「ハハハ！！　これはすごい！　やはりミカガミ流、一筋縄ではいかんな！　クハァアッ！」

剣の悪魔(ソードデーモン)の暴風のような連撃に、私は必死に攻撃をけ流しつつ徐々に後退している。勢いもさることながら、一撃一撃が非常に重く今の私の腕力では支えきれないためだ。

ちなみに、相手の攻撃をけ止めようとしたら……おそらく今持っている日本刀は確実に折れ、私のは簡単に両斷されてしまう。それくらいの膂力で攻撃を放っている剣の悪魔(ソードデーモン)。

ぎりりと歯を食いしばって攻撃をけ流し続ける。だめだ今は耐える時間……反撃の機會を伺いながら私は必死に防に専念する。

「く……ッ、こ……の……」

ただ私も人間である以上、集中力には限界がある……け流しが完璧でなかった攻撃が戦闘服を掠めて、切り裂かれ、に赤い筋を作っていく。

何が三人しか斬ってないこいつに負けないだ……慢心がすぎるぞ、新居　燈……悔しさから歯を食いしばってにじる焼けつくような痛みに耐えながら、必死にけ流す。

——ドクン。

剣の悪魔(ソードデーモン)は攻撃の手を緩めることなく、歪んだ笑みを浮かべて私を挑発する。

「よ、諦めてこの小僧に組み敷かれたらどうだ？　小僧が十分楽しんだ後に殺してやるぞ」

「い、いやです……お前なんかに私は負けない……ッ」

私はジリジリと後退しながらも、反撃の機會を狙って隙を窺う……そんな私の苦しそうな表を見て、剣の悪魔(ソードデーモン)はニヤニヤと笑みを浮かべたまま、剣を振るう。

——ドクン。

防を続ける私の中で、猛り狂う魂が脈する……次第に私自の心が獰猛な、彼の魂に塗り替えられていく。無理矢理に心とが塗り替えられていくような、とてもとしては屈辱的な覚を覚えて私の魂が震え、思わず悲鳴に似たを口に出してしまう。

「や、やめて、私を……私を汚さないで……」

心臓が早鐘のように鳴り響き、とてもではないが抑えられない衝をじて、わた……わ……いや、俺はぎらりと目を輝かせて笑みを浮かべる。

……たかだか剣の悪魔(ソードデーモン)如きで、何をしているんだ燈は……まあ、言うても目の前の魔族は、それなりに強い個だから、このでは仕方ないのかもだが。

まずは攻撃を止めないとな……こう言う時に相手の気を逸らすには、殺気をこめた反撃のイメージを相手に叩きつける、だ。

防の最中、俺が牽制のために放った殺気にたじろいだのか、剣の悪魔(ソードデーモン)が攻撃をやめて飛び退る。

「？！　な、なんだ、反撃かと思えばいてないだと？　……しかもこいつ……笑っている？」

「ンフフ……剣聖(ソードマスター)の技がしい？　そんなこと言ってたなお前。お前にゃ無理だ」

俺は普通の人が見たら失神するであろう獰猛な殺気を浮かべた笑みで剣の悪魔(ソードデーモン)を見る……いやあ、楽しみだ。

目の前の個はなかなかに良い腕を持っている、降魔(デーモン)と呼んでる魔では剣と剣の勝負にはならないからな、腕が鈍っていないか確認してみよう。

その目の輝きに剣の悪魔(ソードデーモン)……いや依代となった甲斐　雄一の魂が恐怖を覚えて勝手に後ずさる。

日本刀——この現代の剣はなかなか作りが良くて心する——を剣の悪魔(ソードデーモン)へ突きつけて、俺は口を開く。殘酷だが……我が剣を教えるにはそれなりの能力が必要なのだ。

「まず、お前の剣は力任せだ。スピードそれなり、パワーまあまあ、だが悲しいかな剣筋がれている。この……新居　燈の前だから、さっきまではお前が有利に見えたが……お前は初歩の型通りに素振りを毎日やるべきだ」

「……貴様馬鹿にしているのか？！」

剣の悪魔(ソードデーモン)が必殺の一撃を俺に繰り出すが……俺は日本刀を軽く振って、斬撃を斬撃によってけ流し、地面へと衝突させる。もうもうと埃が舞うが、俺はじずにじっと相手の目を見つめている。

先ほどまでとは違う新居　燈の姿に、剣の悪魔(ソードデーモン)は何が起きているのか理解できない、という表を浮かべる。

「それと、今け流してわかったが全の力をうまく剣先に伝えていない……衝突の瞬間にきちんと柄を握れていないな、握力は鍛えてるか？」

俺は一瞬で剣の悪魔(ソードデーモン)の間合いにり込むと、日本刀を軽く振って……剣の悪魔(ソードデーモン)の剣を握っていない左腕を肩口から切り飛ばす。

しの間を置いて、剣の悪魔(ソードデーモン)は肩口からを噴き出して……悲鳴をあげた。

「咄嗟の防もだめだな、目で見て防するのではなく、予測を使えば良い。まあ、これではミカガミ流免許皆伝は難しいな……教えられんよ」

俺は小馬鹿にしたような笑いを浮かべて、跪く剣の悪魔(ソードデーモン)を見つめる。俺を見上げる剣の悪魔(ソードデーモン)はを震わせて魔力を集中して、必死に傷口から流れるを止めながら、目から涙を流し……驚愕した表で呟く。

「免許皆伝……？　お前は、この世界のが何を馬鹿なことを……」

「言わなければわからんか？　お前は今、ミカガミ流最後の剣聖(ソードマスター)を前にしているのだ」

その言葉の真意を悟って……剣の悪魔(ソードデーモン)は恐怖に包まれた表へと変化していく。真っ青になり……こめかみに汗をだらだらと流して……いやこれは憑依されている依代の方の顔かな？　人間絶対的な死の恐怖をじると、こう言う表を浮かべるのだよね。

「そ、そ、そんな馬鹿な。」

「馬鹿みたいだと思うだろ？　俺もそう思うよ。本當に馬鹿みたいだ、この狀況そして今の世界は」

俺は剣の悪魔(ソードデーモン)が反応できないレベルの超高速の斬撃……ミカガミ流の『泡沫(ウタカタ)』を放ち……一瞬で首を跳ね飛ばす。地面に恐怖の表を浮かべたままの首が落ちると、首を切り離されたがゆっくりと地面へと倒れて、剣が音を立てる。

「……だからお前はここにはいらない、さっさと死ね」

日本刀を軽く振り、鞘へとしまうと……俺は目の前の若い年の頭に近づき……恐怖で見開いたその目を閉じてやる。この年はとても真面目な剣士だった。このの本當の持ち主、新居　燈も好を抱いていた。

剣士の死は新しい人生のり口……だからこの迷える年の魂がちゃんと神の元に辿り著き、新しい生を得ることを俺は心からむ。

おっと、そうだ……俺は落ちている剣に足を乗せて……力を込めてへし折る。ペキン、と軽い音がして……剣の悪魔(ソードデーモン)本が絶命する。

しかし……し危ないかなと思って無理矢理出てきてしまったが……燈の魂が普通じゃない勢いで泣きんでいる……んー？　なになに？　おじさんが聞いてあげよう。

『おっさんに汚されたぁぁぁ！』

『もうお嫁にいけない〜』

『くっさ、加齢臭してんぞ、バーカ、バーカ』

……お前、ちょっと前まで結婚なんかしねえって言ってたじゃないか……ギャーギャー騒ぐ燈の魂のびに、俺はため息をつくと……インカムに聲を掛ける。

「あー、その……任務完了です。迎えにきてください、お願いします」

元の魂にを返すにもし……時間がかかるようだし、考え事もしたい。適當にどかっと腰を下ろすと俺は考え事を始める。

さて、新居　燈に戻る前になぜ俺がここまではっきりと自分を認識したのか、これについて考えよう。

今まで微睡むように俺の魂は新居　燈の中に同居していた。たまに呼び出されて、新居　燈かノエルなのかよくわからない狀態で戦っていた。あの狀態はとても……なんというか、中途半端でとても自分ではなかった気がする。

きちんとした自我が生まれたのはこのがあの銀の狼獣人(ウェアウルフ)に助けられて、新しく生まれたにより燈が俺という魂を拒絶したことなんだと思っている。

心のように燈はじているが、俺にはわかるこれは俺の記憶に引き摺られた『憧憬』というだ。俺の記憶にある剣を志すことになった出來事と自分のを重ねてしまっている。

結果的にのようなを抱いたことで、燈は俺という男の記憶を拒絶した、それ故に俺が獨立してしまったという狀況だ。

俺の記憶と経験はそれまで確実に融合していたのに、魂の別が違うだけでこんなことになるなんて……人間というのは実に面倒な生だな。

ふと……自分のをもにゅ、とむ。うん、らかいし、おっきい。

その行に再び燈の魂が怒りの悲鳴をあげる。いや、悪かった、ごめんごめん、久々なんで思わずんだだけだって。

さてどうしたら良いだろう。このままの狀態が続くと良くない……俺は目を閉じて……心の中にいる燈の魂をイメージしていく。俺じゃなくて私、私は……新居……燈……。

「なんでノエルさんはなんですか……」

黒い空間の中……目の前に栗の髪、碧眼のおじさんが現れる。しかもだ。かなり長の男で年齢は……三〇代だろうか？　そして恐ろしく鍛え上げられており、筋質だ……のあちこちに刀疵や、矢傷だろうか、本當に傷だらけで歴戦の戦士、というのも理解できる。

目の前にいるの変態おじさんはキョロキョロと周りを確認した後、私を見て『おお』という顔で手のひらを叩いて……真顔で答える。

「だってお前もだもん、いやあ眼福、眼福」

「ぎぃやああああ！！！！　この変態！！！！　乙のを見るなああああ！」

私は必死に前を隠して……泣きぶ。そんな私の顔を見て呆れたように口を開く。

「おい、お前のなんか子供の頃から飽きるほど見てるんだ。今更それはないだろう」

「そ、それは……でも面と向かって見られるのに慣れてないので……」

私は顔を赤くして……目のやり場に困りながら、それでもチラチラとノエルの方を見て、答える。ノエルはちょっと考えた後にと(・)あ(・)る(・)部(・)分(・)を指差しながら、ニヤニヤ笑ってて私に話しかける。

「なんだ、ここが気になるのか？　どうだ実を見た想は？」

「……悠人さんレベルのセクハラ野郎ですね……」

ノエルはンフフ、と笑って手を振ると前世の格好だろう……とても民族的な裝をに纏った。私も気がつくと、青葉高等學園の制服になっている。

「これでいいか？　お前とし話がしたいんだ」

「話とは？」

私はし落ち著いた気分で目の前の……前世の姿に向き直る。ノエルはし真面目な顔で……私に問いかける。

「この……これはお前のものなのだから……俺がこうして別の自我を持ってしまったのはとてもまずいと思う。人間のは魂のれとしては小さい……だからこの狀態はとても良くないんだ」

ノエルはかなり真面目な顔で……私にそう伝える。真面目な顔でそう言われると、不安が心に広がる……不安そうな私の顔を見てノエルは、優しく笑う。

なんだよ、そういう顔できるんじゃないか……しだけ私の中に同居している魂の優しさにれて……ちょっと前にみたシルヴィというに対するも、こんな優しい気持ちだったんだろうな、と思う。

「このままいくと、最悪お前は人として完全に壊れる……それは俺としても悲しい」

ノエルは何故か……＊＊＊＊(大変卑猥な意味)を意味する両手の指のきを見せながらその言葉を発する。

「だから……そうなる前に俺と合して一つになろう！　燈！」

その言葉に魂だけの私は思わず拳を振り抜き……ノエルの魂をぶん毆った。

_(:3 」∠)_ 異世界最強ノエル　ノーランドさん伝説

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