『５４６０、５５５０、５７６０、５８７０、５９５０……』

のぞみの源気(グラムグラカ)が猛スピードで上昇していく様子が、報ボードに示されている。

數値を見ていなくても、のぞみの気配の変化に気付く人も多く、観覧席にはそわそわと揺が走った。どの顔も、一様に驚いている。

クラークは頬に冷や汗を流して隣に座っているフォランに話しかける。

「カンザキちゃん、普段の授業であんなに高い源気狀態になったことあるっけ？」

「ないな。俺の記憶にあるカンザキは源気が低すぎて倒れたぜ」

子たちもざわついていた。

「カンザキさん、こんな底力、どこに隠してたっていうの？」

「教室ではいつもヘトヘトになって授業けてるのに！」

「こんなに源気が出せるなら、なんで普段から使わないのかな？」

「実力を隠すために、わざとってこと……？」

「日常生活では源気を出さずに実力をごまかして、戦闘のときに全開にするっていうタイプ？」

そんな話が広まってくるのを不愉快に思った藍(ラン)が反論した。

「ありえません！のぞみさんは毎日、真面目に授業をけてます！」

「え～、でもヒタンシリカさんが言ってたとおり、貓を被ってるだけかもしれないわよ」

「転して間もないのに信用するなんて、藍は甘過ぎだわ」

憶測に過ぎない話がだんだんと歪んでいき、藍の言葉も薄れていく。

その時、周りの心苗(コディセミット)たちを導くように、ティフニーが落ち著いた口調で言った。

「皆さん、あれは『金剛纔(コンゴウサイ)』という修行法ですね。源気の量を抑えて、そのものに負荷をかける方法です。が限界に近付いた狀態で修行をすることで、より能力の飛躍がめます。彼は私たちのレベルに追いつくため、本気で修行に打ちこんでいるのでしょう」

藍が振り向き、ティフニーと目を合わせた。

「それは、の強化ということだと思いますが、男向けの修行方法ではありませんか？訓練メニューを間違えれば、筋が太くなって、男のようになってしまいそうです」

橫からジェニファーが口を挾む。

「同じ修行法でも、効果には個人差があるからね。彼はバーサーカータイプではないし、緻なコントロールをすれば、理想的にを鍛えることも可能だろうね」

のぞみの気配の変化をじ、ヌティオスも嬉しげだ。

「カンザキ、短い期間でよくここまで源気を鍛えたな！」

ティータモットとの戦闘時と比べても、よほど強くなっている。ヌティオスは素直に心して、エールを送った。

「戦え！カンザキ！！」

一方、蛍(ほたる)を応援しているマーヤは落ち著いて座っていることができなかった。

「これほどの実力を隠していたなんて、蛍は大丈夫か？」

予想以上の気配に、マーヤは不安げな表をしている。

「心配ないわ。あの程度の源気、蛍ならカバーできるはずよ。ほら、き出した！」

クリアの眼差しの先で、蛍はきはじめていた。

全の源気を脇差しに集めながら、あちこちの柱を高速移し、のぞみを翻弄する。

脇差しの刃はクナイのように形を変えた。紫は輝きを増している。

のぞみの左後方から、蛍は攻めにった。衝突の瞬間、のぞみとの間に壁が生される。それは、のぞみが瞬時に創造した盾だ。蛍は突撃した反で弾き飛ばされた。

「どうなってんのよ！？『紫一閃(しこういっせん)』が完全に防された？！」

蛍は手足をばし、湧き出した源(グラム)の風圧で衝撃を軽減させると、半壊した柱の上に著地した。のぞみの姿を見つめる。その周りには、五つの盾が現れていた。これまでのものよりやや小さい金の盾が、のぞみを守るようにゆっくりと周回している。

「森島さんが攻めを得意としているなら、私は防戦に長けていると思います。士(ルーラー)によって創られたモノは、源気が高ければ、強度だけでなく能も高まるんです」

「ふん、そんなガラクタ、潰してあげるわ！」

蛍は幾度にもわたり攻めったが、遠距離からの手裏剣は意味がない。接近戦では盾に弾かれ、高速移しながらの斬撃も妨げられた。得意とするスピード戦法を封じられた蛍は、逆にのぞみの気弾を食らった。

一旦、距離を取った蛍は、のぞみのきを見る。盾のきのパターンを読むつもりでいたが、今度はのぞみが銀の盾に乗り、攻めに転じた。

周囲を守っていた四つの盾が一列に並び、のぞみの前に展開している。蛍は右から二番目の盾に向かい、弾を投げ撃つ。

しかしのぞみは一番左の盾から飛びだし、弾を撃ち出した。不意打ちされた蛍はけを取る。

試合開始からずっと、蛍のスピード戦にペースを奪われていたのぞみの反撃が始まり、レイニも熱くぶ。

「またまた予想外の展開！カンザキさん、見事な攻防戦を繰り出しました！！」

まるで雪合戦のように、盾の後ろに隠れて攻撃を無効化し、ひょっこりと姿を見せたかと思うと弾を撃ち出し、蛍にプレッシャーをかけていく。

同じ戦法で三度の攻撃をけた蛍はイライラしていた。ダメージは軽くとも遊撃戦に持ちこまれ、蛍は騎士(レッダーフラッハ)の心苗に負けたバトルを思い出していた。

「これって、騎士の戦じゃない……」

蛍は手の甲を見る。ダメージポイントは５９００までびている。