《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》海岸で運命の出會い

青い海が広がる西海岸を目の前に、広い歩道を一人走る。

額の汗を左手で拭い払うと、大きな水玉が宙をを翔けた。

南の島の四月は暑い。ちょいと日が顔を出せば、ジリジリと焼けしてしまうほどだ。

「うっ……」

時折吹く強い橫風が僕のを車道へと押し流そうとする。それは春風とはじさせない荒々しい風。その風に乗って視界の外から突然足元に大きなが現れ、思わずを固くする。

その形は大きな目玉焼き……なんて言ってしまうと可笑しいけれど、実際そうであるからしょうがない。

えーと、これは……麥わら帽子?

イラストや寫真では見たことあるけれど、実は初めてだ。よく見ると用だろうか、白いリボンが可らしい。足元にあるそれを拾い上げようと屈んでみる。

しかし風がそれを妨げる。ならばと、一歩進んで右手をばす。

「あれ?」

それを読んでいたかのように帽子は転がり、し先でぴたりと止まる。一歩・二歩・三歩。中腰になりながら帽子追う。右手をかわし、左手をかわし、両手で飛びついてもコロコロと逃げ回る。

この野郎。可い顔して生意気な!

ふわりと更に強い風が吹き帽子が浮き上がる。

「あっ!」

このままだと車道に出てしまう。朝といっても通量はなくはない。このままでは直ぐにぺしゃんこだ。

仕方がない……。

僕は大きく踏み出し、全力で併走しながらすくうように拾い上げる。

「よしっ!」

だがそう上手く行くはずもなく、勢いのまま足が絡まり、ずて~っとも取れずにこけてしまう。

それでも右手に持った麥わら帽子だけは死守。

「くぅ……」

ここで『あが~』と言わないのは現代っ子だからなのだろうか?

なんてことを右肘と肩の痛みをじながら考える。

は……」

出てないか。

右肘の砂を落としてみても、赤いそれは見えてこない。

「ふう……」

大きく息を吐く。捕まった帽子は先ほどまでの威勢のよさは消え、何だか悔しそうにさえ見えてくる。

仰向けになった僕の目に青空が映る。

……うん。いい天気。

不思議と満足が全に広がる。

というかこれの持ち主って……。

「うわっ!」

再び風が吹き、顔面に大量の砂が襲いかかる。

「目が、目があ……!!」

泣きっ面に蜂とはこのことだろうか。おまけに口の中もじゃりじゃりする。

「うえぇええ……ぺっ! ぺっ!!」

気持ちが悪い……。

最悪なことに耳の中までってきている。左手で目をこすりながら、同時に口の中の砂を吐き出す。更に頭を橫に振り、耳にった砂を落とす。何だろうこれじゃあ壊れた人形のようだ。

そんなことをしていると……。

「君、大丈夫かい?」

直ぐ近くから聲をかけられる。若いの聲だ。

「す、すみません! ちょっと今、耳と口と眼に砂がったせいで悶えているだけなので、気にせず放置していただければ……って、おえっ」

まだ目にった砂のせいで目が開けられない。砂もまだ殘っている。

「これ使って」

そこで左手に冷たいものがれる。ペットボトルだろうか。

「まだ空けてないから。それと……これは持っておくよ」

急に麥わら帽子から重力が消える。

「あ、すみません。お願いします……えっと、いいんですか?」

「気にせず全部使って。ただのミネラルウォーターだから」

「それじゃあ……頂きます」

の言葉に甘え顔中に著いた砂を洗い流す。

しばらくすると目が見えるようになり、お禮を言うために顔を上げる。

するとそこにいたのは――――。

「……大丈夫かい?」

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