《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》悟さんの援護撃
シュッシュ!
場所はアルバイト先のステーキハウス。
そして今は閉店後の清掃時間。
つい先ほどまでお客様が利用していたテーブルを奇麗にしている。
既に食は皿洗い機の中。
調味料やメニュー表を移させ、専用のスプレーを吹きかける。
そして適量より気持ち多めで濡らしたテーブルを、円を描くようにして汚れを隅々までふき取る。
キュッキュッ!
どうしても油が跳ねるため、清掃は目に見える場所以外も気を配らないといけない。
それこそ今移させた、ケースの角なんてそう。
時間が経てば経つほど落ちにくくなるため、今のうちでふき取ってしまう。
もし手抜きをして累積させようものなら、ぶにぶにした黃い油の塊ができ、それも求めて例の『ヤツ』が現れるからだ。
黒くて、素早くて、一匹見つけたら近くに三十匹はいる……アレ、だ。
しかもこの島にいるヤツ、仮名『G』は本土と比べるとかなりデカい。
ビル街では本土に生息するタイプも時々出てくるため、その大きさの違いが分かるのだが。
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ぶっちゃけサイズが違いすぎでて、ここでよく見るタイプの方がかなり『G』が出ている。
本土のやつが「カサカサ」ってじなら。
ここのやつはそのき全てに濁點が付き、迫力が數倍。気持ち悪さは百倍である。
室で遭遇したら逃げるが吉。可能なら殲滅。
別関係なく挑める人間はすべからず勇者だ。
挑む際は、右手に剣(使い捨て)を左手には盾(使い捨て)を推奨する。
またここの『G』はよく飛ぶ。
街燈に羽蟲が集っているのをよく見かけると思うが、あの中に高速でき回っているのがいたら、それは『G』だ。
それぐらい軽くやってのける。
だから外を歩くとき、足元ばかりに気を取られてはいけない。
奴らは男関係なく飛び掛かってくる。
そう。あれは忘れもしない中學の時………。
ううぅ。
思い出すだけで悪寒が……。
とにかく。
言えることは一つある。それは。
絶対に。絶対に!
ぜーーーーーーーーーーーーーーったいに!!
――――――口は開けるな――――――
…………。
ということ。
これまでにどんな目にあったかまで語ると、こっちにダメージがるため割するが
清掃は出來るだけ奇麗に、丁寧に、を心掛けている。
「~~~♪」
「…………」
カチャチャチャのチャッ!
鼻歌を歌いながら仕事をしているのだが、ちらちらと棚原先輩の視線をじる。
しかし特別話しかけてくる訳でもなく、俺はそのまま仕事を続ける。
今度は皿洗い機から乾燥機へ。ボタン一つ。押すのは二回。
すごく簡単だ。
清掃中はいつもこれが自宅にもあったらなぁ、と毎回考えるほどだ。
「……………」
「~~~~♪」
さて、今度は床を磨いて、その次にトイレ掃除。最後にごみ出して……。
あ、棚原先輩は清算し終わっているかな?
中間點検の時にズレはなかったけれど、今日は忙しかったからなぁ。
もしかしたら會計にミスがあるかも。
最近じゃ支払い方法も増えて、チェックする項目が多いから。
金額のズレというよりは、POSレジ力する際の金種間違い。
クレジット払いをE〇yで打ち込むみたいなケースだ。
実はコンビニみたいに一臺のレジで全て処理できるわけではなく、その周りにガジェットを並べ、閉店後の算時に手で力している。
クレジット払いはもちろん。電子マネー各種を含めれば、支払方法は両手では収まらない。
一応、うちの店はレジが一臺だけ。
なので、そうそうミスが起きるわけではないが、混雑する場合は、意識が四方に散ってしまうために起きてしまう。
特に電話や呼び鈴、お客様からの質問など、混させるものはいくらでもある。
うちみたいにそこまで大きくないお店なら、後で修正するだけでいいけれど
複數臺並べている店で、この形式をとっているのならきっと地獄だ。
そしてその地獄がどうやらこの島には多いようで、そこら辺の非効率な部分はどうしても本土と比べると劣っている。
つまり、のんべんだらりとこの島の流れに乗っていては駄目だということだ。
そして俺はその流れにあらがう男である。
「……ムフ♡」
おっといけない。
ついつい口元が緩んでしまう。
「なんかいい事でもあったの?」
棚原先輩が奧の事務所から出てきて、そう聞いてくる。
「ムフ♡、ムフフ♡ 分かっちゃいます?」
「『ムフ♡』と言われて分からない男子はいないだろう。なんだ。パンティーでも拾ったか?」
「いいえ。パンティーよりも良きものです」
ガチャッ、カランカラ~ン。
「禮夢くん聞いたぞ! 起業するんだって!?」
Closeの札をかけてあった扉が開かれ、にっこにこの悟さんが飛び込んでくる。
「いや~耳が早いですね~」
「起業!?」
「なるほど。そういうことか」
奈々かられたであろうその報に二人が驚く。
「いや~本當はちゃんと形になってから話そうと思ってたんですけどね~ははは」
みんなの食いつきっぷりについつい気が大きくなる。
「大學生活をどう過ごすのか、これから一年かけて考えようと思ってたんですが、先日再會した友人にわれたんです。正直、このままだと自分がむ將來に進めないことが分かっていたので、自分を大きく変えるチャンスだと思って、チャレンジすることに決めました」
こんな形で自分の將來について自分の先輩たちに話す日が來るなんて、考えてもみなかった。
これもある意味メリットなのかもしれない。
「再會した友人?」
「これって……………………………」
話を聞くと何か違和をじたのか、二人の目線が悟さんに向けられる。
「大丈夫。その可能も考慮して話をしに來たつもり」
含みを込めた悟さんの返しに俺は首をかしげる。
「禮夢くん」
二人を一言で説き伏せた後、視線が俺に集まる。
「もし良かったら……………………うちの空いている離れを事務所として使ってみないかい?」
「――――――――――――え?」
………。
……。
…。
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