《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫47.ラトゥニー・シタンビリト

同じクラスの心苗(コディセミット)二名が宣言闘競をするという公表があり、重要な講話もあるはずのこの日のホームルームだったが、A組の教室には義毅の姿はなく、ホームルームは自習に切り替えられていた。

賑やかな教室では、二人のバトルについてめいめいが話している。別のクラスから詳しい報を仕れに訊ねてくる心苗もいた。

蛍ものぞみも、男問わず話しかけてくる心苗が増えた。クラスメイトたちは蛍の過去についても知っている。

のぞみは今、藍(ラン)と話をしていた。親しげに話す二人を見ながら、蛍はイライラしていた。

「クソ!あれってどういう意味よ!?」

蛍は朝の一件で、すっかり心をされていた。クリアが橫目でのぞみを睨む。

「例の件について知ったんじゃない?第七カレッジの知り合いから聞いたけど、昨日あの、真人(さなと)たちと一緒に食事していたみたいよ。それに最近、藍もよく一緒にいるじゃない」

藍とのぞみが言葉をしているのを見るだけで、蛍はさらに腹が立った。

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「あのガキが!余計なこと喋りやがったのね」

「彼のこと、舐めすぎじゃない?」

クリアたちの話を聞くともなく聞いていたルルが指摘した。

サイドを三つ編みにした赤。両手にはめた拳技のためのスマートな赤のグローブ。につけているのは制服ではなく、所屬門派の道著だ。

真っ白な道著の背には「天竜極真」の文字が刺繍されている。アトランス界の技で作られたこの道著は、伝統的なものよりもにぴったりとフィットしている。

蛍はルルに不敵な笑みを向ける。

「は?何あんた?」

「君たちってほんとに愚かだね?」

ルルと共にいたは、ソプラノの木管楽を奏でるような聲で言った。

「ラトゥーニ・シタンビリト!?」

グレーグリーンのミディアムショート。クラス子心苗の中でナンバーワンの力を保持する、怪力に恵まれたの言葉に、蛍はび、マーヤは怯えから、軽くを引いた。

「自分の強さを示し、プライドを保つためだけに弱い同胞をいじめるなんて、君たちのやることは本當に理解できないな」

ラトゥーニに対峙し、姉のクリアは蛍を庇うように言った。

「シタンビリトさん。これは蛍の問題なの。クラス上位者だからといって、あなたに文句を言う資格はないわ」

「文句?やめてよ。ぼくは笑い話のつもりだよ。はっきり言ってこの宣言闘競って、たとえモリジマさんが勝ったとしても、印象も評価も上がらないよね」

クリアの加勢に勇気づけられ、蛍は自分を正當化するように言い訳をする。

「何か勘違いしてるんじゃないかしら?宣言闘競を申し出たのはあちらさんよ?無禮なの程知らずにハイニオス學院のマナーを教えてあげるだけよ」

「へえ~。でも、カンザキさんが宣言闘競を申し出たのって、君たちが何度も無意味な暴行を加えたからだよね。たしかにカンザキさんはマナー違反だったかもしれないけど、卑怯なやり口で反発するって大人げないと思わないの?」

「あんたに何がわかるのよ?世間知らずの獨りよがりが!黙ってなさいよ!」

「ん?モリジマさんの言う世間はどこ?地球(アース)界?そんな考え方、アトランス界にはないし、いらないと思うよ」

辛辣な皮に、蛍もマーヤも腸が煮えくりかえるほど腹が立ったが、言い返す言葉がなかった。

「あんた……」

クリアが苦し紛れに言葉を紡いだが、ラトゥーニは片手を上げ、制止する。伝説の力士の筋として恵まれた力を持つラトゥーニは、クラスの中でも巨量級の男子心苗とも拮抗するほどの筋力を持っていた。さらに、源気(グラムグラカ)を使えばその破壊力は百倍にも強化される。

「その先は言わなくていいよ。バトルをしたいならいつでもけるから。でも、バトルフィールドの上では、ぼくは誰が相手でも容赦しないからね」

ラトゥーニは帯に差した棒狀のものを手に取る。その金屬棒はラトゥーニの源気に反応し、変形した。先端は大きくなり、八枚の刃が展開する。メイスをクリアに向けると、好戦的な目付きになった。

「君たちが人間同士の殺し合いを促進させるなら、同級生だろうがこのメイスで打ち潰すから」

恫喝するような言に、蛍たちの顔に怯えが浮かんだ。クリアですら聲が出ない。実力者であるラトゥーニの気勢に、完全に圧される形になっていた。

「バトルしようって、言ってごらんよ?それともやっぱり君たちは、自分よりも弱い同胞に対してしか威張れない卑怯者ってこと?」

「ひ、卑怯者なんかじゃないわよ……」

クリアは歯噛みしながら悔しげに言葉を絞った。

屈辱で顔を真っ赤にしてうろたえる三人を見て、ルルが仲介にる。

「Ms.シタンビリト。それくらいで許してあげてよ。同じ地球界出として、私も恥ずかしいよ」

ラトゥーニは溜め息をつき、メイスを元の形に戻すと、帯に差しれる。

「しょうがないなあ。まったく、君たちは何のためにセントフェラストに學したんだろうね?同胞をいじめて嗤ってるような奴がウィルターになるなんてありえないよね」

重い皮を投げると、ラトゥーニは三人の前から立ち去り、教室の前方で腕相撲をしている集団に加わった。

つづく

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