《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》29 新メンバー
ようやく事件が解決して……
ピンポーン
特待生寮のドアホンが鳴る。
「は~い、お待ちくださ~い」
桜が席を立っていそいそと玄関を開けると、そこに立っているのは予想通りカレンであった。
「おじゃまします。なるほど~… 聞いてはいましたけど豪華なお部屋ですね~」
桜に案されてリビングにってきたカレンの第一聲がこれ。鈴や明日香ちゃんがこの部屋に初めてやってきた時と同様に、カレンは部屋の造りをしげしげと眺めている。
「やっぱりカレンさんもそう思いますよねぇ。私なんか、いつか絶対この部屋に住みついてやろうと狙っていますよ~」
本気(マジ)な顔で明日香ちゃんは主張している。この子は、本當にやらかしかねないから、油斷も隙もあったもんじゃない!
「それよりもカレンさん、今日は本當に危ない所を助けてもらって、ありがとうございました」
「そんなに改まらないでください。當然のことをしたまでですから」
鈴は再びカレンに頭を下げている。もう何回目か本人すら覚えていないが、カレンのおかげで貞の危機を回避できたのだから、何度禮を言っても足りないぐらいだと本心で思っている。
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「それよりも西川さんの神的なショックが心配なんですが、大丈夫でしょうか?」
「ええ、大丈夫です。私ってステータス上の神値が高いので、割とじないタイプなんです。危険を回避できたのであれば、もうその出來事はあまり考えないというか…」
「それならよかったです」
カレンは同としてあのような目に遭った鈴を心から心配してくれていた。もちろん彼なりの別の事はあるにせよ、鈴の心を慮っていたのは事実。
「それよりも今回の事件の扱いですが、皆さんはどうされるおつもりですか?」
カレンはこの點に関しても気になっていた。學院側、もしくは警察に事を伝えて、何らかの処置を講じてもらう必要があるのかを聞こうとしている。
「私はこの拳で怒りを晴らしましたから、鈴ちゃんに一任いたしますわ」
「私も桜ちゃんと一緒ですよ~。スマホの畫像という弱みを握っている以上、この先手出ししてこないでしょうし」
桜と明日香ちゃんの意向は鈴次第ということらしい。暴力行為の主犯と今後の恐喝擔當が揃って同意見なので、話の流れは自ずと鈴に向かう。
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「そうねぇ~… 私自もあまり表沙汰にはしたくないし、今回の件は學院には報告しないで済ませたいと思っているわ」
鈴もひとりの子として騒ぎにしたくはないのであろう。変に勘ぐられても葉もない噂が立つケースだって起こりうるし、周囲から好奇の目に曬されるのはできれば免蒙りたい立場も理解できる。
「やはりそのような結論に達しますよね。み消し工作を済ませておいてよかったです!」
「はて、み消し工作ですか?」
カレンの意見に桜が不思議そうな表を向ける。カレンの意図を図りかねているよう。
「怪我人はある程度治癒しておきました。今頃は目を覚ましている頃だと思います」
「ええぇぇ! なんだかすごい重傷みたいでしたが、大丈夫なんですか?」
明日香ちゃんも桜と同様に、カレンが何を言っているのかサッパリわからない模様。だが鈴は、ようやく気が付いた。カレンが実技試験で披して見せた、あの景を思い出したのだ。
「カレンさん、もしかして回複魔法を使ったんですか?」
「ええ、大事にならないように、最低限の治癒をしておきました」
鈴は、カレンの先々を読んだ心遣いに再び深く頭を下げている。いくら自分を助け出すためとはいえ、桜の暴れっぷりは過剰防衛に問われかねない。
當の桜は、もっぱらその関心事は鈴の口から飛び出た『回復魔法』というフレーズに集まっている。
「カレンさんは、回復魔法が使えるんでしょうか?」
「はい、使えます」
「もしよろしかったら、私たちのパーティーにりませんか?」
いきなりの勧であった。思い付いたら即行が桜の人生哲學なので、現在カレンに向かってそれを忠実に実行している。
実はカレンは貴重な回復魔法の使い手ということもあって、Aクラスの各パーティーから引っ張りだこの立場。時には自由課題の前に爭奪戦が繰り広げられるほどのと表現しても大袈裟ではない。クラスのカースト的には鈴や明日香ちゃんの対極にある恵まれた立場といえよう。
だが、カレン自にも悩みがあった。あまりにカレンの爭奪戦が激化して、いつの間にかクラスで協定が結ばれていた。それは、日替わりでカレンは違うパーティーに所屬するという容で、本人の希などまるっきり無視された狀況。クラスに掲示されているカレンダーにはその日カレンが所屬するパ-ティー名が記載されており、なんとも都合よい存在として使い回しにされていた。
このことはカレンがクラスの生徒たちから距離を置いている一因にもなっている。求められているのはカレン自ではなくて、回復魔法という特殊アイテムのような扱われ方をされているのだから、さもありなん。
したがってカレン自は、いきなりの桜からの勧にどのような意図があるのかやや斜に構えてしまう。だが桜は、そのようなカレンの面での葛藤などお構いなしにグイグイ突っ込んでくる。
「カレンさんなら話も合うし、誰かを助けるために一生懸命になってくれますわ。信頼の置ける人だと私の勘が告げています」
「カレンさん、あま~いデザートは好きですか? 良かったら私と桜ちゃんと一緒に放課後の食堂でデザート同好會に參加してもらいたいですよ~」
明日香ちゃんも桜に負けないくらいにグイグイ押し込んでくる。デザート仲間が増えるのは、大歓迎らしい。
多強引ではあるが、このような心のこもった勧をけた経験はカレンにとって初めてであった。桜と明日香ちゃんは、カレンを一個の人間として見てくれているということが自然に伝わってくる。
當然カレンの心が大きくく。
「皆さんが良かったら、加させてください」
カレンがこのように返事をするのはさも當然のり行きであろう。そこに鈴が口を挾む。
「私もカレンなら大歓迎よ。何よりも私の恩人だし。それはそうとして、聡史君の意見はどうするのかしら?」
「鈴ちゃん、お兄様でしたら、きっと大丈夫ですわ。カレンさんのような人は、お兄様は大好き… おっと! 誰か來たようです」
桜が言い掛けた微妙な言い回しに、鈴の目がギラリと騒なを放ち、明日香ちゃんの好奇心レーダーがピクリと反応する。その時…
ピンポーン
ドアホンが鳴って桜が玄関に迎えに行くと、そこには予想通り自主練を終えた聡史が立っている。
「お兄様、お帰りなさいませ」
「ああ、桜、ただいま」
兄妹が連れ立ってリビングへとやってくると、聡史の目には金髪碧眼の見慣れない人が飛び込んでくる。
「ああ、お客さんだったのか。きれいな人だな。誰かの友達か?」
「聡史君、ちょっとお話ししましょうか。私は再會してから一度も聡史君に『きれいだ』なんて言われたことが無いんですけど、その辺に関してじっくり意見を聞きたいわね」
鈴の背後からは、長を越える長さの刃渡りを誇示する大鎌を持ち、表のないドクロのような顔をした不気味なスタンドが浮かび上がっている。どうやら死神的な屬のようだ。
「お兄さん、お兄さん、やっぱりカレンさんのような金髪人が好きなんですか? は大きい方がいいですか? 一言! 一言コメントをお願いしますよ~」
明日香ちゃんの背後には、スキャンダルに群がってはマイクを突き付けて掘り葉掘り探ろうとする、蕓能レポーターのようなスタンドが浮かび上がっている。こちらは最後の最後までしぶとく食い下がるハイエナ的な屬の模様。
聡史が何気なく放った一言は、鈴のジエラシー地雷と明日香ちゃんの好奇心地雷を見事なまでに的確に踏み抜いていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれぇぇ。何が何だか全然わからないから、ちゃんと説明してくれぇぇ」
「そうね、私も聡史君の口からちゃんと説明してもらいたいわ」
「お兄さん、全國の視聴者が納得するように説明してください。一言! 一言お願いします!」
聡史の言い方が、火に油を注いでしまっている。手が付けられないカオスな狀況だ。
カレンは空気を読んで、嵐が過ぎるまで口を噤んでいる方針を決定している。この場で自分が何か言ったら、余計燃料を供給するだけだと察しているのだった。
「聡史君、説明早よう」
「お兄さん、どうか一言!」
二人から同時に突っ込まれてきが取れない兄を見かねて、ようやく桜がき出す。
「鈴ちゃん、どうかご安心ください。お兄様は、小學校の頃のアルバムをアイテムボックスの中に大切に保管して、時折取り出しては眺めていますわ」
「あら、そうなの。聡史君、そうならそうだと早く言ってよ。もう、照れ屋なんだから!」
鈴さん、デレるのが早すぎ!
「桜ぁぁぁぁぁ! お前は何で兄のプライバシーを知っているんだぁぁぁぁ」
「お兄様! もっと際どいお話をいたしましょうか?」
「い、いや… きっと俺の気のせいだから、何でもないぞ」
一桜は、兄の何を知っているというのだろうか? これ以上聞き出すのが怖すぎて、聡史は追及できなかった。兄は妹の前に敗れたり…
「明日香ちゃん、冷蔵庫に杏仁豆腐がっていますけど食べますか?」
「桜ちゃん、何という隠し玉を緒にしていたんですか! もちろんいただきますよ~」
こっちはこっちであっさりと食べの前に陥落している。桜にとってはチョロすぎる手合いだった。
ようやく平和を取り戻したリビングで、改めてカレンの紹介が行われる。
「こちらは、私と同じAクラスの神崎カレンさんです」
「カレンです。どうぞよろしくお願いします」
「桜の兄の聡史です。こちらこそよろしくお願いします」
鈴の紹介によって、初対面の二人が挨拶をしている。そこに桜が…
「お兄様、こちらのカレンさんに私たちのパーティーに加していただけるようお話をしているのですが、お兄様のご意見はいかがでしょうか?」
「鈴と明日香ちゃんは、納得しているのか?」
「「もちろんです」」
「だったらいいんじゃないのか。三人が見初めた人なら俺はいいと思うぞ」
こうして、カレンのメンバーりが決定された。
「それでは、明日から新制でダンジョンを攻略しましょう」
「皆さんの力になれるように、頑張っていきます」
こうして新たなメンバーが加したパーティーは、カレンを含めた五人で改めて紙コップにった麥茶で乾杯するのだった。
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