《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》白か黒か…………もしくはその中間か1
相変わらずの日差しと青い海。
二人の男が防波堤に座り込み、話をしている。
「転売ねぇ………………」
「はい、転売です」
「それが起業なの?」
「どうなんでしょう」
日課となりつつある、ゆきねえとの會話。
相変わらず飄々とした彼と、ここ數日で起きたことを話す。
「初日は結構話し合いましたよ。意気揚々と集まって、聞かされたのが転売となると流石にですね……」
誠二としては販をしているわけで、転売とは違う………と主張したいようだが、本人もそこら辺の區別が難しいことに悩んでいた。
「一応、友達も転売って言葉は、あまり使いたがってはいませんでしたし……実際、最初にその言葉を聞いて、自分も『ミスったかなぁ~』って思いましたから」
正直、思うところはあった。
けど。
「それでも、もう事務所まで借りていて、著々と準備を進めていると」
続く言葉をゆきねえが代わりに口にした。
「まあ……結構、楽しいですよ」
実際、この前は夜遅くまで話し合い、充実した一日を過ごした。
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ただゆきねえはどう思っているのだろうか。
し怖くもあり、けれどこの歪みを彼は……。
「うんうん。実に面白いね」
ほら。
「確かに転売と聞いて、今の時代に良い顔をする人なんて限られた人しかいないと、私だって思う」
「ですよね……でも聞いた限りでは、自分のイメージとはちょっと違ったんですよ」
「というと?」
ゆきねえが食いつく。
「うーんそうですね……生まれから一度でもいいので、トイレットペーパーの芯を売ろうって考えたことあります?」
「トイレットペーパーの芯って……あの筒のやつ?」
「それです」
「う~ん……」
流石にゆきねえでもそんなことをしようとは思いつかなかったようで、首を橫に振る。
「ですよね! 頭おかしいですよね!?」
「おいおい。変なのは認めるけれど、頭おかしいって言い方は酷くないか?」
「こ、これは!! えっと、その……良い意味で、頭おかしいって意味ですよ! 意地らしく人気商品を買い占めて、高値で売りさばくような、そこら辺の屑とは全然違いますって!」
「屑って…………君、結構辛辣なこと言うね」
「あ、いや、これはちょっと……馴染の影響と言いますか、そう言うと、またその馴染に失禮ではあるんですが、まあ、その、話し合いの時に々ありまして…………」
* * *
時は戻り、初めて事務所に集まった日の夜。
「そういえば転売って……………チケットとか売ってたりしないよね?」
奈々が興気味に誠二へ問いかける。
「してないよ」
これから先、どういったモノを商材として取り扱っていくのかに誠二がれると、奈々の様子が変わった。
「あと、初回限定盤を買いあさったり! 限定品を朝一で並んで買い占めたり! それから
「奈々落ち著けって」
サブカル星人としての正義からか、あれこれと質問する奈々。
分からなくもないが、その目が異常なまでに燃えている。
「だって! だって~~!」
おかげで全員が頭をフル回転。
自分たちがこれから先、何をするのか強く意識させられる。
「その、なんだっけ? 販と転売の違いって?」
熱がりすぎている奈々の代わりに質問すると誠二が答える。
「違いはね……えーと、うーん………………口で話すのは難しいなぁ。正直傍から見れば、売れそうなものを安く仕れて、それ以上の値段で売るってところは一緒だとおもう。ただ禮夢達がイメージしているような、骨な買い占めとかはしてないよ。なくとも俺は………………」
奈々がじっと誠二を見つめる。
じっと、ただじっと見つめる。
俺も何度かやられたことがある。
この時の奈々はしだけ、いや、かなり怖い。
真っ直ぐ、純粋に、自分の中の邪念を見つかすような、そんな目。
『私はあなたを信じてもいいだよね?』
口にせずとも、誠二はそう問われている。
「なら安心……かな」
ほんの數秒だったが、答えた出たようだ。
と、言いたいところだが。
「そう言う割には、なんか歯切れが悪いな」
「歯切れが悪いというか、なんというか……うーん……………だって聞いてよ」
「何を?」
「そりゃもう被害者のび、だよ……」
あ、これは……。
途端にあたりの空気が重くなる。
更に空気を読むように太に厚い雲がかかり、辺りが暗くなる。
これは攻撃をけているのではと錯覚させるような、領域支配に奈々以外の全員が息をのむ。
そして呪詛のような語りが始まる。
「先日、とあるゲーム界隈のビックタイトルが、初めて複製原畫を出したの。限定100枚。原畫家さんのサイン付きで、しかも描きおろしイラスト。そのイラストが最高でね、々と想像を湧き立てるの……でも、どうしてもネットに上がっている畫像では確認出來ない部分があって、解像度が低かったり、サンプルの文字で所々隠れていたり、『これは是非とも自分の手元に置いて、隅々までチェックしなくてはーー!』ってみんな考えてた…………もちろんその複製原畫をしがる人は、その何倍もいて、選になったんだけれど………………………」
ごくり……。
「當日、私の周りでは手にれた人がほとんどいなかった…………」
「選だから仕方がない、人気作品だから仕方がない、むしろここまで倍率が高いってことは、アニメ化までもしだ……そう互いにめ合っていた。殘念だけど仕方がないって……………」
「でも! でもだよ! そこに奴らがやって來た!! 選発表から數時間後。オークションサイトを覗けば10萬円スタートで売りに出さている複製原畫がいくつもあって、その理不盡さに皆が抗議した! でも後の祭り……吊り上がっていく値段と、増え続ける出品數……」
「八つ當たりで運営に抗議する聲。どうしてもしい勢と、転売から買うくらいなら首を吊った方がまし勢との抗爭。まさに地獄だった…………………」
「何が『不要になったものを出品しております』だ! 選が終わったの數時間前だっての! 仮にファンだとしても! こんな短時間でプレミア品を売りに出す奴にファンを名乗る資格なんてない!!! あああもうふざけやがって! この屑め! 野郎ぶっこ〇してやる!————————って、フォロワーさんから聞いたよ?」
奈々ダークネス。
その目には生気はなく、薄っすらと浮かぶ笑みは世に言うメンヘラ(面倒くさい)を想起させる(けど好き)。
「お、おう……………」
好きなには容赦ないのが奈々の良い所で悪い所。
ここまで殺意を駄々洩れにするとは……。
「………………」
「うん? 誠二…………誠二、大丈夫か?」
「やばい。なんか心苦しい……いや、そんな事していないんだけど、してないんだけど!」
若干一名。どちゃくそ重い空気にやられている。
「奈々さんや。その殺気を仕舞ってくれやしませんか? 誠二が壊れちまう」
「うん? 殺気なんて出してないよ。ただ心の底から特定の人に対して呪いをかけているだけだから。車のタイヤパンクしろとか、自宅に財布忘れて外出しろとか、その外出先でスマホの電源切れろとか」
「地味だけどめっちゃ嫌だなそれ」
優しいのか悪趣味なのかよくわからん。
「しかもここ最近毎日呪ってるからずっと効果が出ているはず」
「しかもえげつない」
* * *
と、ここまでが回想である。
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