『エジプトから発掘された木乃伊(ミイラ)展』

國立博館のり口に掲示された橫斷幕に書かれたイベントが開催されている。

『砂漠で発掘された新しい木乃伊(ミイラ)が日本で初公開！』

『まるで生きているかのような保存狀態の三の木乃伊(ミイラ)が見れる！』

宣伝文句が橫斷幕に書かれている。だがしかし博館にっていく見學者の數はまばらだ。

それはそうだろう、新しい木乃伊(ミイラ)が展示されている、と書かれていても有名な古代王家の墓から発掘されたものではなく、最近住宅地の工事中にたまたま見つかったというだけのものだ。

保存狀態が良い、とはいえ同時に発掘されたものには財寶のようなものはあまり多く無く、盜掘にあった後のものと想定されている。そのため、博館の企畫擔當者ですらため息をつきたくなるくらいの……寂しい場者數だった。

博館のり口に一人のフードを被った男が歩いてきた。

男はチケット売り場で、暇を持て余してやる気がなさそうに爪の手れを始める付のに話しかける。

「大人一枚お願いします〜」

「……一二〇〇円です」

お金をけ取るとは男の方向も見ずにチケットを放ってよこす。男は黙ってチケットをけ取ると、ゆっくりと博館の中へと歩いていく。

男は、フード付きのパーカーを目深に被っており口元しか見えていない。パーカーは量販店で買えるような安目のもので、ジーンズとスニーカーもそれほど高価なものに見えない。手をフードにばしてし頭を掻く。覗いた手は日本人のものではない……日焼けというよりは褐をさらに濃く煮詰めたようなをしている。

暇そうな初老の警備員が男に気が付くが、最近は國際結婚でミックスルーツの子供も多い、多分この男もそうなのだろうなと考え直し、不審者ではないと判斷して見送っていく。

そんな弛緩した警備員の様子を見て、薄く笑うと男はゆっくりと博館の奧へと進んでいく。

砂漠から見つかった生活雑貨や、多の財寶が展示されている。掲示されている説明には様式としてはかなり古く、古代エジプトの時代に作られた、と書かれているが……それを見た男がクスリと笑う。

「へえ、案外この世界の學者は間抜けなんだな……エジプトなんて國では作(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)のに」

小聲だったために他の見學者には聞こえていない。男は軽くあたりを見渡すと、地図を見ながら目當ての場所へと辿り著く。

男は目的の場所に置かれている展示を見て、クスリと笑う。

木製の棺に収められた木乃伊(ミイラ)は、長が二メートル近い巨軀だった。その木乃伊(ミイラ)が三並べられている。X線調査でも詰めなどはされておらず、巨人癥を患った兄弟の木乃伊(ミイラ)なのではないか？　と説明板には記載されている。

その記載を見て再び男が失笑するが、その様子を周りの場者たちは気がつかない。

「さて……今夜から始めようか。ずっとかないのも飽きただろう？」

男がフードを軽く持ち上げると、明らかにこの世のものではない深い緑……翠玉(エメラルド)のような眼が覗く。その眼が不気味に輝くと……木乃伊(ミイラ)の眼窩がピクリとく。まるで機械人形(ロボット)が起するかのように、次々と眼窩に赤いが一瞬燈り……すぐに消えていく。他の見學者達は異変に気がついていない。

男はフードを再び目深に被ると、博館を足早に立ち去っていく。警備員はその後ろ姿を見送りながら、再び欠を始めた。

男は博館から出ると、り口に向き直ってボソリと呟きながら咲う。

「では……早速今夜からよろしくね。みんなの働きを楽しみにしているよ」

「ミカちゃん……急で悪いんだけど私ショートケーキが食べたいよぅ……」

私とミカちゃんは、青葉高等學園の教室でお晝ご飯のお弁當を一緒に食べていた。

先日のお仕事前に江戸川さんに飲ませてもらった紅茶や茶葉をし分けてもらった私は、最近自分でいれる紅茶というやつにどハマりしていた。

お父様の通販用アカウントをお借りして世界各國の紅茶を買いれて、毎日のように違う紅茶をれて夜な夜な楽しむ、そんな紅茶好き子へと変貌していたのだ。

そして、紅茶にはケーキ！　そう、私の本命はケーキを食べることなのだ。チーズケーキにモンブラン、チョコレートケーキにショートケーキ……毎日ターくんに頼んで違うお店のケーキを買ってきてもらっては、晩飯の後に満面の笑みでケーキを食す……そんなかな楽しみが最近の日課だ。

弁當を食べていてふと……ケーキを食べたくなってきてしまった私はミカちゃんにわがままを言ってみたのだ。

「え？　あかりんまだお晝だよ！？　それにケーキなんかお晝にならないでしょ？」

「そうだよねえ……それでもお弁當の後に食べたいんだよねえ……」

しょんぼりした顔で弁當をつつく私……決してこの弁當が味しくないというわけではない。

だってこの弁當は私が自分で作っていて、毎朝確かな満足をじるレベルで味しいのだから。

前世では基本的に焼く！　煮る！　とりあえず生！　という実に野生的(ワイルド)な食生活を送ってきた私だが、現世では一人前のらしくお母様から花嫁修行の一環として料理の基礎から応用まで叩き込まれている。

いや、花嫁になりたいわけじゃないんだけど、らしく生きてほしいという親の気持ちを無礙にするわけにはいかないのと、『いやー無理っすね、だって私前世が男なんだもん』とか口に出してしまったら即病院送りになるだろうという判斷から大人しく従っているのが実なのだけど。

ところがこの料理というやつは実に前世の學者としての活に近しいものがあり、研究意をそそられる行だということに気がついてしまった。レシピ通りに作するというのもアリだとは思うのだけど、アレンジを加えてオリジナルな味を追求したり、ちょっとその日の調に合わせた獻立を考えることなど、実にやることが多い。

まあ、はっきり言えば現世に転生した私は料理することが楽しくなっちゃったわけで……人生変われば変わるものである。

ただ、甘いものと料理どっちが好きか？　と聞かれたら私は確実にスイーツ！　と即答するくらいには甘いものをしている。そして一度甘いものを食べたいという求が生まれると、なかなか意識を戻すことが難しい……だって私今は一七歳の子高生なんだもん。

「あかりん、ケーキは太るからほどほどにしないと……」

ミカちゃんが手をばして私の脇腹のあたりをさすり……くっ……と悔しがる。私の脇腹をグイッと両手で摑んで……ミカちゃんは私の顔をじっと見つめて恨み言を口にする。ちょっとまた近いんですけど、ミカちゃん……。

「太ってねえ……あかりんホント鍛えてるよねえ」

「ミカちゃんに借りた雑誌にも書いてあったけど、腹筋はちゃんと鍛えろって書いてあったから毎晩頑張ってるんだよ」

私は腰に手を當ててふふん、とミカちゃんに笑う。

まあ、雑誌には一〇回程度でいいですよって書いてあったんだけど、私の筋力を考えるとそれでは足りないので數百回やって、それから一通り自重トレーニングを行ってからプロテイン飲んでスイーツ食べて……とまあ夜のルーティンはそんなところだ。

ミカちゃんが寂しそうな表で自分の脇腹をちょいちょい突いた後、しだけ不機嫌そうな顔で私のに両手を置いた。

「ちょ、ちょっとミカちゃん……教室だよ」

「くそー、こんな破壊力満點なものを持っているのに……」

ミカちゃんが顔を赤くした私のをむにむにと軽くむと、手を離して自分のを見つめる。

いくらミカちゃんでも教室でむのはちょっととは思うが、私のが長していった時にどうしたらいいのかとミカちゃんに相談したことがあって、自宅などで會うときはミカちゃんは私のやをるのが大好きだったりもする。

「神様はずるいわ〜、私があかりんくらいあったら自信つくんだけどなあ」

「ミカちゃんも十分あると思うよ……？」

彼はあまり意識していないようだが、昔ミカちゃんと一緒にお風呂にった時に私は彼のを見て、しだけ興してしまったことがある……いや、娘のような年頃の娘と一緒にお風呂にるという験は、正直前世の記憶が男である私には刺激が強すぎた。

というか著替えの時とかもミカちゃん私に対しては全くガードが緩いんだよなあ。

『あかりん……なんで私のを舐め回すように見ているの……？　昔一緒にお風呂った親戚の叔父さんみたいだよ？』

思わずまじまじと見てしまった私に困ったような表を浮かべた彼の目が忘れられない……本當に申し訳ないことをしてしまったのだと、今では反省している。

ちゃんと出るところは出ていて、それでいて細……実にバランスの取れたプロポーションをした彼は、可らしい外見からは想像もつかないくらい素晴らしいの持ち主なのだ。

ところでそのエロい叔父さんとやらは、鉄拳制裁しにいった方がいいですかね？　私のミカちゃんを視線で汚すなど萬死に値する。

私のは正直チートと言われても仕方のないところなのだが、ミカちゃんも十分チートなおをお持ちなのだ。だから男子生徒諸君、実はミカちゃんは超優良件なのだぞお前ら本當にそれをわかっているのか？

でもお前らには渡さんぞ小ども……ミカちゃんはこの私のものなのだ！　彼がお付き合いする男は私よりも強くて、賢くて尚且つイケメンでないと、彼が許したとしても私は許さんのだ。フーハッハッハ！

心の中で邪悪な魔王(ハイロード)のような高笑いをした私は、そこで周囲の男子生徒からの遠慮のないエロい視線をじ取って心舌打ちをする。

私たちの戯れに下心満載の視線を向けていた男子生徒を見回すように私が軽く睨みつけると、皆萎したかのように下を向いて弁當をもそもそと食べ始める……全く男ってやつは。

「でも私ミカちゃんに々教えてもらわないとダメだからなあ……頼りにしてますよぉ先生」

私はミカちゃんと目を合わせて……お互いくすくす笑うと、すぐにお弁當を片付けることにする。お晝時間にケーキは無理でも購買部でお菓子くらいは食べたいからだ。

「任せてよ、あかりんと一緒にいる時が私一番楽しいからさ……これからも一緒にいようね、あかりん」

ミカちゃんの屈託のない笑顔に、私は心の底からの笑顔を浮かべて笑う。

「絶対一緒にいてよ？　ミカちゃんがいなくなったら私生きていけないかもしれないしね」

_(:3 」∠)_ 書いておいてなんですけど、弁當にケーキ詰めるとか狂気の沙汰ですなw

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