《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫》80.マーヤ・パレシカ
午前中の実戦格闘演習の時間になると、16ペアの心苗(コディセミット)は、同時にそれぞれのステージで手合わせを始める。中でも巨量級のヌティオスと軽量級のライのペアは、待機中の心苗たちの目線を奪った。
ヌティオスは腰を沈め、攻めていく。『雷豻門(らいかんもん)』の技を使った彼の攻撃は、足のきだけで地が震えるほどのインパクトがある。ヌティオスは左拳を打ち出すと、すぐに左足を踏みこみ、同時に右の肘底を突き出す。ドン!という強い踏みこみとともに、足元の石板に割れ目がった。
ライはヌティオスの突撃を跳んで避け、バク転ののちに著地、そして拳を打ちこんだ。ヌティオスは振り向きざまに左の手腕でガードをする。その一瞬にライは踏みり、左の指でヌティオスの腕の裏を刺した。
ツボを狙い打ちされたヌティオスは手腕に電流が走ったような痛みで、その腕を引く。とはいえ、その痛みに屈することなくすぐに右の拳を打ち出した。上から下へと狙い打った一撃が炸裂し、床には大きなができた。
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攻撃は當たったが、その直後にライは跳び蹴りでヌティオスの首を狙う。それをまともに食らったヌティオスは首を捻る。しかし、上の右手で首を整えると、次の一手に対する構えの姿勢を見せた。
周囲の心苗たちは、ステージで繰り広げられる手合わせを観戦しながら、あれこれと戦いについて話し合う。賑やかななかには、のぞみと藍(ラン)、メリルの姿もあった。
「私の対戦相手はドイルさんですが、のぞみさんは?」
のぞみは、手合わせの相手について一人ひとり細かく調べるということをしないでいた。先日の基礎拳法演習でヌティオスとペアを組んだときのようなイメージだったため、あまり深く考えていなかったのだ。
藍から訊ねられ、今さらになってマスタープロテタスで調べる。宙に投影されたリストには、相手の報が書かれていた。
「パレシカさんです」
マーヤ・パレシカはクリアたちの仲間だが、クリアと蛍(ほたる)の言が目立ちすぎるせいで、のぞみにとってのマーヤのイメージは、背が高くよく鍛えているお姉さん、くらいでしかなかった。
「ヒタンシリカさんや森島さんでなかったのは幸いですが、パレシカさんは、績評価は高くないわりに、実に手強い相手ですよ」
「そうなんですか?」
「パレシカは純然たる闘士(ウォーリア)だヨン。ステージに上がるとまるで別人だヨン」
クリアと蛍の戦いにはよく著目していたのぞみだが、マーヤの戦いを注視したことがなかった。
「別人に?」
「彼の相手をするなら、距離を取ることが重要です」
「距離ですか?」
「それと、の源気(グラムグラカ)に集中することヨン」
今さら藍とメリルからヒントをもらっても、のぞみには戦いの的な策が練れない。16枚の石板で組み合わせた正方形のステージは、実に狹い空間なのだ。その中で距離を取ったとしても、すぐに摑まれてしまうだろう。瞬間のの反応とアクションスキルの俊敏さが試されている。
それに、格闘の授業では刀剣等の武の使用がじられているため、弾系の技でしか対応できないというハンデがある。至近距離での弾の攻撃は、避けられたときに間が空いて反撃をけやすいリスクもある。どう戦えばいいのか、のぞみは戸った。
結論が出るよりも前に、のぞみの番が回ってくる。指定番號の9番ステージにると、マーヤはすでにステージで両足を広げ、ストレッチをしている。立位のまま両足を左右にばし、興気味に笑みを浮かべてんできた。
「來たか。まさかあんたと手合わせできるなんて楽しみだよ!筋がビンビンだね」
改めてマーヤを見ると、のぞみよりも頭二つ高い長と、自分とは比べものにならない筋量に驚かされる。戦士の、戦闘に対する狂熱と、侵略に対する優越のような笑みがこぼれていた。
「パレシカさん、本日の手合わせ、どうぞよろしくお願いします」
「たっぷり楽しませてもらおうか?」
るような蛍のものともまた違う、マーヤのに宿る猛烈な源気にのぞみは気付く。強い気配に圧され、のぞみは蛇に睨まれた蛙のように冷や汗を掻き、張をじた。
「パレシカさん。まさか本気で手合わせするつもりですか?これはただの練習ですよね……?」
「はっ!バカなこと言わないでよ。戦いのチャンスがあるなら、全力でぶつかって相手を砕く、それだけだろ?」
「どうしてですか?」
のぞみはマーヤほどの闘志を自分の中に見つけられない。普通の授業の練習で、そこまで真剣に戦う必要はないとじてしまう。
「あんたとバトルしてから、蛍が妙なじなんだ」
「森島さんに何かあったんですか?」
「あんたの話になると、蛍の反応が神経質そうに見えるんだよ。蛍は勝ったのに、何であんたのことを気にしてるのか、興味深いだろ?」
「まさか……。森島さんのために、私にリベンジしたいということですか?」
蛍よりも、自分のバトルの方が大事だと言わんばかりに、マーヤは手を振る。その目には、すでに闘志が表れている。
「いや。蛍のことは置いといてもいいのさ。それよりもあの日、蛍とあんたのバトルを見て、私はワクワクされられたんだよ。授業中の戦いには々と制約もあるけど、あの日の張、私にも味わわせてよ!私を満足させられたら、あんたの名前を覚えてあげる」
のぞみの目に映るマーヤは、の雨を浴びるほどに戦いを求める狂戦士だ。今までにも楊(ヨウ)のように好戦的な心苗との付き合いはあったが、彼と目を合わせるのは、恐怖がに染みつくほどの恐ろしさがある。
「分かりました……お手らかにお願いします……」
笛の音が響くと、マーヤはすぐに攻撃を開始した。手刀が繰り出され、のぞみは避ける。すぐさま足が蹴り出され、のぞみはそれを躱す。
のぞみは、蛍のハイスピード戦法を経験していたおかげで、マーヤのきを意外に遅くじた。
「はっ、こんな狹いスペースでいつまで逃げるつもり?このチキン!」
二度、三度と避けたのぞみは、振り向くのと同時に弾を投げ出す。マーヤはガードもせず、それをでけた。
マーヤはまるで何事もなかったかのように炎の中から飛び出すと、のぞみの顔をめがけてパンチを繰り出す。のぞみは両手で防するも、衝撃でが崩れた。
まだ反応できないうちに、マーヤは上段の蹴りをれる。
蹴り飛ばされたのぞみは、ステージから出ないよう、すんでのところで何とかブレーキをかけた。マーヤのパンチをけた両手は痺れている。
(ただのパンチとキックなのに、こんなに強いなんて……)
予想していたものとは違うハードな戦闘に、のぞみはショックをける。藍たちからアドバイスをもらっていたのに、思考する余裕もなく、頭が真っ白になってしまったのぞみは、時間稼ぎの弾を二発撃ち出す。
しかし、弾は素手で容易く振り弾かれ、ステージと外との境界となっている結界壁に接すると発した。
「そんな空っぽの弾、私には効かない!もっと楽しませてよ!」
マーヤが迫ってきているのはわかっていたが、のぞみはが直したようになり、どう反応していいものかわからなくなった。防の姿勢は取ったものの、のぞみはマーヤに腕を取られ、そのまま投げ飛ばされる。
床に倒れこんだのぞみは、し休みが與えられるかと期待した。しかし、マーヤはのぞみに飛びかかり、手足の自由を奪われる。
「もう逃がさないよ。たっぷり可がってあげる!」
吊り天井固めを決められ、のぞみはが千切れるような激痛に絶した。
「痛ぃいいいいい〜!!!」
「ん?もっとしてほしいってこと?」
「いや……」
マーヤははじめからのぞみの意見を聞く気もなく、力を込めつづける。経験したことのない痛みがのぞみを襲っていた。
「うわあああああああ〜!!!」
のぞみは、一刻も早くバトル終了の笛がなることを願っていたが、時間は停止したかのように遅々として進まない。
「さーて、次の技に行こうか」
「わ、私は、ギブ……」
「何?」
のぞみは痛みのなか、呼吸に合わせてんだ。
「ギブアップします!!!」
「な~んだ、もう降參?退屈だね」
どちらかが敗北宣言を出したならば、バトルはすぐにやめなければならない。マーヤはつまらなさそうにのぞみを解放し、床に投げ下ろした。
床に倒れこんだのぞみは息を荒らし、痛みがまだ殘っているのか、けないようだった。
「私を満足させてくれるかと思ったけど、あんたには失したよ」
期待外れな相手に足りなさをじているのだろう。マーヤは不愉快げな表でステージを離れ、去っていった。
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