《【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。》第三九話 自己認識(リアライズ)
「私が先に著いている、というのはどういうことだ……」
今私はイケブクロのイケフクローの前に立っている。わざわざ悩んで恥ずかしくない格好を、と思い以前ミカちゃんと一緒に買った服を著ている……。最近ミカちゃんとコーデについて々話すことがあり、私もしっかりとファッション誌を読むようになった。
前世の記憶では一張羅で過ごすことが多かったノエルだが、今世ではそんなことをしているのだぞ、と前世の記憶にある人たちに聲を大にして言いたい次第である。
『ねえ、ノエル兄それまた同じ服じゃ……』
『お、おうシルヴィ……ちょっと忙しくてな……』
『ちょっとまって、この間新しいの買ってあげたじゃない。どこいったの?』
『えーと……どこだったっけな……』
この後散々に怒られた、そんな辛い記憶がある。それくらいノエルという男は著るものに無頓著だったのだ。
特にノエルが同じ服しか著ない、とお怒りだったシルヴィさん! こんなに私は長したんだぞ! と言いたい、すごく言いたい。
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結局散々に悩んだ挙句、私はミカちゃんと一緒に選んだ外向けのロングスカートなどで構した服をチョイスした。
高校生としてはし大人っぽい服裝になってしまっているが、この辺りもミカちゃんがわざわざ選んでくれたので……これはこれでお気にりになっている。
『あかりんならこういう服裝も似合うと思うよ〜、ついでだから私も買おうっと』
というじで私はミカちゃんとよく服を買ったりしていて……家のクローゼットに數回しか著ていない服なども含め……前世では考えられないくらいの量の服を所持しているのだ。
だがしかし……普段は制服著てて、家では寢巻きみたいな服しか著ないので案外こういった外向きの服は使用頻度がなかったりする。
先輩遅いな……と手首に巻いたスマートウォッチを見るが……待ち合わせの時間は既に過ぎている。
まだ來ていない先輩についてはちょっと殘念なじだが……まあ途中で何かがあったんだろうと考えて、し最近の出來事について考えを巡らせる。
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まず、ノエルと私が本當に同じ人なのか? という點について。
これはまあ、意識の差はあれど同じ記憶、経験、能力を継承する別個の人格として捉えれば良いだろうか? ノエルは既に死んだ男、そして私は今生きている。この差が互いを別個の人格として捉えている、のだと思う。
今現在ノエルの魂は私の奧底に沈み……あの猛り狂うような熱い何か、はじられない。だからこのまま魂の結合を果たしていくにあたって、私=ノエルという一つの人へと再統合されていくのだろう。
それは果たして現在の『新居 燈』という個であるか? はまだわからない。
次にノエルが甲斐さんを斬った件、これは無慈悲だった、と私も思う。
記憶を探っていくと、ノエルが文獻から調べた記述として剣の悪魔(ソードデーモン)に支配された人間は二度と元には戻らない、というものがあった。ノエル……本當に考古學者だったんだな。だから、ノエル自は斬るしかないと判斷したのだろう。
とはいえあの時の主導権は私になかったからどうしようもなく、相手が強過ぎて手加減できなかったとだけ伝えている。
実際最初は完全に危なかったわけで……あのまま私が主導権を握っていた場合を想像するだけで背筋が寒くなる。
最後に……畫の件。
これは八王子さん含めて相談が必要だ。これから私や先輩のように周りに活をしていることが匿されているような場合、どのような対応が必要なのか?
顔を隠したり、戦闘服自を変更する必要があるかもしれない……仮面の子高生剣士とか? これもまたナンセンスな話でしかないな、子供向けの変ヒーローでもないわけだし。
「お姉さん、可いね。待ち合わせ? 彼氏來てないみたいだけど……ヒマならお茶しようよ」
ふと聲をかけられて私は思考の海から卻し……聲の方向を見ると……ホスト風の男が目の前に立っていた。知らない人だ……私はキョトンとした顔でその男を見る。
「お、お姉さん本當に可いねえ……これはもうお茶するしかないなあ」
許可も取らずに私の肩に、その男の手が載せられる……しかも距離が近くて、男が先ほどまで吸っていたであろう強いタバコの匂いが鼻につき……私はその手を払い、軽く睨みつける。
「……どなたですか? 他へ行ってください」
私は知らない男から視線を外して……スマホを取り出して畫面を見つめる。なんなのこの人……めっちゃ怖いんですけど……早く先輩きてよ……私を助けて……。ちなみにミカちゃんと歩いていてもこの手のナンパは散々される。
ミカちゃんには『こういう人はしつこかったら警察に逃げ込めば大丈夫』と言われており……私はその通りに行することにしている……ただ、まあまだそのタイミングではない。とはいえ私はミカちゃんがいない狀況で、一方的に知らない男に話しかけられることに恐怖をじている。
「いやいや、お姉さん本當に可いから、僕はもう一目惚れしちゃったわけでね、一度だけお茶しましょうよ」
しつこいな……いい加減私は行しなければいけないかな。と考え始めた頃、視界の隅に先輩らしき人がこちらに向かってくるのが見えた。……チャンス。
「あ、來た」
私はその言葉に男がたじろいだ隙をついて、先輩の方へと歩いていく……先輩が私を見つけて、手をあげてごめんね、という仕草をして立ち止まった。
普通にアイドル級イケメンな先輩の登場で、その場にいた陣が『マジか!』という顔をしているが……視線の先に私がいることを見つけて、さらに『噓だろ!?』という顔に変化していく。
「ごめんごめん、降りる場所を間違えてしまって……」
「もう、遅いですよ……絡まれて大変だったんですから……」
「ご、ごめん……え?」
私はわざと、先輩に笑顔を見せながら近づき……ナンパしてきた男に見せつけるように、とてもわざとらしく先輩の腕に自分の腕を絡ませると、そそくさとその場を離れていく。後ろで男の舌打ちが聞こえる。
先輩は、何が何だかわからない……という顔で腕を絡めた時にし頬を赤くしつつも、私の演技に付き合うかのように笑顔を見せる。これで周りから見たら、人同士のように見えるだろうか……? 私は笑顔のまま先輩と並んで歩き始めた。
「先輩すいません、ナンパがしつこくて……」
私はKoRJの最寄駅に向かう電車で、先輩に先程の行について理由を説明する。隣に座る先輩は……あはは、と苦笑いを浮かべて……頬を掻いている。
「新居さん綺麗だからね……仕方ないよ」
まあそうだな、鏡見て毎回思うけど新居 燈というはしいと思う。これはノエルの記憶を探ってみてもそうじるのだから、相當なものだろう。
ノエルの意識からしても東洋人としての顔つきは多気になるらしいが、十分合格! という謎のお墨付きをもらっているわけでね。
……前世のノエルの記憶を探って回ると、なかなかに雑食な遍歴を経ており……お前本當に見境ないのな、とため息が出てしまうレベルだったが、それでも上位數パーセントに食い込むレベルのだと斷言できる。
「ちょっと恥ずかしかったけど……僕は嬉しかったよ」
先輩は……頬を掻いたまま、ボソッと呟く。よく見ると耳まで赤い。ん? もしかして先輩照れてんのか。私は笑顔のまま何か言いたげな先輩を見つめている。
「その……新居さんが、人になったみたいで……」
あー、うん。そうだね……し気まずい気持ちで目を逸らす。勘違いしちゃったら先輩、そして先輩のファンに申し訳ないだろうな……。
この人は通っている高校で王子様(プリンス)とまで呼ばれ、そしてファッション誌では読者モデルとしてに大人気なイケメンなのだ。あれだけの取り巻きなら……彼なんかよりどりみどりだろうが。なんとなく申し訳なさをじつつ、目的地についたことに気がついた。
「あ、駅著きましたね」
「ほんとだ、降りよう」
私たちは並んでKoRJ日本支部のある駅へと降りる。今度はお互いの気まずさから……し間を開けて歩き出す。
「あれ〜? 二人でデートしてきたの?」
KoRJの付嬢、桐沢さんと益山さんが二人で現れた私たちを見て……し含みのある笑顔で見ている。いえいえ違いますよ、と苦笑いを浮かべる先輩。
「今日は八王子さんに相談があって……面會したいんです」
先輩が用件を手短に伝えると……桐沢さんは頷いて、手元のパソコンを作して……八王子さんの予定をチェックし始める。
「この後空いているみたい。三〇階に向かってね、部長さんには連絡しておくわ」
「ありがとうございます」
先輩と私は二人に頭を下げると……エレベーターへと向かう。その後ろ姿を見て……桐沢は微笑ましい何かを見ている気分になっている。
「案外あの二人お似合いだし、仲が良さそうに見えるのにねえ……」
その獨り言を聞いた益山も、業務が空いたのを気に口を開き始めた。
「青梅くんも人気あるからねー……アイドル級のイケメンだし」
二人で並んで歩いているところを見ると、本當に微笑ましい……人同士に見えるよなあ。あー、私ももうし若ければな〜、と業務に関係のないことを考えつつ……桐沢は手元の端末を作して、八王子部長へと連絡をれる。
「あ、部長。青梅くんと新居さんが來ましたよ。なんでも相談があるとかで二人で仲良く。ではよろしくお願いします」
_(:3 」∠)_ 待ち合わせ場所はイケフクローで!
「面白かった」
「続きが気になる」
「今後どうなるの?」
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