《【書籍化】追放された公爵令嬢、ヴィルヘルミーナが幸せになるまで。》第103話:帰還

ξ˚⊿˚)ξ本日一挙4話更新で完結いたします。

ペルトラ夫妻は愚禿にちょいと頭を下げて部屋を後にした。

重苦しい雰囲気の部屋だが、僅かな安堵もじられるか。

「さて愚禿はこやつの不正な蓄財を調べねばな。どうせ溜め込んでおるじゃろう」

ヨハンネス樞機卿の椅子を指し示す。エリアス殿下が言う。

「後ほど、私や派閥の者からの獻金や贈與についての目録は提出いたします」

ふむ、と頷く。協力的なことだ。

エリアス殿下の婚約者は始めから覚悟が決まっていたように思う。エリアス殿下と王妃殿下はその表、態度からも反省のが強く見える。ヴァイナモⅢ世陛下は反省すれどまだ不満のが強いか。

「先ほども申しましたが、愚禿はしばらくこの國に留まらせていただく」

陛下は頷く。

「汝らが謝罪と退位を以て破門という大剣を振るわずに済んだ。そしてペルトラ夫人の溫により、汝らは命を繋いだ。だが、剣は鞘から抜かれていることをゆめゆめお忘れにならぬよう」

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四名は一瞬ぎょっとした表をしたものの、真剣な表で頷いた。

ペリクネン公のく。聲は聞こえぬ。だが……。

「『何が溫だ』かね?」

心も読めればも読める。単純な男だ。公が顔を上げた。

「私はこれで破滅だ。溫も何もない」

「ふむ、自分がしたことを棚に上げて良く言うものであるな」

「あれは前妻に似て賢しらなだった。ヴィルヘルミーナ、あれは鬼子だ」

実の娘を良くそう悪く言えたものだ。

そう言えばペルトラ夫人は最後、この元父に何も言及しなかったなと思う。あの場で無視することにより、昏く燻る悪意でこの男のを焼き続けることこそが彼の復讐であるのか。

愚禿は立ち上がるとその視線に憐憫を乗せて見下した。

侍者が近づき、皺だらけの愚禿の手を取った。

「では愚禿も失禮しようか。見送りは結構であるよ」

…………

カラカラと車椅子の車が回ります。

王城正面の大階段のところで、車椅子を降りてもらい、車椅子を城の兵士に預け、ゆっくりと手を繋ぎながら階段を降りていきます。

レクシーがそっと耳打ちします。

「あれで良かったのかい?」

彼らへの処遇についてでしょう。

「先ほども言った通り、死は安易です。彼らにはわたくしとあなたが幸せに世界を、國を変えていく様を見てもらう方が罰になるでしょう。より苛烈な罰にするなら不にするなり、夫婦や婚約者を引き離すなどもできますが……」

レクシーが笑います。

「実は以前、君の蔵書に『世界の拷問』というのを見つけたから、てっきりそういう提案をするのかと」

まあ、見られていましたのね。

「ふふ、実際そこまでする気にもなれなかったのです」

レクシーは腳を止めます。階段の中ほどで々休憩ですわね。

「なぜ?」

「簡単なことです。わたくしが、今、幸せだからですわ」

「そうか、幸せか」

幸せであるけれども全てを許すなどとんでもない。でも幸せであるからこそ、この國を亡國にしたり、彼らを殘に殺したりする気にもならない。

彼らに甘くなる點があるとすればそこです。レクシーに會わせてくれたこと。

わたくしはレクシーの骨張った手を握ります。

「もちろんあなたが獄死していたり、拷問をけて障害を負っていたら、いくらでも殘に振る舞いましたわよ」

「そうか」

再び歩き始めます。

城門を出るとすぐ、馬車止めにはわたくしたちの家の馬車が待機していました。

「旦那様!」

「奧様!」

「良くぞご無事で!」

待機していた従者たちがわたくしたちの姿を認めるとわっと歓聲を上げて駆け寄って來ました。

こうして馬車に揺られ、およそ半月ぶりに、屋敷には當主が帰還したのです。

屋敷が歓喜に沸いた翌朝。

わたくしは粥《ポリッジ》のった皿に匙を差し込んで一掬いすると、それを口元に運び、ふーっと息を吹きかけてから差し出します。

「はい、あーん」

背中にたくさんのクッションを當てて ベッドに座るレクシーへと。

彼の薄いが開かれ、そこに匙を差し込んで抜きます。彼の顎がもぐもぐとき始めました。

わたくしは再び匙で粥を掬います。

「なあミーナ、別に俺はけないわけじゃないんだから、君に食べさせてもらわなくても大丈夫なんだ」

息を吹きかけて。

「はい、レクシーあーん」

彼のが開かれ、細い顎がもぐもぐときます。

「だからミーナ」

小さく刻みペースト狀にしたを差し出しました。

諦めたように口が開かれ、もぐもぐと咀嚼されます。

「世話をされるのはお嫌ですか?」

「嫌ではないが……」

「それは良かったですわ。あーん」

もぐもぐ……。

「恥ずかしいんだよ」

視線が逸らされて周囲に。使用人たちが壁際で見ておりますからね。

「わたくしは恥ずかしくありませんわよ」

ふふん、元々貴族でしたもの。使用人に囲まれているのには慣れていますからね。

ヒルッカが笑みを浮かべながら近づいてきます。

「奧様はひっつき蟲みたいですね」

わたくしはスプーンを機に置くと、レクシーのに手を回して抱きつきます。

「そうよ、わたくしはレクシーにくっついてくの」

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