《【完結】前世は剣聖の俺が、もしお嬢様に転生したのならば。》第二三一話 樓(ウォッチタワー)の戦い 一一
「ふざ……ふざけ……うぐうぅ……」
立川はなんとか立ちあがろうとするも、腳が言うことを聞かずに再びへたり込む。憎しみに満ちた目で狛江を睨みつける彼の姿が次第に元の人間の容姿へと戻っていく。
先ほどの異能の姿は一時的なもの、と言うことだろうか? 狛江はし興味深そうに彼を見つめる……だが、立川は口元から流れる涎を手で拭うと、悔しさからボロボロと涙を流しつつ彼を睨みつける。
だが、その視線をける狛江の顔はあくまでも余裕のある涼しいものだ。
「……立川さん、君はまだ若い、憎しみに心を支配されるよりも未來に目を向けた方がいい」
「五月蝿い! 私はもう一度死んでいる、それなのに前を向けとかできるわけがない……」
立川は必死にもがくが、へのダメージはかなり深刻で、これ以上の戦闘能力は発揮できそうにない。だが、彼の矜持が目の前の狛江……彼からすれば二度目の完全なる敗北を認めることを許さない。
新居 燈にやられるならわかる……だが、目の前の狼獣人(ウェアウルフ)にすら勝てないなど……矜持が許すはずもない、悔しい……悔しい! 彼の怒りがなんとかをかそうと必死にもがく。
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狛江はそっと彼の前へと膝をついて目線を合わせると、優しく頭をでる……このは新居さんのように猛々しい剣士の心に、優しいとしての心も兼ね備えている。本來は戦うことも辛いと思っているはずなのだから……。
「なら未來はこれから作ればいい……鬼貞さんは僕と戦った後、君のことを死なせたくないと話していた。僕は彼に勝ったけど、ギリギリだった」
「貞ちゃんが……? 私を死なせない……? どうして?」
立川はそっとの傷跡がある場所に手を當てる……そこには猛々しく鼓している鬼貞から移植された心臓のようなが埋め込まれている。
その鼓は優しく、立川に落ち著けと伝えているかのような規則正しいものだ……貞ちゃん……彼は、狛江を見上げるように涙で濡れた顔で見つめる。狛江は立川が戦闘続行の意思がない、と判斷し狼の顔のままで優しく微笑む。
その狛江の顔を見つめて、立川はさらに大粒の涙を流し始める……目の前の狼獣人(ウェアウルフ)に負けてもいいのだ、とが優しく鼓を打つ。
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「君のことが大事だからだよ、鬼貞さんは優しかったからね」
「大事……でも私……もう普通の道には戻れない……また負けたら魔王様に殺されてしまう……」
立川は地面に落としている騎兵刀(サーベル)を見つめて泣き始める……狛江は泣き出し始めた立川にどう対応していいのかわからなかったらしく、し慌て始める。
ええと、こう言う場合はどうすれば……アマラはこんな泣き出すようなことはなかったしな……と狛江は困り果てながらも、思いついたように立川を優しく抱き寄せる。
「うう……うあああっ……貞ちゃん! あああああっ……」
確か新居さんは皮に包まれている時は恐ろしく幸せそうな顔をしていたし……とそっと立川の頭をでながら今は別の場所で戦っているはずの新居の姿を思い浮かべる。
だが、今の中で號泣している立川のことを、彼なりの正義からそっと彼のことを抱きしめる……うん、なんか今僕は隨分すごいことをしている気がするけど……今は落ち著かせることが大事だな。
狛江にしがみついて彼のへと顔を埋めて號泣し続ける立川……彼はただ優しく彼を抱き止めて、頭をそっとでる。
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その上空を灰のが轟音を立てながら飛行するのを見上げて、狛江は再び立川へと優しく話しかけた。
「……大丈夫、何があっても僕やKoRJが君のことを守るよ、だからもうやめよう……鬼貞さんもそうんでいるよ」
「すごい……三倍以上のエネルギーゲインがある……」
四條 心葉の視界を覆うゴーグルに仮想現実化されたインターフェイスが表示される……今彼は灰の幻影(グレイファントム)に搭乗した狀態で空中を飛行している。
セミオープン型のコックピットを持つ強化外骨格(パワードスーツ)、KoRJの開発部が総力を結集して作り上げたこの機は、先日の黒竜(ブラックドラゴン)との戦いの後、整備と改修作業に追われていたが、この局面においてようやく全ての改修作業が完了し四條の元へと屆けられた。
『……マスター、敵の攻撃です。回避をお勧めします。ま、自律飛行中なんで勝手に避けますけどね』
「……っ! 」
電子合されたの聲がインカムに流れる……灰の幻影(グレイファントム)は基本骨格やベースとなった機はそのままに、近代科學によるさまざまな改修が加えられており、オペレーションシステムも最新の擬人化プログラムが採用されている。
四條の反応よりもほんのしだけ早く、灰の幻影(グレイファントム)は自律的にスロットルを引き絞り、空中でバーニアを蒸かすように噴させると、黒い球を難なく避けていく灰の機が夜空にまるで踴るようなフォームでアクロバット飛行していく。
地上で蠢く樓(ウォッチタワー)から出される黒い球は空中を自由自在に飛行する灰の幻影(グレイファントム)を捉えることができない。
「Orla(オルラ)……武裝の一覧を出して、それと出力が急すぎる」
『イエス、マスター……でも、マスターがちゃんと作してくれれば問題ないのですよ、私より反応がコンマ三秒遅いです』
擬人化オペレーションシステムOrla(オルラ)、スマートフォンなどでも使用されているバーチャルアシスタントのような機能で、灰の幻影(グレイファントム)の基本的なオペレーションシステムに組み込まれた臺東 博士(たいとう ひろし)肝りのプロジェクトで導された人工頭脳だ。
臺東曰く、戦闘補助だけでなく將棋やチェスの相手も可能で、何を食べるのかに困ったマスターへ自律的に最適なカロリーを摂取できる食事や、その後のスケジュールなども提案してくれる最新鋭のヴァーチャルアシスタントだ。
なお、予備機能としてプラモデルを製作する能力や、フィギュアの塗裝なども灰の幻影(グレイファントム)を通じて行えると話をしていたが、四條からするとその行為になんの意味があるのか理解できていない。
しかしこの一々余計なことを突っ込んでくる設計はどうにかならないのか! と四條は心イラっとするも、表示された武裝リストの中から目的の裝備を見つけ出す。
「Orla(オルラ)、拡張パックからブレードを選択、展開」
『イエス、マスター……拡張パックより左腕に固定する形で展開、全の機バランスが一〇パーセント変化するため自補正を行います……補正完了』
灰の幻影(グレイファントム)の左腕に取り付けられた盾(シールド)型の拡張パックより巨大なブレードが出現し、フックにより固定される。
軽く飛行姿勢がれるもそのバランスの崩れを即座に補正し安定飛行へと戻していく……四條は一気にスロットルを全開にして、空中でフル加速を仕掛ける……ほんの一瞬の間をおいて灰の機が樓(ウォッチタワー)へと最高速で突進していく。
「くううううっ!」
『マスターの意識障害を防ぐため、流の安定を行います……対Gシステム起』
凄まじい加速Gにより四條の表が歪む……改造人間(エンハンスド)と言っても生の人間である四條も人間の限界を超える加速には耐えきれない……視界が一瞬暗くなるも軽いショックと共に一気に意識がはっきりと戻ってくる。
灰の幻影(グレイファントム)に搭載されている乗員保護システムで、戦闘機パイロットが著用する対Gスーツに似たような機能を擬似的に再現できる機能だ。
「ありがと……」
『急加速なんかするからですよ、もっと優しく私を扱ってください』
一々口答えを……と心舌打ちしつつも、新生灰の幻影(グレイファントム)の能には満足を覚えている……一気に樓(ウォッチタワー)へ接近すると左腕のブレードを一閃する。
グパァッ……と黒い幹が切斷され、音を立てながら地面へと崩れ落ちていく……黒い刺激臭と煙を上げながら溶けていく樓(ウォッチタワー)を眺めながらホッと息を吐く。
「なんとか、最低限の仕事は終わりましたね……」
『最低限、ですね……試験で言うなら赤點回避、というところでしょうか。學業での績が気になります』
「ぶっ壊しますよ? どういうプログラミングされてるんです? 臺東さんの趣味かなんかです?」
『マスター、心拍數が上がっています。し落ち著きましょう、はい、深呼吸を……』
イラッとしてOrla(オルラ)へと強い口調で詰問を始めるが、その質問には丁寧に無視を貫くヴァーチャルアシスタントに四條はさらに怒りを覚えるが、自分がなんでオペレーションシステム相手に怒りを覚えなければならないのか、ため息をつきたくなる気分をじて大きく息を吐き出す。
確かに彼からは(・)し(・)ク(・)セ(・)の(・)あ(・)る(・)(・)格(・)にしました、とは伝えられているがこれはしクセがありすぎるのではないだろうか?
「後で臺東さんぶん毆りますね……こいつ格悪すぎですよ……Orla(オルラ)、仲間の位置報を検索」
獨り言に全く反応しないヴァーチャルアシスタントの気(・)遣(・)い(・)をじて、さらにイライラしつつも空中にホバリングをしながら戦っているはずの仲間の位置報を確認していく。
インターフェイス上に小型のマップ畫面が表示されると、仲間の位置報が視覚的に表示されていく……KoRJ側の報は全員生存……その報にホッと息を吐く四條。
青梅も怪我をしているようだが、一応無事……移をしているが傍には背教者(レネゲート)のタグが表示されておりどうやらオレーシャが傍についているようだ。
「まずはこちらの有利な狀況、ということでしょうかね……敵防衛施設の位置報を表示、マーカーをセット」
『敵防衛施設の位置を表示、破壊された目標は二つ、マスター自によるものと戦乙(ヴァルキリー)によるものです』
マップに樓(ウォッチタワー)の位置報が追加される……破壊されているのは二箇所、新居の破壊した場所と先ほど自らが破壊した場所のもう一箇所が記録される。
もう一本の前に狛江がいるがどうもこちらはきがない……戦闘は既に終わっているということかもしれない。そして新居ももう一本の前に……四條はもう一つの表示に心驚きを隠せない。
認識されているタグはし古いものだが……エツィオ・ビアンキ、KoRJ最強の魔法使いが新居 燈のそばにいるのだ。
『……生存者タグの追加を確認、猟犬(ハウンド)の正式なタグを確認しました。行方不明者リストを更新します』
「エツィオ・ビアンキのタグ表示……彼は生きているということか……どういうこと?」
_(:3 」∠)_ OSに名をつけるのはSF的には普通なんですかねえ、センチネルのALICEなんかも名だったな的な
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