《HoodMaker:馴染と學生起業を始めたのはいいが、段々とオタサーになっていくのを僕は止められない。<第一章完>》『第一回會議_〈夢実現_頂を目指す者たち〉』2
「夏までに月の売上50萬!」
瀕死の狀態から復活した誠二と奈々(俺も)の和平渉も済ませ本題へ。
「そして今年の目標は月売上300萬以上になること!!」
買ったばかりのホワイトボードに、大きく目標が書かれている。
進行役になった誠二。
先ほどまでとは打って変わって、ビジネスマン風のパリッとした口調になっている。
「はーーい先生―――!」
そこへ秋が元気よく手を挙げる。
「どうぞ」
「売上50萬ってことは、利益になるのって多く見積もっても15萬円ぐらいだよね? それって目標として低くないかな?」
「そうなの!?」
その質問に奈々がを乗り出す。
「50萬だよ!? BD-BOX10セット分だよ!? 激ヤバだよ!!?」
基準が分からん。
しかし、売上50萬と聞くと驚く気持ちは分かる。
確かに仕れと必要経費を考えれば、手元に殘るのはバイト代に+αぐらいでしかない。
5人で分擔すれば、それこそ雀の涙程度だ。
皆が満足する額を考えるのなら、もっと上を目指すべきなのでは? そう思ってしまう。
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「確かに大きな金額がく割には、実りが小さく見える。それでもスモールスタートの理由はいくつかあるけれど、一番は俺たち素人が思っているよりも、そう簡単にはいかないってことがあるかな」
「まじ?」
「うん、まじ」
誠二が真剣な顔で頷き返す。
「普通、起業したら黒字になるまで結構時間かかる。それこそ、數カ月の赤字は當たり前なんだ。だって最初は何もないからね。々と準備しないといけない。想像してみてよ。売り上げに対して、家賃、熱費に、人件費。消耗品費、雑費、仕れ、返済、その他もろもろ。支払いが大きくなるのは仕方がないと思わない?」
仕方ないどころか、これが現実である。
「そんなイニシャルコストとか、ランニングコストなんかを考えるとキリがないけれど、俺たちみたいな小さく始める場合は深く考えず、直ぐに始めて、結果にコミットしていく、PDCAが大事なんだ」
ここで誠二が笑う。
「それにそこまで悲観的でもないから。一応、そこら辺については3ページに記載されてるから読んでみて」
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全員が同時にめくる。
そこには分かりやすい説明が載っていた。
初期投資がなく、小規模であれば自宅で開業可能であること。
幸運なことに事務所を確保できたことで、他とは違うメリットがある事。
とんとん拍子で話が進んでいるが、自分たちには捨てるべき先観があること。など。
………大丈夫。変なことは書いていない。
「まあそうだよね~」
凜が重を背もたれ預ける。
「知ってはいたけどさ。―――うん、でも、もしかしたらぽんと跳ねる可能もあるじゃん?」
秋が右手の人差し指をくるくると回し、最後にぴんと天井を指す。
「跳ねるって?」
「跳ねるは跳ねるだよ。ネットでも益ってあるみたいだし」
事前に畫でも見てきたのか、普段聞きなれない単語を使って話す秋。
「ばくえきって……高利益ってこと?」
「そうそれっ!」
同じように畫や、関連の記事に目を通してきた俺が反応すると、嬉しそう笑う。
「あまり期待しないほうがいい」
そこへ誠二が釘をさす。
「一つ、二つの仕れで、大きく手取りが変わったりしない。客観的に見たら、販って既にレッドオーシャン化してるし、それでも參は止まらないからね」
「………じゃあなんで販なの?」
そうだ。
それでも何故販なのか。
凜の質問に全員の視線が誠二に注がれる。
「それは俺たちが、第一・二産業が出來ないから……なんて言うと、元も子もないけれど、強いて言えば、経験値が高いから…………かな」
「経験値?」
俺は首をかしげる。、
「えーと、この中でバイトしてる人~」
すると奈々以外の全員が手を挙げる。
「おっけ~みんな下げていいよ~。じゃあ~凜!」
「え? あ、はいっ!」
當てられると思っていなかったのか、聲がうわずっている。
「今のバイト先で働いて、何かできるようになった事ってある?」
「…………出來るようになった事?」
指名された凜が、腕を組み考える。
因みに凜のバイト先は大學近くの書店である
「うーん。いきなり言われても……ねぇ」
中々思い浮かばないのか、次の言葉が出てこない。
「まず書店で働いて、何が出來るようになるんだろう。本について詳しくなるとか?」
そこへ秋がフォロー。
「えーと、基本は棚れして、発注して、電話取って、本探して、レジして……それぐらいかな」
「イメージ通りだね……」
俺も同意見だ。
「POPとか作らないの?」
「あるにはあるけれど、そこまで手の込んだPOPは作ったことないよ。夕方から閉店にかけては結構お客さんが來るから、座る暇ないし、電話対応でてんてこ舞いだよ」
「それは予想外」
書店ってもっと落ち著いた仕事だと思っていた。
「ま、先月から始めたばっかで、まだまだこれからだと思けど」
「なるほど。まあ俺も似たようなじかな。基本、接客と雑用だよ。流石に焼いたりはしない」
そう言うと、自分もそうだと秋も頷く。
「多分、みんなも似たようなじだよね。アルバイトはアルバイトであって、お金がしい以上に現場に求めすぎてはいないと思う。…………いや、そうでもない業種も存在するから、一応訂正はれて置くかな。そのまま社員の席を狙う人もいるかもしれないし。ディズニ〇ランドみたいにガチで好きな人がいるパターンもあるからね」
主張をしつつ、しっかりと保険をかけてくる誠二。
「ははは」
思わず吹き出してしまう。
「どうした?」
「いや、なんでもないよ。ただ、確かにと思ってさ」
つい自分のバイト先を思い出してしまう。
店長もバイト上がりで、棚原先輩もあの店で腰を據えるらしいから。
「そう?………まあ、あくまでアルバイトは、手伝いとしての側面が大きい以上、一番楽しい『クリエイト』がやりづらい……という部分を強調したい」
「クリエイトって……どういう……?」
首をかしげる秋。
「大きなものだと、お店を作るとか、ルールを作るとか、システムを作るとかかな。小さなものだと、イベント企畫やコーナーの新設。もっと細かいものを含めると山ほどあるけれど、最近のアルバイトは完全にマニュアル化されていて、それに対して従わされているじがしない?」
「あ~~~~~」
心當たりがあるのか秋が、変な聲を出す。
それに聲に出してはいないものの、みんな同じ顔をしている。
「マニュアルは凄く、凄く大事。でも作ることは、自分に決定権がある程度あるってこと。実際、モチベーションも大きく影響するし、様々スキルを手にれる原力になる。ほら、自分が周りの役になっているって認められる証が、あるか無いかで結構違うでしょ?」
「まあ確かに」
全てが給與で完結しているようで、そうではないということか。
まあ今の時代。年収が高いブラックよりも、そこそこなホワイトのほうが人気あるし。
「でも……お金も大事じゃない?」
とは言え、だ。
楽とはいかないまでも、みんな毎月手にしたい希の額はそれぞれある。
それこそモチベーションの一つでもあるのだから。
「もちろんさ。むしろこの中で一番お金がしいと思っているのは俺だと思う。だからこそ作るって行為が大事なんだ」
そこで誠二が次のページを開く。
4ページ目には大きな空白欄が2つ。
それぞれの空白欄の上に『1年後』と『10年後』と書かれてある。
「さっきの目標はあくまで最低限の話。300萬以上売り上げて、初めて趣味から仕事になる。つまり4人分の人件費確保が可能になるラインだ」
「4人分? 5人じゃなくて?」
凜が誠二の話に割ってる。
「いや、4人。俺の人件費はしばらくの間含めないで、その分ベットしていきたい」
「一どうして……?」
「月100萬しかったら、その何十倍以上の売り上げが必要だから」
「何十倍も?」
その遠回しな言い方に対して、し考えてみる。
月に300萬円売り上げの場合。利益率が30パ―セントあっても、90萬円の利。
熱費等を引けば、70萬余るかどうか。
そこから5人で分配して一人當たり14萬……。
この島の初任給とほぼ同じだ。
でも、更に大きな収を考えるのなら、更に大きな仕れを考えなければならない。
じゃあその元種は?
同じ額を翌月にベットしても、利益率が変わらなければそのまま。
それどころか同額の売り上げが立つかも分からない。
なら――――――。
―――――。
「それは…………卑怯だろ」
思わず誠二の肩を軽く小突く。
「目先の小金よりも、更に大きな夢を追いたいんだよ」
逆に小突き返してくる誠二。
「俺が作りたいのは、でっかい夢を追いかけることが出來るチームだ。その為には出來ることは何でもやる。幸い、まだみんな學生で実家暮らしで、俺もまだまだそうだ。だからこそチャレンジ出來ることがあると思う。一番は學業だと思うけれど、だからと言ってそれが全てでもないとも思っている。そこでし時間を設けるからこの空白の中に、このチームとしての一年後と十年後を書いてしい」
「10年って…………」
「そりゃ10年後は、おしゃれなマンションでウハウハだよ!」
「10年後の私たち―――――(チラリ)」
それぞれが思い描く未來。
「イメージ出來…………いや、そこそこ幸せに思えるような生活を、いや、かっこいい男に……」
「と、まあそこら辺の意識を共有してみるっていうのが、今日のテーマなんだけど……あっ、ちょっと話が逸れるんだけれどチーム名どんなじにしようか?」
そういえば全然考えてなかった。
「數年後には合同會社を作ってるイメージだったんだけど、名前がないと締まらないよね?」
「はい!」
早速奈々が手を挙げる。誠二が続きを促すと、奈々はにんまりと笑みを浮かべて。
「ヴァイスシュヴァルツ!」
「意味は?」
「白か黒か!」
なんてことを言う。中二くさい……。
「俺はいいと思うけど……」
「えっ」
しかし誠二はまんざらでもなさそう。
「じゃあじゃあ! SANRR(サンナー)」
今度は秋が挙手。
「うん? 聞いたことないけど、どこの言葉?」
「S・A・N・R・R! 全員の名前の頭文字を取ってみた!」
そうきたか。
「因みにネットで検索かけてみたけれど、特に意味っぽいのはないね」
「何かしらの意味はあった方がいいな~」
「俺的にはもっとスマートなじがいいな」
「例えば?」
「アッ〇ルとか、ソ〇ーとか、グー〇ルみたいなじで」
「なるほど。なら、オレンジとかどう?」
「あーそれは某CGアニメーション會社と被ってますね~」
そうやって全員で意見を出し合うがなかなか決まらない。
各々のセンスと希が混じり合い、カオスな雰囲気すらある。
このままでは何も進まないと、奈々が愚癡をこぼす。すると俺が保留案を出すのだが。
「まあ仮で名前をつけて、後で直すって手もあるけれど……それこそ適當に、お餅大好きとか、ハチドリ(仮)とか……」
「あーそれがいつの間にか定著するパターンね。SNSでよくあるやつだ」
愚癡をこぼした奈々が隣から刺してくる。俺にだけ刺してくる。
「名前の由來を聞かれて『代表が好きだからです』って答えたくはないな」
「うーん…………じゃあどうするのさ?」
完全にお手上げ狀態。
段々とみんなの中にフラストレーションが溜まり始める。
まさかこんなことで仲が悪くなるなんてこと……。
「…………一ついいかな?」
今度は誠二が手を挙げる。
「Reunion(リユニオン)ってどうかな?」
これまでに出てこなかった良案の雰囲気。
「意味とかある?」
「えーと、再會って意味だって」
凜が持っていたタブレットをこちらに向けてくる。
同窓會・親睦會・再開の集い。
確かに今の自分たちにあっている気がする。
「ただ既にある名前みたいなんだけど、結構いいなって」
「それならし付け足してみるとか?」
意味を無くさないようにしつつ、それでいて他と被らないようにしないといけない。
「じゃあさ!じゃあさ!! これなんてどう!」
――――『Re:Union』――――
奈々がリストの空きスペースに改善案を書いて見せる。
「奈々ぃ…………これだと、どこかのラノベと被らないか?」
「大丈夫、大丈夫! これぐらいんな所でやってるから!」
悪そうな顔で俺たちを言いくるめてくる。
この、ちゃっかり自分の趣味を絡めて!
「それにんな人に検索される可能が高いし、それこそ県民にされている某スーパーにもかかってて、お得でしょ? どことは言わないけれど」
そうは言ってもさぁ。
んな所からツッコミが來そうな名前は……。
「俺はありだな」
「えっ?」
「私も」
「私も」
いつの間にか外堀が埋まってしまった。
「ぐぬぬぬ…………分かった! 分かったって!」
そうやって一歩ずつ進んでいく。
結局この日は実務にることはなく、話し合いだけで丸一日消費したのであった。
殺人狂の隣に
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