《高校生男子による怪異探訪》5.第二回対策會議と

中々に理不盡な恐怖験をしていようとも眠れば次の日はやってくる。

いつものように登校し注意深く下駄箱を開けて上履き以外にっていないことにかに安堵の溜め息をついて教室へ向かう。

あの不審者との遭遇から數日経つが今のところ危害を加えられるようなことはない。不審者自あれから出會すこともなく、あれは俺の見間違いか何かだったのではと今では思える。

相変わらず校は俺と朝日の噂に騒がしい。

一時は靴隠されたり機にゴミ詰められたりといったイジメ的なきも見られたが、だいたいそういうのは怖い顔した樹本に報告したそのあと直ぐなくなったので、多分々対応してくれたのだろう。

樹本はなんというか、そう言う手配が非常に上手い。

やられた當初は俺もイジメデビューか……とか煤けた気持ちになったりもしたが、おかげで連続登校は葉っている訳で樹本にはそれとなくお禮を言っておいた。もう足向けて寢れない。

當初人の噂も七十五日と、そこまで掛かりはしないだろうが俺たちの見立てでは々一週間も経てば騒々しさも沈靜化すると見ていたのに、今も新鮮な話題であるかのように騒ぎ立てる輩が減る様子はない。

いくらなんでも異常過ぎる。言うなれば祭りの狀態がずっと続いているのだ。俺たちのような初めからその異常さに気付いていた面々は、このある種狂とも取れる周囲の騒々しさに違和を覚えるほどだった。

誰かが騒ぎが続くようにと煽っていたりしないか。そんな疑が頭を過る程度には不穏な気配をじてはいた。

とは言え今優先されるのは俺の安全であり騒の原因を探る余裕など當分ありはしないだろう。実際、イジメにいた人間がいるように今後も俺に危害を加えようと考える人間が出てくるとも限らない。

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手紙の件と合わせて辺の警護を強化すると共に、怪しいきを見せている生徒の報収集とその絞り出しは常に行われていた。主に樹本によって。俺はもう奴に足を向けて寢られない処か頭も上げられないのではないだろうか。

俺が遭遇したあの不審者に関してはまだ誰にも報告はしていない。

実害がなく俺自夢か幻だったのではと疑いを持っているので報告するのは憚られたのだ。忙しそうに立ち回っている樹本を見ると、不確実な報でもってこれ以上負擔を増やすのもよろしくはないと思えてしまう。

あれが俺を狙っているとも斷定は出來ないのだ。ならばしばらく様子を見ても問題はないはずだ。

一先ずは俺の中で保留という扱いにして本日の晝も恒例の屋上にて晝飯兼報告會を行うことと相った。

未だ中庭には返り咲いていないもののここ屋上も悪くはないと思えるようになった今日この頃。惜しむらくは屋上は建前上立ち止なので、堂々と使用出來ないことが々面倒ではある。

「えー、予てより調査を続けていました呪いの手紙の調査報告ですが」

報告も大事だが晝飯も同じく重要だとそれぞれ晝食を広げていた折りに嵩原の奴が突然大仰に何か語り出した。

またいつもの悪ふざけかと一瞬流そうと考えたのだが、その口にした容からまぁ多分真面目な話なのだなと思い直しとりあえず箸は置いておいた。檜山のように関係ないとばかりにパンにかじり付くのは當事者としてさすがに自重した。

何を語るのかと大人しく待っていれば骨にタメを作って焦らしてくるので無視して飯を掻き込んでやろうかと思ったところで口を開く。

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「俺の懸命な調査の結果……、なんとそれらしい『呪い』を発見することが出來ました!」

はい拍手!などと一人盛り上がる嵩原に胡な目を向けてしまうのは致し方ないことだ。

ここ數日奴が呪いの調査とやらで非常に忙しくしていたのは聞いている。なんでもそこらにいる子とデートしまくって報を集めていたのだとか。忙しいってそういう?

子だけでなく他校の子とまで連絡を取り合い々話を聞きまくったようで、その姿はさながら花から花へと飛び回る蜂のようであったらしく、実際目まぐるしくはあったのだろうが本人は嬉々とした様子で疲れなど微塵も見せていなかった。

隨分と満喫したようで。働き蜂だったのか、それとも遊び呆けたキリギリスだったのか、俺のためではあるとは言え疑わしく見てしまうのもしょうがないと言えるだろうよ。

「それらしい呪いね。やっぱりあの剃刀レターは呪いを模したものだったの?」

嵩原のテンションに流されることなく樹本が真剣な聲音で尋ねる。若干の顔の悪さは話がオカルトな方向に進んでいるからか。

樹本としては呪いなんていうホラーな響きのあるものであってしくはなかったんだろうな。

「どうやらそうっぽいんだよね。いろいろの子に話を聞きつつ文獻なんかも探ってみたけどヒットしなくてね。それで昨今の報ツールって言ったらネットな訳で、アングラの掲示板なんかを調べてみたら、これがまさかの當たりでねぇ」

やれやれと己の盡力を主張するように肩を竦める。人だけでなく書籍にさらにはインターネット上の報まで浚ったというならその労力は計り知れないと簡単に想像は著くものの、そのキザったらしい仕草が今一冗談染みて謝や同という気持ちが沸き上がってこないのは態となのか奴の人徳なのか。

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「その掲示板ってのが要はオカルトオタクが集うタイプのものでね。で、直近の書き込みに『特定の対象を排除出來る呪いはないか』っていうものがあったんだよ。そこは本職かアマかは分からないけど、請われれば都合のいい呪いを紹介するっていう人間がそこそこいたようで、それで返答があった訳だ。『縁切りの呪い』だってね」

『縁切りの呪い』。

今の狀況には隨分似合いの文言だ。俺と朝日の仲を勘ぐる奴なら喜んで飛び付きそうな名稱に自然と傾聴してしまう。

嵩原はうすら笑いのままに続けた。

「『縁を切りたい対象の名前を書いた人形か紙を用意し、それを赤い糸で結び離さず持ち続ける。そして対象のより憎い方、あるいは両者に呪いの文言と共に刃を送り付ける。そうすればしばらくの後に対象の縁は切れる』ってじだったかな。呪いが就した暁には糸は自然と切れておりそれが合図になるとも書いてあったよ。どうだい? 前半部分は確認のしようがないけど、後半に関しては現狀にぴったり當てはまってないかな?」

楽しげに問われるも答えようがない。どう返事をすればいいのか。

今正にお前を呪おうとしている他者の悪意が証明されたのだと面と向かって言われて、平靜にあれる人間はそういないと思うんだが。

「……まあ、似てると言えば似てるね。帰結として剃刀レターになることは納得はいくけど、今回の件と関わりがあるって言えるの? それだけじゃ偶々似ていたってこともあるんじゃ」

「質問者の書き込み日時、並びに現狀説明として挙げられていた報は真人周りと合致していたよ。件の呪いの書き込みも一通目の手紙投函の前日と時期が合ってる。偶然と言われればそうとしか言えないけど、でもここまで合致するんだ。呪いの正の可能大として候補ぐらいには余裕でると思うよ」

「……そうか。それはそうだね」

慎重に容の確認を行う樹本が沈痛な様子で黙り込む。

そんな樹本に引き摺られるように俺たちにも重い空気がまとわり付くが、知ったこっちゃないと言わんばかりに檜山の奴が口許をソースで汚しながら聲を上げた。

「それだけなのか? 呪いっていうと、あの、なんだ、牛、あれ、あの藁人形とかもっといろいろ細かいことをやってるイメージなんだけどな」

「ああ、丑の刻參りのことだね。あれも時間指定と人に見られちゃいけないっていう制約があるからねぇ。それと比べると確かにお手軽に見えるね」

「お手軽て」

あまりにもあんまりな言い様に思わず呟きが溢れる。檜山のうろ覚えに対する突っ込みがないがしろにされるレベルの不謹慎さだ。

「まあ、書き込みでは一応縁切りを専門とする神様に肖って掛ける呪法とか書いてはあったけど的な名前が出てきた訳でなし。多分フェイクでしょ」

「あ、一応そういう設定はあるんだ。というか完全に頭から否定していいものなの? 胡散臭いけど、それでも呪いなんでしょ? 何か本當にまずいものが関わって來たりだとかは……」

「いやぁ、ないでしょ。だってワンアクション起こして基本放置でしょ? 神を遇するには手法が単純過ぎる。丑の刻參りだっていろいろと條件を揃えるからこそ儀式としての意味を持たせるんだし、それに比べれば今回の呪いは素人の真似事にしか見えないよ。そもそもただ縁切りの神と漠然と告げているのが噓臭い。肖る神の名ははっきりとさせないとご利益なんてないでしょ、普通。神なんてどれだけ祀られているのか分かったもんじゃないのに」

くつくつ笑いながら言って退ける。

そこら辺の事なんてド素人の俺らが理解出來るはずもなく、ネットのあれな掲示板に日參している疑のある嵩原が斷言するならそうなのかもしれない。

呪われたというだけでももうお腹一杯なのにさらにそこに神様がどうのと參加させられても困るという本音はそっと仕舞っておく。

「そういうものなの? 言われてみれば確かにあまり能的なことは求めてはいないよね。最初に刃付きで手紙を送るくらいか」

「大分相手の反応に依存する呪いなんだよね。有りに言えば手紙の容を読まなければ呪いは立しないっていう可能もあるからねぇ。真人には愁傷様ってじだね」

指摘をされてそういう解釈も出來るのかと愕然とした。手紙さえ読まなければ思い患わされることもなかったのかと考えれば己の対応の不味さにがっくりくる。

ネタばらしされたからでのことではあるが、それでも簡単に回避出來る方法があると知れば気分は落ち込む。

「呪いが就してしまったことはこの際置いといて、手順がそれだけってなるともうこれ以上永野に何かされることはないのかな?」

「お、永野は安全か? 酷いことされないのか?」

落ち込む俺を余所に會話は弾む。樹本も檜山も俺のことを気に掛けての質問だから無視されても気にはしないが。

「いやー、どうだろうね。本気で呪いを実行するような輩だし効力がなかったら直接的な行も起こす、かも? 模倣犯が出てきていることも気になるしねぇ。あの掲示板が広まってると考えたら真人は今後もあつーいお手紙を頂くことになるんじゃないかなーって」

一瞬でも安堵など與えずに現実を知らしめてくれる嵩原はいっそ優しいと評価すべきか。向き合っていかなければ俺のが危ういと理解してはいるけどしくらい心を休める瞬間があったっていいと思う。

「あ、そう言えば、『縁切りの呪い』の書き込みにあったことなんだけど」

げんなりしている俺に気付いてか気付かないでか、嵩原が嬉々としてまた何かを告げようと口を開いたその瞬間、突如屋上の重たい扉がバーン!と思いきり開いて見知った二人組が姿を現した。

「話は聞かせてもらったわよ!」

「ちょ、梓ちゃん!」

扉前で仁王立ちしているのは二岡と能井さんの子二人だ。円座の俺たちを見下すように腕など組んで、二岡は鬼の首を取ったと言わんばかりのドヤ顔を向けてくる。なんでここにいるこいつ。

「え!? 二岡さんに能井さん!? なんでっ!?」

「ここの所あなたたちの様子がおかしかったからね、これは何かあると思って様子を探らせてもらったわ。しばらく屋上でご飯を食べているって聞いたから張らせてもらったけど、見事狙い通りで隨分興味深そうな話をしてるじゃない」

ふふんと得意気に鼻など鳴らす。警戒はしていたはずなのだが向こうの方が上手だったか。さて、どうするか。

「盜み聞きとか人としてどうかと思うぞ」

「隠れて話し合いなんてするから聞き耳が立てられるのよ。聞かれたくないなら全く人がいない所に行くのね」

軽い非難もあっさりと返される。これは何か変にスイッチがってるじがするな。

二岡は説教臭く人にあれこれ口を出す人間ではあるが、だからと言って出歯亀染みた真似はしない、というか嫌うタイプだ。

堂々と盜み聞きを肯定するなんて実に二岡らしくない。余程こちらの狀態に興味を持ったのか。

まあ、興味を持たれた所で関與などさせる訳にはいかないけど。これ以上大事にするつもりはさらさらないからな。

「そうかい。次からはそうさせてもらう。忠告ありがとうよ。用は済んだな? だったら早く教室に戻れ。一応ここは立ち止だぞ」

しっしと手を振ってやれば分かりやすく目を吊り上げる。般若の後ろで能井さんがアワアワしているが、すまない、フォローは全て任せる。

二岡はともかく能井さんにはいろいろ刺激的な話も飛び出すかもしれないから関わらないのが一番なんだ。どうか分かってしい。

「わあ、永野が喧嘩売ってる」

「やり方がスマートじゃないよね。そこは変に巻き込むのも心配だからって素直に言ってあげればいいのに。これだから不用な人間は」

「永野は優しいからなー」

外野がなんか言ってる! 人をツンデレみたいに言うな。俺はただこれ以上面倒な事態になるのは嫌なだけで。

「ふん。そんなの今更じゃない。あんたが面倒な狀態にあるなんてクラスの皆知ってるわ。だから一クラスメートして何か出來ないかって言いに來たの。あんたに何かあればこっちにも飛び火する可能があるから! それだけだからね!」

プイと顎を上げて居丈高に言ってくる。

くそ、いいじに煮立たせてやれたのに、茶々れの所為で持ち直しやがった。

向こうから言質喋らせてとっとと帰そうと思っていたのに。こうなった二岡はしつこいから嫌なんだよな。

「あ、あのね、永野君。私たち永野君が心配なの。ただでさえ學校中が騒がしいのに、ここの所四人共どこかピリピリしてるでしょ? 何か大変なことがあったんじゃないかって心配なの。だから、私たちにも何か出來ることがあるなら教えてくれないかな? あの、話を聞くだけでも心が軽くなることってあると思うから」

おずおずと能井さんまで気遣いの言葉を掛けてくれた。

しまったな、能井さんは素で親切なだけだから突き放しにくいのに喋らせてしまった。これだと煽って帰らせるのも難しい。能井さんは下手に酷いことを言えば泣かせそうでやりにくい。

「これはもう仕方無いんじゃない? 覚悟を決めたら?」

無責任に嵩原が言ってくる。最初に子は巻き込めないとか言ったのお前だったと思うんだけど?

「永野、こうなったら二人にも事は話しておいた方がいいよ。ここで突っぱねたって後で探り出しそうだし、僕たちの知らない所で無茶をされるくらいなら協力関係にある方がずっと安全だと思うよ? 巻き込んだって気になるかもしれないけど、事を知っているからってすぐに危険に繋がる訳でもないし、危ないことは僕らでさせないように注意すれば大丈夫だよ」

嵩原の主張に樹本まで乗ってきた。煽り満載の嵩原と違って樹本は正論で以て説得しに掛かってくるから反論も難しい。思わずぐっとき聲がから溢れる。

「い、いや、でもな?」

「檜山君はどう? 私たちに事を話すのは反対?」

負けてなるかと否定を口にすればあっさりと無視された。おい、俺が最大の當事者。

パンをむいむい食っていた檜山は話し掛けられて暫く、口の中のをささっと飲み下して満面の笑みと共に言った。

「俺は永野の味方が増えることには賛! もちろん二人を危ない目に遭わせるのは反対だから守る! 俺が守備やって嵩原と樹本が犯人の割り出しやったら問題ないんじゃね?」

あっけらかんと言い退ける。檜山らしくシンプルな答えだ。裏も何もなく善意で以て言い放つから檜山の言い分は別の意味で反論がし辛い。

なっ!と笑い掛けられて反対したい気持ちが自分の中で急速に萎んでいくのが分かった。

無言で五対の目に見つめられる。最早俺の説得に言葉はいらないと踏んだか。

悔しいことにその通りで、こうなったら流れはほぼほぼ決まりだろう。俺一人が頑なに拒否した所で他三人が子側に回っているんだ、無駄な足掻きと言うしかない。

なんだって自ら関わってくるのか。野郎三人は早々に巻き込んでやってある意味もう共同だから仕方無いと言える。

だが子二人は本當に関係がない、俺に荷擔したってとばっちり食らうだけでそこに仕方無いなんていう言い訳は通用しないはずだ。

知らなければ無関係を貫ける。呪いなんて本気で試す頭のおかしい人間の相手をしなければならない理屈はどこにもないだろうに。

俺を気遣って、なんて思うくらいなら自分のこそを守ればいいのに。

思えど口にした所で野郎三人にまたツンデレ的な扱いをされるだけだろう未來が見えるので代わりにため息を溢すに止める。観念の証だ。

二岡が得意気に笑いやがる。他人の騒に首を突っ込んどいてなんでそんなドヤ顔を披するのか。理解出來ずにもう一度吐かれたため息はタイルの床に當たって消えた。

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