《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫69.勝負の果てに ①

空を浮かぶのぞみは攻撃を止め、様子を見守った。殘っている六羽の八咫烏(やたがらす)も、羽をバタバタさせながら空中で待機している。

海面に浮かびながら、蛍(ほたる)はレイニの聲を聞く。

「モリジマさん、ダウンです!これは大きなダメージを負いました。立ち直る気力はあるのでしょうか?!」

のぞみの決め技が初めて蛍に大打撃を與えたのを見て、フミンモントルの心苗(コディセミット)たちが沸きあがる。レイニは解説するように告げる。

「宣言闘競(ディクレイションバトル)では、ファイターが倒れてしまったとしても、調センサーライトが赤でない限りは、制限時間が終わるまで試合を続けます!」

熱い戦いを続けているのぞみに向かって、イリアスがぶ。

「のぞみちゃん!その調子よ!!」

「のぞみちゃん……」

ダメージポイントで優勢を取り、殘り時間も4分を切っている。これから大きなミスさえしなければのぞみが勝つのだと、ミナリはしホッとしていた。

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「やったか?」

ガリスは冷靜に言ったが、楊(ヨウ)は腕を組み、油斷できないという顔をしている。

「あのがあと4分間ずっと倒れていればな。調センサーライトはまだ黃だ。勝負が決まったわけじゃない」

蛍への聲援がばらばらになり、気勢が弱まった。

30秒の間に、思い出の斷片は蛍の脳裏でった。

蛍は多、息を荒げたまま立ちあがる。盾に乗ったのぞみを見つめていると、彼は高度を下げ、蛍のいる水面の近くまで飛んできた。

「ふふふ……。あんたを見てたら、昔の甘ったれだった自分を思い出したわ。勝手に人を手助けして、無駄にカッコつけて、結局、損するのは自分だけ……」

元來、強い神力を持っている蛍だが、自分を守ることに疲れていた。

「力を持っているからといって容易く生きるのではなく、とことんまで人を助けたいという素直な思いがあるというのは、素敵なことではありませんか。私はそんな森島さんが羨ましいです」

「黙れ!」

蛍は手を投げ出した。のぞみは避けもせず、防も取れないままで源(グラム)圧手裏剣をける。二発、三発と次々に投げる蛍は、簡単に攻撃を食らうのぞみの澄んだ瞳と目が合った。そして、手を止めた。

のぞみは痛みに耐えるように片目を強く閉じる。傾いたを整えると、蛍に向き合った。

「いえ、私は言い続けます。こんなにも強い森島さんが、どうしてそう簡単に諦めるんですか?」

「黙れって言ってんのよこのハリボテ使い!!弱者のくせに人の心に踏みこんでくるんじゃないわよ!」

を大きく回し、蛍はまた『迅雷六紋剣(じんらいろくもんけん)』を投げ出す。

のぞみはそれを避けると、八咫烏を使って蛍の追撃を止める。反撃もしたいが、烏(からす)たちは殘りなく、蛍のきを多方から攻めて止めることすらままならない。狙いを外すとすぐに蛍に斬り落とされ、烏はまた減った。

「ふふ、あんたの攻撃はもう効かないわよ!」

新たな手毬を作っても、早々に『迅雷六紋剣』で一掃される。先程までの優勢はもうどこにもなく、蛍が柱の上へと移する余裕さえ與えてしまう。

八咫烏の數量が減ってしまったため、今度はのぞみ自ら、八咫烏の群れに紛れて攻める。三羽が上、左、右から突撃するも、二羽は斬られ、殘る一羽も攻撃を止められる。蛍が烏たちを斬っているうちに、のぞみは盾に乗り、両手に金の刀を翳して一気に攻めこむ算段だった。

しかしタイミングが悪く、のぞみの攻撃は蛍に読まれる。まだ攻めらないうちに、蛍は源を湧き出させた。その空圧でのぞみのきは食いとめられてしまった。

「はっ!この時を待っていたわ!墜ちなさい!!」

蛍はカウンター攻撃で右手を打ち出す。『雷爪(らいこうそう)』の、爪狀のエネルギー波がのぞみを襲う。

「わぁあ!!」

一瞬の風圧で弾き返されたのぞみは、攻撃の構えが崩れただけでなく、盾の上から撃ち落とされる。大きな飛沫(しぶき)をあげ、海域の淺瀬に落下した。

のぞみのダメージポイントは16,830までびた。

撃ち落とされたのぞみを見て、藍(ラン)は目をパチクリさせ、心配してぶ。

「のぞみさん!!」

ヌティオスも聲をあげる。

「カンザキ、まだ立ち直れるのか?!」

「オヨヨン……ライトが黃からオレンジになったヨン……。ノゾミちゃんの、かなり弱ってるヨン」

メリルの言葉を聞き、ヌティオスは下の両手を合わせた。

「くそぅ!これが宣言闘競でなければ、代わってやりてぇ!」

「ヌティオスさん、それでは反則でのぞみさんが負けてしまいます」

ルール違反とわかっていても、ヌティオスの気持ちも理解できる。藍たちは難しい表を見合わせた。

「クソッタレ!頑張れカンザキ!!」

落ち著かないのはヌティオスだけではない。試合後半になって、のぞみを応援する聲は著実に増えた。

戦況を見て悠之助は苦い表をしている。

「あー……。これは、ヤバいッスね」

京彌(きょうや)も真剣な顔で試合を見ている。

「ああ、さっきの技で倒せば勝てたのにな。ネタはもう読み切られてる。この後、神崎が技を繰り出すチャンスはもうないぜ」

「でも、このまま時間切れになれば神崎さんの勝ちですよね?」

初音は希を捨てたくなかった。蛍を相手取り、劣勢から始まったバトルだった。だが今、初音はのぞみに勝ち抜いてほしいと強くんでいる。

的な意見を言う初音とは裏腹に、真人(さなと)は現実的に戦況を見ている。

「神崎さんに力と気力があれば何とかなるかもしれない。だが、森島にアドバンテージを取り戻されるとマズい」

また、歓聲が広がり、真人たちは闘競(バトル)に視線を戻す。

痛みに耐えようと、のぞみは震えるで立ちあがった。顔を上げ、両手を上げ、戦闘態勢を整えた。

「ふん、あんた、だけはあるみたいね。でも、もう二度と飛ばさせないわよ」

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