煙が消えると、蛍ほたるはのぞみの後ろの柱に立っていた。先程の撃でまったくの無傷だったかのように笑っている。

「おバカさん！どこ狙ってるのかしら！」

のぞみを乗せた盾は、空を水平に旋回し、さらに蛍を狙い撃つ。弾を連続で撃ち出すが、蛍は三本の柱の間を俊敏に移する。そのきがあまりにも速いため、まるで分のように見えた。

「遅い！あんた、本當にド素人ね！」

當たらなかった弾が落ちると、ステージの海域にいくつもの水柱が立った。

のぞみは高度を下げ、柱の上に著地する。左手には盾を、右手には金の刀を持って、前に跳び進んだ。

バトル開始以來、初めて積極的に攻めるのぞみの様子に、レイニは興したように実況する。

「カンザキさん！一直線に攻めていきます！」

「ふん？やっと負ける覚悟が決まったの？！」

蛍はまた手裏剣を繰り出し、のぞみのきを牽制する。

のぞみは盾を真正面に翳し、手裏剣を防ぐ。そのまま蛍に接近すると、刀を振り出した。その瞬間、ふっと、蛍の姿が消える。

次の瞬間、のぞみの頭上に、脇差しが振り下ろされた。

その時、バトル序盤にのぞみの手から落ちた金の盾が飛んできた。その盾は、攻撃を繰り出す直前を突いて蛍に激突する。

「なに？！」

けを取る間もなく、蛍はその衝撃で撃ち飛ばされた。

無防備なところを奇襲された蛍は、３０メートルも先にある柱の上の床に転がる。

レイニが激したようにんだ。

「おぉ！！これは予想外の一撃です！」

蛍が手の甲を見ると、青ゲージは３８７０まで上がっている。

すぐに立ちあがった蛍の額には、青筋が浮かんでいた。

同じＤレベルの士(ルーラー)を相手取るのは初めてだった蛍は、すぐに勝てるものと気楽に構えていたが、今、その余裕はなくなり、狼狽のが表われている。

とはいえ、闘士は日常的に過酷な訓練を積んでいる。のぞみの盾の一撃は、石柱を崩れさせるほどの重さがあるはずだったが、蛍のはさほどダメージを負っていない。

のぞみの姿を確認すると、怒りの表がすっと消えた。むしろ、靜かな笑みが浮かんでいる。

「な～に？さっきの攻撃。あんなんじゃ効かないわよ！源(グラム)の使い方、教えてさしあげましょうか？暗にこんな使い方があるってこともね！」

蛍が右手でベルトにれてから、新たに手裏剣を投げた。

距離を取って手裏剣を防いだはずののぞみだったが、腕と腳が切れたが殘った。見ると、六方手裏剣の中に、源で作ったのではなく、実のあるものが混ざっていたようだ。

「……こんなに距離を取ったのに？」

のぞみは痛みに耐えながらも、弾で反撃する。

蛍はさらにスピードを上げ、それを避けた。

「さーて、あんたにギフトをあげるわ！神薙流奧義『迅雷六紋剣』！」

蛍の片手には、１２０センチはあろうかという恐ろしく大きな手裏剣が握られていた。石板から跳びあがると、のぞみをよく狙うように腰を大きく振り、ブン、と投げ出す。

あんなに大きな源気の塊をければ斬られてしまう。かといって、避けてもまた発が起こるだろう。のぞみは何とかそれを避けた。

「アホ！！それはアカン！」

つい、聲が出てしまったというように、綾が言った。

何とか避けられたと思っていたのぞみだが、蛍はもう反対側に回っていた。それまでの真剣な表から突如、悪意に満ちた顔つきになった蛍は、重い蹴りを打ちこむ。のぞみは

一直線に砂原へダイブした。

「ああっ！！」

衝撃を防げないままけた蹴りのダメージは大きく、報ボードの赤のライフゲージは９６７０までびた。

「今度はモリジマさんが、無防備なカンザキさんに一撃を食らわせました！これはダメージが大きい！カンザキさん、立ち上がれるでしょうか？」

「オヨヨン……、これは酷い一撃だヨン……」

蛍との抗戦を見てきた藍(ラン)は、目頭を熱くしてんだ。

「のぞみちゃん！！負けないで！立ち上がって！！」

やられたらやり返す。満足げに笑いながら、蛍が聲をあげる。

「あはは！弱者はさっさとくたばりなさい！」

ドヤ顔でのぞみを見下す蛍に、観覧席からブーイングの嵐が降り注ぐ。

「人殺し！！」

「不適切者！」

「異端者ヘラドロクシーめ！帰れ！」

どんなに野次が降ろうとも、闘競バトルは勝者のものであると蛍は考えている。

「うるさい！観客は黙って見てなさい！」

蛍がぶと、野次はさらにヒートアップした。

「わからずや！」

「が小さいぞー！」

「お前が今立ってるのはカンザキの優しさだぞー！」

「みなさん、やめてください！」

のぞみのび聲に、フミンモントルの心苗たちが座っているエリアからの野次が鎮まった。　のぞみは痛みに耐えるようにお腹を支えながら、ゆっくりと立ちあがった。

「宣言(ディクレイション)闘競(バトル)はフェアプレイです！罵り合いはバトルの雰囲気を腐らせるだけです」

「ふーん？まだ戦う気？」

「もちろんです。これから、私の本気をお見せします」

そう言うと、のぞみのを纏っていたが二倍に広がった。その源気は、まるで満開の椿の花のように芳しく香り立っている。

『

青 森島蛍 ：　神崎のぞみ 緑

ダメージポイント ３８７０　：　９６７０

源気數値（ＧｈＰ） ６３２０　：　５４６０

殘り時間 １２：９９

』

つづく