《【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。》第四四話 邂逅(エンカウンター)
「暴(ランペイジ)の準備はどうか?」
暗い部屋の中、二人の男が向き合って座っている。一人は青白い顔の男……アンブロシオ。もう一名はしき荒野の魔(ウイッチ)。そのほかのメンバーは今ここにはいない。
アンブロシオに問われた荒野の魔(ウイッチ)は扇で口元を隠しながら笑うと、恭しく頭を下げてしい聲で答える。
「準備萬端にございます。以前より進めておりました東京の港灣地區に暴力団の下部組織を使って運ばせたコンテナ……と魔法陣を設置し終わり、あとは魔力を流し込むだけにございます」
よろしい、とアンブロシオは手元の資料へと目を下ろし……ふと何かに気がついたように再び荒野の魔(ウイッチ)へと問いかける。
「例の畫の件はどうか?」
「はい、畫の再生數、各種SNSでの話題、トピックなどを確認させておりますが予想以上に反響があるようです。もともとKoRは各國で不可思議な事件をみ消してきていますので、その違和をじていたギーク達の間でしずつ話題が広がっているようですね。日本でも學生を中心に、コミュニケーションツール上で積極的な議論が出ているようです」
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荒野の魔(ウイッチ)はそこまで話すと再び椅子に座る。
アンブロシオはし考えるような仕草をする……ああ、このお方はこうなると次の行がすぐに道筋として見えてくるのでしたわ……そう荒野の魔(ウイッチ)が考え、彼の敬する主人の言葉を待つ。
「我々の世界ではここまで報伝達の速度が速くなかった。この世界は正直恐ろしいな」
アンブロシオは苦笑すると、荒野の魔(ウイッチ)を見ると……しらかい笑顔を見せる。彼はその笑顔を向けられて……の芯がゾクゾクとした快に満たされるのをじて、甘い吐息をらしを震わせる。
絶対的な支配者……恐るべき魔の支配者……アンブロシオという名前の、彼のする異世界の魔王さま……。
「暴(ランペイジ)は當初の予定通り行う。畫については例の鷲獅子(グリフォン)との戦闘、三頭狼(ケルベロス)との戦いなどは、世間の認識を改めさせるにはちょうど良いはずだ。それと、そばに來ることを許す」
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荒野の魔(ウイッチ)は一度頭を下げると、そっとアンブロシオのそばへと歩み寄り、彼にしなだれ掛かる。
「ああ、アンブロシオ様……私を芯までしてくださいませ……」
艶かしいを開き、アンブロシオの首筋を舌で優しく舐め始める荒野の魔(ウイッチ)。頬を桜に染めて、荒い息を吐きながら興にを任せて、微だにしないアンブロシオの首や頬へ舌を這わせていく。
アンブロシオはそっと彼の頬に手を添えると……それまでの変化のない表から一変して、不気味なくらいに盛り上がった獰猛な牙を剝き出しにして、荒野の魔(ウイッチ)の首筋に暴に牙を突き立てる。
「はぁああ……、アンブロシオ様……全てを……全てをしてくださいませ……」
荒野の魔(ウイッチ)は、痛みすらじていないのか、荒い息を吐き出し頬を染めてなすがまま……アンブロシオにを委ねる。
「お前に紅(ブラッド)をやろう……人ので紅魔(ブラッドマジック)を行使するには、が必要だからな」
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アンブロシオがそう話すが早いか、突き立てた牙を通してがアマラのへとり込んでいく……全の管が浮き出るように盛り上がり……まるで皮の下で蟲が蠢くかのように不気味な蠢を繰り返す。
恍惚とした表のアマラの赤い目が不気味に輝くと、彼は歪んだ笑みを浮かべてする主人をうっとりと見つめる。
「ああ……ありがたき幸せ……私はあなたのために最後まで戦いますわ……」
「さて……お前さんはどんな相手なのかな?」
墨田 悠人は彼が執著している新居 燈には、絶対に見せたことのないような獰猛な笑顔を見せて……咲う。彼が今いるのは、東京都下のとある街の片隅……小さな廃ビルに降魔(デーモン)が出現した、という報告をけKoRJ職員として働いている彼が派遣された。彼の周りには消し炭となった犬人族(コボルト)が大量に倒れている。
「たった一人でその戦闘力……素晴らしいな」
墨田に相対するようにスーツ姿の男……金髪碧眼で、の悪い顔をした男……アンブロシオの仲間の一人……テオーデリヒが立っている。
「はっ……こんな雑魚をぶつけてきて、舐めてんのか? ああ?」
墨田は元からタバコを取り出して指に燈した火を使い、ひとふかしする。
細だが……墨田の能力は地味に高い。新居 燈ほどの能力ではないが、十分に鍛えられておりアスリートを目指していれば、世界をとれたのではないか?と言われている。
「あの念力(サイコキネシス)と使う若者といい、日本には素晴らしい戦士がいる、それは認めましょう」
「あ? 青梅の小僧のことか……ってことはお前が、あいつをボコったっていう一級降魔(デーモン)の虎獣人(ウェアタイガー)ってやつか?」
墨田は咥えていたタバコを捨てて靴で踏みつけて消すと、ストレッチをするように首を左右に倒して鳴らす。先程までの笑いではなく、怒りの表を浮かべて……テオーデリヒを睨みつける。
「はい、あなたのような戦士のために名乗りましょう。私の名前はテオーデリヒ……あなたを殺すものです。」
バキバキと音を立てて、目の前の男のが盛り上がり……黃金と漆黒のをまとった巨大な虎獣人(ウェアタイガー)へと変化していく。轟くような咆哮をあげて、二倍近くまで膨れ上がった巨を揺らし……テオーデリヒが両手を広げる。
あまりの大音響にビリビリと空気が震える、青梅と戦った時には使わなかった咆哮(ハウリング)の能力……ビル全が大きく震えて、安普請の壁にヒビがる。
「おお、これは……隨分とすげえな」
墨田は全を震わす咆哮(ハウリング)に驚きながらも、笑いながら拳を構える。彼自は武などを習ったことがなく……ただひたすらにケンカで培った本能に任せた戦い方を続けてきている。
拳に炎を燈す……新居 燈というKoRJにおける接近戦のスペシャリストの戦いを見て、彼自がそれまでの遠距離主の発火能力(パイロキネシス)だけでは行き詰まるとじ、自分の戦いやすいスタイルに合わせた能力の開発を進めてきた結果だ。
「ほう……に炎を纏わせるなど、私の知識には無いですな」
テオーデリヒがジリジリと距離を詰めていく、目の前の男は不気味だ。自然で、とても隙だらけなのに迂闊に踏み込むと噛みちぎられるような、そんな兇暴な目つきをしている。
テオーデリヒが今まで戦ってきたものとは違う……戦士というよりは狂犬……いや闘士の気配をじる。
「じゃあ、いくぜ。痛いのは我慢しろよ」
墨田がふらりと隙だらけの姿勢で間合いに踏み込んでいく。あまりの無防備さにテオーデリヒは完全に困し、攻撃を當てるかどうか迷(・)っ(・)た(・)。
その迷いからあまりに呆気なく、撃ち抜かれる墨田の拳がテオーデリヒの顔面を捉える……焼け焦げる匂い、そしてあまりの衝撃に顔を抑えて後退するテオーデリヒ。
「グァアアアッ!」
「あの青梅は、いいやつなんだよ。いっつもニコニコしてな……」
墨田はふらりと隙だらけの蹴りを見舞う……流石にこれには反応してステップして後退し、距離を取るテオーデリヒ。焼け焦げた顔面から煙が上がるが……獣人の再生能力が皮を再生していく。
テオーデリヒは焦っていた、あまりに……きが読めない。隙だらけなのに、迂闊に手を出すと噛みちぎられそうな不気味さを目の前の男からじてが竦む。
「くっ……」
テオーデリヒは必死に拳を繰り出して……目の前の男へと必殺の一撃を叩き込む……墨田は皮一枚の剎那を見切って、テオーデリヒの攻撃を躱し……大振りのカウンターをテオーデリヒの腹部へと打ち込む。
威力はそれほどでもないのに……的確に急所へと打ち込まれた攻撃で、テオーデリヒは全を駆け巡る衝撃に震えて……苦悶の表を浮かべて蹈鞴を踏んで後退する。そのまま一方的に墨田はテオーデリヒを毆り続け……テオーデリヒは必死に防を続けている。
「青梅はな、こんな俺にも懐いた舎弟みてえなやつだ……そいつを傷つけたお前を許さねえ!」
「クッ……私たちよりも、遙かに獣のようだな!」
テオーデリヒの反撃の拳がようやく墨田の顔面を捉えた……はずだったが、ギリギリのタイミングで手のひらを差しれて衝撃を逃すようにを回転させる距離を取る。まるでバレエダンサーのような回避に思わずテオーデリヒが墨田の能力の高さに驚く。
「褒めてもらって栄だ、くらえ『炎』!」
墨田が発火能力(パイロキネシス)を使ってテオーデリヒの周囲の空間を連続的に発火させて……小規模の発を引き起こす。音とともに、咄嗟に防姿勢をとったテオーデリヒの全を炎で染めていく。
「これくらいじゃ倒れねえよな?」
濛々と煙が立ち上るが、墨田はまだ全にじる殺気をじて構えを解かない。煙の向こうからゆっくりとテオーデリヒの巨が現れる……全は炎で焼け焦げており、普通の人間であれば確実に致命傷となっているだろう。
「フフフ……強い、良いな。だが、これでも生きていられるだろうか?」
ゆっくりとテオーデリヒは拳を振り上げると……廃ビルの壁面、柱を素手でぶち抜いた。あまりの衝撃で天井から、砂埃がざっと降り……墨田はテオーデリヒの意図を察する。ビルごと生き埋めにするつもりだ……! 別の柱を拳で打ち抜くと、ビル全が軽く振をし始める。
「うわ、ちょっとタンマ、タンマ! ビルが壊れちまう!」
墨田は慌てるが、構わずにテオーデリヒは次に床面を拳で撃ち抜く……その衝撃でビル全が大きく震えて……振とともに大きく崩壊していく。墨田は戦闘どころではないと判斷し、踵を返してさっさと離していく。
「貴様! 逃げるのか!」
「馬鹿野郎! 俺は人間だぞ! お前らみたいな再生能力なんかねえんだ! 次會う時はボコボコにしてやるから覚えておけ!」
どちらが悪役かわからないようなセリフとともに、墨田はビルから命からがら逃げ出す。チラリとテオーデリヒの方向を見るが……テオーデリヒは薄く笑うと、崩壊したビルから立ち去っていく。
ビルが完全に崩壊していく様を見て、墨田はこめかみに流れる汗を拭うと、なんとか生き殘ったことを実する。
「あぶねえ……あんな化け相手だと二度と勝てる気がしねえな……」
_(:3 」∠)_ 実はめちゃくちゃ強キャラ
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