「今、攻撃を、出し、まし……た？　理解不能」

自人形(オートマタ)がいきなり攻撃をやめて飛び退ったことで、私はなんとか一息つく……どうしたんだ？　私は確かに反撃をしようとしたが、は全くいていなかった。

だが私は確かに反撃の意思は見せた……その意思自が自人形(オートマタ)に存(・)在(・)し(・)な(・)い(・)攻(・)撃(・)をじさせた、ということだろうか？

ノエルの記憶が強く呼び起こされた時に、生前のノエルが一対一の決闘などで、相手に存在しない攻撃を繰り出すことで、防をさせないという技を使いこなしていたのは理解していたが、私自もそれを扱うことができている、ということか。

『やれやれ、ようやくここまできたか……剣気とは意思、お前は確かに今までノエルの技を繰り出すことには功し、確かに才能を見せていた、だが相手を倒すという意志の力においては、前世に及ばなかった。お前はまだ剣で斬ることを意識しすぎている、本當の剣聖(ソードマスター)は意志の力でも敵を斬れる、ということだ』

全て破壊するもの(グランブレイカー)の聲が心に響く……意志の力でも敵を斬れる？　私はまだ武で斬ることにこだわっているということだろうか？

私が困しているのを見て、自人形(オートマタ)が再び構えを取り直す、だがいきなりは襲いかかってこない。先ほどの存在しない攻撃が理解できずに不安をじているのかもしれない。

「……確かに、あなたは、意志を継いで、いますね、確かめます」

自人形(オートマタ)が一気に突進を開始する……考えても今の私には理解できないかもしれない、もはやここから先は覚で狀況を打破するしかないだろう、覚悟を決めて私も前に出る。

相手の右正拳突きを大刀(ブレイド)の腹でけ止める……その衝撃波凄まじく重いが、私は衝撃を後ろにけ流すようにを回転させると、刀ではなく裏拳を自人形(オートマタ)の顔面に叩き込む。

バシイッ！　とすごい音が響くが、私の裏拳は彼の掌による防に阻まれる……くそ、案外いい線いってたと思うんだけどな！

「いい、ですね、剣士で、あり、ながら、格闘戦も、ウフフ」

「それはどーもッ……うぐ！」

ニヤリと嬉しそうな笑顔を浮かべると、自人形(オートマタ)は軽く私の拳を跳ね上げる……ガラ空きになった橫っ腹に逆手の竜爪(ドラゴンクロー)を叩き込まれ、私は再び悶絶するがなんとか相手の足を蹴り飛ばすように飛びすさり、その威力を殺して地面へと著地する。

それでも凄まじい威力だ……胃の中のものが逆流しそうな気分に陥るが、私はなんとか堪えると、さらに前に出る。

「ミカガミ流……紫雲英(レンゲ)！」

ミカガミ流の剣士が竜(ドラゴン)や巨人(ジャイアント)相手に使用する、超高速連続斬撃技である紫雲英(レンゲ)。私の斬撃が自人形(オートマタ)に迫る……威力も速度も十分、単に向かって使うことで回避の難しい連撃へと変化していく技だ。

だが私の紫雲英(レンゲ)を見て、薄く口元を歪ませたかと思うと、両腕を目まぐるしくかすことで斬撃を的確に防していく自人形(オートマタ)……その巧みさはまさに武神(バトルマスター)と並び稱されたシルヴィを彷彿とさせるものだ。ある意味見惚れてしまうようなその卓越した技に、私の口元が自然と綻ぶ。

「くそ……ッ！　なんて素晴らしい技……」

「お褒めに、預かり、栄」

その言葉と同時に回し蹴りが飛んでくる……これは私もたまに使う竜尾(ドラゴンテイル)だな……その蹴りを大刀(ブレイド)でけ止めると、刀を回転させるように威力を殺して反撃に移る。

そのきに反応して自人形(オートマタ)が片手で防姿勢をとり、攻撃を見極めようとこちらのきを観察しており、その攻撃の後に最大級の反撃を繰り出そうと、虎視眈々と狙っているのがわかる。

何かしないと……反撃で死ぬ？！　それは嫌すぎる……私だってまだまだやりたいことはたくさんあるのだから……だから死ねない！

『……剣気を飛ばせ』

前世での師匠の聲が一瞬響いた気がする……私が視線の移と共に、本気で切り裂くための剣気、フェイントを繰り出す……その気迫をじ取ったのか自人形(オートマタ)の防姿勢がれ、実際に振り抜こうとしている斬撃ではない、あらぬ方向へと反撃の手を止めて防姿勢を作り出す。

だがその攻撃は存在しない……呆然とする自人形(オートマタ)を前に、全て破壊するもの(グランブレイカー)が易々と腹部を切り裂いていく……金屬を斷ち切った時のような抵抗を手元にじるが私は一気に振り抜く。

ガクガクと自人形(オートマタ)が姿勢をす……かなりのダメージは與えているが、ほんのし踏み込みが淺かった、を斷ち切るまでは行っていない、次の技だ！

「……！？　確か、に、防を、した……はず」

「……うあああああっ！　ミカガミ流……花霞(ハナガスミ)！」

私はを回転させるように、そのまま超高速二連撃である花霞(ハナガスミ)を左袈裟、逆袈裟で振り抜く……自人形(オートマタ)は最初の腹部への斬撃できは恐ろしく鈍っており、花霞(ハナガスミ)の一撃目を防することには功したものの、二撃目でそのままを切り裂かれる。

驚いたように切り裂かれたを何度かって確認すると、切斷面からずるり、と斷ち切られ地面へと崩れ落ちていく。

「……これは……花霞(ハナガスミ)……ノ、エル……」

バリバリと、音を立てて自人形(オートマタ)のが崩れていく……どういう材質でできているのかわからないが、斷ち切ったは金屬でできた魔道人形(ゴーレム)に近かった。

自人形(オートマタ)は斷ち切られたを何度か確認した後、表を変えずに私をじっと見つめる……そして私が驚くくらい自然な笑みを見せる。

まるで命が宿っていたかのような、自然な微笑みに私は驚いてしまう……その笑顔がまるで前世のシルヴィさんのようなしいものだったからだ。

「シルヴィ……」

「……最後に、もう一度、會えた……この私は、私では、ないけど、想いはずっと、あなたの、ことを……」

そこまで話すと、自人形(オートマタ)の全に大きな亀裂が走る。慌てて私は彼の橫へと膝をつき、ばした手をそっと両手で包み込む。

私にれられているのをじ取ったのか、自人形(オートマタ)は再び嬉しそうな笑みを浮かべる……作りものでありながらも、その表は恐ろしくらかく、自然なものだったため私は困してしまう。

「シルヴィ……さん？　本人なんですか？」

「いいえ、記憶だけ、私……あなたは、しい……強くて、ノエルと、一緒……會いたかった」

私の手をぎゅっと握り締めつつ、私の両目から涙がこぼれ落ちる……私じゃない、ノエルが泣いている……私も彼の手を優しく包み込む。

アンブロシオがどういうことをしたのかわからないが、シルヴィさんの記憶をなんらかの形で模倣してこの自人形(オートマタ)の中に封じていたのだろう、それ故に武神流の技を使いこなしていた。

なんてことはない、かすもの自が本人の記憶なのだから、そりゃあ手強いのも當然だろう……。

「私は、記憶だけ、だから、本人ではない、悲しまないで……」

「シルヴィさん……」

バキバキ、と音を立てて斷ち切られた下半が崩れると、歯車やワイヤーなどをかすための裝置が現れていく……まるで人間と同じような作りの骨格なども見えている。が出ない、というのがむしろ不気味にじるくらいなのだから。

自人形(オートマタ)の外裝が崩れ落ち、しかった顔もワイヤーや金屬の骨格などが剝き出しになっていく……だが、変わらず私の目からは涙がこぼれ落ちていく。

「キリアンを、止めて、世界を、守れ、剣聖(ソードマスター)……」

次の瞬間、活限界が來たかのように自人形(オートマタ)はそのきを完全に止める……私はそっとそのを引き寄せると、優しく抱きしめる。

記憶だけだとは話していても、やはり前世の仲間、そして前世の自分がした人の姿をしたものを斬るのは辛い……そして私の中に沸々と煮えたぎるような怒りが沸き立つ。

私の怒りなのか、それともノエルの怒りなのか……もう私には判別がつかない。

そっと自人形(オートマタ)のを地面へと橫たえると、私は地面に落としたままの全て破壊するもの(グランブレイカー)を手に取り、背中の鞘へと収める。

「……行こう全て破壊するもの(グランブレイカー)……私がこの世界を救うわ」

「ふむ……あっけない。まあ、記憶だけではあそこが限界か」

アンブロシオは目の前の水晶……自人形(オートマタ)が敗れる景を目にしながら、ほんのし殘念そうな表を浮かべる。

かなり強力な守護者(ガーディアン)として自人形(オートマタ)を用意していたのだが、中途半端な戦闘能力しか発揮できていない気がするのだ。

本の、自分の仲間であった武神(バトルマスター)、シルヴィそのものであれば新居　燈は勝つことはできなかっただろう。現に、最後の方のきは明らかに何かおかしかった。

新居　燈は気が付かなかっただろうが……あからさまなフェイントに引っ掛かるなど自人形(オートマタ)にはあり得ないと思っていたが、記憶の元になっているシルヴィの意志が介在したのだろうか？　破壊された後の殘骸に価値はないが、剣聖(ソードマスター)を退けた後に再び回収は必要だろう。

「仕方あるまい……結局は自分自以外は信じるな、ということかもな……」

キャンプ用の椅子から立ち上がると、軽く畳んで異空間へと収納するアンブロシオ……背後にある煉獄の花(ヴルトゥーム)の雌蕊を見上げ、そこから立ち上るの柱を見て、満足そうに笑う。

膨大な魔素と、混沌の力が渦巻くそのの柱は天空を貫き、宇宙へと向かってずっとびている……この世界の天文學における宇宙の存在、真空の空間が広がっているとされているが……その先に何があるのか？　この世界の人たちはまだそれを知らない。

両手を広げてアンブロシオは大きく高笑いを始める……それは狂気のようながり混じるものだった。

「クフフ……もうすぐだ、この世界の人たちが驚くような景を見せてやろう……絶という名の変革をもたらすのだ！」

_(:3 」∠)_　次回以降終盤戦になります、最後まで読んでいただけますと本當に嬉しいです

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