《高校生男子による怪異探訪》4.遭遇
短いですけどキリが良いので。
四人での帰宅は駅が見えてきた辺りで解散となった。
樹本と檜山は地元が同じで駅の向こう、嵩原だけが一人電車を利用する。俺は地元も地元の地元人なので四人の中では一番家と學校の距離が近い。なんせ駅も本來は駅すらスルーだからな。
この家との近さが現在の高校を選んだ最たる理由でもある。偏差値は生徒數の多さからピンキリとなっていたのも理由の一つではあるけど。
一人っきりの帰宅の途を歩いているとここ數日の騒が頭を過る。
最初はただ朝日との関係について騒がれているだけだったのに、昨日今日で明確に俺に悪意を向ける人間の存在が浮き彫りになってきていて事態はよりまずい方向へと進んでしまっていた。
おかげで樹本たちの過保護も加速して、今日は俺を家まで送るとか言い出したのだから堪らない。
俺は子か。丁寧に斷ることでどうにか難を逃れたが俺をか弱い扱いするのは止めてしいものだ。
あいつらの懸念も理解は出來るが、手紙の送り主が俺に直接害を與えるかというとそんなことはないんじゃないかと俺は思う。
Advertisement
嵩原も言っていたように、呪いの手紙なんていうな手段を用いる人間は敢えて直接的な手段を選ばないからこそそっちに走るのだ。
直接害を與えようと考えているのならとっくに実行しているだろう。わざわざ手紙なんか寄越すのなら校舎裏にでも呼び出してボコる方がてっとり早いのだし。
勿論油斷は出來ないが、どこぞのヒロインよろしく男友達を常に侍らせるのは……。うん、違う噂が立てられそうだし卻下だな。
あれは守られるのがだからまだ絵になるのであって男の場合は稽なだけだ。必要以上の護衛はこれからも斷ることにしよう。
街中の喧騒が徐々に遠退き辺りは夕方特有の靜けさが広がっていく。
日が沈み出した頃の住宅地はだいたいどこも一緒なのだろう。微かに、はしゃぐ子供の聲が聞こえないこともないが、それは立ち並ぶ家々の塀の奧から流れて來ているだけで通りには人っ子一人いない。
黃い夕日に照らされ、自前の影が真っ直ぐアスファルトにびている。
Advertisement
他に話す人間もいないとなるとついついとりとめのないことを考えてしまう。今日出された數學の宿題や明日の化學の小テストのこと。それから積み上げているゲームにお薦めされた漫畫。
だんだん心が逸るものに思考が片寄っていって、そうすると思い出さずにいられないのが數ない趣味の一つである晝寢だ。この時期は本當、日のあるはどこでだって気持ちよく寢れるというのに。
晝寢に思いを馳せるが、それと同時に窮屈な現狀を思い出してしまい反対に気分は下がる。改めて思う、一人で校も歩けない現狀というのは人としてあまりに不憫なことだと。何度だって言おう、どうしてこうなった。
げんなりとした気持ちのままに帰路を行く。そもそもいくらから告白されたとは言えそんな學校中の男共から嫉妬と憎悪を向けられるものか?
俺以上ににモテてる嵩原も、あ、そこそこ修羅場は験してきているようだったが、それにしたって學年を越えて恨まれるといったことはなかったと思う。
せいぜい幾つか男共の話に上がり怨嗟を向けられる程度だろう。俺のようにどうにかしてやろうと行に移されることは稀だったはずだ。
そんなモテ男でもあまり験しないような修羅場に巻き込まれている俺……。
騒いでいる奴らは何が目的なのやら。俺を排除したら朝日が自分に振り向いてくれるとでも思っているのだろうか。それはあまりに稚な発想と言わざるを得ない。
だんだんと愚癡っぽくなった思考をだらだら流して閑靜な道を歩いていた。その時だ。
ふと視界の端に何かが引っ掛かった。誰かがいるとか何かが置いてあるとかいった明確なものではなく、視界の端、見切れるか否かという場所に本當に僅かな違和を覚えた。
なんとなく緩めるだけで足は止めずに周囲を探る。
アスファルトで舗裝された道に塀が続く。
普段ならそれらは灰や白といったモノクロなを纏っているのだが、現在は傾き斜めに差す夕日が辺りを黃一に染めている。空も同様に黃に染まり、しかし太とは反対の空は赤から黒にとを重ねて夜の空へと変化していた。
黃に染まる道路には俺の影が黒く長くびている。煙突のようにびる影はきに合わせ左右に揺れる。その影がびる先にも人影は見えない。道路には俺一人しかいなかった。
いや、もう一人誰かいる。
それは道の端に佇む電柱、他同様に黃に染まるその影にひっそりと潛んでいた。真っ黒に電柱の背後に落ちる影、その中に誰かがいるのだ。
ぞっと背筋が泡立つ。
見付けたのは偶々だ。偶々目の前の景に違和をじ偶々電柱に目をやってその存在に気付いた。その人影は電柱の影にすっぽり収まるように全を隠していて、その人相や格などはまるで判別出來ない。
だが、確かにそこにいる。黒い影の中にいても見える、呼吸に合わせ上下する肩やこちらを覗くために傾いだ頭が影の中でもうっすらと。そいつは確かにこちらを見ていた。
瞬時にんなことを考える。奴は何か、何故あんな所にいるのか、こちらになんの用があるのか、危害を加えるのか、逃げ出すべきか、正しい対処は。
ぐるぐると悩んだ結果、気付かない振りをして通り過ぎることにした。
今すぐ踵を返して逃げ出したいのが本音だがここで背を向けるのは怖い。気付かれたと察知し追い掛けられたら堪らない。
出來れば橫道にでもってさっさと距離を取りたいのだが生憎としばらくは一本道が続き路地もない。一番近い分かれ道は奴の先にある。
逃げ出せない、距離も取れないとなれば後は知らない振りをして橫を通り過ぎるしかない。
不審者に接近するなんて冗談ではないが一番刺激を與えない選択でもある。今下手に奴を刺激して暴走でもされたらかなりまずいことになる。ここには俺しかいないのだ。それだけは避けたい。
ペースが変わらないように気を付けながら進む。
視線は自分の影に固定して奴の方に向かわないように努める。完全に視線を外すのは怖いので視界の端に奴が引っ掛かるよう注意しながらその橫を通り過ぎた。
斜め右に見えていた電柱と奴が流れ、真橫へと來て、そして後ろへと消えていく。視界から消えた瞬間張で心臓が強く拍を打ったが、後ろから襲われるといったことは幸いなくそのまま歩みを進めた。
どくどくと自分の心臓が立てる鼓を気にしながら左に現れた曲がり道へと折れていく。曲がる時、チラリと奴がいた電柱へと目を向けてみた。驚いたと言うべきかもうそこには誰もいなく、眩しい夕日に照らされて電柱の長い影がびているだけだった。
【書籍化&コミカライズ】関係改善をあきらめて距離をおいたら、塩対応だった婚約者が絡んでくるようになりました
【6月10日に書籍3巻発売!】 「ビアトリスは実家の力で強引に俺の婚約者におさまったんだ。俺は最初から不本意だった」 王太子アーネストがそう吹聴しているのを知ってしまい、公爵令嬢ビアトリスは彼との関係改善をあきらめて、距離を置くことを決意する。「そういえば私は今までアーネスト様にかまけてばかりで、他の方々とあまり交流してこなかったわね。もったいないことをしたものだわ」。気持ちを切り替え、美貌の辺境伯令息や気のいい友人たちと學院生活を楽しむようになるビアトリス。ところが今まで塩対応だったアーネストの方が、なぜか積極的にビアトリスに絡んでくるようになり――?!
8 64悪魔の証明 R2
キャッチコピー:そして、小説最終ページ。想像もしなかった謎があなたの前で明かされる。 近未來。吹き荒れるテロにより飛行機への搭乗は富裕層に制限され、鉄橋が海を越え國家間に張り巡らされている時代。テロに絡み、日本政府、ラインハルト社私設警察、超常現象研究所、テロ組織ARK、トゥルーマン教団、様々な思惑が絡み合い、事態は思いもよらぬ展開へと誘われる。 謎が謎を呼ぶ群像活劇、全96話(元ナンバリンング換算、若干の前後有り) ※77話アップ前は、トリックを最大限生かすため34話以降76話以前の話の順番を入れ変える可能性があります。 また、完結時後書きとして、トリック解説を予定しております。 是非完結までお付き合いください。
8 87BioGraphyOnline
BioGraphyOnline、世界初のVRオンラインゲーム 俺こと青葉大和(あおばひろかず)はゲーム大好きな普通の高校生、ゲーム好きの俺が食いつかないはずがなく発売日當日にスタートダッシュを決め、今している作業は… ゲーム畫面の真っ白な空間でひたすら半透明のウィンドウのYESを押す、サーバーが混雑中です、YESサーバーが混雑中ですの繰り返し中である。 「いつになったらできるんだよぉ!」 俺の聲が白い空間に虛しくこだまする。 BGOの世界を強くもなく弱くもない冒険者アズ 現実の世界で巻き起こるハプニング等お構いなし! 小さくなったり料理店を営んだり日々を淡々と過ごす物語です 9/27 ココナラよりぷあら様に依頼して表紙を書いていただきました! 2018/12/24におまけ回と共に新タイトルで続きを連載再開します! ※12/1からに変更致します!
8 170転生王子は何をする?
女性に全く縁がなく、とある趣味をこじらせた主人公。そんな彼は転生し、いったい何を成すのだろうか? ただ今連載中の、『外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜』も併せて、よろしくお願いします。
8 128俺が過保護な姉の前から姿を消すまでの話
過保護を超えた姉から俺が姿を消すまでの物語。 ”俺”と”姉”の他人には到底理解し得ない関係性。 結局理解出來るのは俺と姉だけだった。
8 159出雲の阿國は銀盤に舞う
氷上の舞踏會とも形容されるアイスダンス。その選手である高校生、名越朋時は重度のあがり癥に苦しんでおり、その克服の願をかけに出雲大社を訪れる。願をかけたその瞬間 雷のような青白い光が近くにいた貓に直撃!動揺する朋時に、體を伸ばしてアクビをすると貓は言った。『ああ、驚いた』。自らを「出雲の阿國」だと言う貓の指導の下、朋時はパートナーの愛花とともに全日本ジュニア選手権の頂點を目指す。 參考文獻 『表情の舞 煌めくアイスダンサーたち』【著】田村明子 新書館 『氷上の光と影 ―知られざるフィギュアスケート』【著】田村明子 新潮文庫 『氷上の美しき戦士たち』【著】田村明子 新書館 『DVDでもっと華麗に! 魅せるフィギュアスケート 上達のコツ50 改訂版』【監】西田美和 メイツ出版株式會社 『フィギュアスケートはじめました。 大人でもはじめていいんだ! 教室・衣裝選びから技のコツまで 別世界に飛び込んだ體験記』【著】佐倉美穂 誠文堂新光社 『フィギュアスケート 美のテクニック』【著】野口美恵 新書館 『表現スポーツのコンディショニング 新體操・フィギュアスケート・バレエ編』【著】有吉與志恵 ベースボール・マガジン社 『バレエ・テクニックのすべて』【著】赤尾雄人 新書館 『トップスケーターのすごさがわかるフィギュアスケート』【著】中野友加里 ポプラ社 『絵でみる江戸の女子図鑑』【著】善養寺ススム 廣済堂出版 『真説 出雲の阿國』【著】早乙女貢 読売新聞 また阿川佐和子氏『出雲の阿國』(中公文庫)に大きな影響を受けておりますことを申し述べておきます。
8 156