《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫11.Truth or dareゲーム ②

また破廉恥な質問をされるものと思っていたのぞみは、三秒ほど靜止し、息を整えて答える。

「私は神霊(ドルソート)系士(ルーラー)ですよ」

士(ルーラー)には、空間にを作る領域(テリトリー)系、小さなアイテムや裝備、武を作る錬(フォーイング)系、大型の飛行艇や戦闘ユニットの機元(ピュラト)などを作れる無機(イノガンス)系、空想のや植などを作れる生(オガニズム)系、そして、霊や神、悪魔、魑魅魍魎などと契約し、それらを現化させる神霊系の五つの屬がある。

闘志に燃えるのぞみは質問に答えるとすぐ、義毅に向き直った。

「先生、次の挑戦を!」

「よし、いつでも來い」

次の挑戦で負け、答えられないような質問をされたならば、のぞみは上ぐしかない。それだけは避けたかった。勝者にしか指名権がないため、のぞみはとにかく義毅を討ち取ることだけを考える。とはいえ、教師を相手に心苗(コディセミット)が一本を取るというのは生半可な覚悟では葉わない。逃げ場のないのぞみは戸い、きが取れなくなっていた。

(どうしよう、このままじゃ……)

義毅はのぞみの表に深刻ながあるのを察すると、へらりと笑みを浮かべた。

「神崎、ここは普通の剣道場とは違うんだぜ。今までお前がセントフェラストで學んだこと、につけた技をきちんと思い出せ。ただの剣でハイニオス學院の教師に向かっても勝ち目はない!」

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「今までに學んだことですか?」

(今までこの學園で學んだスキルと、生家で習得したあの剣法をここで……?でも剣が一本しかない。いや、やってみる価値はある……!)

「やってみます」

義毅(よしき)からのアドバイスを真面目に聞きれ、のぞみは深呼吸をする。戸いや張から波立っていた気持ちが凪いできたので、ソードを左手だけで持つと、下段の構えを取る。集中を高め、源を発すると、が椿を纏った。全を纏う源を、今度は両手に集める。

突然の源の上昇に、義毅の趣味の悪い遊び程度にしか考えていなかったクラスメイトたちは目を白黒させた。ゲームに無関心を決めこんでいた心苗たちも、上昇した源の気配に影響をけ、教室の全ての者が、のぞみに目を奪われる。

綾はのぞみの構えを見て思わず聲を発する。

「あの子、左利きやったんか?」

ルルは綾とは対照的に、構えを見て笑った。

「何、あの構え?多はあると思ったけど、戦いのセンスは皆無ね。ソードの構えなんか変えたところで戦況が変わるわけないじゃん。スピードではクラストップの不破君ですら、トヨトヨ猿の瞬発力には勝てないんだから」

のぞみの構えを分析しながら、ライは薄笑いを浮かべた。

「いや、あれは、構えなしという型だ。剣の経験者でもなければ知らないだろうが……」

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あとを引き継ぐようにルルが言う。

「たいして強くもないのに、トヨ猿相手にいきなり上級剣なんて、返り討ちに遭うに決まってるじゃない」

教室の反対側からゲームを見ていたクリアは、甲高い聲で笑った。

「ふぅん、これがあのの全力ってわけ?」

クリアとともに観戦していた蛍(ほたる)も、苦々しい表で罵倒する。

「あいつ、この程度の実力しかないくせに、私の闘競(バトル)を臺無しにしやがったのね。ああ!何度思い出してもムカつく!」

ステージの上の義毅は楽しそうだ。その表はまるで、ようやくのぞみの戦闘準備が整ったことを喜んでいるみたいだ。

「いいぞ、神崎。俺と渡りあおうってんなら、その狀態をキープしなくちゃ話にならねぇ」

「はい、先生!」

もうあとがない、という今さらになって、のぞみは義毅がこのゲームに期待するものに気づいた。のぞみは期待に応えるべく、片方の足を、ステップを踏むようにし前に出す。そして、義毅と目を合わせた。のぞみは攻撃を限界まで我慢する。

じりじりと張が高まったとき、遂に義毅が突撃してくる。のぞみは避けず、むしろ前に踏み出す。右手に集めた源を円盤狀に形すると、義毅の刺撃を下方に押さえる。義毅のが傾き、構えが崩れた一瞬を狙って、義毅がソードを持つ左手を打った。

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義毅のソードが音を立てて床に落ちる。

はじめ、何が起こったのかわからなかったクラスメイトたちは、一瞬ののち、驚きの聲をあげた。

「うそ!」

「あいつ、トヨトヨ猿に勝ちやがった!」

「剣まで振り落としただと?」

見事に一本を取り、のぞみは達を得た。満足げな顔で義毅に聲をかける。

「先生、今のは小手に當たりましたよね?」

のぞみは力盡くでなく、自の持てる力をうまく使って勝ち抜いた。義毅の頭の上には、手が花のように立ち上がっている。

義毅は意味深な笑みを浮かべながらソードを拾う。

「やるじゃねぇか、良い一本だったぜ、神崎」

「先生、では私からの質問をしてもよろしいですか?」

「いいぜ、言ってみろ」

ステージの下で観戦している心苗たちは、とうとう一勝を決めたのぞみの質問に興味津々だった。のぞみは人差し指を口に當て、し考えるような仕草をしてから、ニッコリと微笑むと質問を口にする。

「先生は結婚されていますか?」

丁寧な言葉遣いとは裏腹に、教師のもっともプライベートな報を聞き出すのぞみに、クラスメイトは何事かと思った。思いがけない質問に、思わず転んでしまった者もいた。

子たちはのぞみの素樸な振る舞いを見て苦笑する。

「何あの子、純粋かよ」

「純粋というか、天然というか、まあ、どっちでもいいわ。あの程度の源(グラム)じゃ、うちの戦力にはなんないわね」

「でも、先生に勝ちましたよ。私は凄いことだと思います」

藍(ラン)は素直に心して言った。

修二がステージの下からのぞみに向かって話しかける。

「おーい、神崎。トヨトヨ猿のゲームに熱中しすぎだぞ~」

クラスメイトたちの反応を見て、のぞみはきょとんとして答えた。

「そんなにおかしな質問でしたか?先生の質問よりずっと良識的だと思ってますが」

義毅はたいして気にした様子もなく、堂々と答える。

「ハハ、先生はなんだって答えるさ。結婚はしてない。ただ、同居しているはいるぜ」

「なぜですか?結婚されるには良いお年と思いますが?」

「神崎はガキだなぁ。結婚っていうクソつまらねぇ契約に縛られるなんて、まっぴらゴメンだぜ。俺は死ぬまで現役の遊び人でいたいからな」

「結婚はつまらないのでしょうか?」

「ほう、神崎。お前、俺に惚れたか?」

「ありえません」

だけでなく、同や違う種族と結婚し、家族になるというのはよくあることだ。それだけでなく、気の合う複數の男が家族となり、一つ屋の下で子どもを育てるという家庭もある。

ともに経済的に獨立しているため、亭主関白やヒモといった上下関係がなく、心で必要とする者同士が結ばれる。聖學園(セントフェラストアカデミー)にはホミというパートナー制度があるが、古の時代の結婚のように、一生をともに添い遂げるというような観念はほとんどない。そこには、タヌーモンス人の壽命が地球人よりも長いことも関係している。人生そのものが長い分、仕事や生き方の自由もあり、子どもが獨立したあとの人生も長い。若いうちに子育てを終え、第二、第三の人生を歩むという者も多いのだ。

それを考えれば、30代後半の義毅にパートナーがいることと、結婚をしないということは矛盾しない。社會的に見ても、義毅が特別変わっているというわけでもなかった。

のぞみの勝利を、ライは楽しげに分析し、誰にともなく話しかける。

「源の強度はまだ弱いけど、それでもトヨトヨ猿に勝つんだから、運だけではない何かがあるんだろう」

ルルは苦笑して評価を下す。

「殘念だけど、さっきのはまぐれね。たとえスキルが通じても、あんな弱々しい源の攻撃じゃ、相手になんのダメージも與えられないわ」

ナイフを手で弄んでいた年は、義毅に勝ったときののぞみのきを反芻しながら、面白いパフォーマンスを見せてもらったというように拍手をした。

「彼、なかなか面白いねぇ。あれで本當に全力だったのかな?」

アイスパープルの髪のが海草のように波打つミステリアスなその年は、モクトツ・コミル。鋭い目で、ステージ上ののぞみをじっと見つめている。

「何が言いたいの?コミル」

ルルが振り向き、コミルに問いかけた。

コミルは含みのある笑みを浮かべ、ルルに答える。

「言ったとおりの意味だよ。彼に関する報は乏しいけど、ボクの勘がそう言ってる。このクラスの心苗(コディセミット)は、彼のおかげで退屈せずに済みそうだねぇ」

コミルの拠のない賞賛に、ルルは理屈で反論する。

「でも、さっきの源、強度的にはクラス50位のはつねちゃんより弱いわ。あの程度の源でうちのクラスにって、あの子やっていけるのかな?」

「悪いけど、君の所見とボクの勘じゃ、比べものにならないよ、ドイルさん」

ルルは苛立ちをしも見せずに言い返す。

「萬年20位のあんたの説法なんて聞くに値しないわ」

「お好きにどうぞ」

はじめからルルとやり合う気などないコミルは、教室の壁にってある的に向けてナイフを振るう。ドンッと鈍い音がして、的の中心に鋭い刃が刺さる。コミルはその一瞬だけ、狼のような目つきで殺意をらした。

クラス中の心苗がめいめいに話し合うなか、綾(れい)は上の空でのぞみを見つめていた。

綾は、義毅との挑戦でまだ一度も勝っておらず、恥ずかしい思いだけをさせられてきた。ただの迷子でしかなかったのぞみが、闘競の邪魔をしたり、たいして強くもない源で義毅に討ち勝つ姿がだんだんと印象に殘った。

教室の空気がざわついているのをじながら、義毅(よしき)はのぞみに問いかける。

「さて神崎、続きはどうする?」

「勝った人は、代するための指名権があるんでしたよね」

「そうだ。お前が指名できればの話だがな」

のぞみはステージの上から教室を見回す。名前のわからないクラスメイトたちが、いろんな思で自分を見ている。どうしよう……と悩んでいたとき、ようやく知った顔が一つ、見えた。

「あ!あなた、今朝の方ですよね!」

義毅はのぞみの話しかけた方を見て、それからのぞみに向き直った。

「神崎、もう知り合いがいるのか。意外にコミュニケーション能力が高いんだな」

「朝、道に迷ってしまったとき、案していただいたんです。たしか、風見(かぜみ)綾さん、でしたよね?」

生が綾を指名するとは思わず、教室にひそひそと、新たなざわめきが響く。

深刻そうな表の綾に、のぞみは困ったように微笑んで続ける。

「急な指名ですみません。失禮は承知していますが、ほかのみなさんの名前をまだ知らないんです。代していただくことはできますか?」

まだ一度も義毅を負かすことができない綾だが、クラス7位であるという自負が、斷るという選択肢を奪っていた。綾は立ち上がる。

「ええよ、代わろか」

足で床を蹴り、直接にステージに飛び上がる。綾は張を殺すように言った。

「ソードセット、貸しや」

「はい」

のぞみはヘルメットをぎ、ソードと一緒に綾に渡す。

綾は子供だましのソードセットを、アホくさ、と思いながらもけ取り、ヘルメットを被った。

ソードを構えると、士気を高めるように義毅に向かって言う。

「エロネズミボウズ……、今日をあんたの命日にしたる」

綾は急激に源気(グラムグラカ)が上昇させた。教室の空気が対流反応を起こし、綾を中心に竜巻のような強風が吹きあがる。突風に煽られ、の重心が崩れたのぞみは、膝を折ってその場に屈みながらぶ。窓が揺れている。

「きゃぁっ!!この源、一なにごとですか!?」

「部外者はさっさと降り!」

「は、はいっ」

憤怒のに染まる綾の顔を見て、のぞみは凄まじい圧迫から逃れるように慌ててステージから飛び降りる。

綾は両手でソードを持ち、柳の構えをする。源をソードの刃に集中させている様子を見ながら、義毅はいつものようにヘラヘラして言った。

「なんだなんだ、風見も俺のに興味ありか?」

「黙れ!この変態ネズミボウズ!!」

綾は思いきり両手を振り、刃に集めた源気(グラムグラカ)の衝撃波を義毅に向けて撃ち出す。

義毅は左手のみという條件のまま、ソードを一振りして綾の攻撃を打ち消す。続けて綾は力強く刺撃を繰り出したが、それもまた、義毅の左手がけ止めた。

「おぉ、風見。しばらく會わないうちにまた源気を上げたな。だが、腕筋がまだ未みたいだぜ!」

足を踏ん張り、腰から下の力だけを使って、義毅は片手で綾を押し返す。

綾はステージから振り落とされないように両足にブーストエンジンのように源(グラム)を発し、ステージに著地した。すぐに方向転換し、再度、義毅に向かって跳びこむ。義毅はにやにやと笑いながら綾の太刀筋を見切り、サッとめた。義毅の唐突なきに、くすくすと笑う心苗もいた。

「ハハ、ハズレ~」

綾は戸いと苛立ちに翻弄されていた。

「クソ、ふざけたマネばっかして!」

いくら斬りかかっても、義毅は綾の剣筋を全て見破った。一見ふざけたダンスのように見えるきで、何度でも、確実に回避する。見応えのある二人のバトルに白熱した心苗たちが野次を飛ばしている。

のぞみはステージ下に群れているクラスメイトたちからし離れ、機に寄りかかりながら著を整えていた。靴下、靴を履き、ベルトを締め、最後にスカーフをリングで引き締める。

「おい、お前スゲーな!トヨトミに勝ったやつは、不破(ふは)とお前だけだ!」

聲をかけてきた四つ腕の男を見上げ、のぞみは返事した。

「ありがとうございます。あなたは?」

ヌティオスが左手のうち、一本を差し出し、友好的に言った。

「ヌティオスだ、よろしく」

のぞみはヌティオスの右手が折れているのに気付きギョッとしたが、取り繕うようににっこりと微笑み、左手を差しだして握手した。

「よろしくお願いします」

「今朝、森島の闘競(バトル)でお前を見かけた」

のぞみはヌティオスのその言葉を聞くまで、ほかにもあの場面に立ち會っていた人がいたなんて、しも知らなかった。

「あはは、お恥ずかしいところを見られましたね……」

「いや、カイムオスのハンマーをけ止めたのも、凄いと思うぞ」

「いえ、バトルの邪魔をするなんて、あってはならないことです……」

「俺には、人間どもの爭いがよくわからねぇ。でも、お前に実力があることは、ちょっとばかしわかったぜ」

「とんでもないことです」

「お前、あのとき、どんなを使ったんだ?」

カイムオスのハンマーを防いだときのことを言われているのだとわかったのぞみは、思い出しながら言った。

「あっ、あれは、周りにあった巖と私の源を合して、盾を作ったんです。盾といっても、まだまだ強度が足りないようでしたけど」

ヌティオスは説明されてもどういう理屈なのかわからなかった。ただ、じたままに言った。

「それが士(ルーラー)のスキルなのか?すげぇな」

つづく

ここまで読んでくれてありがとございます。よろしければ想を貰えば幸いです。

引き続きも連載アップロードします。

よろしくお願い致します。

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