《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》フラグが折れたメインヒロイン

ここは大學構のテラス。

隣接するカフェがおしゃれで・安く・超味しい

おまけに海も見えるから學・外問わず利用者が多い『らしいよ~』と、待ち合わせ相手から聞いている。

確かに雰囲気は悪くないと思う。むしろ良いのだが、今日は人がない。

グループでテーブルを囲う學生はおらず、獨りでスマートフォンをいじっているのがちらほらといるだけ。本格的に講義が始まる前の大學ってこんなものなのだろうか。

その中から待ち合わせの相手を探す。

時間は5分前。ぐるりと辺りを見渡す。

い髪、ピンクのシュシュ。それと常日頃から頭の上に咲かせている花丸なオーラが目印だ。

……あ、いた。

一番奧。海が良く見える特等席。そこに見知った顔のの子が座っている。

「おまた……って……うん?」

そちらに向かって歩を進ませ、聲をかけようとするが、彼はとある事に夢中のようで、こちらに気づく様子がない。

「こんなじかなぁ」

ぽふっ!

飲みが手元ではなく元で鎮座している。超絶濃厚な抹茶とミルクが特徴のそれは、學外でもその名前よく聞くほど。僕たちも験前に一度だけ飲んだことが、滅茶苦茶味しい。噂ではこれ目當てで推薦を取った強者がいるとか。彼もこれ目當てで待ち合わせ場所をここにしたと思われる。

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それにしても……。

「出來た~!」

無邪気に笑いながらその狀態で一口。太めなストローに黒い粒が吸い上げられていく。

味し~」

はむはむと幸せそうに食べている。

何をやっているんだか……。

とはいえ、離れて見る分には実に興味深い。もうしばらく様子を見てみる。

「あっ、そうだ。寫真~♪ 寫真ん~♪と」

そのままの勢で、テーブルの置かれたスマートフォンを取ろうとする。

ぽよよんっ♪

すると満なの谷間に収まっていた飲みがバランスを崩す。

「はわわっ!」

支えを無くし、小さく放線を描いて宙へ飛び出す。彼はそれを両手でキャッチ。どうにか死守する。

「危なかった……」

中々にきがいい。再び元へ鎮座するグリーンティー。

しかし元に乗せたまま自撮りは厳しいようで、かなり苦戦している。

「くぅ……これじゃあ寫真が撮れない」

ならばと僕は自分のスマホを取り出し一枚。

パシャリ。

「へ?」

「はーい。目線こっちに~」

パシャパシャ!!

今度は連続。

「な!?」

「今度はちょっとストロー咥えてみよーかー」

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「え……あ……」

大袈裟にスマートフォンを構え指示を出す。

「……こう?」

上目遣いでこちらを見ている彼が、はむっとストローを咥える

「あぁ~いいよ~」

パシャリ。

「ほんほー(本當)?」

「ほんと、ほんとー」

「じゃ、じゃあ……こんなのとか」

両腕をの下に回す。するとたわわな果実が更に強調される。

「いいね~」

「それと今度は、こう? なんてっ♪」

ブルルルル!

「!!」

調子に乗っていると、急にテーブルに置いてあった呼び出しベルが震える。

どうやら注文していた料理の準備が出來たようだ。

「…………」

ただお互い我に返ったせいか、けずにいる。

「…………」

「……取ってきたら?」

「そ、そだね。あはは……」

* * *

「むーくんは共通科目なに取るの?」

頼んだボロネーゼをぺろりと平らげると、テーブルにタブレットを乗せ聞いてくる。

さっきのことは忘れましたとでも言いたげだ。

「まだ決めてないけれど、出來るなら簡単に単位が取れるものがいいかな。多分専門科目で一杯一杯になるだろうし」

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うちの學科は他の學科に比べて就職率が高い。その分資格や就職に直結する講習をけさせられると聞いたことがある。

「それじゃあスポーツ系かな?」

「いや、それは最後の手段。単位がギリギリになったら取る」

「年間単位の対象外だし」

「それじゃあ島の歴史Ⅰとか」

「そういったのは小・中・高で散々學ばされたからいい。遠足だって歴史の勉強だった」

勉強も遠足の一環と言われればぐうの音も出ないが、遠足に限らず何でもかんでも島の歴史を強要してくる大人に飽き飽きしているというのが本音だ。

「もー。捻くれ者なんだから」

「だってまだ一週間は時間あるし、説明會聞いてからでもいいと思うのだけれど」

タブレットの畫面にずらっと並ぶリストが目をチカチカさせる。

「じゃあ何かサークルる?」

「サークルかぁ」

そういえば考えてなかった。

「逆に奈々はどこサークルにるとか決めてたりする?」

「そうだね~私は~『漫研』とか、いいかなぁ~って」

やたらとねっとりとした口調で返事をした奈々に、全が立つ。

「ええ!?」

そしてその希先に思わずんでしまう。

なっ……。漫研だって?つ、つまりオタクの集団!?

いない暦=人生の塊!?つまり魔獣!!

あんな貞エロ助たちと一緒に生活する……と?

なんてこった!!

はっ!

漫研の男比率は何対何なのだろうか。一人や二人ぐらいはがいてもおかしくはないはず。だが圧倒的に男の方が多いイメージしかない。となれば奈々はオタクにちやほやされて、最後には――。

『いいね^~。あぁ^~もうちょっと足出してみようか~』

イメージされるのは新品のカメラのテストという名目のコスプレ撮影會。

その中心、ベッドの上でポーズを取らされる奈々。あたりにはゲスい目線を隠そうともしない男達が彼を囲んでいる。

『こ、こうですか?』

短いスカートから見える太ももが専用のライトに當てられ、靡なオーラを放つ。

『おぉ~う。うぃ~ねぇ~』

舐め滴るような聲で返事を返すカメラマン。本人は気づいていないのか、スカートが揺れる度に白い下著が見え隠れしている。ああ……。一番年下の男子は生唾を飲み込み見ってしまっている。

『次はこの裝とかどうかなぁ?』

部長であろう男がスッと數枚の寫真を差し出す。

『え、えーと。これ……』

どれもこれもが薄く、出が多いものばかり。

FG○……リゼ○……SA○……。

人気作品の裝を改造し、出度を最大限活かすデザインにしている。

見せるところを魅せる。見せないところも魅せる。

このド畜生め。上手いじゃないか。

『見えちゃう? 気にしない気にしない~』

『大丈夫~あとで修正れておくからぁ~~~』

『ぐへへへ、じゅるり』

『準備はぁいいかい?』

『デュフフコポォ オウフドプフォ フォカヌポウ……』

………。

……。

…。

「駄目です!!!」

現実に戻った僕は斷言する。

「ぶーぶー。別にそんな野蠻なサークルじゃなもん」

「本當に?」

「それに漫畫研究會じゃなくて……『同人漫畫研究會』略して漫研だもん」

「ひいいいいいい!」

頬を膨らまして抗議するのを頑なに拒否する。駄目なのは駄目。

同人漫畫研究會だって? 最近コスプレイヤー系のジャンルが増えてるって知らないの?

「じゃあ……」

「文藝部・現代○覚文化研究會・軽小説研究同好會・ほかそれっぽいのは……全部ダメ」

「えええ~」

「よく考えてみてよ」

自分のスマートフォンを取り出しSNSを開く。最近投稿された呟きをスライドさせてみると、數十件のに一件は目も當てられない姿をしたオタクの畫像が流れてくる。

にキーホルダーや人形、うちわにタペストリーに、缶バッジまでつけている。

しかも隙間なくみっちりと。

本當に暑くないのか不思議だ。

「ほら、最近のオタクはマイルドヤンキーと大差ないから」

次の出てきた畫では周りを気にせずに大聲を出している。

それはもう、スマホの音が割れてしまうほどに。

「どっちも街中でウェ~イって騒いで、みっともないないったらありゃしない。正直暴走族と変わらないよ」

パァ^パァ^パァララパァララ、パァララパァララ~。

國道でエンジンを吹かす音を思い出す。正直聞きすぎてリズムを覚えてしまった。

正直この島ってこういうの多すぎ。

「人目を気にせず中にグッズ付けまくってキャッキャしている。どっちともギンギラギンにしすぎ、もうしさり気無くしてほしいよね。もうダサいとかじゃなくて、迷だから」

フンスッ!

腕まくりをし、頑固親父モードにる……が。

「むーくん!」

突然指を指され。

「それ、むーくんも大差ないから!」

ビシィッ! と厳しく指摘される

「えええ!?」

「人間誰だってそんな時期はあるよ。だってむーくんも中2の時に、建のパイプをよじ登ってどこまでいけるかって遊びしてたよね?」

「うっ」

「高2の時は學年の発表會でふざけた畫流して、おまけに學校のパソコンにウイルス侵させたの覚えてる?」

「はうっ」

「で、さっきは勝手に人の寫真を撮ってにやにやしていたと」

「ぐはっ!」

グサグサと急所にヒットする。

「いい? 誰だって本當はウェーイしたいの」

今度は奈々が頑固親父モードにる。

「この世界は殘酷で、理不盡で、悲劇に溢れている。夏休みなのに學校に來させる先生もいれば、無理難題な宿題(人による)を押し付けてくる先生もいた。高三の時なんて育の授業でダムの周りを三周! 三周も走らされた!! 男子ならまだしも子に十キロマラソンとかありえないでしょう? その後の教室は地獄絵図だったの覚えてる? エアコンが作る冷風という麻酔と戦い。意識が戻れば汗×香水×シー○リースの臭いでゲロインになりそうだった!」

更に彼の怒りは続く。

「あぁ……。きっと社會人になれば、帰り間際に『明日までにやっといて』なんて素敵ワードをくれる上司。自給換算にするとバイトよりも安い會社の給料。老後は二千萬……あれ、三千萬円だったっけ? まあいいとして、それぐらい必要なんです~とか言い出す公僕もいる世の中なのよ。だからこそ、皆どこからしでウェーイしたいと思っているの。オタクは~とか今の若い子は~と言っているけれど、ちゃんとした人達はお金があるからそういう場所でウェーイしているし、松山近くにいけばウェーイどころかオエ~してる人ばかりだから……もうみんな吐き出したいのよ。々とね。ほら、最近映畫でも『お前たちの平○って醜くないか?』って聴いてくるぐらいだし、まあ今見やすくすると怒られるから、隠すところ隠す。出すときには出す。手を出さずに、明日のための足を出す。分かった?」

「……………………はい」

半分も聞き取れなかったけれど、結局言い返すことができず口がへの字に曲がる。

「けど、僕には約束が……」

過保護と言われようと、僕は悟さんとの約束を守り抜くと決めている。

「兄さんは関係ない」

「でも命を救ってくれて……」

「お菓子もらっただけでしょ~」

やれやれと言った様子で、軽く両手を上げる。

「いや、あの時はほんと死寸前……」

「もうあんな昔のこと覚えていません」

バサリと切り捨てられてしまう。

ううぅ……。

それでも懐かしき記憶と共に、悟さんの『奈々を守ってやってくれ』と約束の言葉を思い出す。

ああ。あの時に食べたドーナッツの形をしたチョコカステラは最高だった。

一つ十円。それは後で知った金額だけれども、僕はミスター○ーナッツよりもこっちのほうが好きだ。

あれこそ世界で一番のお菓子。

でも最近は商店も無くなってしまって全然見かけない。

今でも販売しているのだろうか。

「まあそれはいいとして。むーくんはサークルらないの?」

「人ごみは苦手。出來るなら優しい人だけで出來たグループで溫く生きたい」

「これだから友達ないんだよ」

グサッ。

「べ、別にかまわない。それに僕には……奈々がいればいい」

「…………」

「…………」

「よし。今日は合コンにいくか!!」

「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」

* * *

「――――はぁ。やってしまった……」

今、奈々は席を外している。

一人、畫面に映る奈々を見て更に大きなため息が出る。

我ながらいいショットだと思う。きっとこの寫真は一生ものになるだろう。普通ならこんな事は出來ない。

冗談。とはいえ、ここまでのことを許してくれる。

そんな間柄。

それなのに……。

正直、最近の奈々に対してどういった接し方が適切なのかが分からない。というのも僕は半年前『彼に振られている』――――。

の名前は『松川奈々

い頃からの付き合いで、小・中・高・大學まで同じ學校に通っている。一時期は彼の家で暮らしていたほどの関係だ。同い年なのか分からないけれど、これまでずっと同級生として接してきている。明るく、元気で、優しい。しばかし天然さん。初対面との距離のとり方が苦手だったりするけれど、誰にでもし、される子だと思っている。

たった一人を除いて。

―――――――――半年前。

僕は奈々に告白した。

結果は慘敗。

事前に決めていた臺詞の半分のところで。

『付き合うことは出來ない』

そう言い切られてしまった。

…………。

……ではその後は?

以前と変わらず一緒に登校。時間が合えば一緒に勉強。時々ご飯を作ってくれて、時々一緒に出かける。SNSのやり取りも不自由のない毎日。それどころか―――前よりも距離が近づいている気がする。僕はそれに甘えるようにずっと傍にいて。

だからこそ。

「分からないんだよなぁ」

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