《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》実は企畫書にゆきねえは存在しなかった、故に

今日の天気は晴れ。

は雲に隠れることなく、俺たちを照らす。

四月だというのに、相変わらず汗ばむ気で南の島を演出している。

視界に広がるのは青い海と青い空。

そして海岸に沿って一人走る俺と、その先でこちらを見ている一人の

名前を雪代 雨と言う。

「やあやあ久しぶりじゃないか」

日課にしているランニング。

しばかし足をばして海岸まで來れば、彼はいつも決まっているかのようにここにいる。

「久しぶりって……ほんの數日ですよ」

「そうかい?」

「いやあ……もう數ヵ月以上前のことかと思ったよ」

「ははは。もう年かな?」

ハツラツとした笑い聲を聞いているとまったくそうには見えない。むしろ元気が有り余りっているように見える。

というか、そんな彼は朝からこんな所で何をしているのだろうか。これまでは遠く海を眺めているだけで特段何かをしているようには見えなかった。

流石に學生ではないとして……社會人……。

でも、仕事しているならこんなのんびりはしていられないはず。

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もしかして主婦とか?

一応その可能の方が高いのだけれど。

え、俺、朝から人妻とおしゃべりしているのか?

「えーと、確かゆきねえの年って28ぐらいでしたっけ?」

つい口に出てしまう。

確かの初婚平均は29歳ぐらいだったはず。

「はい?」

「前に言ってませんでしたか?」

「前? ……………………ああ~」

「そういえばそうだったね」

からっとした返事が返ってくる。

「なら、年だなんてまだまだ先の話ですよね。人生の折り返しでもないですし、というか、もう『人生100年時代』なんて言われているじゃないですか。大丈夫ですって!」

それに100年時代はあくまで今の世代の話。

俺が長することにはそれよりももっと、長壽になっているはずだ。もしかしたら更に30年ぐらい延びているかもしれない。

「む……別にそんなに長生きするつもりないけど」

何か含みのある言い方にこちらが首をかしげる。

「ふむ……」

ゆきねえと目線が合う。

「そうかい。そうかい」

そしてふと笑い。

「実はさ」

「はい?」

「それよりも、もっと上かも知れない……って言ったら?」

「え!? それって」

「年齢」

「えーと。上……と言うと?」

「そうだね……さっき言った年の一回りぐらい」

……一回り? つまりプラス十歳……。

ということは、それはもう生まれは平じゃなくて、え?……昭和!?

それってインターネットどころか、攜帯電話も、コンビニも……もろもろ全部なかった時代の生まれってこと!?

なんならテレビは超絶分厚くてクソ重いブラウン管ってやつで、映像を保存するのはDVDどこか、ビデオテープ!?

うちの島ならぎりでイザイホーが殘っていた頃だから実質縄文時代!?

の、生まれには………………。

「というのは冗談で」

「本當は26歳……いや、まだ25歳ぐらいかな?」

「ぐらいかな? って! 自分の年齢にクエッションマークつけないでくださいよ! それこそ本當に年いっているじゃないですか!?」

「むっ」

「ふぎゃ!」

「ていやっ!」

「がはっ!」

二回分のチョップを頭に食らう。

うぅ……………なんで2回も。

「まったく。君は…………」

大きくため息をつくゆきねえ。

「ええ………今回俺なんか悪いことしました? 別にに年齢の話をしましたけれど、前に自分で言ったじゃないですか? そこはセーフじゃ?」

「ほう……今度は空手家直伝の瓦割りをご所のようだね?」

笑顔のまま目に見えない速さで手刀がスッと現れる。

「え、遠慮しておきます……」

「うむ。よき心がけだ。次からはもうし行間を読むように。じゃないと折角の護もかたなしだぞ」

「はい。気をつけます……」

納得できないが頭が割れるのは勘弁願いたい。

「まあ。本當はクローンとして生まれてまだ2年とし。実質赤ん坊である可能も無きしもあらず」

「あなたの行間ってどこにあるんですか!?」

「そりゃ喜怒哀楽の変わり目には必ず存在するのだよ。特に生まれたての赤ちゃんにはね」

「やめてくださいよ。ゆきねえって呼べとか言っておいて、実は年下とか……流石に引きます。一どこ層を狙ってるんですか……」

「さあね。最近のライターさん達にでも聞いてくれ」

「そんな流行聴いたことがありませんよ」

「ふふ。その主張。君もまだまだだなぁ」

「それで仲直りは出來たかい?」

ゆきねえのおもちゃにされながらも、どうにか本題へと移る。

「ほう」

「なんか……一緒にご飯食べて」

「離島でドローン飛ばして遊んで」

「みんなでわいわいきゃっきゃした後……」

「友達と一緒に起業することになりました」

「……………はい?」

「え、ちょっと待って。どういうこと!?」

ゆきねえの頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる。

「急に仲を深めすぎではないかい?」

「まあ?」

いつも飄々とした彼の驚く姿は新鮮だ。

「と、言ってもまだ何をするかは決まってませんけどね」

これならもうしかき回してみたい。そんな衝に駆られるが

こちらかも聞きたいことがあるために斷念する。

「ええ………………」

ゆきねえが肩を落とす。

「いきなり起業とか言い始めるから何かと思えば全く……大きく見え始めた君が急に小さくなったよ」

「その言い方ひどくないですか!?」

「じゃあ種にでも戻ったとでも言い直そうか」

「なんかそう言われると悔しいですね……俺、もしかしたら有名人になるかもですよ?」

功すればテレビとか出るかもしれない。

本書いて、講演會出て、豪遊三昧!!

なんて!!!

「『取らぬ貍の皮算用』」

そんな卑しい考えを見抜いたのか、釘をさされる。

「な、始まる前から凹まさないでください」

「『出る杭は打たれる』」

「どちらかと言うと応援してくださいよ」

「『負け犬の遠吠え』」

「まだ負けてませんが!?」

これでは話がまったく前に進まない。

「じゃあゆきねえは起業したことあるんですか?!」

「起業? 私が?」

「ええ。もしくは人生の先輩として、新しいチャレンジをしようとしている後輩にアドバイスを下さい」

ちょっと攻撃的な言い方になってしまったが、ガンガンぶつかっていかないとゆきねえには屆かない。

「全く、君は急に何を言い出すんだか……」

「ううっ……」

いきなり起業についてアドバイスをくれ、だなんておかしな話だが

なんとなく、なんとなくだけれど、ゆきねえにも誠二が持っている雰囲気をじるのだ。

どこか卓越したじの、いわゆる悟りっぽい何かが……。だから。

「じゃあコンサル代としてコーヒー1本」

「こ、コンサル?」

「……私、お金の話をする時ってカフェインが無いと駄目でさぁ」

まさかの催促。

「……ご所はどちらで?」

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