《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫》64.対話 ①
沈黙の次の瞬間、わぁっと沸きあがるような歓聲が広がった。
フミンモントル學院の心苗たちはもちろん、二人の所屬するA組のクラスメイトたちも熱狂していた。
子たちはのぞみが、蛍の悪辣な言や強襲のプレッシャーに負けず、しっかりと作戦を練り、ペースも戦況も自分の元へ引き寄せる度と技を持っていることに心し、のぞみのことを見直した。
クラスの下位だからとクリアたちの暴力に遭い、怯えていた子たちは、のぞみの反撃に心底驚いていた。
「これは士(ルーラー)の戦い方ですか……」
「まさか、モリジマさんがカンザキさんに逆転されたなんて!」
「私たち、彼のことをあまり知らなかったのかも。「闘士(ウォーリア)としての教育」に制限された彼は劣等生でも、戦場の上では、士としては、違ったのかもしれないね」
見直したという聲が高まるなか、一人が意地の悪い顔をして言った。
「あいつ、もしかして「怪腳(かいきゃく)」?」
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「怪腳」とは、二つ以上の屬を持つ者を揶揄する言葉だ。
この言葉の本來の意味は、どちらに屬するのでもなく、汎用的な才能に恵まれた者ということ。それぞれの屬の技・スキルを上手く扱えば間違いなく天才とされる。だが、どちらも中途半端であれば、凡才以下という評価をけることになる両刃の剣である。
もともとはユニークで多蕓な者を激勵する意味を持ったはずの呼び名だが、才能に恵まれた者を嫉妬し、排他的な目的で悪用されるようになった。今では差別用語として心苗(コディセミット)たちには認識されている。
マーヤものぞみの戦い方に嫌悪を覚えていた。
「あんな技使って、卑怯だよね。よくうちの制服を著たもんだな」
ルルは笑みを浮かべて反撃した。
「言い訳しているうちは弱者から抜けられないよ。戦場でも敵がいつも正攻法で攻めてきてくれると思ってる甘ちゃんは、一人前の戦士にはなれないね」
ジェニファーもルルの意見に賛同のようだ。
「そうだ。世の中の源使いには四つの屬がある。屬それぞれの戦い方というものがあるから、闘競(バトル)のルールとしては違反にならないだろう。それにモリジマの戦法にも悪意があるから、シビアな審判であれば警告を出していたと思うけどな」
煙が薄くなると、のぞみの仕掛けた手毬の半分はされ、消失したことがわかった。それと同時に、のぞみの攻撃が初めて蛍に數値上ではなく、的にダメージを與えたことがわかる。蛍は辛そうな立ち姿で、明らかに疲弊していた。
「……ふふ、私に屈辱を與えたことを後悔させてあげる」
のぞみは蛍としっかりと向き合い、大聲で伝える。
「たしかに森島さんは心苗として強いですよ」
「今さら私の強さに敬服したって、もう許さないわ」
「いえ、森島さんは強いかもしれませんが、間違っています」
のぞみは力強く言い放った。
「私は言いました。森島さんに、最高の狀態で手合わせを願いたいと。そうでなければ、宣言闘競(ディクレイションバトル)を申し出たことは無意味になります。今のところ、森島さんは私の期待には応えてくれていません」
蛍はあごを上げ、鼻高々な様子で笑った。
「バカじゃないの?私はいつだって全力よ!!」
「そうではありません。うまく言えませんが、今の森島さんは、心が冷たくて、死んでいるみたいです。きっとヤングエージェントの頃は、こんな心ではなかったと思います。死んだ心でも最高な狀態だと、森島さんは言えますか?」
「何ですって!?」
京彌(きょうや)は溜め息をつくように言葉を吐いた。
「あのバカ、この狀況でまだ格好つけやがったか」
「まさか、わざと森島の殺意を引き出して、ルール違反に導するつもりッスか……?」
「島谷さん……。どうして神崎さんは、この狀況でまだ挑発を?そんな余裕、ないはずなのに……」
「いや、あれは挑発なんかじゃない。森島を説得するための、対話だ。あの、戦場で敵にけを売るのか」
クールな口調を崩さなかったが、真人(さなと)の顔には揺のが表れている。
真人の言葉の意味を自分なりに探りながら、初音はのぞみがプレッシャーに負けず、蛍に抗う姿勢を見ていて心服した。
「神崎さん……」
ステージでは蛍が憤慨し、取りしている。
「よくも言ったわね……私のことなんて、何も知らないくせに……」
「はい。森島さんのことは、全く知りません。でも、誰かの役に立ちたいと思っていたのに居場所を失ったことは、悲しいことだと思いました。だから、私のように弱い者が憎いんじゃないでしょうか?そんな気持ちを昔から持っていて、それでヤングエージェントを務めていたなんて、ありえませんから」
「あんた、私に説教するつもり?!!」
のぞみは心苦しげに言葉を紡いだ。
「説教するつもりはありません。ただ、このままでは近い未來、森島さんも含めて五人の命が失われます。そんなことになれば、森島さんは本當におしまいですよ?これが最後のチャンスなんです」
突拍子もない話に、蛍は失笑する。
「はぁ?馬鹿なこと言わないでよ、私は死なないし、私のせいで誰かが死ぬっていうの?あんた、私の強さも知らずに生意気なこと言ってんじゃないわよ」
蛍が迅雷六紋剣を繰り出すと、のぞみはそれを避け、手毬で反撃する。
のぞみが繰り出す手毬を、蛍は一つずつ斬り捨て、攻めに転じようとする。だが、手毬は奇妙なきをして蛍の脇差しから離れていった。蛍はムキになって仕留めようと手裏剣を投げるが、それもまた妙な軌道でく手毬には當たらない。
「何だっていうのよ?!」
のぞみは両手を広げ、手品のタネ明かしでもするように、手毬たちを蛍に見せた。
「この金毬たちは、ただの攻撃アイテムではありません。この毬は、一つ一つが生きています」
宙に浮かぶ手毬は、のぞみの號令に合わせ、形を変えていく。その生きものは次第に金の鳥となり、三本の腳を生やした。わずか數秒の間に、金の手毬は八咫烏(やたがらす)の群れへと変貌を遂げる。
「これがあの手毬の実だったの?!」
『
殘り時間 7:100
』
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