《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》週末馬鹿ンス

大學生の一週間というのは高校生の頃よりも早くじるもので、気づけばもう週末。

今は誠二の運転する車の中で、皆と談笑しながらとある場所に向かっている。

「あーお腹一杯~。というか苦しい~でも超うまかった~また行きたい~」

後部座席から秋の幸せそうで、そうじゃない主張が飛んでくる。

「あれだけ食えばこうもなるって。正直子が食う量じゃなかったぞ」

あれも良いな、これも良いなと目移りするだけなら良かったが、まさか気になるを全て注文しようとするとは。流石に半分に抑えさせたけれど……。

「人のお金で食べる飯は格別だった! ……うぷ」

腹いっぱいのまま車に揺られているせいか顔が優れない。

「持ち帰りしたサンドウィッチ、今日中に食えるか?」

「うぉぉ……絶対食べる……」

この狀態でもその闘志(食い意地)は衰えないか。凄いな。

「秋ちゃん。あとしだから! ほら私の真似して。ひっひっふー」

「ひっひっふー……」

隣で奈々が介抱しているが、ちょい待て、それ出産するの時のやつじゃない?

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「誠二くんって、ああいうお店良く行くの?」

そんなお馬鹿二人を放置して、凜は誠二とお喋り。

「まあね。最近はよく人と會うから自然とレパートリーが増えちゃって」

「へ~~」

今日紹介して貰ったお店はアジアンハーブと高臺から見下ろす海が売りで、コテージ風の店はちょっとした基地のようだった。そこでのんびりとタイ料理を楽しみ、帰り際にはハイビスカスティーを片手に記念撮影。個人的にはSNSでバズるようなお店にも引けを取らない良い雰囲気だった。

実は誠二からここ以外にも幾つか候補を挙げてもらっていたのだが、流石に予算オーバーしてしまうお店ばかりだったので、最終的に2つに絞り多數決で決めた。

幸い全員にとっての最適解を引いたようで、皆満足してくれたようだ。

まあ一人張り過ぎた人もいたけれど。

「それよりほら。島が見えてきた」

街路樹の間隔が段々と広がっていき、その間から目的地である離れ島が見え始める。

「おお~~~」

子組が歓聲を上げ、窓の向こうに広がるエメラルドグリーンの海に目をやる。

まさしく青い海に青い空。テレビや雑誌でよく見かける姿だ。

「みんなスマホ出した?」

パシャパシャ。

そう言われる前に構えていた奈々が連続でシャッター………いや、撮影ボタンを押す。

は、はやい……。

「奇麗だぁ…………でもヘルプミーぃ………」

その隣でゾンビがうめいている。

「秋ちゃんあとし。頑張って!」

「駄目ならこれに出していいからね~」

凜の手には二枚に重ねられたビニール袋が広げられている。

殘念ながら既にこの車は離れ島に架かる橋の上。途中で停まるわけにもいかない。

僕も最悪なケースに備えてハンドタオルをバッグから出しておく。

「あと1分くらいで車停めるから我慢して~」

幸い橋の中間に駐車スペースがあるようだ。

「う~頑張る~~~……でも、は、はりーあっぷ~!」

「秋~辛いのは分かるが運転手を急かすのは無しで頼む。流石に事故って全員おしゃかは勘弁だから」

「分かってはいるけど~……ううぅっ!」

弱っている人に釘を刺すのは引けるが、事故を起こしては元も子もない。

あと、なんか聞いてはイケナイ音が聞こえたような。

「秋~~~~~!!」

「秋ちゃん死んじゃいやー!」

「むぅぅぅぅぅ!!」

何が起きたかは知らないけれど、突然わーわーきゃーきゃーと騒ぐ子組。

なんということでしょう。

大學生が集まっているというのに、小學生の頃と変わらないコントが車で行われている。

その中で唯一社會人である誠二だけがニコニコと笑いながら、冷靜に運転をしている。

「え? なに? 秋、もしかしてやっちゃったの!?」

助手席に座っているため、後ろの様子が確認できない。

「…………」

まさかの無言。

「~~~♪」

誠二はそんなこと気にせず車を走らすが……もしかしてこれ、ただ単にツッコミを丸投げしてるわけじゃあないよね? ね?

* * *

「はーい! ついたよー!」

休憩を挾みつつ、どうにか目的地の離れ島へとたどり著く。

車が止まると同時にドサァと子たちが車外へと飛び出て、秋と奈々が一目散にトイレへと駆け込む。幸い辺りに人はいない。

流石に僕たちがの聖域に足を踏みれるわけにもいかず、無事帰ってくることを祈りつつ、辺りを見て回ろうとすると聲をかけられる。

「そんなところに突っ立ってないで海に行くわよ!!!」

いつの間にか先頭を歩く誠二と凜。

「え、行くってどこに? というか秋と奈々は?」

「大丈夫! 秋には奈々がついているから! それよりもアレよアレ!」

友人の調よりも優先するのがあるのか……。

若干困していると、その答えは凜の視線の先にあった。

そこには誠二と、その両手に抱えられた白い箱。側面に寫っているのは、細長のボディの前後に四つのプロペラ。そして小さなカメラが一となった機械。

「ドローンか!」

どうやら誠二の私を借りる話になっていたらしい。

「前からやってみたいな~って思ってたの!」

今日一番の笑顔で語りだす。

「ほら、近所は住宅地だし、広場がある所までは意外と距離があったり、買ってもルールが厳しいから使い道がないなぁって。まさかこんなタイミングでれるとは考えてなかったよ。誠二くんありがとね!」

「いえいえ。どういたしまして」

二人ともいい笑顔です。そうりゃもう、すっごく。ただ。

「その気持ち分からなくないけれど、流石にそこまで興すること?」

普段とは違う立ち振る舞いに、さっきから頭の上でクエスチョンマークが幾つも浮かんでいる。

「この気持ちわからない?」

「というと?」

「ほら、私たちが住む場所って、テレビとかネットで知る世界より圧倒的に娯楽がないと思わない?」

やれやれといった様子で凜は語りだす。

「本土と比べれば田舎だからって考えられるかもしれないけれど、地域開発には積極的な所はあるでしょう? だから結構な數の人間が建築関連で食べている。でも、それらが私たちに向けられている気がしない。大きな建は立つけれど、どれも無難で似たり寄ったり。でしょう?」

「ま、まぁ確かに」

車を移すれば十數分ごとに大きなショッピングセンターが立し、どれも同じ名前だったりする。

「正直面白くない……」

「言いたいことは分からなくもないけど……」

とは言え、しずつではあるけれど変わったイベントや施設も増えている気がする。それも凜にとっては代り映えしない風景なのかもしれないが。

「だからさ! 目新しいものには飛びついていかないと! ね?」

言い終わると鼻歌をえながら先を行く。

別に僕だって興味がないわけじゃないけれど、奈々たちは……。

振り返ってみるが、花園から子二人が出てくる様子はない。

「うーん分かった。二人にはメッセージ送っておくよ」

「あ、それは大丈夫。秋たちから後で合流するってメッセージ來てるから」

いつの間にか僕の所にも『先に行ってて』とメッセージが來ている。

秋……食べすぎはほどほどにな。

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