《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》この語は踴る。とても不格好に、そしてとても自由に
「アドバイスねぇ……」
ゆきねえは、俺が全力ダッシュで買ってきた赤い缶コーヒーを傾け、ひと口飲むとそう呟く。
「まず、何で起業しようと思ったの?」
「それはもうかっこいい男になる為に」
俺はを張ってそう答える。
「それなら別に起業じゃなくてもいいでしょう?」
うぐ……確かに。
初手から正論で刺されてが痛い。
「まあ君が選んだ道で花を咲かしたいのなら問題はないんだけどさ。私が思うには、し相は悪そうな気がする……というのは置いといて、とりあえずそこまでの流れを聞かせてよ」
そう質問され、大學生になってからの自分を振り返る。
馴染たちと再會して、それぞれの長と自分自の空っぽさに気づいたこと。
そのせいか奈々に振り向いて貰えないこと。
これから先に何をしようかと悩んでいたところに、起業という自分には眩し過ぎる道が目の前に現れたこと。
自分を変えようと思い至ったこと。
「…………」
「えーと。ゆきねえ?」
なるべく簡潔に、くどくないよう素直な気持ちを言葉にしたつもりだが、ゆきねえは口を開かない。
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「あのー。つまらなかった? この話やめとく?」
「…………」
「えっと、なんか言ってくれないと気まずいんだけれど……」
「…………」
「ゆきねえってば!」
黙り込むゆきねえの顔の前で手を振ると、ようやく口を開く。
「あーいやーちょっとね……まさかこんな大學生の青春ストレートをど真ん中に投げ込まれると思わなくてさ。えーと、これ……自分で口にしてて恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいに決まってるでしょうが!?」
し前の自分なら泣きながら逃げ帰ってしまうような傷のえぐり方。
そちらから質問をしてこれは酷い。
相変わらずどこまでも俺をおもちゃにしてくる人だ。
「大丈夫だいじょーぶ。馬鹿にはしないから。ただ面白がってるだけだから」
「それ一緒ですよね?」
「全然違うって。人が落としに落ちるのと、必死に這い上がってくるのとの違いぐらいには」
それ、どっちのも苦しんでるんですが。
「どっちかって言うと落とすほうが好きですよね」
「いや~人が絶に染まる顔が堪んなくてねー」
ゆきねえが笑顔で答える。
「やっぱりど畜生じゃないですか!」
この人の背中には黒い蝙蝠の羽でもついているのだろう。
そう疑ってしまう。
「なんだよー。アドバイス貰おうとしている人にその言い草はー」
「ならもっと先輩らしい発言をしてからにしてください!」
「ふむ~。仕方がないなぁ」
「せめて缶コーヒー1本分と全力ダッシュ2本分お仕事して頂けると」
「ええ~。その程度なら0.5秒ぐらいしか話せないよ~~~私、意外と高いのよ?」
「それ高すぎませんか!?」
それだと一時間で九十萬円以上持っていかれる計算になる。
ぼったくりにも程があるが、逆にそれが本當ならこれまでに話した分だけでかなりの金額になりそうだが、それはないだろう。
「仕方ないなぁ。じゃあ今回は好きなの子のスリーサイズで許す」
「それ僕のほうが知りたいんですが」
「ええー。片思いの相手だろうー? それぐらい調べとけよー。が足りないぞ。がー」
「それはただの変態です」
「変態? 何を言ってるんだい? 見ればそれぐらい分かるだろう? 基本だよき・ほ・ん!」
「…………」
「うん?」
「…………」
「どうした?」
「ちょっとツッコミ疲れました……」
ゆきねえとの會話は話があちらこちらに取っ散らかり、自分の思考がまとまらない。
おかげで今度はこちらの口が開かない。
「ふーむ。この程度では起業の道は遠いなぁ」
「え?」
「起業といっても友達二人で始めるんだろう?」
「えーと、はい」
突然雰囲気が真面目モードになった。
「それなら全て自分でやるぐらいの気概と力が必要なわけだ。この程度のボケについてこられないようでは、山ほど出てくるだろう書類ミスや計畫の破綻に対応できないぞ」
「急にまじめな話をし出した……」
「何を言っているんだい? これは、ベスト・キ○ドなんだよ」
「……それって、ジャッキー映畫のやつですか」
昔見た映畫を思い出す。
「いや、ミヤギさんのほうだ……」
「?」
「やっぱり世代だなぁ……」
「???」
「まあそれいいとして。かっこいいなんてものはなろうとしてなれるものではない。いつの間にかなっているものなのだよ」
「それはなんの冗談ですか?」
よく意味が分からない。
「うーん……それについては実際のところ私も分かってないから」
「ええー」
「よく聞いてくれ。まず、こういうのは口に出すものじゃないんだ。むしろ口に出す時點で一番かっこいい存在から遠のいてしまっている。」
「かっこいいから遠のく?」
「つまりは世界で一番ダサいやつってことかな」
「俺がですか!?」
「イエスとも言えるし、ノーともいえる。とても難しい。とても難しいのだよ……」
それってゆきねえ自もかっこいいから遠のいているってことじゃ……。
「とにかく! 一番初めに始めることはベスト・○ッドを見るところからだ!!!」
それが決め臺詞なのか俺に向かってビシッと親指を立てる。
「……えっと……それだけ?」
「それだけ」
「まじですか」
「もちろん大真面目だよ。質問に対してのアンサーと參考資料の紹介」
きっぱりと言い張るゆきねえ。
「それもまぁ……缶コーヒー1本分の範囲で、だけどね!!」
「とあるアニメ映畫ではコーヒー一本で永遠と草むしりしてましたが…………」
「それはそれ。これはこれ」
「おっけー?」
「…………おけまるです」
「?」
そんなアドバイスをありがたく(?)け取ったのと同時に、一つ分かったことがある。
ゆきねえの趣向年齢は40代後半に違いない。
ということだ。
しかも大きなお友達寄りの……。
「なんか言った?」
「いえ! 何にも!!!」
取り敢えず今日はサブスクで例の映畫を見ようと思う。時間があれば……。
「絶対に見ろよな?」
「あーもう! 今日は帰ります! お疲れさまでした!」
あと読心も使えるようだ。
12ハロンのチクショー道【書籍化】
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