「あかりん……それはだね！」

「こ、……？　私が……？　あ、ありえないよ……」

數日後にがくようになり、傷もあっという間に塞がった私は、ミカちゃんと一緒にお晝ご飯を食べたあとに、先日志狼さんにお姫様抱っこされた時の話を々伏せながらも話してみた。

バイト中に初めて會った人に危ないところを助けられて、流れでお姫様抱っこされて、下の名前で自然と呼んでしまったこと。

それがあまりに恥ずかしくて……とにかく恥ずかしくて、その人のことを思い返すと心臓が高鳴ることなど。

私は苦笑いを浮かべながら、またまたご冗談を……と手を振るが、ミカちゃんは私を見ずにニヤニヤと笑いを浮かべている。あれ？　ミカちゃんなんでそんなに嬉しそうなの？

「ンフフ……ついにあかりんもをするようになったんだねえ……わたしゃ嬉しいよ」

ミカちゃんはとても悪そーな顔で私をみている……いやいやとかありえないから、ちょっとだけコロッと行きそうになったけど、起きたら普通に行できてるし思い返すと恥ずかしいだけだからとかじゃないし。

だって私……前世が男なんだよ！　と言いたいけど、それ言ったら確実にパラノイア扱いされそうだからな……中途半端にぼかしたじでしゃべったのが良くないのだろうか？

いや、しかしそれよりって何だよ！ 私は前世で散々々なと浮名を流した剣聖(ソードマスター)ノエルだぞ。

そんなモテ男がだ、たった二〇そこそこの若造にしてるだと？　ミカちゃんはボーイズラブの見過ぎじゃないのか？！　第一前世の姿で考えたら完全にウホッ！　な図にしか見えないんだぞ？　想像するだけで恐ろしい。

「私なんて興味ないよ……」

「んー？　でも次會ったときその人の顔見れる？　名前呼べる？」

その言葉を聞いて、志狼さんの顔を、笑顔を思い出してみて……私の頬がぼっと熱くなるのをじて、自分ののきとの反応に自分のことながらドン引きする。

何だこのの反応は……いや確かに志狼さんは喋り好きな優しくて、暖かいじの男なのでとてもホッとするタイプなのだが、いやだって好きとか嫌いで言ったら好きの部類にるけどさ、とかじゃないって絶対。

……いやいやいや、違う違う、とかじゃなくて何だろう、うーん……守ってもらった時に何というか、ふと前世の子供時代に私を、いや前世のノエルを必死に庇ってくれた人のことを思い出したのは確かだ。

ただ、その人の顔を思い出せない……これは絶対前世の記憶に引きずられた気持ちなんだ、そうに違いない、だってそうでもなければこの気持ちのき方は理解できないのだから。

うんうん唸って必死に悩む私の反応を見て、ミカちゃんがニタリと笑う。

「ンフフ……あかりーん……お姫様抱っこされて火が著いちゃったんだねえ……」

うげ……ミカちゃんの目がきらりとる……しまった、こんなこと相談してはいけない人の一人だった。

目をらせながらにじり寄ってくるミカちゃんの迫力に負けて、後退りする私。

「ミカちゃんいつもと違って顔が怖いよ……」

「あかりんののお相手を……私が味してあげなければなりませんなあ……ウヘヘ」

ど、どうしよう……どんどん何か自分が違うものになっていく気がしてめちゃくちゃ恐怖をじる。抵抗しなければ……私は混する思考の中、なんとか言葉を絞り出す。

「わ、私のタイプは……その人とは全然違うもん……だから好きじゃないもん」

「知ってるよ、あかりんの好きな人って土方歳三とかでしょ？　中歴史好きなおっさんかよ……でももういない人だからね、現実にあかりんが好きになるのは案外頼りがいのある人なのかもねえ……」

頬を膨らませていっぱいの反抗を試みる私……しかしミカちゃんに速攻で論破されて撃沈してしまい、自分自の殘された武があまりにないことに愕然とする。

だめだ、これはいけない。どんどん洗脳されていく気分だ、うーわー、何だよこれー。

「安心してあかりん、私は相手がどんなゴリマッチョでもアキバに居そうな人でも心の底から応援しているから！」

ミカちゃんがとても気持ち良い笑顔で私に笑うと、グッと親指を立てた手を突き出す。

「志狼さんはそんなんじゃないもん……」

「ほお、相手は志狼さんというのだな、よしよし……」

私が彼の顔を思い出しながら、頬を熱くしてボソリとつぶやいた言葉をミカちゃんは聞き逃さなかった。

「うにゃあああああ！　ミカちゃん忘れてええええ！」

次々と私の何かが破壊されていく、そんな午後の始まりだった。

「……隨分遅かったな」

都心部のビルにある小さな貸し會議室。その扉を開けて1人の男が薄暗い部屋へとると、すでに部屋の中にいたスーツ姿の男が、部屋へとった男へと話しかける。

「いやいや、場所がよくわからなくて遅れちゃいましたよ。この世界の建はちょっと雑多な作りだよね〜」

部屋へとった男は、目深に被ったフードをあげると……白髪に尖った耳、サファイアに輝く緑の目、褐を煮詰めたようなを持った……博館にいたあの男だ。

「ララインサル……闇妖族(ダークエルフ)よ、お前の報告を聞こう」

スーツの男はララインサルと呼んだ目の前の闇妖族(ダークエルフ)を椅子に座るように促す。ララインサルは貸し會議室の質素なパイプ椅子を引いてどかっと座るが、パイプ椅子は簡単に軋んでしまう。

ララインサルはし訝しげな表を一瞬だけ浮かべるが、すぐに笑顔へと戻ると目の前の男へと話始める。

「あれ？　これしょぼい椅子だなあ……まあいいや。えーと博館に運び込んだ呪人(マミー)を起して騒ぎを起こしたんだけど、例の団の攻撃をけて呪人(マミー)は全滅。でも安心してよ……ボウリョクダン？　が間違えて運んじゃった呪は回収してあるからまた同じようなことができるよ。これでいいかな？　アンブロシオ様」

アンブロシオとは……目の前のスーツの男のことだ。彼は金髪赤眼だが異常に悪いと、日本人の顔ではなく……東歐の貴族然とした整った顔の男だ。長はかなり高く、一八〇センチメートル近くあるだろうか。ロイド眼鏡をかけており、時折神経質そうに眼鏡を直している。

ララインサルは、ニヤニヤと笑いながら懐を弄り……回収した呪……金の裝飾を施した骨のようなをアンブロシオへと放る。

「そうか、なら十分だな。実験としては良い結果だろう……敵の戦力はどうだった？」

アンブロシオはさほど面白くもなさそうに、呪をけ取るとスーツのポケットへとしまう。

「そうだなあ……一人面白いのがいるね、あとは……」

そのとき會議室の扉が開き、二人の人がってくる。

「すまない、遅れてしまった」

「あら、みんな早いのね」

一人は……灣岸の公園で青梅と戦した、灰のスーツの男。金髪、青い目、痩せたしの悪い顔は変わらないが、青い目は深い闇を湛えたような不気味な印象だ。

もう一人は、博館でララインサルと話をしていた妖艶な……黒髪に白い、赤い眼、口元には笑みが浮かんでおり、しいがどことなく空虛な印象を持っている。

彼はのラインがはっきりとわかるドレスを著ていて……満という言葉が似合うくらいのらしい型をしている。

「テオーデリヒ……それと荒野の魔(ウイッチ)か、座りたまえ」

アンブロシオは二人を椅子に座るように促すと、安のパイプ椅子は再び軋み音をあげて……二人は同時に何だこのショボい椅子はという顔をするがすぐに気を取り直したようにアンブロシオへと顔を向ける。

「……いつも決まった場所を押さえるよりも足がつきにくいのでね、こういう施設を使っている」

アンブロシオは無表で二人の心を読んだように答えると、何事もなかったかのようにララインサルに顎で続きを話すように促した。

「はいはい説明続けるよ〜。一人はミカガミ流を使う剣士だ。一どこで覚えたんだろうねえ……ただ彼は二つの魂を同居させている。可憐なの魂と獰猛な殺戮者の魂だ。の時でもこの世界の剣士としては十分強いけど、れ替わった後が、アハッ……見ものでね。とても僕たちにそっくりなんだよ」

ララインサルはさも楽しそうな顔で、報告を続けていく。

「それと博館には銀の狼獣人(ウェアウルフ)が來てたよ、こいつが呪人(マミー)二を破壊してたね。防結界を無視して頭を捻じ切ってるからびっくりしたよ」

「あら、アーネストがいたのね……気がつかなかったわ」

荒野の魔(ウイッチ)が報告を聞いて、し笑う。荒野の魔(ウイッチ)と狛江はイギリスで何度も戦った敵、いや元々は一緒に行をしていた。彼とはＫｏＲＧＢの同僚、そしてそれ以上の存在だったのだから。

だが、荒野の魔(ウイッチ)がなぜここにいるのかは、今はまだわからない。

「ああ……そっか荒野の魔(ウイッチ)は彼とは知り合いだったっけ」

「そうよ、私の可い坊や(アーネスト)……なんでも教えてあげたのよ。のし方も敵の壊し方もね」

荒野の魔(ウイッチ)はその時のことを思い出しているのか、し潤んだ目でけている。ララインサルは、し嫌そうな顔をしてすぐにそっぽを向いた。

「別に聞きたくないから、次どうぞ〜」

テオーデリヒが椅子から立ち上がり喋り始める。

「はい、私が遭遇したのは若い男です。主に念力(サイコキネシス)を使う若者でした。心が強く勇者(ヒーロー)の素質を持つ若者でした。倒すのには時間がかかりそうだったので、一撃を加えて私は撤退をいたしました。その間にララインサルが話していたが牛巨人(ミノタウロス)を倒したようですな」

アンブロシオへと頭を垂れると、表を変えずにすぐに椅子へと座り直す。

「イレギュラーでこちらに來てしまっていた妖鳥(ハーピー)と鷲獅子(グリフォン)、そして蛇竜(ワーム)もこのＫｏＲＪのメンバーに滅ぼされている」

アンブロシオは自らのスマートフォンとプロジェクターを繋ぐと、モニターで現場の寫真を見せていく。

なんとそこには、ＫｏＲＪが匿しているはずの降魔事件(デーモンインシデント)の寫真なども含まれていた。

「そういえば、私が吸鬼(ヴァンパイア)にした日本人も死んだな。まあ、あの程度の力量では生き殘れなかっただろうが……」

「病院を占拠して食鬼(グール)を一生懸命作ってたんでしたっけ、あれは傑作だよね。アハッ」

ララインサルはニコニコ笑いながらアンブロシオの顔を見ている。あくまでも無表を貫いてアンブロシオは続ける。

「ＫｏＲＪが我々の目的を邪魔する、というのであればこちらも対抗して戦力を整える必要がある。私は現地の裏組織などを通じて、複數の協力者を作っているがそれなりに時間がかかるのでな。當分は協力者と『異邦者(フォーリナー)』を使って、ＫｏＲＪへの攻撃を仕掛けていく」

その言葉に會議室にいる全員が頷く……そして次々と闇へと溶け込んでいく。

「では、次はもうしマシな場所に招待してくださいね、できればディナー付きとか」

ララインサルは笑いながら、最後に會議室から闇に溶け込むように消えていった。

_(:3 」∠)_ コロッと行きそうになったら、それはもう落ちているのではないだろうか？（哲學

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