《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》メインヒロインの兄が経営するバイト先
焼けるの匂いを運ぶのは僕の仕事。早く早くと待ちきれない様子の家族が待つ席へ、サーロイン400g二點とハンバーグステーキ一點をお屆けする。
暖の明かりとこげ茶の裝。老若男の笑い聲。
ステーキハウス獨特の雰囲気の中で、ひと時の幸せを提供するバイトを始めた僕は、四方八方に駆け回りながら笑顔を振りまいていた。
「味しかったです。また來ます!!」
嬉しそうにそう返してくれるお客様に一禮し、謝の意を伝える。
「ありがとうございます! またのご來店をお待ちしております!」
すると母親に手を引かれいた男の子がこちら向いて。
「おにいちゃん、ばいば~~い」
と、手を振るのでお返しに。
「うん、ばいば~い♪」
今日一番の笑顔で両手を振る。
しかしそんな癒しも一瞬。
「すみませ~ん」
「は~い、ただいま~!!」
次のお客様の元へとすぐさま飛んでいく。
どうにかラッシュアワーをどうにか乗り越えると、店も段々と靜けさを取り戻す。
そして。
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「ありがとうございました!!!」
……カランカラ~ン。
…………。
「……ふう」
最後のお客様がお店を出たのを確認し、扉に『close』の看板をかけ、店全の清掃を始める。
「ゲストゼロなりました~!!」
ついでにお店の奧にいるスッタフにも聲をかける。
「ふい~終わった終わった~。レイちゃんもお疲れ~」
するとハンドタオルで額を拭いながら、大男がキッチンから現れる。
ゴリラを連想させるその風貌と、そのに印字された文言。
『だけを信じろ』が異様なオーラを放っている。
因みこちらのシャツも似たようなもので『は正義であり悪である。つまりは世界』に対するの言葉が、それを刻まれている。
それがこの店での制服。
「棚原先輩。お疲れ様です。あと、僕は禮レイじゃなくて禮ライ夢です」
「あははは。すまんすまん」
あっけらかんとした調子で笑う。
「いや~なんかこっちのほうが呼びやすくてな」
「ええ~」
一ヶ月経っても、なかなか呼び方を変えてくれないバイト先の先輩に対して苦笑してしまう。
「仕事中は止めてくださいよ」
「え~なんでー?」
「だって、お客さんが『おっ! 可い子ちゃんが來るのかな?』なんて勘違いして、現れたらこんな糞ガキとか、クレームものですからね」
流石にそんな事はないが、何度もレイちゃんと呼ばれるのは恥ずかしい。
「確かにレイちゃんだと期待値高いな。でも大丈夫!」
「というと?」
「俺みたいなゴリラじゃない限り、ここの來るお客さんはそんなこと言わないって」
大きくを張り斷言する。
「その理由とは?」
「が最高にうめえからさ」
「でた。いつものやつ」
棚原先輩は自分のをドンとたたく。まさしくこそが正義である。
「もう一回叩いたらドラミングですね」
「うほい」
ドンドンドン!!
「ブハッ!」
思わず吹き出してしまう。
なんかSNSに上げたら人気出そう。
「おっと。そろそろいいかな」
棚原先輩はもうお客様の戻りはないと踏んだのか、スマートフォンを取り出し店のスピーカーと接続した。
「今日はほっちゃんメドレーだぁ~」
そしてこれまた最っ高な笑顔で自分の好きな曲を流し始める。一曲目はいかにも青春ってじの曲だ。
「奇妙な踴りしないでちゃんと掃除して下さいね」
「分かってるって!」
そう言いつつも、全でリズムを刻んでいる。
「まったくもう」
目の前の景から逃げるようにキッチンへ目線を逃がす。
するとその奧で作業している店長も、曲につられてほあほあと奇妙な踴りをしていた。
……だめだこりゃ。
「そうだ。今日はなんて名前のアーティストさんですか?」
とても可らしい歌聲だと思う。ただあまり聞いたことがない。
「ん~? ほっちゃん!」
「え、ほっちゃん?」
「イエス。ほっちゃん!」
「えーと。フルネームは……」
「ほっちゃんはほっちゃんだね!!」
「……あ、はい」
この人、いつも稱でしか呼ばないなぁ。それとも『ホ・チャン』とか? いやいやまさか。
カランカランカラ~ン。
「みんなただいま~!!」
両手いっぱいの紙袋を持って悟さんが現れる。
「師匠! お帰りなさいです!」
先輩がゴリラなのにしっぽを振りながら悟さんに駆け寄る。
「おお~タナ坊。お土産買ってきたぞ~」
「おほ^~」
めちゃくちゃ嬉しそうだ。
「オーナーお帰りなさい」
店長も作業の手を止めてこちらに來る。
「し早かったですかね」
「気にしないで下さい。直ぐに終わりますから」
二人のけ答えを聞いていると、片方がさっきまで奇妙な踴りをしていた人には見えない。
「それにしてもほっちゃんメドレーとはいい選曲」
うん?
「今日の當番は誰です?」
「自分っす」
ニコニコと笑う棚原先輩。
互いにアイコンタクトを送ると、しばしの間三人が音楽に耳を傾ける。
大サビから次の曲に移ると今度は悟さんがにんまりと笑う。
「パーフェクト」
そう告げる。
「旅の終わりにほっちゃんの聲は最高の癒し! 可らしさと力強さ!! ああ。酸っぱくて、泣けてきて、大好きだよ!!!」
訂正。片方ではなく両方で。
僕は先月からこのステーキ屋でバイトしている。
そしてこの店のオーナーである悟さんは、奈々のお兄さんであり、命の恩人だ。
験が終わり、新しいバイト先を探していると奈々から聞いたのか、このバイト先を紹介してくれた。
時給もよく自宅からも近い。閉店時間も早く22時を過ぎれば帰ることができるし。
なによりもまかないが味い。そんな好條件のバイトではあるのだが。
一つだけ難點……と言ってしまっていいものか。無視できないことがある。
それは……。
「おお! 師匠! これどこで手にれたんですか!?」
「らし○ばん」
「こちらは!?」
「メロン○ックス」
「これは!?」
「とら○あな」
「おおおおおお~!!」
いずれもこの島には存在しない店名だ。
「タナ坊も軍資金が貯まったらアキバに行くといい」
「僕はげっち○屋様に忠誠を誓ってきたぞ」
そう言いながらおやつのチューチュー(折るアイス)に膝蹴りをれ、真っ二つにする。
「はいどうぞ」
「……ありがとうございます」
仕事が終わり。店ではお土産祭りが始まっていた。
テーブルの上に並ぶのはBD・CD・抱き枕カバー・目覚まし時計・クリアファイル・ステッカー、アクリルキーホルダー・タペストリー・テレホンカード・レトロゲーム・などなど。
「いつもすみません。店舗特典とかはここじゃ絶対に手にらないので……」
「いいですって。僕も向こうで時間空いたときには必ず周るようにしていますし」
「ありがとうございます」
「いえいえ。それしても、ほんとこの島には娯楽がないですからねぇ」
そう言いうと店長と悟さんが同時にため息をつく。
「確かにこの島にはアニ○イトと同人ショップが一店舗ずつあるだけで、特典選ぶという考えも浮かんで來ませんからね」
「一応大型書店があるけれど…」
「ペーパー以外の特典って何かありましたっけ?」
「極まれに」
「ですよね~」
悲壯あふれる話に棚原先輩が手を挙げる。
「そういえば昔、メロンかとらが存在していたって話本當ですか?」
「うーん。それってただの都市伝説じゃないかな~」
「なくとも僕は見たことはない」
ベテランオタ二人が渋い顔をする。
「あ、でも數年前にアニメショップ見たことありますよ」
「まじっすか!?」
悟さんが記憶の引き出しからネタを一つ取り出す。
「うん。お店の名前までは覚えてないけど、確かにあったよ」
「それで、そのお店は?」
今はあるのだろうか。
「殘念だけど……」
「あー……」
殘念だ。
「中々そういった商売は難しいんだよ」
「本當だったらこの店もコラボとかしたいんだけどねぇ」
「うーーーーーん」
三人は腕を組んで考え込む。
「それで僕にお土産って……話は……」
ようやく話に割ってはいる。
この三人。というかこの店の従業員全員が濃いアニメオタクなのだ。
「あ、ごめんごめん」
「もしかしてこの中にあったりします?」
「うん? いやいや。禮夢くんには別に用意している」
悟さんの後に並ぶ紙袋の中でも一際大きいものを渡される。
「いいな~レイちゃん」
「これは銀河英○伝説全15巻セットかな?」
「マク○ス7 BDBOXかもしれません」
「あえて外しで遊〇王ストラクチャーデッキセットとか?」
「ほほう!!」
きゃっきゃと興しながら中を予想する二人。
「靜かに。當てたら面白みが無くなりますって」
それを靜止する。
「禮夢くんが気にるかは分からないけれど」
「面白さは保障するよ」
袋の中を覗いてみる。するとそこには……。
「これってまさか……」
………。
……。
…。
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