《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫52.実戦格闘演習、戸い心 ③

「よう!可い子ちゃん!」

気楽な聲を聞き、気配をじただけなのに、のぞみは驚いた貓のように飛びあがった。

その人は、初対面にもかかわらず両肩に手を置き、刀剣を創ってほしいと頼んだあの男だ。

「ふ、不破(ふは)さんっ」

「いやいや、そんな驚かなくてもいいだろ?それにクラスメイトなんだから、不破さんなんてい呼び方やめてくれよ~」

「う、うん……不破君、何かご用ですか?」

二人が話しはじめたのを見て、ティフニーはそっと腰を上げた。

「さっきのE組のエクティットちゃんとの撃ち合い、見たぜ?昨日の試し斬りの時と別人じゃん?どっか合でも悪かったのか?」

修二との対話に慣れないのぞみは、まだ張したような固い表をしている。

「あ、いえ、元々、対人の戦闘訓練をしてこなかったので、練習なのに本気で戦うということに必要をじませんでした」

たじろぐのぞみの姿すら可らしいと、修二は心を奪われている。

「へぇ~、神崎さん可いな~。でも、授業中に覚だけでも摑まないと、本気の戦闘になった時、攻撃できないじゃん?」

Advertisement

「……その時は、本気で戦います」

「あはは~。戦いで手加減するなんて、俺様的にはあり得ないぜ。敵に優しくしたら、痛い目に遭うのは自分だからな」

ティフニーは、以前から修二に言いたかったというように、一歩踏みこむ。

「フハ君、カンザキさんはあなたではありませんよ。毎日のように挑戦闘競を申し出る熱的なファイターではないんです。バトルに消極的な人にまで何度も申し出るのは迷行為ですから、し考え直してはいかがでしょうか?」

「おいおいハヴィ、神崎さんの話をしてたのに、俺の話にすり替えないでくれよ」

ティフニーが修二の相手をしてくれている間に、のぞみはそっと蛍の様子を窺った。

蛍は、のぞみに修二を取られるとすら思っている。運が良かったことに戦闘中だった蛍は、修二が聲をかけてきたところを見ていなかったらしい。

のぞみはティフニーたちの話を寸斷し、修二に問いかける。

「不破君は、森島さんのこと、どう思っているんですか?」

「森島?」

修二はアフロ系ウルフの髪のをいじりながら、首だけステージの方を向く。

戦闘中の蛍は、ルルを相手に苦戦しているようだ。

「戦闘経験は多あるけど、相手を弄びすぎて決め手を打つチャンスを逃すタイプ?」

「それだけですか?森島さんは、先日の挑戦闘競に勝てたなら、不破君に告白したいことがあったそうですが?」

のぞみはわざと思わせぶりに言ったが、修二はヘラヘラと笑って応えた。

「そうなのか?てことは、次は俺様にバトルを挑みたかったのか~」

「えっ、挑む……?」

ここまでヒントを與えてもの告白がバトルにすり替わることに、のぞみは目を丸くした。

「ん~?他にも俺様に挑みたいことがあるのか?」

のぞみは苦笑した。修二は蛍のことも闘士としてしか見ていない。男としてなど考えていないし、心など一つも気が付かない、典型的なバトルバカだった。

「私にはわかりません」

「それはそうだな。森島とのバトル、楽しみにしているぜ」

「……あの、不破君は、森島さんを応援してください」

「俺様は弱い方を応援するって決めてるんだぜ~?」

この件については譲れないのぞみは、眉を寄せる。

「う~ん。とにかく、森島さんを応援してください」

これ以上、話が続くと、うっかり蛍の中をバラしてしまいそうだ。のぞみが困っていた時、ちょうど笛の音が響いた。

心苗(コディセミット)全員が作を止め、ルビスに注目する。

「以上でリストアップされた組の打ち合いは終了だ。後はフリーバトルの時間とする。互いに試したい相手を見つけ、自由に登記しなさい」

修二は急に真面目な顔になってティフニーに向き合った。

「ハヴィ」

真剣な眼差しをけ、ティフニーは首を傾げ、目をわずかに細めた。まったく闘気をじさせないまま、ティフニーは応える。

「いいでしょう。け取ります」

「やった!楽しくやろうぜ~!神崎さん、俺の活躍を見ててくれよ~!」

授業の殘り時間、心苗たちは自由に打ち合いを始めた。ティフニーに手合わせを申し出た修二は、最初の軽い一撃で吹き飛ばされ、一瞬で敗北したようだ。のぞみは打ち合いをせず、修二たちをはじめ、他の心苗たちが戦う様子を見て過ごした。

つづく

    人が読んでいる<ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫女>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください