《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫27.・アクションスキル強化演習 ①

二日後の晝頃。青空の下、やわらかな日差しが、宙に舞う塵狀の氷の花を照らしている。建り口には垂直にそびえたつ巨石が六本並び、両側には男の英雄石像が鎮座していた。男は勇猛果敢な、は慈悲に満ちた微笑みをもって、後輩である心苗(コディセミット)たちを見下ろしている。

ここは、力強化訓練施設である。赤の武服を著たA組のほかに、青と橙のクラスカラーの武服を著たB組、D組の心苗たちも集まっている。

彼らの目の前には半徑550メートルの広野があり、白い石板が地面にめりこんでいた。広野の上空には切稜立方の水晶石が浮かんでいる。花のようにしく作られたこの十二面の石は、施設のコントロール核だ。

施設の外周は緩やかな斜面に芝生を生やしており、芝生の際を囲うように水の流れがある。

「私は皆さんの力強化授業を擔當する、アーサ・ルフィンオット・レンドオーガです。これから一年間よろしくお願いします」

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親切なスポーツマン然とした口調のその男教諭は、アマレットのような琥珀のショートヘアにバランスの整った筋を持ち、薄い小麥をしている。服は軽裝で、Tシャツに道著のズボンを穿き、両腕には金屬のアームを裝著していた。

「この授業の目的は、君たちの能力の強化です。ケガや調不良のときは無理に講せず、休んでも構いません。ですが、授業をけるのであれば施設を存分に活用し、さまざまな訓練にチャレンジしてください。この授業を通して、今の自分よりも高みへとレベルアップしてくれれば、私も指導教諭として嬉しく思います」

白い歯を見せるアーサの爽快な微笑みと親切な態度に、子心苗たちは魅了され、頬を赤く染める。

「うわぁ……、アーサ先生が力強化授業の先生なんて……」

「先生ホントに素敵よね。心臓止まっちゃいそう……」

「あたし、アーサ先生のためなら、どんな難しいステージでも乗り越えてみせるわっ!」

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の貴公子】と呼ばれるアーサは、男問わず、心苗それぞれに最善のアドバイスをすると有名だ。子心苗の多くがその優しい面立ちと的確な助言に心奪われ、憧れている。

「では早速、今日の訓練コースを作りましょう」

アーサがコントロール核にれると、球の機元端(ピュラルム)に鍵盤のようなディスプレイが展開した。畫面上にはたくさんの強化施設モジュールのファイルが保存されている。アーサは街を造るシミュレーションソフトのようにそれらをり、多重な訓練施設を組み合わせていく。

下に落ちれば沼が広がる、わずか幅10センチの平衡木橋。10メートルの深さの峽谷と、その両端の崖。クライミングのように礫石が付いた80度の斜面。高低差のある石柱が無數に點在するエリア、水面に石が浮かび、幹と瞬発力で渡るゾーン、遡る水流のプール、回転する巨大棒、ツタの蔓延る50メートルの斷崖。これらを組み合わせた施設の総距離は、平面だけでなく、垂直になるような場所も合わせ、5キロメートルもある。

アーサが施設の立図を承認すると、地面からゴ、ゴ、ゴ……と地鳴りが轟いた。地面から立方の石塊が出で、空へと浮かびだす。それらは分子分解されて、まるで神が世界を創造するかのように、わずか數分のうちに、ただそこに広がっていた広野に、ディスプレイを忠実に再現した訓練施設が築かれた。

のぞみはこれまでに何度もタヌーモンス人が建を組み立てるところを見てきたが、いつ見てもその景は驚きに満ちている。地球(アース)界から來たほかの心苗たちも、故郷にはない発達した技に興味津々の様子だった。

アーサにとっては日常の風景であるこれらの施設を前に、気楽に説明を始める。

「さてと。今日の強化練習メニューはこれです。二年生の君たちにとっては5キロメートルの距離はし厳しいかもしれません。そのため今日はトラップやダミー魔獣は設定していません」

ここでアーサは一度、言葉を切り、心苗たちの反応を見回した。

すぐにでも練習を始めたそうな心苗もいれば、不安げな表で話を聞いている心苗もいる。アーサは全に微笑みかけ、説明を続ける。

「途中で落してしまったらそれぞれのゾーンの始めに戻ってやりなおし、終點までの合計タイムが記録になります。授業が終わるまで何度でもチャレンジしてください。ここまでで質問のある者はいますか?」

すぐさま修二が手を挙げた。

「はいはーい!先生、逆流プールがあるけど、泳げない人はどうしたらいいですかー?」

質問の容に、周りの心苗たちからくすくすと小さな笑いが広がる。

「君はたしか、Mr.フハだね。その場合、別のルートを使って構わない。ただし、水中での移は基礎スキルだ。種族によっては先天的に泳げない者もいるようだが、君は泳げないのか?」

「いや?俺様は泳げるぜ。ただ、泳げない人がいたら困ると思って聞いただけさ」

「それはありがとう、Mr.フハ。さて、ほかにも質問はあるかな?」

修二に続き、のぞみが手を挙げた。その顔には明らかな不安のが滲んでいる。

「先生。3クラスの心苗、全員が同時にスタートするんですか?」

のぞみが転生であることを把握しているアーサは、努めて優しい言葉で答える。

「そうではないよ。準備の整った者からランダムで五人一班としてスタートしてもらう。練習は二分間のインターバルを取り、一班ずつスタートする。ただし、ペースの速い者に追いつかれることは想定しておくと、衝突を避けられるだろう。技量も能力も個人差がある。自分のペースでチャレンジすると良い」

「わかりました……」

説明を聞いてものぞみの心は晴れなかった。転學試験のときは、あくまで一人での験だった。

誰にも邪魔をされない環境だったからこそ合格したのかもしれない。のぞみは多數の心苗とともに施設での練習をすることに不安をじていた。

「せんせー、もう一個、質問でーす」

「なんだい?Mr.フハ」

「飛行系スキルは自由に使ってもいいんですかー?」

「うむ。中間テストのダンジョンでは、先天的に恵まれた格やスキル、學院で習得したスキルを存分に活用して構わない。個人の技量総を試したいからね。ただし、授業ではなるべく、施設が求める訓練を行うことを勧める。筋力の強化こそが、この授業の目的だからね」

「じゃ、俺様は今日、この施設でのベストの績を殘すぜ」

「不破。殘念だが、今日のナンバーワンはこの俺、京彌様だ」

修二に橫槍をれたのは、青みがかった茶髪を後ろにまとめた隼のような男だ。やんちゃな風の彼は、黒須京彌(くろすきょうや)。

「ハハ!面白いことを言うじゃないか?黒須」

京彌は地球界、ヒイズル州の出だ。績評価はA組の12位。修二と同じ日本人の筋であるが、異世界で育った修二にいつも対抗心を燃やしていた。

「ふん。剣では勝てなくても、能力なら負けないぜ」

「アハハ、結果が楽しみだなぁ!」

つづく

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