《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》21 新たなステータスと、訓練方針

隠し部屋から転移した四人は、見慣れぬ通路と思しき場所に運ばれていた。しかし、二度目は失敗しないとばかりに、鈴と明日香ちゃんはおで著地することなく、無事に自分の足で立っている。

「あれ? どっちに行っても行き止まりみたいですよ~」

「本當ね! どうやって外に出ればいいのかしら?」

ダンジョン初心者の明日香ちゃんと鈴は再び不安を口にしている。だが聡史と桜は全く平常運転で焦った表一つ見せていない。

ことに桜に至っては行き止まりになっている壁をしきりに調べている。

「正解は、こっちの壁ですね~」

ガコッ

右手のストレートを叩き込むと、脆い造りであった壁は発泡スチロールのように簡単に崩落。そして大きなが開いた先には見慣れた普通の通路があった。

壁を崩した部分から桜が通路に出て周囲を見回すと、殘りのメンバーに向けて手招きをする。

「危険はないようですから、こちらへ出てきてください。どうやらここは2階層みたいですわ」

桜は自分が通った個所の景を覚えているという、いわゆるマッピングに相當するスキルを持っている。いちいちメモを取らなくても、脳にダンジョンの地図を描けるのだ。そしてその勘は的中しており、すぐに上層に昇っていく階段を発見する。

階段を昇ると、そこには1年生パーティーの姿が遠目に見掛けられる。やはり無事に1階層に戻れたようだ。

本日は終了とばかりに、そのまま最短距離で出口に向かい、四人は大山ダンジョンを出ていくのだった。

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「魔石の買取りをお願いします」

回収係の明日香ちゃんがダンジョン事務所のカウンターに買取りを申し出ると、係員はにこやかな笑顔で対応してくれる。魔石や他のアイテムの買取りと転売は事務所の重要な収源なので、想のいい笑顔を浮かべるのは業務上の必須マニュアル。ハンバーガー屋のお姉さんよりも5倍くらい輝いた笑顔をカウンターにやってきた冒険者にもれなく向けてくれる。この笑顔に魅せられて『俺に気があるんじゃないか?』と勘違いする男冒険者が後を絶たないのも公然の事実。

「はい、どうぞこちらのトレーに並べてください」

明日香ちゃんのジャージのポケットにはジャラジャラ音がするくらいに魔石が詰まっており、これ以上りきらない限界までパンパンに膨らんでいた。ひと摑みふた摑みと取り出すうちに、トレーには小山が出來上がる。

「ずいぶん沢山あるんですね」

「はい、みんなで頑張りましたよ~」

ピカピカの笑顔で答える明日香ちゃんだが、実は魔を1も倒していないという事実はこの際緒にしておこう。こういう場面で他人と會話を合わせるのは非常に手慣れた娘である。俗に言うお調子者に相當するのだろうか?

カウンター嬢は魔石を一つ一つ丹念に計測裝置に掛けていく。

普通のゴブリンがドロップする魔石は含有する魔力が10~20程度なので、これからエネルギーを取り出そうとしても外部から加えなければならないエネルギー量が上回ってしまい採算が合わない。いわゆるクズ魔石と呼ばれて価値が低いとされている。

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だが、利用法が全くないわけではない。クズ魔石を末にして量を火薬やガソリンに混ぜただけでも燃焼効率が上昇するので、相応の引き取り手があるのだ。価格はジュース代程度ではあるが。

カウンター嬢が端末に測定結果を打ち込むと、自的に計算された代金が表示される。

「ゴブリンの魔石が42個で6300円、ゴブリン上位種の魔石が12個で6000円、それからこちらの魔石はもしかしてオークジェネラルですか?」

「はい、そうですよ~」

明日香ちゃんがドヤ顔で答えている。実際に対面した際は気を失っていたくせに……

「魔法學院の學生さんが、オークジェネラルを倒したんですか?」

「とっても運がよかったんですよ~」

聡史と桜が一緒だったのは果たして幸運なのか不運に巻き込まれたのか判斷は微妙なところではあるが、明日香ちゃんがニコニコ顔なのでひとまず良しとしておこう。

それよりも、カウンター嬢のほうがビックリ顔で明日香ちゃんを見つめている。彼は業務上學院の生徒だけではなくて、このダンジョンに潛る一般の冒険者も數多く見ている。その外見や裝備、から放つ雰囲気だけで、冒険者の能力をある程度判斷可能。

ところがどこからどう見てもピカピカの初心者である明日香ちゃんが、オークジェネラルの魔石などを提出したものだから、何が起きたのかと不思議な表をしている。だがカウンター嬢は、明日香ちゃんの背後に連れ立っている聡史と桜を見て納得した表へと変わった。

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(確かあの二人は秩父ダンジョンの最年記録を次々に塗り替えた兄妹よねぇ~。先日は何萬単位の魔石を秩父の事務所へ提出したというし、有り得ない話ではないわ)

各地のダンジョン事務所においては活躍中の冒険者の報が共有されており、聡史と桜は秩父ダンジョンの注目株であった。法令改正で年齢制限に引っかかるため兄妹のダンジョンへの場を斷らざるを得なかったのは、事務所にとっても痛恨の出來事と所で話題になっていた。

ちなみにこれは兄妹が異世界へ行く前の報であり、今ではこの二人が數々の異世界ダンジョン攻略者であることは、さすがにこの有能付嬢も気が付いてはいない。

カウンター嬢はいつもの営業スマイルに戻って、明日香ちゃんに集計された最終結果を告げる。

「それでは、オークジェネラルの魔石が3個で7500円ですね。合計で19800円、源泉徴収10パーセントで、17820円になります」

「そんなになるんですか。4時間ちょっとで大儲けですよ~」

明日香ちゃんの脳では大好のパフェがダンスを踴っている。これだけのお金があれば、一いくつパフェが食べられるんだろうと、ソロバンを弾いているよう。

自分のお小遣いの3か月分に相當するお金を握りしめた明日香ちゃんは、頬を紅させながら他のメンバーが待っているベンチへと向かう。

「皆さん、こんな大金が手にりましたよ~」

「聡史君、このお金はどうするの?」

鈴も高校生にとってはちょっとした金額に、相當戸った表。過去にクラスの生徒とパーティーを組んでゴブリンを相手にした時は、全員でジュースを飲んで魔石の買取り代金はお仕舞だった。それに比べて今回はたった一度のアタックでこんな大金を得るなんて… おそらくこんな心であろうと思われる。

ちなみに鈴の経験は、とりもなおさずゴブリン程度を相手にしていては冒険者としての稼業はり立たないことを意味している。いかに下の階層に潛って手強い魔を倒すかが、一人前の冒険者として生活の糧を得る唯一の方法であり手段なのだ。

的にいえばオークを倒せるかどうかで、冒険者として生活がり立つかどうかの分かれ目となる。その點からするといまだオークを相手にできない學院の3年生でも、まだまだ一人前には至っていないと言えよう。

「そうだなぁ… 今日のところは一人當たり2千円でどうだろう? パーティー共有の品なども後々買わないといけないし、殘った金額はキープしておくのがいいと思うぞ」

聡史の意見は、異世界で培った冒険者としての収分配の知恵であった。パーティー共有財産を多めに殘しておくことで、いざ裝備や日用の必需品を購するという時にそこから支出可能となる。

「そうねぇ… 聡史君たちの部屋にはティーセットもないし、食とかも揃えたいわね」

特待生専用學生寮はこのパーティーの溜まり場に決定した模様。コンビニで購した紙コップで味気ないお茶を飲むよりは、揃いのティーセットを鈴は所している。

「パフェの數が大幅に減ってしまいました…」

「明日香ちゃん、気落ちしなくて大丈夫ですわ。次回はもっと下の階層まで行きましょう。そうすれば、お金なんてザックザクですよ」

「そうでしたぁぁ、今日で終わりではなかったんですよね。次回はもっと頑張りましょう!」

実に現金な明日香ちゃ。再び脳で大量のパフェがダンスを開始している。

こうして相談がまとまって、ダンジョン事務所を出ると鈴が時計を見る。まだ4時半を々回った位置を彼の時計の針が指し示している。

「今から生徒會に顔を出そうかしら?」

「いや、ひとまずは俺たちの部屋に來てもらいたい。鈴と明日香ちゃんはステータスが上昇しただろうから、々と確認しておきたいんだ」

鈴ちゃん、今日は生徒會お休み宣言をしたのですから、最後まで私たちに付き合ってもらいますわ」

元はといえば桜の強引さに押し負けて鈴は生徒會を欠席したのだが、再び強引な大波が押し寄せてきて、あっという間に流されていく。

だがそんな鈴とは対照的に、この娘は確固たる自らのを隠そうともしなかった。

「お兄さん、桜ちゃん、絶対に食堂に立ち寄ってパフェを食べましょうよ~。ねぇ、桜ちゃんもそう思いますよね」

「いいですわねぇ~」

「テイクアウトにしてもらうんだぞ。部屋で話をしながら食べてくれ」

「お兄さん、ナイスアイデアですよ~」

明日香ちゃんからグイっとサムズアップされた聡史はとっても微妙な表を浮かべている。その表の裏側には、『そんなことで褒められても、全然嬉しくねぇぇぇ!』という本心が隠されていたのは、言うまでもない。

◇◇◇◇◇

四人は特待生寮へと戻ってきている。

手や顔を洗ってテーブルに著くと、さっそく桜がアイテムボックスから食堂でテイクアウトした品々を取り出す。明日香ちゃんが世界で最も輝く時間だ。

「明日香ちゃんは、フルーツパフェ。お兄様は、アイスコーヒー。鈴ちゃんは、アイスティーでしたわね。殘りは全部私のものですわ」

桜の手元には、チョコレートパフェ、バナナチョコアイスクレープ、五段重ねパンケーキ3倍生クリームトッピングの三品が並んでいる。夕食の前によくぞこれだけ腹にるものだ。

「桜、今月の小遣いは大丈夫なのか?」

「お兄様! 心配には及びませんわ。危ないところでしたが、今日2千円の臨時収りました」

しは殘してあるんだよな?」

「500円玉が一枚殘っていますが、問題ありませんわ。いざとなったらお兄様のお財布をアテにします」

「俺の財布頼りか? 1円も貸さんぞ」

「もしお嫌ならば、いち早くダンジョンにるしか道は殘されていません。次の計畫を今日中に立てておきましょう。私の経済狀況が改善されなければ、お兄様の財布は常に狙われ続けますわ」

桜は聡史の財布を人質にして次回のダンジョン突撃計畫をまとめろと、兄に向って強要している。自らの闘爭本能と食を満たすためならば、兄の財布すら犠牲にするのを厭わない恐ろしい娘だ。

聡史はヤレヤレという視線を妹に向けている。當の張本人である桜は、平然とした表で明日香ちゃんのフルーツパフェと自分のチョコレートパフェを一口ずつ換している。妹の特権だといわんばかりの、お姫様モードにり込んでいるよう。

「それじゃあ、明日香ちゃんからステータスを見せてもらえるか?」

「ふぁい、フテーハス、オーフン」

ちょうどたっぷりクリームが乗ったバナナを口に放り込んでいた明日香ちゃんは、モゴモゴしながらステータス畫面を開く。食べるかしゃべるか、どっちかにしろ!

【二宮 明日香】 16歳 

職業 魔法になっちゃうぞ!

レベル 11

力 48

魔力 50

敏捷 34

神力 28

知力 33

所持スキル 魔法になっちゃう気持ち

新たな數値が並ぶ明日香ちゃんのステータスを覗き込んでいる桜が真っ先に意見を述べる。

「明日香ちゃんのゴミのようなステータスが、ようやく人並みに近づきましたわ」

「誰が、ハエがブンブン集るようなクソステータスですかぁぁぁ!」

「明日香ちゃん、どうか落ち著いてくださいませ。ごく普通にゴミと呼んだだけです。どうも最近、被害妄想が悪化しているようですわ」

「桜ちゃんだって、誇大妄想じゃないですか。ステータスの數字をあれだけ盛っている人に、被害妄想なんて言われたくないですよ~」

明日香ちゃんは先日目にした桜のステータスを丸っきり信じてはいない。つい今しがたまでダンジョンであれだけの力を目の當たりにしても、偽造された數字だと信じ切っているよう。

ちなみにステータス上の各種數値は、レベルが一つ上昇するごとに8パーセント増えていく仕組みとなっている。今日一日で明日香ちゃんの各種數値は約2倍となっているが、それでもようやく人並みというのはさすがはEクラス最弱の存在。

「それにしても、職業とスキルがなんとも微妙ですわ」

「桜ちゃん、そこはれないでくださいよ~」

どうやら多は気にしているらしい。だが以前よりは、念願の魔法に向かって一歩前進しているはある。そこだけが唯一の救いのような気がしてくる。

こんな桜と明日香ちゃんのど~~でもいい遣り取りを黙って聞いていた聡史が、ようやく口を開く。

「明日香ちゃんは、神面を鍛える必要があるんじゃないかな? オークジェネラルを見た瞬間、気絶していたし」

「お兄様! いい所にお気づきですわ。私が明日香ちゃんの神面をビシッと鍛え上げます」

「桜ちゃん、なんだか悪い予しかしないんですが、本當に大丈夫なんですか?」

「お任せくださいな。オークジェネラルよりも怖いものを見れば、あの程度全然気にならなくなりますわ」

桜の目が怪しくっている。果たして明日香ちゃんをどのような方向に鍛えていくつもりなのだろうか? そんな妹の不穏な企みはスルーして聡史は続ける。

「それから、武はどうするんだ? いつまでも手ぶらでダンジョンにるわけにはいかないだろうし」

「そうですわね。私の手持ちの武から、無理やりにでも選ばせますわ」

「桜ちゃん、なんでそこで無理やり満載なんですか?」

こうして、明日香ちゃんの運命は完全に桜の手に委ねられたところで、次は鈴の番となる。

「ステータス、オープン」

【西川 鈴】 16歳 

職業 ……

レベル 12

力 72

魔力 374

敏捷 48

神力 134

知力 90

所持スキル 火屬魔法 闇屬魔法 無屬魔法 魔力ブーストレベル2 魔力回復レベル2 式解析レベル5

「聡史君、どうかしら?」

「うーん、魔法屬が増えているのはいいけど、パターンとしては珍しいな~」

「えっ、何が珍しいのかしら?」

「火屬持ちは結構な數がいるし、攻撃手段としてはポピュラーといえる。でも次にステータスに現れたのが、闇屬と無屬という點が珍しい組み合わせだと思うんだ。ほら、普通なら風屬とか、水屬が現れるのが一般的だろう」

「そういうものかしら?」

鈴は今一つピンと來ていないようだが、闇屬の使い手というのは日本ではもしかしたら初めての例かもしれない。聡史が指摘するように、これは極めて珍しい事例といえる。

「それじゃあ、新しい屬の魔法を練習しようか」

「はい、聡史君、どうかよろしくお願いします」

鈴の新たな訓練方針が決定した。新たな屬式を自分のものにしようと決意する鈴の目はキラキラにっている。

それとは対照的に、パフェを食べていた時の輝きの一切を失って、死んだ魚の目をしている明日香ちゃんの姿が、聡史の印象に強く殘るのだった。

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