初めまして、響太C．L．と申します。

これは自分が考えた多くの企畫案を本格にストーリー化させみたいと思って、ネット連載を決めました。

更新頻度は週に一回で遅いですが、よろしくお願いします。

また、この作品はカクヨムでも同行連載中です。

アトランス界。

ここは地球(アース)界から遙かに遠い世界である。澄んだ空に、赤と青の、二つの星が浮かんでいた。大地は雪を被り、ピラミッド狀や円錐形をしたタワーの屋や木々も、白銀の上著を著ている。

命は凍り、春の訪れを待ちみ、眠りつづけるような季節だった。

上空を彼方から、蒼い乗りものが飛んでくる。龍の角とエビの、サメの尾をモチーフにした乗りものだ。そこに、ボウズ頭の赤い髪に、ワンレンズのサングラスをかけ、左耳に金のイヤリングをつけた男が乗っている。休暇が終わり、南國から戻ってくる様子の男は、ホワイトのＴシャツと海パンをにつけていた。

後ろから、もう一臺の乗りものが追いかけてくる。 その車にはタイヤがなかった。それはローマ時代の戦車と同じ仕組みになっており、浮遊エンジンが取りつけられている。その先頭では明なをした青い鳥が翼を広げており、車を引いている。水晶ガラスでできた天井が後部に収納されたそのオープンカーから、が男に聲をかけた。

「トヨトミ先生、新學期はまだ先なんですから、そんなに早く學校へ戻らなくても、もうしヘストロティアのリゾート地でゆったりと過ごせばよろしいのに」

「ハハ、新學期にうちのクラスに転生が來るから、王のように別荘でのうのうと過ごすわけにはいかないぜ」

男の名は臣義毅(よしき)、セントフェラスト學園のハイニオス學院で、心苗を教える先生である。２年Ａ組の擔任だ。

「あら、最終の転校面接審査の結果はまだ発表されてないのでしょう？」

「あの子ならきっとうちのクラスに來ると思うぜ」

「どんな子です？わたくしはピノロ先生からお伺いしましたが、あの子はたしか、地球(アース)人の巫ですのよね？」

彼はロナリ・メデュザク・ヘストロン９世。ヘストロティア王國の第三王だ。琥珀の目、薄い青のと短く鋭い耳。肩までびたイソギンチャクの手のような髪は、先ほどまで赤だったが、今は空のような青をしている。しずつ束ねられた青い髪は、それぞれの束の先に蛇の飾りがついている。上半にまとった白い貫頭は、元に寄せられ、左右に三つのフリルを作る。袖口は両肩から大きく開き、腹と腰には金屬製のコルセットをはめている。裾の長いマーメイドスカートはけた素材でできており、その先からなめらかな青いがのぞいていた。首につけたオリオンゴル金屬の飾りは、王の気高さを表す。

ロナリ王は王でありながら、子ども好きが高じ、聖學園のアイラメディス學院の教師も務めていた。

「ああ、凄く可らしい子だぜ」

「あの子の屬は士(ルーラー)とお聞きしました。なぜわざわざ闘士(ウォーリア)を育てる學院に転するんでしょう？」

「ハハ、どんな心苗でも構わねえよ、俺の教え子になるからにはたっぷり可がってやるぜ」

「トヨトミ先生、また変なイタズラをして泣かせちゃいけませんよ？」

「わざわざうちに転してくるような子だ、大丈夫さ。なんでも試し、なんでも経験する。それが俺の教育方針だ。泣くことも、怖れることも、笑うことも、怒ることも、驚くことも、なんだって膽力とにつながる」

「まったく。一瞬で１０００人のＡ級をまとめて倒す『羅漢王』とまで呼ばれた英雄・トヨトミが、よくまあ、心苗の長を考える先生になったものですね」

「そんな昔のこと、もう忘れたぜ」

義毅が縦レバーを強く捻ると、またスピードが上がった。ブースターが発的に吸い出すと、凄まじい加速を見せる。後を追うロナリ先生がにを放ると、彼の乗っているマウント車も速度を上げ、ついていった。

・ ・ ・

イトマーラ。アトランス界にある三つの種族の一つ、タヌーモンス人が數萬年をかけて造ったフェイトアンファルス連邦國の一つである。そこに聖學園がある。面積およそ５５２８平方キロメートル、イトマーラ領地の七割が學園のキャンパスである。

イトマーラ北部のキャンパス―フミンモントル學院。他の學院と比べ、自然との融合が考えられたキャンパスだ。ある教室棟は山の巖や樹齢幾億年と言われる神木の中に建設され、建も粒子合技で造った自然生材料の巖と木材であり、周りの自然環境と同化するように造られている。

フミンモントル學院の行政棟―メファサザーズは、一枚巖の下に建設されていた。巖には厚い雪が被っていたが、巖のに水晶壁で造った窓からは日差しが通り、中にある円形の聖堂を照らしている。

聖堂の中央には床より３０センチほど高さのある円形の臺が置かれている。周りには１２の座席があり、半分はだれも座っていない。

臺の上には、一人のが立っていた。は栗のロングの髪をハーフアップにまとめ、巫服を改良した赤と白のボディスーツを著ている。ボディスーツの襟から裾にわたって刻まれたカラフルな紋様は、その上に著た明のウエストコートからけて見えていた。腰にはベルトをはめ、赤いミニスカートには黒と金の紋様がっている。つややかな足には、下駄型のブーツを履いていた。

座席に座っている６人は、転校審査をけ持つ教諭陣だ。そのうちの一人、フードのついた紺のマントを著て、耳には翼がび、テナガコガネの金のイヤリングをつけた男が、理知的な口調でに問いかける。

「Ｍｓ．カンザキ、もう一度聞く、本當にフミンモントルからハイニオスへ転する気ですか？」

教諭たちに向かって、は真剣な顔で頷いて答えた。

「はい、私はハイニオス學院に転校したいです」

金の八面顔のヘルメットに全金のアーマーを著た男が不機嫌そうに言った。男の額の真ん中には、第三の目があり、を見據えている。

「何故だ？お前の才能は我がフミンモントルで研鑽するべきだ」

「將來の結婚相手と同じ修行を経験したいんです」

「愚か者、そんなくだらない理由で転しても、散々な目に遭うだけだぞ」

男が悪態をつくと、救いの手を差しべるように、一人のが笑みを浮かべて話しはじめる。そのは、頭に４本の水晶質の角を持ち、カールのきつい緑のロングヘアーから、鋭く長い耳が突き出している。の著ている黒いマントには、不思議な紋様がっていた。

「その思い、わたくしには理解できます。わたくしたちの種族にも、似た考え方があります。この世の命全に平和をもたらすためには、ほかの種族の霊の長を促す必要があるのです。そのために、自ら他種族の者とパートナーとなり、結ばれるということですね。そういえば、地球人には政略結婚なんていう言葉もあるのでしょう。それと似ているような……いや、それはし違いますかね」

アドバイスを聞いて、八面顔のヘルメットを被った男が反論した。

「しかし、彼はまだ若い、自分の天賦の才を開発するこの大事な時期に、他人のために自己犠牲するなどという考えは愚か者のすることだ」

頭の両側に白い羽が生えている金髪のは優しい口調で言った。

「まあまあ、プルザス學院長。そんなに怒らないでくださいよ。彼自の意志を抑えるのはよくないと思います」

彼ののほほんとした態度はさらに男の頭にをのぼらせる。

「ヘルミナ！お前はこんな逸材の心苗が他校へ転するというのに、よく落ち著いていられるな？！そもそもお前が彼の指導擔當として、転の手続き前に止めるべきだったのだ」

「まあ、彼は休學ではありませんし、例え他學院へ転校したとしても、セントフェラストの心苗(コディセミット)にはちがいありません。私は彼の擔任として、彼自らの意志を尊重したいですよ〜」

「彼の才能なら、本學院の生徒會の柱にもなれる。我が學院の優等生が他校で凡才扱いをけるなど、許されぬ」

プルザス學院長の言葉を聞き、は思いが揺るがないように返事をした。

「プルザス學院長が心配することはわかっています。でも、私はただあの人のことを知りたいというだけで転校を決めたわけではありません。素質の鑑定によれば、私は闘士の素質を３割、持っています。その素質を生かすことができれば、もっと違う可能が広がるでしょう？」

「自分の本當の才能を捨て置いて、サブスキルを習得するとは心しないぞ。Ｍｓ．カンザキ」

「いいえ、私は自分の才能を試したい、全ての可能に手をばしてみたいんです」

ヘルミナは彼を擁護するように言った。

「神霊(ドルソート)系士(ルーラー)の彼は霊と悟が高い、自主修業なら問題ないと思います。それは、鳥が飛び方を忘れないことと同じですね」

の強い意志を認識すると、頭に４本の、水晶質の角がびている教師が興味を持ったのか、笑顔で訊ねた。

「Ｍｓ．カンザキ、あなたはどうしてそこまで転校にこだわるのですか？フミンモントルの心苗として、ハイニオスの選修スキル単位の授業をけることもできるでしょう？それでは足りないということですか？」

は頭を振って、はっきりと言う。

「違います。一つ、二つの授業をけて闘士たち(ウォーリアズ)の全てを知ったようなことを言うのは、中途半端で、失禮なことだと思います」

最初に口火を切った、紺のマントを著た男は、右側に座っている熊のように大きな男に向かって言う。

「ピノロ先生、鑑定導師としての、あなたの意見を聞きたいです」

ピノロ先生は、片眼鏡をし手でり、大きく明るい聲で言った。

「わしは彼の意志を尊重するべきじゃと思う。彼は教養科目の績も良いし、転校試験も合格した。彼には転校資格がある。プルザス學院長は凡人扱いなどと言うたが、フミンモントルでも間違いなく、エリートの位置を取れるじゃろう。わしには心苗が安易な環境で育つより、日々、ハードな試練をける方がいいと思っておる。しかし、それを乗り越えるかは彼次第じゃ」

「鶴見學院長は？」

鶴見學院長は、齢１９３で長い白髪をしていたが、見た目は白い著を著たのようだった。は見た目にそぐわない淑やかな姿勢と慎重な口調で言った。

「神崎さん、あんたの実技試験の結果を見ると、実力があるのは認めよう。しかし、うちの學院のバトル頻度は他の學院より倍くらい多いんじゃ。日々、鍛錬と手合わせを繰り返し、バトルの績を評価する。あんたの素質は闘士(ウォーリア)と比べると遙かに及ばない。もしうちのハイニオスに來ると、あんた想像以上にしんどいじゃろう。二年生一學期は同級生たちの鍛錬の強度レベルについていくのでいっぱいじゃろうな」

「はい」

「ついていけなかったとき、あんたは皆から突き放され、はボロボロになり、神的にも甚大なストレスをけるじゃろう。それでも耐えられるかのう？」

「むところです。先生たちの言っていること、分かっているつもりです。ハイニオスの鍛錬はきっと辛いでしょうが、私はそれを自分の試練として、けて立つつもりです」

「Ｍｓ．カンザキ。どんなにハイニオスが辛くとも、二度とフミンモントルには戻れないのだぞ。お前がここで、どんなに良い績を殘していてもだ」

「私は自分の選択を後悔しません。辛くても、きっと乗り越えてみせます」

「彼はもう決心を固めたようだな。本質と異なる學院で修行をする心苗はないが、いないわけではない。彼の可能を完全に開発するためには、この選択も悪くないかもしれない。プルザス學院長。自慢の心苗が険しい道を選ぶのだから、良き指導者として、素直に祝福してはどうだ。そのほうがかえって、彼が輝きを増す助力となるだろう」

「ふん、ピノロ先生に言われずともわかっておるわ。覚悟の上なら俺は何も言うまい。Ｍｓ．カンザキ。ハイニオスでも、しっかりな」

「はい、頑張ります！」

紺マントを被る男は他の教諭に訊ねる。

「他に異議のある方はいますか？」

頭に４本の水晶質の角がある教師は納得の笑みを浮かべて返事した。

「わたくしはありません」

白髪のロリ學院長も答えた。

「わしも異議なしじゃ」

「ヘルミナ先生は？」

「私も異議ありません。大好きなのぞみちゃん、先生は空いてる時間があれば見に行きますね」

ピノロが快活に言った。

「わしも異議なしじゃ。これからもあなたの活躍に期待するよ。カンザキさん」

プルザス學院長の顔が寂しそうになって、暗黙のうちに認め、許した。

「では、Ｍｓ．カンザキ。面接審査の結果は３日後に教務部から正式通知を送ります」

は教師たちに笑顔を見せ、元気いっぱいに言った。

「ありがとうございます。先生たちの期待を裏切らないよう、一生懸命、頑張ります。では、先生方。創造主の霊と叡智を汝に與えよ」

い表だったプルザス學院長が、巖石が溶けるように笑みを浮かべた。一同はの言葉に返して言った。

「汝、常に源気(グラムグラカ)の加護を」

は教師たちに一禮をすると、踵を返し、円形の面會室から去って行った。

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命は一から始まり、二に分かれ、二が四となり、そして無限な可能へと広がっていく。それぞれの命は數多の道を拓き、やがて、それぞれの思いはすれ違っていった。すれ違いから生まれた爭いの種は大きな衝突を何度も起こし、そして、咲いた花が散るように、數えきれないほどの命が失われた。

しかしあるとき、英雄が現われ、爭いに終止符が打たれる。平和が訪れたとき、彼らの名は悠久の座として、歴史に刻みこまれた。

つづく

新編小説を連載始めました。

元々は失われた事件録（ロストメモリーズクロニクル）のBルートですが、登場人がそれぞれが多い、また、ストーリーそれぞれ伝えたいことやコンセプトが違いますので、２部小説を分けました。

神崎のぞみを主人公にして、弱い主人公が長の語です。

二つのストーリーの進行ほぼ同じ時間軸で並行展開していますが、時間系を見ると、こちらの始めはちょっとさかのぼりです。

こちらの源（グラム）の修練方法や源使いの四つの質など報について、もっと理解できると思います。

失われた事件録（ロストメモリーズクロニクル）二部小説の同時連載を予定です。これからも宜しくお願いします。