《【書籍化】追放された公爵令嬢、ヴィルヘルミーナが幸せになるまで。》第100話:ヨハンネス猊下の失腳

ξ˚⊿˚)ξ100話ですわ!

教皇猊下は疲れたようにため息を吐かれました。

「異端審問、魔狩り、魔師への迫害と抗爭、もうそういった時代は終わったというのにな。こうして都合よく使おうとするものは教會の中樞にも末端にも、王にも平民にも後を絶たない」

隣人同士が監視し合い、異端の告発をするような酷い時代があったと習いますからね。それもたった100年ほど前の話です。

ヨハンネス猊下は抗弁します。

「しかし、教會法において異端審問はまだ現役です。異端の嫌疑があると告発するのも、それに従って審問を行うのも、無法をした訳ではございません」

レクシーが首を橫に振ります。

「樞機卿猊下に尋ねたいのだが……、私は捕らえられている2週間もの間、一度も信仰について貴方やその部下に尋ねられなかったのだが、それは異端審問として普通なのかね?」

樞機卿猊下は言葉を失いました。ナマドリウスⅣ世猊下が追って尋ねられます。

「どういうことかね? ヨハンネス」

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「あ、いや、その」

即、噓であると言えずに口籠もってしまったために返答に窮しているのでしょう。

「人ので魔石を創り出しているのは明らかな神への冒涜、審問するまでもない事です」

ああ、彼は自らの死刑執行書にサインをしてしまった。

「ほう、魔石を創るのは罪深いことか。それではペルトラ氏の発明は封印されるべきであり、人の手による魔石を使うことなど罷りならん。そう言っているのかな?」

教皇猊下は一同を見渡します。陛下は々渋い顔で、ペリクネン公はしっかりと頷きました。國としては魔石製作を行いたいのが本音、ペリクネン公としては魔石は自領で産出されるものの値崩れを防ぎたいのが本音でしょう。

もはや関係ありませんけども。

「経典の恣意的な解釈と思えるがね」

そう言いながら教皇猊下は冠を外されて手に持たれ、禿頭をでられてから冠を掲げられました。

淡い水の巨大な魔石がシャンデリアの燈りを反して煌めきます。

「ところでだ。"世界の涙"と銘付けられたこの中央の魔石。彼らからの獻上品であるのだが、つまり愚禿もまた異端であるとヨハンネス樞機卿は言うわけだ」

彼らの顎がぽかんと開かれ、ヨハンネス樞機卿は床に倒れました。

「いや、告発は構わないとも。教皇の不信任を問うのも樞機卿に課せられた大事な仕事であるからね。しかし教皇が異端であるとならば、それは各國の樞機卿を招集した場で行う必要があるねえ。全樞機卿の前で愚禿は異端だと告発してみるかい?」

放心しているのか、衝撃に気を失ったのか反応はありません。教皇猊下は侍者を呼び寄せ、彼のを起こさせました。

そして重々しく宣告します。

「ヨハンネス樞機卿をその任から解き、柄を拘束する。またその蓄財に不法なところあればそれは教會の沒収とし、落雷をけた聖堂の改修費に回すものとしよう。代わりの樞機卿が選定されるまで、愚禿、ナマドリウスⅣ世がこの地に滯在してこの地の信仰が良きものになるよう勤めさせていただこうか」

そう言ってこちらに片目を瞑ってみせました。

ふふ、ついでにわたくしたちとの商談をする気ですわね。

侍者だけでは連れ出せないため、聖騎士たちが數名がかりでヨハンネス樞機……ヨハンネス氏のを引き摺っていきます。

「どうかね、ヴァイナモⅢ世陛下」

再び冠を被り直し、教皇猊下が問いかけました。

「……まさかヨハンネス樞機卿がそのようなことを」

まあ、常套手段ですか。都合よく倒れた彼に責任を被せて逃がれようとする。ただ、逃れようも無いのですけど。

「ではまあ、異端の嫌疑も晴れたということで良いのかな? ペルトラ夫妻は自由に魔石を創り、自由に売ることができると」

「それは……っ」

ペリクネン公から思わず言葉がれました。

陛下も続けます。

「教皇猊下の額を飾るほどの魔石を産める技を國家で管理せず、野に置くということはあり得ないのではないでしょうか。それは我が國でなく、どの王もそう判斷を下すかと」

教皇猊下がこちらを見、わたくしは頷きます。今の陛下の意見自は當然のものでしょう。ただ、わたくしたちと王家の間には確執があることと、わたくしたちの技や開発に正當な対価など払いようがないだけで。

「ペルトラ夫人ヴィルヘルミーナよ。改めて謝罪はし、葉えられる限りの褒を與えよう。寛恕し、その技を供與してはくれまいか」

わたくしもため息を吐きます。

「夫を異端の嫌疑で捕らえさせておいて、今更その言葉もないでしょう。わたくしたちは他國に逃れても良いのですわ」

「そもそも前の謁見の間にて、取り付く島もなかったではないか」

「それはあなた方誰もが保に走っていたからでしょう」

跪いたままのエリアス殿下を扇で示します。

「誰がこういった態度を示しました?」

教皇猊下が口を挾まれました。

「それは良くないね」

「教皇猊下、先ほども言いましたが、政に干渉するのはおやめ下さい」

猊下は頷きます。

「改めて言うが、政になど干渉はしないよ。ただ愚禿は、パトリカイネン王家のヴァイナモⅢ世陛下とエリアス王太子を破門すると宣言できるだけだ」

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