《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》19 大山ダンジョン 2

聡史たち四人は最短距離でダンジョン一階層を突っ切り、現在2階層へとやってきている。

鈴さん、2階層に來たのは、初めてなんですよ~」

「明日香ちゃん、私も一緒よ」

魔法學院に學してからまだ2か月々、1年生の大半は1階層で単のゴブリンを數人掛かりで倒すのが関の山。2階層に降り立ったのは未だ一握りの生徒でしかない。

これが2年生ともなると3~4階層が活の中心となり、3年生となったら5階層が當然という流れとなる。さすがにそこから先に進む生徒はまずをもって存在しないのだが…

5分ほど通路を進むと今度は最後尾を警戒する聡史が警告を発する。

「背後から來た。俺が相手をするぞ」

聡史は桜と同様に他のメンバーをその場に置いて、ひとりで足音の方向に向かっていく。ゴブリンは醜悪な表で聡史に向かって棒を振り上げる。

カキン ズシャッ

聡史の短剣は一呼吸の間に棒を斬り捨ててから、まとめてゴブリンの首を落としている。

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「ヒイィィィ、く、首が落ちましたぁぁ」

「何が起きたのよぉ」

を噴き出した首無しゴブリンがバッタリ倒れていく景に耐え切れず、明日香ちゃんはび聲を上げている。鈴もそのスプラッターな場面を直視できない様子。

鈴ちゃんも明日香ちゃんも大袈裟ですよわ。ホラーハウスだと思えば全然大したことはありません」

「桜ちゃん、私はお化けが一番苦手なんですよ~」

「明日香ちゃん、ホレこの通り、首はありませんが足は付いていますからお化けではありませんわ」

「桜、その言い方のほうが逆に怖いぞ」

めにも勵ましにもなっていないわね」

聡史と鈴がダブルで突っ込んでいる。

このまま最短距離で2階層を突破していく間に、鈴と明日香ちゃんはそれぞれ2回ずつレベルアップを繰り返した。

そして3階層。

ここから先はゴブリンが集団で現れる上に、ゴブリンソルジャーやゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジといった上位種が出現する。時には上位種の組み合わせも出現するので、普通のパーティーであればメンバー間の連攜が重要となってくる。

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だがそのような心配はこの娘には全くの無用であった。

「なるほど、ゴブリンメイジにゴブリンアーチャーが出てきましたわね」

桜の眼前には魔法の呪文を唱え始めているゴブリンメイジと、弓をつがえて狙いを定めているアーチャーが。

「桜ちゃん、矢が飛んできますよ~」

「桜ちゃん、魔法にも注意して」

やや下がった位置から明日香ちゃんと鈴の警告が飛ぶが、桜は一向にきを開始しない。

「桜ちゃん、何をしているの。早く後ろに下がって」

鈴が懸命に桜に向かって聲を枯らしてぶが、桜は頑なにこうとはしなかった。

ヒューン

ゴォォォ

のゴブリンから同時に矢とファイアーボールが桜目掛けて飛んでくる。どちらも當たったらタダでは済まない威力で宙を飛翔してくる。

「桜ちゃん、そこを退いて。ファイアーボ…」

鈴、止めておけ!」

聡史が鈴の肩に手を置き、同時に自らの魔力で鈴に干渉を及ぼして、発直前だったファイアーボールを霧散させる。

「聡史君、何をするのよ。このままでは、桜ちゃんが!」

鈴が振り返って聡史に強い口調で抗議する、その時だった。

「それっ」

キーン

まるで耳鳴りがしてくるような高音がダンジョンの通路を震わせると同時に、桜が突き出した右手から目に見えない何かが飛んでいく。

ズドーン

見えない何かはゴブリンメイジが放ったファイアーボールを消し去り、ついでに2のゴブリン上位種を吹き飛ばす。

そして、アーチャーが放った矢は何処かといえば…

桜の左手に握られている。

桜は飛んでくるファイアーボールを右拳から打ち出した衝撃波で砕して、同時に左手で矢をキャッチするというとんでもない離れ業をやってのけていた。2のゴブリンを吹き飛ばしたのは、いわばオマケみたいなもの。

「えっ、えっ、ええぇぇぇぇ! ファイアーボールと矢と魔が全部きれいに消えていますよ~」

「なんだか、一瞬のうちに終わっちゃたんだけど…」

明日香ちゃんは飛んでくる魔法と矢の恐怖に思わず目を閉じてしまっていた。恐る恐る目を開いてみると、いつの間にやら全て片付いている不思議な現象にわけが分からず大聲でんでいる。

鈴は鈴でもうダメかと思ったら、何事もなかったかのように桜が立っている奇妙な現象に目を白黒しているのだった。

「お二人とも、そこまで驚くような出來事ではございませんわ。今の私でしたら飛んでくる銃弾でも楽に摑み取って差し上げます」

この程度は蕓のうちにはらないと言わんばかりの桜が振り返る。これこそがレベル600オーバーの実力の片鱗だろう。この娘、真の怪に他ならない。

「それじゃあ、出発しようか」

「聡史君、『それじゃあ』ではないでしょう。何が起きたのか納得いくように説明してよね」

鈴は大袈裟だなぁ~。大したことじゃないさ。飛んできたファイアーボールを桜が拳の圧力で打ち消して、同時に矢をキャッチしただけだ。ついでにゴブリンも吹き飛ばしたみたいだな」

「人間業じゃないでしょうがぁ。大したどころか、とんでもない出來事よぉ」

「だって桜だから、しょうがないだろう」

聡史は切り札を繰り出す。萬人を簡単に納得させるだけの効果がある魔法のフレーズだ。

「ああ、そうでしたよ~。桜ちゃんじゃ、しょうがないですよねぇ」

「言われてみれば、桜ちゃんだったら何でもアリよね」

「そうだろう」

「「「ハッハッハッハッハッハァ!」」」

シーン

「ハハハじゃないでしょうがぁぁ。笑い事では済まされないんだからね」

鈴のび聲だけが虛しく通路に響くのであった。

◇◇◇◇◇

そんなこんなで四人は3階層の東側、マップを見た際に桜が気になると指摘した箇所へとやってくる。

「桜、何が気になるんだ?」

「お兄様、通路の微妙な曲がり合とか枝道が不自然に続いている點が、どうも気になりますわ。私の経験上、このような場所には隠し通路が存在するはずです」

「なるほど、未発見の隠し通路か」

桜はしきりに壁を叩いて回る。返ってくる音の変化で部の空や壁が薄い部分の有無を探っている。

「この辺りですわ」

桜は確信をもって壁の前に立つと、右のストレートを一閃。

ガラガラガラガラ

壁が音を立てて崩れると、その向こう側にポッカリと空間が現れて先へと続く通路を形している。

「桜ちゃん、すごいですよ~。本當に隠し通路を見つけちゃいました」

「本當にビックリね。何をどうすれば、こんな信じられない蕓當が可能になるのかしら?」

異世界で3年ほどダンジョンにり浸っていれば誰でもなれますわ… という聲が出掛かるのをグッと堪えて、桜は笑って誤魔化している。そのまま四人は崩れた壁の隙間から隠し通路へとり込んでいく。もしかしたらお寶ゲットかと、期待にを膨らませる明日香ちゃんがいる。

「桜ちゃん、高価なお寶が出てきたらデザート食べ放題ですよ~」

「明日香ちゃん、お寶なんてそうそう見つからないんですよ」

隠し通路には魔は出現せず、そのまま300メートル進むと壁の突き當りとなっている。

「もしかして、不発ですか?」

「明日香ちゃんが言う通り、何もないようね」

せっかく通路を発見して期待してみれば何もなしでは、鈴と明日香ちゃんがガッカリするのは當然。だがこの娘は自信満々の表をしている。

「お兄様、この辺りの床に魔力を流していただけますか」

「いいぞ、こんなじか?」

聡史が魔力を流し込むと床が白くりだす。そして一際大きくった後に、床には魔法陣が出現する。

「なんだか怪しいですよ~」

「危険はないかしら?」

「明日香ちゃんと鈴ちゃん、もちろんこのような魔法陣はトラップである危険が高いですわ」

桜はダンジョンに時折発生する魔法陣について二人に解説を始める。

「この先にお寶が眠っているかトラップなのかは、いってみれば運次第ですの」

「そうなんですか… やっぱり危険ですから、このままにしておきましょうよ~」

「明日香ちゃんが言う通り、このまま放置するしかないわね」

さすがにこの場で運にを任せる勇気はこの二人にはないようだ。ダンジョン初心者としては、當然の判斷だろう。桜は二人の判斷に大きく頷いている。

「やっぱりそうですよね。お二人とも腰が引けて當然ですわ。ですからこのような魔法陣は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ こうして踏み抜きま~す」

桜が踏みつけた魔法陣から真っ白なが溢れ出して、この場にいる四人を包み込む。

「さ、桜ちゃん、何をするんですか。早くその足を退けてください」

「明日香ちゃん、とっても殘念なお知らせですが、転移魔法陣はすでに発済みですわ。運を天に任せましょう」

「桜ちゃんの鬼! 悪魔!」

「明日香ちゃん、むしろ私たちにとって、死神かもしれないわ」

「お兄さん、笑っていないで助けてぇぇぇぇ」

こうして明日香ちゃんの絶を殘して、四人は何処かへと転移していくのであった。

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