《【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。》第四話 火炎の魔法使い(ファイアメイジ)
「お、燈ちゃん。相変わらず驚くくらい良いだな、ちょっとだけおっぱいんでいいか?」
出會い頭のいきなりのセクハラ……遠慮なくびてくる手をべしっと叩き、ちょっとむかついた私は聲の主に心の籠らない笑顔を向ける。
「コンプライアンス違反ですよ、悠人さん……いい加減にしてくださいね」
墨田 悠人(すみだ ゆうと)。私と同じKoRJに所屬する、能力者だ。染め上げた金髪を短く刈りそろえており、頬に大きな傷がっている。この人ヤクザかな、と思ったがこれは戦闘で負った負傷なのだそうだ。背は高く一八〇センチメートルを超えているが、比較的細だ。
上下とも著崩したスーツを著ており、ネクタイはしていない。全ての指に指を嵌めており、指も髑髏や悪魔の造形をもした不思議な彫刻が特徴だ。正直この指は趣味が悪いと思うが……本人は相當に気にってるそうで、前にとても自慢された記憶がある。
會う度にこのセクハラは続いている。もはや日常風景となっているがあり……誰も注意することすらしない。この程度では私が怒ったりしない、悠人さんに屈しないと思っているのだ。それで良いのかこの支部は……きちんとコンプライアンスを遵守して、この全の敵……獣を滅してほしいと思う。
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「そっかー、でもいつかませてくれよ。俺さぁ燈ちゃんのおっぱいめたら死んでもいいって思ってんだよ」
悠人さんは諦めずに私の肩に優しく手を置いてニコニコ笑っている。セクハラばかりで辟易するが、日本支部の能力者としては非常に優秀な戦力だ。だからぶん毆るのはやめておくことにする。ピキピキしてますけどね!
「墨田さん、子高生にセクハラをするのはちょっと……」
私たちの補佐をしている青山さんが悠人さんに苦言を呈する。ドライバーや報サポートなどを行う擔當で、能力者ではないが常識人として重要な人だ。眼鏡をかけて七三に分けた髪型、よくみるとし白髪が混じっている典型的なおじさんという風貌だ。その青山さんの橫にあった花が突然燃え上がり……青山さんが驚いてその場から離れる。
「はあ? サポート役がなんで俺に意見言ってんだよ……ってな、冗談冗談」
悠人さんが悪戯っぽく青山さんに笑うと、著火した炎を消す。悠人さんの能力は発火能力(パイロキネシス)。視線の先にある、空間問わず火を起こすことができる。発火した炎は彼が解除しない限り、相手を燃やし盡くすまで止まらない。
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コードネーム『火炎の魔法使い(ファイアメイジ)』とはよく言ったものか。
年齢は確か……二〇代後半と聞いている。普段はKoRJの職員として働いていることになっているが、仕事をしない事で有名な社ニートって評判だった。ただ、戦闘となれば彼は優秀だ。単純な戦闘能力では私の方が強いはずだが、消えない炎がとてつもなく厄介なのだ。そして細なのに接近戦もこなせる。萬能キャラ、という言葉がしっくりくる。
「それよりも、仕事の話をお願いします」
「準備はいいかな? 今回のミッションを説明しよう」
KoRJの部長、八王子 朱雀(はちおうじ すざく)。年齢四〇代後半、灰の髪をオールバックでまとめ、貫祿のある風貌に口髭を生やした……ナイスミドルなおじさんが口を開く。八王子さんは私の直屬の上司でもあり、日本支部の能力者をまとめる隊長でもある。
私はこの八王子さん、という人を気にっている。というのもこのおじさん、普段はこんなだが案外面倒見が良く、私がめばスイーツを好きなだけ食べさせてもらえるからだ。餌付けされている、とも取れるが子高生はスイーツが大好きなのだ。それは前世がオジ様剣聖だった私でも抗えないだ。
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スイーツを食べているときに浮かべている笑顔の私を見て、娘をみる父親のように優しい目をする八王子さん……前世の私には子供がいなかった。死ぬ前に將來を約束した相手がいたが……もし伴と子供を作っていたのであれば、自分のような娘が生まれていたかもしれない。
だから八王子さんの優しい目を見て、もしかして自分がこんな目をしていたのではないかな? と思ってしまいそれからなんとなく懐いてしまった自分がいる。
「今回のミッションだが……タチカワにあるとある病院に行ってもらう、降魔が出たとの連絡をけている」
「タチカワ? 都下の方ですよね」
うむ、と八王子さんが頷く。KoRJのっているビルからだと高速道路を使っても一時間以上かかるのではないか。あまりに夜遅くなってしまうと親が心配する。KoRJで書類整理のバイトをしている、という設定で親には話しているが、それでも子高生であることの限度はあるのだ。
「今回は移のためにこちらで車を用意した。帰りは直接ご自宅へ送迎しよう。親さんにも許可はとっている」
八王子さんは私の不安を解消するかのように優しく笑う。本當に八王子さんはいい人だな、と心する。こういう細かい心遣いがとても嬉しい。だから私はKoRJで働いているのだが。
「それではすぐにきましょう、私は準備をします」
ソファーから立ち上がって、私は更室へ向かう。戦闘服や武や戦闘用のブーツなどはKoRJに置きっぱなしになっている。家に日本刀を持って帰った時に、母親が大騒ぎをしたことがあって、それ以來気を遣っているのだ。
更室にり、私は自分のロッカーを開ける。そこには私がこの世界で用している無銘の日本刀、そして軍用ブーツが一足、革のグローブ、戦闘服一式がっている。
日本刀は今の私のお気にりだ。この日本刀は鎌倉時代に打たれた、とある『名刀』をモチーフとして現代の技で打ち直された私専用のオリジナル日本刀だ。
し長めの刀と鋭い切れ味、前世では見ない品としてのしさを持っている。古代日本の刀匠は素晴らしい技を持っていたのだな、と心すること頻りである。KoRJは特殊な金屬を使用し、古の技を用いて鍛えられたこの日本刀を私に貸與してくれた。私のパワー、そしてミカガミ流剣で振り回しても折れない素晴らしい武である。
前世で使っていた魔剣グランブレイカーはいくら念じても出現しなかった……あの剣は私と神的に繋がっていたはずだが、転生してからはその繋がりも切れてしまったようで存在をじない。
準備のために制服をぎ白い下著姿となった自分を……鏡で見つめて、『ふむ、やはりスタイルが素晴らしい!』と自然と私の顔に笑みが溢れる……いや、なんか男目線で自分のを見てる変な人みたいだな、と気がつき慌てて頬をし叩く。
鏡に映る自分……やっぱ発育はいいなぁ、と自分のを見て考えてしまう。いつから長したんだっけなあ? と記憶を探るが中學生くらいから急激にらしい型になっていったのを見て、前世の自分に娘がいたら長のたびに喜んだんだろうか? と考えることもある。
ちなみに現世の私は同級生の中でもスタイルが良く……同級生からもよくスタイルを出にイジられることもある……ちなみに一番イジってくるのはミカちゃんだったりもするのだが。
次にロッカーより戦闘服を取り出す……青葉の制服をコピーして作してもらった、特殊繊維の強化服だ。ちなみに今著ている制服をコピーしてくれ、と頼んだのは私だ。
一応子高生なので制服が一番可い正裝だと思ってるからだ。それに青葉に通っているのは、たまたま中學生時代に見た、青葉の制服がとても気にったから。前世が男でもとして長年生きていると価値観も変わるものだ、と自分にある意味心する。
それまで著ていた制服は丁寧に畳んで袋へと収納する。これは仕事の時に車に置いておこう。
ロッカーからスパッツを取り出すと、スカートをたくし上げてから下に履き、下著が見えないように工夫する。KoRJは男が多い。下手に中が見えてしまうと余計なことを考えてしまう人もいるだろう、という配慮から必ず仕事の時には履くようにしている。
まあ、前世の私ならスカートの中が見えたら、絶対にドキッ……いやちょっと々考えちゃうだろうしなあ……それと前世よりもこの世界の下著は面積が、その……とても小さい。最初見た時は『本気か?!』と驚いたものなのだ。だから、他人への配慮というのはとても大事だと思う、うん。スパッツを履き終えると私はスカートを元に戻して、しだけ形を整える。
それまで履いていた靴をぎ、軍用規格(ミリタリースペック)のタクティカルブーツへと履き替える。私の能力でくとこのスペックのブーツでも數ヶ月持たない。それくらい簡単に削れてしまう。そういえば普段履きの靴は一日持たなかったな……。
最後にグローブを華奢な手に嵌めると、日本刀を腰に差す。グローブは全力で敵を毆ったりするときの手の保護のためと、り止めそれと……いざというときの防の代わりに使っている。
鏡を見つめ、自分の顔を確認する……しだけ化粧を直さないとダメかもな。
私は化粧が濃いタイプではないが、學校の校則がそれほど厳しくないため、普段から気持ちナチュラルメイク程度には化粧をしている。ミカちゃんが化粧の仕方や、流行についてよく教えてくれる。となってからは全てが新鮮な経験だ。
化粧ポーチを開け、中にっている化粧道を取り出して軽く化粧を直していく。仕上げに口紅をリップブラシを使って軽く整えるともう一度鏡を見る。
うん、我ながらとても可いと思う。鏡に向かってし微笑んでみる……あら、なんて可い子高生が一人いるのかしら……しだけニンマリと笑顔を浮かべてから、自分の姿にし恥ずかしくなってし頬を染めて真顔に戻る。
「な、何やってるんだろ……私……」
でもまあ、とある民族では戦いの前に化粧をして戦に備えるという……それと同じようなものだ、と自分で自分をめると、ポーチを通學用のカバンに戻し……これで準備萬端かな。
準備ができた私は、り口に向かって歩き出す。ここからは私の仕事の時間だ。
_(:3 」∠)_ その部裝甲はコンプライアンス違反ですよ!(オイ
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