『……言うに事欠いてそれをいうか？！　お前馬鹿なんじゃないのか？！』

全て破壊するもの(グランブレイカー)がめちゃくちゃ呆れたような聲をあげるが……だってずるいじゃん！　私あなた一本しかないんだよ？　なんで魔王は二本分なんだよ。

なんとなく頬を膨らませて文句を言いたくなるんだけど、そんなことはお構いなしに魔王はその左腕にもつ禍々しい大斧を振るう……剣と違ってその外見にはが結晶化したように付著した赤い何かが不気味だな。

かなりの重量があるのか、風を破るような印象だな……迫り來る大斧を私は空中にを躍らせて避けていく……大斧が私の眼前を通り過ぎていくが、私にれることはできない。

「ヒハハハハ！　避けるねぇ！　ノエルよりも軽なんだなぁ！」

無造作なくらいに聖剣を振るう魔王……私はその攻撃を軽に回避し、避けきれない攻撃をけ流しながら相手の出方を伺う。刺し貫かれた腹部がズキズキと痛むが、今はそんなことを気にしている場合ではない、私は表を軽く歪ませながらもその攻撃を丁寧に防していくが、それでも避けきれない風圧と、斬撃で細かい傷はどんどん増えていく……だが、引かない！　逃げない！　そう決めたから。

今までの戦いで私も含めて不用意に相手に攻撃を仕掛け続けることの愚かさを散々をもって覚え込まされている。だから無理に私は攻撃には出ずに、あえてうことにした。

「はっ、そんな攻撃じゃ今の私でも殺すことなんてできないわよ！」

「いうじゃねえか！　ならこれはどうだ！」

キリアンの顔が歪んだ笑みを浮かべながら、地面に著地した私に向かって右手の腱を振り下ろす……これは避ける暇がない、け止めて跳ね返すしかないだろう。

私は全て破壊するもの(グランブレイカー)でその上段斬りをけ止める……ミシリと全の筋が軋む音と、傷口から軽くが噴き出す……痛い……辛い……だが今は堪えろ！

ギリリと聖剣もたらすもの(ライトブリンガー)が押し込まれる……むぐぐ！　私は全の筋に力をこめてなんとかそれを押し返そうとするが、ジリジリと地面へと押し込まれていく。

ふざけるな、私はこんなところで潰れたカエルみたいになって死ぬわけにはいかないんだ……私を待っててくれる人がいる、私をしてくれる人たちがいる……私を好きだって真面目な顔で言ってくれる人がいる。

「私はちゃんとみんなのところへ……帰るんだ！」

「何を馬鹿な……」

ジリジリと剣を押し返し始める私に驚いた表を浮かべるキリアン……最初のように焦點があっていないことはなく、むしろまともな印象へと戻りつつあるが、それでもその大きさと異様さは筆舌に盡くし難い。

私はある程度押し返したところで、を回転させてその刀を蹴り飛ばす……うまく力のり合が変わったところで蹴り飛ばしたため、魔王の予想を裏切る格好となったようで、彼は右手に握った聖剣を跳ね飛ばされないように抑えるので必死だ。

「おおおおおっ！　ミカガミ流……彗星(スイセー)ッ！！」

私の技、彗星(スイセー)が魔王の腹部……と言ってもそこから下はまるで人間のものではなく巨大な蛇か竜(ドラゴン)のようにしか見えない造形なのだけど……ともかく私の高速突きが魔王のを差し貫く。

以前の日本刀サイズであった頃であれば、この程度の刺し傷は大したものにならなかったかもしれない……だが今の全て破壊するもの(グランブレイカー)は大刀(ブレイド)……私の背丈で扱うにはかなり大きいだんびらであるため、今の大きさの魔王であっても凄まじいダメージになるようで、キリアンの表が大きく歪む。

「貴様……！　この俺に攻撃を……ッ！」

「待っておれ……新居　燈ッ！」

アンブロシオの顔が私を見據えて左腕の斧を振るう……私は思い切り彼のへと足をかけると、全て破壊するもの(グランブレイカー)を引き抜きその斧に向かって振るう。

グワキャーン！　という凄まじい金屬音を上げながら、橫斬撃に対して私は攻撃をぶち當てることで相殺しようとするが、相當な勢いでぶつかったため比較的重の軽い私は刀ごと大きく後ろに飛ばされてしまう。

「ッと……！」

空中で何度か回転しながら私は勢を整えて、うまく著地をするとそのまま駆け出す……今このチャンスを逃すわけにはいかない。

魔王はその両方の顔に笑みを浮かべると私に向かって一気に向かってくる……ここで決めるつもりだな？　私は刀を一度鞘に叩き込むと、柄を握りしめてそのまま突進する。狙うは一點……叩き込む技は私が最も信頼する技だ。

「かかってこい！　この世界を守るためにお前の命を燃やしてみろ！　ノエル……いや新居　燈ーッ！」

魔王のびを聞きながら私は一心不に走り続ける、一歩一歩足を出すたびに傷が痛み、でお腹周りの戦闘服がべったり張り付いている……気持ち悪いし、このまま倒れて仕舞えばずっと楽なのに、と思ってしまう。

足にもがついているからの辺りもヌメっとしたをじる……だけど私は倒れない、私自がこの世界を守るためのミカガミ流最後の剣聖(ソードマスター)であるために……。

魔王は私を迎え討とうとその両手に持った二振りの聖剣を縦に振るう……異なる形狀のもたらすもの(ライトブリンガー)であるその剣と斧が私に向かってくるが、私は一気に魔王に向かって跳躍すると渾の技を放つ。

「ミカガミ流……絶技……不知火(シラヌイ)」

一瞬の錯により、私は魔王の後背へと移し、彼は地面へとその二振りの武を振り下ろしたままの格好で固まっている。

私は耐えきれずに膝をつく……本気で走り、そしてこのボロボロので絶技を放ったのだから・…荒い息を吐きながら、私が抜き放った全て破壊するもの(グランブレイカー)を地面へと突き刺してそれにもたれかかるようにして立ち上がると、それまでこうとしなかった魔王が私へと振り返る。

その二つの顔にはまだ余裕の表が浮かんでおり、トドメだとばかりに彼は両手の武を振り上げようとした……その瞬間、綺麗な切斷面と共に、彼の両腕が地面へと音を立てて落ちていく。

「なっ……どういうことだ！　俺の両手がなくなっているぞ！」

「馬鹿な！　こんなことがあるわけがない……！」

「はっ……ざまあねえな、このクソ魔王……どっちでいいんだっけ、キリアン？　それともアンブロシオ？」

私は彼に軽く※※※(お下品)なジェスチャーを繰り出すと、そのまま全て破壊するもの(グランブレイカー)を肩に載せるとゆっくりと両腕をうしなった魔王へと歩いていく。

両手を失った魔王はジリジリと焦った表を浮かべながら後退する……両腕を失った彼が強力な再生能力を備えていない限り、出來なくはないけど復活にはかなり時間がかかる。

前世の世界でも両腕を失った戦士が、時間をかけてそのを治癒していくという語もあったのだけど、それって実際にやるとしたら數年がかりのものだったりするし、前世のノエルが知っていた語はその戦士が治療にあたっていた治療師のとに落ちて……みたいな話だったので、実際にそうなった場合はかなりの年月を治療に費やすものなのだろう。

「すぐには回復できないんでしょ？　それは魔王であっても同じよね？」

「く、くそっ！　火球(ファイアーボール)ッ！」

アンブロシオの口から魔法が放たれる……火球(ファイアーボール)、エツィオさんも使っていたけど発する炎の球を発する魔法……直撃すれば炸裂してを損傷させることができるけど、今の私なら……。

私は軽く全て破壊するもの(グランブレイカー)を振るうと飛んできた火球(ファイアーボール)を別の方向へと打ち返す……斬り飛ばすと発するかもしれないからね、剣の腹で叩くようにしたんだけど、案外うまくいくもんだわ。

『……我が黙っているのをいいことに……隨分扱いがひどいな……』

愚癡のような聲も聞こえなくもないが……私は片手で魔王に向かって全て破壊するもの(グランブレイカー)を突きつける。

急に困した顔を浮かべるキリアンと、アンブロシオ……私も自分が意識せずに涙が流していることに気がつくが、これは……ノエルの涙だな、私自のじゃない。

彼も言いたいことはたくさんあるだろうけど、この世界を救うのが先よね……私が軽く頬を拭ってから、刀をぶらりと力したように構えたのを見て、その構えの意味を知っているキリアンの顔に恐怖のが浮かぶ。

「無限(ムゲン)……ッ！　ミカガミ流最強の剣聖(ソードマスター)ノエルの構え……！」

「ええ、私はノエル・ノーランドそのもの、でも私は新居　燈でもあるわ……でも今までこの構えは使いこなせなかった。なんでかしらね……ずっと悩んでたんだけど……」

私はほっと息を吐くと、キリアンの顔を見て微笑む……でもそれは嬉しいからじゃない、悲しいからかもしれない。どうしてこの世界に生まれ落ちたのかずっと悩んでいて、降魔(デーモン)被害(インシデント)なんて事件に巻き込まれなきゃ、私は普通の子高生として生きていられたのかもな、ってずっと思ってた。

だけど、この世界に危機が訪れ、私は戦うことになった……それが前世からの定めであったかのように。

「よせ、やめろ……！　俺は魔王……いや勇者だぞ？！　お前の前世の世界を守った……お前の友達じゃないか！」

「見苦しいぞキリアン！　まだ爭う方がマシだ！　の自由を奪うな愚か者が！」

私をそっちのけで逃げ出そうとするキリアンと、アンブロシオでの主導権を爭っているのかふらふらとが左右に揺れている……もーしだけ、がんばってね私の……。

私は集中力を高めていく……この構えから放たれる技は、それそのものが絶そのもの、ミカガミ流最強の絶技……私の姿が一瞬で一〇人ほどに分裂する……全く同じ姿勢で、魔王を囲むように出現した私は、軽く地面を蹴るように一斉に魔王へと飛びかかった。これが最後の、私とキリアン、アンブロシオの最後の別れになることを願って技を放つ。

「ミカガミ流絶技……無盡(ムジン)」

_(:3 」∠)_　クライマックス……！？　だがっ……（疲労で頭が混中

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