「んー？　本當にお前エリーゼなのか？」

俺の目から見てもし違和のある目の前の思念、どこまでも憎悪と邪悪をこれでもかと詰め込んだような印象のあるその黒いモヤに浮かぶエリーゼは、俺の知っている彼のものとはし違うもののようにじる。

記憶の中にあるエリーゼの笑顔や、怒ってる顔、そしてし歯に噛むように恥ずかしがる顔が思い浮かぶ……あいつのことをしていない、する対象ではないと思っていても彼は俺にとって大事な仲間、友人なのだ。

「……お前はもっと優しい顔をしてただろ……お前はもっといいやつだったろ、そんな顔をするのはお前らしくないぞ、俺の知ってるエリーゼはもっと綺麗な顔をしてただろ」

「噓だ！　お前はいつもあののことばかり……そのもそうだ、そいつは私を見ないであんなに弱い男を慕っている……お前が私を大事になんて思うものか！」

「……思ってなかったらもう殺してる。俺はお前を殺したいなんて思ってないし、大事じゃないなんて言わない。でも俺はお前をせなかった、それを引きずっているのであればそれは謝るよ」

「噓だ、噓だ、噓だ！　私がお前のことを好きだったのに、していたのにお前はずっと真面目にけ取らなかった！　私はずっとお前のことをだけを思って……死ぬまでずっと……お前を生き返らせるために……私は……」

憎しみが彼の周りにあるモヤをまるで烈火のように焚き付けていく……普通の人間ならこの思念だけで気絶してしまうレベルの圧力をじる。

彼の言葉から推察するに、エリーゼは俺のために死ぬ寸前まで俺を生き返らせるための努力を続けたってことか……俺はその言葉にひどく揺する。

チクリと俺の心がし痛む……まさか俺が死んだ後にそこまで思い詰めてしまうなんて、それまでのエリーゼの格からは信じられなかったからだ。どちらかというと、彼はサバサバした格という印象だったし、もうし割り切ってけるだと思ってたからだ

「エリーゼ……な、なあ……」

「來るな！　來るな！　お前に今更優しくされたって……もう遅いのに！」

燈の姿のままだが仕方ない、俺は既に死んでいるし魂だけがかろうじて生き殘っているだけなのだから……俺は全て破壊するもの(グランブレイカー)を地面へと突き刺すと、武を持たない狀態でエリーゼへと歩み寄り手をばす。

無防備な俺を見て、憎悪に歪む表を浮かべたエリーゼが俺を睨みつけると、彼を囲む黒い怨念の炎は俺に向かってその炎をばす……俺の、いや燈の頬にそのびる炎が掠める……鋭い痛みとジクジクとした鈍痛が互に襲うが、殺意をそこまでじない……彼もそれなりに揺しているようだ。

「エリーゼ……いいから話を聞け。俺たちはもう死んでいる、未練を次の世代に引きずるのは良くないんだ」

「ノエル……私は……」

エリーゼは俺の行に相當に揺している……前世では絶対に俺が彼を抱き寄せる、などはしたことがない。というか傍に抱えて敵から逃げたり、擔いで持っていったりしたことはあるし、彼の希で背負ったりしたことはあるが真正面から抱きしめる、という好意を示す行はとったことないんだよな。

そのまま俺はそっと彼を包み込むように抱きしめると、震える彼へと優しく話しかけていく。

「エリーゼ、もうやめよう。俺たちは既に死んだんだ……俺たちが彼らの気持ちを踏み躙ることは許されないはずだ……もう自由にしてあげてくれ」

「ノエル……私……もう……どうしたらいいのか……」

その言葉をけて、どちらの意思かわからないが、俺のことを強く抱きしめるエリーゼ……ポタポタと彼の両目から涙がこぼれ落ちていく。

その格好のまま數分、嗚咽だけが辺りに響き、俺はじっとエリーゼの昂る心が収まるようにそのまま黙って待ち続ける……し周りを見てみるが、彼を包む憎悪の炎はかなり収まってきているのがわかる。

もう一手押さないとな……俺はしだけ屈むと、彼の耳元に口を寄せるとそっと囁く。

「……彼を解放してくれ、お前の怒りで彼は苦しんでいる。もう俺たちの時間は終わったんだ……全部終わって生まれ変わることができたら、今度こそ俺はもう一度お前に會いにいくよ、その時には俺はお前を……」

「ダメよ……今しなさい」

「な……うぐあああああっ！」

メリメリ、と俺の全を締め付けるようにエリーゼの両腕に力が込められる……なんだこの腕力、エリーゼの生前の非力さを俺が引きずっていたってことか？

エリーゼは不気味すぎるくらいに歪んだ笑顔を浮かべると、俺を締めつけ始める……全が軋むような凄まじい圧力で俺の、いや燈のが悲鳴をあげる。

このは前世のそれよりかなり脆い……ダメージの蓄積で完全にけなくなることだってあり得る、このまま締め付けられているとまずいんだ。

「や、やめろ……こんなことをしても俺は……エリーゼ！」

「捕まエタあぁ……今からたクサんしてアゲるワぁ……ノエルが私を忘れラレないくらイ、タくさン気持ちヨクシてあげるカらアァ……」

それまで優しかったはずのエリーゼの顔が狂気に近いそれを浮かべて笑う……囁くために顔を寄せていた俺の耳を、そのどす黒く変した舌で舐めまわし始める……。

うわ、キモ……強い拒否を覚えて俺は、を震わせる。心の中で燈が悲鳴をあげている気がする……の主導権は俺にあっても彼は既に意識を取り戻しているし、そりゃあ気持ち悪いよな……正直俺も気持ち悪い。

もはや目の前のエリーゼは、俺が知っているエリーゼではないのか……だが俺の呼びかけに応えて反応はしてたのに、どういうことなんだ？　それだけ負の意識が強すぎるということか……。

「やめろ！　このはだ……第一お前もその思念では俺をするなんて……げっ！」

「何言ってるの……私もちゃんと用意してるわよ……依代をね」

まるで意志のない表で、俺の後ろにエツィオ・ビアンキがまるでり人形(マリオネット)のように立ち上がる……まずい、剣聖(ソードマスター)おじさん……いや可憐な高校生の貞の危機ではないか。

俺は押さえつけようとしているエリーゼの腕を引き剝がしにかかる……確かに恐ろしく強いが、このの持っている潛在能力をフルに発揮すれば……むむむ……。

力を込めて締め付けを強化しようとするエリーゼの腕を次第に浮き上がらせていく……。

「く、こいつ……まだこんな力を……エツィオ！　早くこいつをなんとかしなさい！」

「い、嫌だ……僕は……はい、今すぐに……」

「ちょ、そ……そこは！　どこ摑んで……きゃああああっ！」

命令をけたエツィオは當初かなり抵抗をしていたが、すぐに無表になると俺のをモニュっと摑む……が、その摑んでいる場所はダメだろ！

燈の一番大きな部分、を両手で摑んでしまう格好になってしまい、心の中の燈が悲鳴をあげて怒り狂ったかと思うと、俺の意志とは別に勝手にがきだす。

それまでなかなか振り解けなかったエリーゼの腕を凄まじい腕力で振り解くと、思い切りエツィオの頬に平手打ちを……燈のパワーだと灑落にならないレベルの威力だが、それを叩きつける。

俺の意思とは無関係の本來の持ち主である燈が怒りのまま絶する。

「ふざけんな誰がって良いって言った！　益山さんに言いつけるぞ、このエロ教師ッ！」

「き、貴様……！　し、しまった……」

一瞬エリーゼの気が削がれ空白の時間が巻き起こるのを俺は見逃さなかった、すぐにのコントロールを取り戻すと俺は緩くなっていた拘束からを翻すように後ろへと回転しながら飛び退る。

平手打ちを食らったエツィオは意識を失って、フラフラと千鳥足のようにふらついたかと思うと、その場でひっくり返って気絶してしまう……あーあ、こりゃ當分起きることはないな。

恥心から怒りが収まらない様子の燈だが、今はし待て……と心で呼びかける、お前のおかげで俺は窮地をすることができた、ありがとうな。

俺は黙って地面に突き刺さったままの全て破壊するもの(グランブレイカー)を引き抜くと、切っ先を彼の姿をした何か、へと向ける。

「さて、エリーゼ……いやエリーゼのダメな部分を凝した殘り滓、かな？　覚悟はいいか？」

「く、う……ノエル！　あなた私を殺せるの？　仲間だった私を！」

「……愚問だ、俺は俺の仲間やするものに危害を與える相手を許さない、それを忘れたか？」

俺はそのまま前に出る……そろそろ燈にをけ渡さないといけない、できればキリアンと対峙するまでなんとか力を殘したいと思っていたが……エリーゼをどうにかするまでが限界か。

何度か大刀(ブレイド)を振るうように突進すると、俺は黒いモヤでなんとか防を行おうとするエリーゼへと技を放った。

すまねえ、本當はお前を斬るなんてことはしたくない、それがエリーゼの顔をした何か、であってもだ……だがこのの持ち主である燈に危害を加えるお前を許さない。

「ミカガミ流、絶技……朧霞(オボロガスミ)ッ！」

「ま、まって……私を……ぶぎゃっ！」

俺はエリーゼに向かって全力で全て破壊するもの(グランブレイカー)を振り抜く……絶技朧霞(オボロガスミ)は花霞(ハナガスミ)と同系統の技の一つで、絶技に相當する超高速十字斬りだ。

花霞(ハナガスミ)がほぼ同時に二連撃を著弾させる技だとすれば、朧霞(オボロガスミ)は完(・)全(・)な(・)る(・)同(・)時(・)著(・)弾(・)の斬撃を縦橫の十字の形で斬りつけることができる。それ故に朧霞(オボロガスミ)は防すら貫き通す無盡(ムジン)と並び立つ絶技として知られている。

「……お前は俺を怒らせた、だから仲間であっても斬る」

俺の朧霞(オボロガスミ)は彼を確実に切り裂いた……防しようとした黒い炎ごと、十字の形で切り裂いた跡が殘っている。

エリーゼの頭頂部から下まで、そしてが切り裂かれではなく、黒く濁った炎が噴き出していく……だがエリーゼはその憎しみに満ちた顔を次第に穏やかなものへと変化させていく。

両目からボロボロと涙を流しながら、口元に微笑みをたたえた表を浮かべて、炎を噴き出しながら俺にそっと手を差しべる。

「……ありが……と……ノエル……私、あなたのこと……あ……い……し」

全ての言葉を喋り終える間も無く、エリーゼの負の意識を現化したその何か、が黒い炎の中に消えていく。ふと、俺の頬に冷たいものをじて手を當てると、俺が涙を流している。

手でそっと涙を拭うが、俺の気持ちよりも強く燈の意識が悲しみを覚えている……ありがとう。俺のわがままを聞いてくれて。

本當はお前に任せるつもりだったけど、どうしても俺がやらないといけないって思ったんだ。

「エリーゼ……ぐうっ……！」

だがそこで、俺のに猛烈な激痛が走る……時間切れも時間切れ……今まではこんなに長時間顕現したことはない、魂の郭が揺らぎ、燈ではなく俺の魂そのものに痛みをじさせている。

意識が飛び始める……視界が回っている、そして暗闇に落ちていこうとする中、俺はなんとか全て破壊するもの(グランブレイカー)に縋り付くようにを支えようとするが、手も足も力がまるでらない。

視界が暗くなり、それまでよりもずっと遠くへと押し込められるような覚をじつつ俺は奈落の中へと落ちていく。

『……すまない燈、最後の戦いに助力できそうにない。だが君ならできるはずだ……自らを信じよ、ミカガミ流剣聖(ソードマスター)よ』

_(:3 」∠)_　なんとなく十文字霞斬りを再現したかった……書いてみると恐ろしく難しい

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