを得なかった。

このような流れの中で、最終的に武は剣や魔法が最も適しているということに落ち著いていく。そして、そこから志願した冒険者が活躍の場を得る時代となるのだった。

聡史たちが事務所にやってくる頃には、これからダンジョンにろうと意気込む1年生が大勢フロアーで手続きの順番を待っている。

その列に聡史たちが並ぶと橫から聲が掛かる。

「聡史、お前たちもダンジョンにるのか?」

振り返るとそこには頼朝がいる。

「ああ、今日は下見のようなものかな」

「それにしても、珍しい組み合わせだな。二宮は足を引っ張るなよ」

頼朝たちは人數不足で一度だけ明日香ちゃんをパーティーに加えた過去があった。その時に散々足を引っ張られた苦い経験がある。

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「心配しなくても、大丈夫ですよ~。桜ちゃんに丸投げします」

あくまでも他力本願の明日香ちゃんである。

その後ろでは鈴が…

「確か、Eクラスの…」

鈴ちゃん、このウドの大木は、尊氏ですわ。むむ、なんだか違うような… 家康でしたか?」

「桜、頼朝だぞ。幕府の初代將軍をピンポイントで外すなよ」

頼朝はガタイがいい。だがそれを稱して『ウドの大木』とは、桜の言い草は失禮にもほどがある。しかも名前を間違えるし…

「副會長、藤原頼朝です。どうぞよろしくお願いします」

桜に対して卑屈なまでの態度で頭を下げた頼朝であったが、鈴に対してはごく普通に一禮している。やはりこの男、桜の危険な香りを嗅ぎ取っていたのか…

「こちらこそよろしくお願いします。西川鈴です」

鈴はその名の通りに、涼やかな表で挨拶をしている。

だが、頼朝は何か不安でもあるのか、鈴に確認する。

「副會長、大丈夫なんですか? そんなジャージ姿で」

「ええ、聡史君と桜ちゃんがいれば何とかなるでしょう」

実は頼朝だけでなく、ダンジョンに來ている生徒全員がプロテクターとヘルメットにを包んで、手や腰には武を所持している。一方聡史たちは、演習用のジャージにTシャツ、しかも丸腰ときては、誰が見ても不安に映るのは當然だろう。

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「秀吉、心配など不要ですわ」

「だから頼朝だって。今度は將軍からも外れたぞ。関白だからな」

桜は何度聞いても頼朝の名前を覚える気はなさそうだ。ここまで間違われると、さすがに頼朝も涙目になっている。なんとも気の毒な…

こうして頼朝が桜のオモチャになっているうちに順番がきて場手続きが完了する。同時にパーティー登録と大山ダンジョンの5階層までのマップをけ取る。

「桜、各階層のマップだ」

「お兄様、確認いたしますわ」

桜は異世界でも常にパーティーの先頭を務めていた。その卓越した気配察知能力と人知を超えた戦闘力をもってすれば、彼以上に優れた先鋒など何処にもいないと言い切れる。むしろ桜ひとりで大抵の魔を片付けてしまうので、後続は暇を持て余すケースが大半であった。

かつての聡史と桜の日本でのホームグラウンドは秩父ダンジョンだ。ここ大山ダンジョンは初潛なので、慎重を期して聡史は桜にマップを確認させている。

「お兄様、第3階層のこの辺りが気になりますわ」

「3階層か… 今からそこまで行くとしたら往復で4時間は必要だな」

鈴のタイムリミットがあるだけに、聡史はどうしようかと頭を悩ませる。だが桜はお構いなしの態度。

鈴ちゃん、今日は生徒會をサボりましょう。一気にレベルを上げるには、どうしてもこの辺りまで出向く必要がありますわ」

「ええ、桜ちゃん。それはちょっと無理よ」

「無理ではありませんわ。學生の本分は授業に熱を注ぐことです。生徒會活など二の次ですわ」

単に桜がその場所まで行きたかっただけであるが、學生の本分まで持ち出されては鈴としても返す言葉に詰まる。仕方なしに生徒會宛に欠席の連絡をれざるを得なかった。

もちろん桜はシメシメという表でメールを送る鈴の様子を見ている。とことん自分の都合に他人を巻き込む格とってもお茶目な格をしている。

「それでは3階層まで最短距離を進むぞ。桜が先頭で、鈴、明日香ちゃんの順で続いてくれ。一番後ろは俺が守る」

こうして4人は、ダンジョン部へと足を踏みれる。

念のために桜は両手にオリハルコンの籠手を裝著している。この籠手は厳にいえばガントレットに區分されており、全を金屬鎧で覆った騎士が両手を守る用途で嵌める防である。

だがひとたび拳で戦う桜が裝著すると、両手を守りつつ敵に大きなダメージを與える武に変する。しかも最強の度を誇るオリハルコン製なので、たいていの魔は一撃で片が付く。

このような強力な武裝は現在の日本には存在しない。ダンジョンの上層部では、明らかにオーバーキルであろう。だが桜は自らの手に馴染んだ相棒と呼ぶべきこの籠手を常に手にして戦うのだった。

対して聡史はアイテムボックスから取り出した異世界製の神鋼で出來た短剣を手にしている。神鋼とは鉄に量のミスリルを混ぜた金屬で、鉄よりも丈夫で魔力との相が良い。この剣一本取っても、稀代の名工と謳われたドワーフが丹念に打った逸品である。

その切れ味は抜群でダンジョンの上層階では桜の籠手と同様にオーバーキルだが、聡史は狹い通路での取り回しを重視してこの剣を選択している。

もちろん鈴と明日香ちゃんは武など手にしてはいない。だが鈴には機會があれば魔法を放つように、聡史から指示が出されている。

ダンジョンにったり口付近は、どちらの方向に向かおうかと迷っている生徒たちで々混雑している。四人はこの混雑を避けて通路の奧へと一目散に進んでいく。

そのまま五分ほど歩いていると桜からの警告が飛ぶ。

「どうやらゴブリンのようですわ。1ですから心配いりません」

桜が気配を察知してからきっかり10秒後に、通路の曲がり角から緑に額からびる一本角、腰巻一枚に纏って、手には末な棒を持つゴブリンが現れる。

桜はやや足を速めて後続から離れて前進すると、無造作にゴブリンへ接近していく。対するゴブリンは奇聲を上げながら棒を振り上げる。だが…

「遅いですわ」

接近する桜が最後の5歩で一気に加速すると、ゴブリンはそのきに全くついていけなかった。やや引き気味にした桜の右拳がゴブリンに向かっていく。

「ギギャアァァァァァァァ!」

尾を引くような長い悲鳴を殘してゴブリンは通路の曲がり角の壁まで吹き飛んで、何の抵抗もできないままに絶命する。明日香ちゃんは口をポッカリ開いてその景を眺めているだけ。鈴も何が起きたのか理解できずに聡史に振り返る。

「聡史君、桜ちゃんが近づいたと思ったらゴブリンが飛んでいっちゃったわ。何がどうなっているのよ?」

「桜のきに鈴たちの目がついていけなかっただけだ。普通に毆って倒したぞ」

「毆っただけでゴブリンがあんな簡単に飛んでいくものなの?」

「まあ、そこは桜だからなぁ」

鈴さん、桜ちゃんですから、きっと私たちの理解を超えているんですよ~」

ようやく気を取り直した明日香ちゃん、すでにその表々と諦めているようだ。理解できないものは放置しようと決定している。さすがは桜と長い付き合いがある親友。

そこへ桜が聲を掛ける。

「明日香ちゃん、何もしないのはヒマでしょうから、ゴブリンの魔石を拾い集めてください。3個集めると食堂のパフェが食べられますわ」

「桜ちゃん、それは本當ですかぁ。私、1個も見逃さずに拾いますから任せてください」

デザートが懸かるとこうも態度が違うのか。明日香ちゃんは素早くゴブリンが消え去った場所に向かい、濁った緑の魔石を拾い上げて大事そうにポケットへと仕舞い込む。あとこの魔石2個で大好のパフェにありつけるのだから、その目はキラキラだ。

このようなじで、通路に出てくるのはゴブリンだけという1階層を進んでいく。もちろん桜が、ワンパンで片づけて、明日香ちゃんが魔石を拾うというコンビネーションは健在。

鈴さん、全然がないですよ~」

「そうねぇ… 他の子とダンジョンにった時は、もっと周囲を警戒していたはずよね」

「なんだか、桜ちゃんが『危険はない!』と言っていた意味が、分かったような気がしますよ~」

「桜ちゃんひとりで全部終わってしまうんですもの。魔法の用意はしても撃つ暇なんかなさそうね」

確かに鈴と明日香ちゃんが喋っている通りで、かつてここまで安全なダンジョン探索は日本では存在しなかったであろう。

そのタネを明かすと、実は桜は異世界で単獨ダンジョン制覇をし遂げているのだった。桜と聡史のステータスを比べると、一番最後のダンジョン記録という項目がある。

そこに記載されているのは、聡史が踏破レベル6に対して桜はなんと11という數字が記載されている。聡史が6か所の異世界ダンジョンを踏破したのに対して、桜は11か所を制覇していた。つまり5か所は単獨アタックで最深部のラスボスを倒してきた証明となる。

いくらなんでも戦闘狂のが騒ぎすぎであろう。これが聡史と桜のレベルの違いを生み出している原因でもある。桜のほうが倍近く聡史を上回っているのだ。本當に恐ろし過ぎる娘だ。

その後桜がゴブリンを4倒した時…

ピコーン

明日香ちゃんの頭の中でチャイムのような音が鳴る。

「あっ! 今レベルアップしましたよ~」

桜が6倒すと…

ピコーン

「あら、私もレベルアップしたわ」

これほど安全簡単なレベルアップ法はない。桜について歩けばよいだけなんて、いくらなんでもムシが良すぎる。だが、これが実際にこの場で起きている事実であった。

その後も鈴と明日香ちゃんは、ただダンジョンの通路を歩いているだけでレベルアップを繰り返していくのだった。

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