蛍は速やかにその場を離れたが、手毬は意思を持つ小型戦闘機のようにすいすいとついてくる。生きもののようなきはパターンが予測しづらく、スピードを上げて追撃を躱していたつもりが、いつの間にか蛍は手毬に囲まれていた。

戦闘に巻きこまれないよう、臺の高度を上げ、レイニは激したようにぶ。

「これはまたまた、予想外の展開！カンザキさん、面白い戦を仕掛けていたようです！！囲まれたモリジマさんはどうするのか！？」

のぞみは銀の盾に乗ったまま水面から飛び出すと、両手に金の刀を翳した。周囲には多數の手毬が浮かんでいる。

距離を取っている蛍と目と目が合い、のぞみは強気に出た。

「『金毬・天訬(てんしょう)』からは逃れられませんよ」

蛍は両手に脇差しを持ち、余裕を繕った。

「何よ、あんたの視力じゃ、私に追いつけないでしょ？！」

蛍は手毬地帯から突破するようにき出した。一瞬で三つの手毬を避け、のぞみに近付く。さらに飛んできた手毬は、脇差しで斬り落とした。

のぞみは斬り落とされた手毬から、蛍の位置を予測していた。素早く近寄った蛍だが、のぞみはその直前に盾ごと移し、斬撃を切り抜ける。脇差しを振り下ろすために一瞬、速度を緩めた蛍に、七つの手毬が多方向から一斉に向かっていく。

蛍は初めてけを取ったが、手毬が著弾すると、発が起こった。

ダメージをけた蛍は煙から飛びだし、柱の上に移る。スピードを上げて手毬の打撃から逃れると、砂地に著地し、疾走した。後ろからは手毬が追ってくるため、蛍は時折、待ち伏せして斬らなければならない。休みを取ることは許されなかった。

「勢は大逆転！！モリジマさん、カンザキさんの攻撃を回避することしかできません！！」

逃げては斬るという反復しか許されない蛍(ほたる)は、次々と海域から飛び出す手毬の軍勢に苛立ちを覚えていた。

「この私があの相手に逃げ戦なんて、冗談じゃないわよ！！」

走りながらも、蛍は右手に源を集中させる。逃げ場がなくなると、やや小型の迅雷六紋剣を投げ、逆手の脇差しをそこに向けて振り下ろす。脇差しの波が迅雷六紋剣に衝突すると、高度に集中した源の塊がエネルギーを放すようにが膨張した。発が起こると、周囲の手毬はさせられた。

風が起こり、吹き飛ばされそうになりながらも、のぞみは持ちこたえる。

『

緑 森島蛍 ：　神崎のぞみ 黃

ダメージポイント １３３８０　：　１１２１０

源気數値（ＧｈＰ） ８５３０　：　７２００

殘り時間 ８：７７

』

「おっと！モリジマさん、これは大膽な作戦に出ました！カンザキさんの攻撃を中斷させることには功しましたが、自らのダメージも大きい！これで戦況は逆転しました！！」

Ｄ級心苗同士だというのに、上級者のバトルに劣らず激しい戦況に、観客席が一瞬、沈黙した。のぞみの仕掛けた戦に、男子たちは目をぱちくりさせ、口も開いたままになっている。

沈黙の次の瞬間、わぁっと沸きあがるような歓聲が広がった。

フミンモントル學院の心苗たちはもちろん、二人の所屬するＡ組のクラスメイトたちも熱狂していた。