《高校生男子による怪異探訪》17.願った人
そんな訳で朝日に事説明。俺たちの考察とコックリさんやっての黒幕の洗い出しまで一切合切を話す。
朝日は目を白黒させてどうにか話には著いて來ていたようだが、本當にどこまで理解して、いや信じてくれたのか。荒唐無稽にも程があるというのはよくよくこちらも自覚はある。
「……えっと、つまりはその『悪魔の映る鏡』が元兇なんですか?」
「我々の見立てではそうだ。尤も、コックリさんという超常の存在からの報提供なために信憑を疑われても証明のしようもないが」
「……いえ。人以外の何かだと、そう言われた方が納得もいきます」
苦笑する先輩に朝日は力が抜けたようにそう返す。あっさりとけれられたな。突拍子もない話だとは重々承知してるんだけど。
「ふむ。納得?」
「……あの時、私の傍にいたのは友人たちだけです。私が誰かに落とされたと考えたら、それは友人たちの誰かという話になりますから」
あ。ああ、そうか。こっちは誰も落とせなかったと俺の証言で以て確証得てるが、朝日はそんなの知らないからな。
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これはとっとと話し合いの機會持って朝日にも事を話しておくべきだったな。
「あ、それもね、違うんだよ。ね、永野?」
「ああ。俺が見た限りは朝日が落ちる瞬間は背後には誰もいなかったし、直ぐ近くにいた子も両手は前にあった。背後から落とされたんだよな?」
「は、はい。背中の真ん中を押されて」
「だったら友人たちは違う。あそこにいた誰も朝日を突き落とすことは出來なかった。朝日を落としたのは友人じゃないぞ」
はっきりと斷言する。この數日、朝日は足の怪我と一緒に友人への疑念を抱えて過ごしていたのか。
學校を休んでいたのも何も怪我だけが理由ではないのかもしれないな。朝日の心をなんら汲んでやらなかったのが悔やまれる。本當に気が回らない人間だな、俺は。
「それは、本當ですか?」
「俺が見た。間違いない。ごめん、さっさと教えてやれば良かったな」
「っ、い、いえ。いえ、いいんです……っ。ありがとうございます、先輩……!」
極まったように朝日の表がくしゃりと歪む。安堵のあまりに今にも泣き出しそう。これは反省しないとあかんだろう。
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「朝日さんを落とせた人間はいなかった。だったら誰が?という疑問が俺たちの疑問の出発點でもあるんだよね。當初はコックリさんの祟りでは?って疑ったのもそれが理由」
「朝日の友だちは直ぐに『大丈夫か!?』って様子見に來てたからなぁ。永野からも話聞いてて俺たちは疑ってもなかったな。先輩に助けてもらって直ぐ鏡が怪しいって知っちゃったし」
「そう、だったんですね。だから皆さんはコックリさんを……。私、自分の事に先輩を巻き込んでしまったって、そればかり気にしていました。下手をすれば大怪我も負ってたかもしれないって……、怖くて……」
朝日は朝日で追い込まれていたんだな。俺に対して遠慮するような態度取ってたのもそれが理由か? だとしたら安易に嫌われたと拗ねたのはあまりに稚だった。反省せねば。
「そうか。朝日さんもいろいろと悩んでいたんだね。君の立場に立てば不安にも苛まれるだろうと予測も出來ただろうに、後手に回ってしまって本當に申し訳なかった」
「いえ! いいんです! 私も誰にも相談出來ないと思い込んでいましたから。階段から落とされるほどに憎まれていたのかって思うと、それを説明する気にもなれなくて」
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「気持ちは分かる。事が事だ。大事になることも考えれば口が重くなるのは仕方ないだろうね。まぁ、我々の予測では憎しみからの行でもないようなのだが」
「……誰かが私と先輩の仲の進展を願ったから、ですか? それを鏡の悪魔が葉えようとして、私は突き落とされたって……」
「そう見ている。そこで君に確認が取りたかったのだよ。朝日さんはあの鏡に願い事を告げたかな?」
やっと本題にと辿り著いた。々遠回りをしたがこの集まりはこれを確認したかったがために開いたものだ。
でも、ここまでの話を聞く限りはもう答えも確定したようなものだが。
「いいえ。私はそんな願い事なんてしてません。悪魔の鏡も、今言われて思い出したくらいですから」
ふるふる首を振ってきっぱりと否定する。だろうな。もし願掛けをしていたら鏡の話題が出た時にでももうちょっとリアクションはあっただろうからな。
朝日はまるで思い當たる節はないと言わんばかりに終始キョトンとしていたし、それでほぼほぼ確信は持てた。
「うむ。全く心當たりはないと?」
「はい。そもそも私は部室棟に來る機會もそうないです。部室はこちらにはありませんし」
「あ、前にも言ってたね。じゃあ鏡の前に立つこともないか」
朝日の話にこちらも納得する。部室棟に來る機會もない朝日では鏡と接點を持つことも稀か。そもそも怪談では夜間に接しなければ悪魔は出ないとされている。一般生徒には悪魔との遭遇自が難しいと言わざるを得ないのか。
「機という點で君と永野君が疑わしかったのだが、二人共どうやら違うらしいな。むう……、では鏡が元兇ではないのか? あるいは願いの容が違う?」
「ここまで來て本の推理が間違ってるとか悪夢ですね。またコックリさんに聞くしかないかな?」
「お、またやるのか? いいぞ、俺コックリさん楽しくなってきたし」
「止めよう。いや本気で嵌まっちゃいけないものだから檜山目を覚まして」
宛てが外れたとうんうん腕組んで先輩は唸る。ここで朝日が悪魔に願ったとなればほぼ推測も當たっていたと言えたのだが、事実はそうではなかったからな。
ヒントを読み違えているのか? あるいは願いの容が違うのか? 狀況的に一番可能のありそうな推論だっただけに誰もが頭を悩ませる結果になってしまった。本當にまたコックリさんを引っ張り出さなければいけないかもしれない。
先輩と一緒にうんうん悩んでいると、ふと朝日の憂いた表が視界にる。様々な誤解が解けてどこか晴れやかな顔だって浮かべていたはずなのだが、またどうしてそんな顔するのか。
「朝日どうした? 気になることでもあるのか?」
「あ、いえ……」
訊ねてみたら歯切れの悪い答えが。何かあると言ってるような態度だな。他の奴らもそんな朝日に気が付いた。
「どうしたの? 他に気になることでもあるの?」
「気掛かりならばここで明らかにしていったらどうだろう? なくとも我々は同じ事を共有している。相談にも乗れると思うが」
掛ける言葉はとても親だ。蚊帳の外に置いておいたばかりに朝日を隨分と悩ませたと判明した直後だ、それは対応も優しくなるか。
朝日も迷う素振りを見せたが、相応に不安はじていたのか。やがてポツリとのを語り出した。
「いえ、本當にそんな大袈裟なことじゃなくて。……ただ、これから先も変なことが起こるのかなと思って……」
視線を落としそんな不安を呟く。ぎゅっと自のを抱き締め、怯えにこまってしまっている。朝日の心も分からないではない。
階段から突き落とされたのは朝日としては友人の誰かの恨みを買ったことが原因だという認識でいた。それはそれで退っ引きならない狀況ではあるが、でも俺たちとのやり取りで実はよく分からないものが干渉していると知ってしまった。
朝日はむしろ友人を疑わずに済むならと一時は喜んでもいたが、しかし悪魔に狙われていると知ってそう楽観でいられるはずもない。冷靜になって自分の立場の危うさってものがしみじみと自覚出來てしまったんだろう。
俺だって同じ立場だし気持ちは分かる。また階段のように危機的狀況を演出されたら堪ったもんじゃない。今度こそ、何か怪我を負うことにもなるかもしれないと思えばそりゃ不安だって抱えて當然だ。
どうしたものか。誰もがどうめの言葉掛けたらいいのかと悩んでる。直ぐに解決すると言えればいいのだが、調査は行き詰まってしまったし朝日もそれを理解している。誤魔化すことも出來ない。せめてめるくらいのことが出來たらワンチャン……。
そこまで考えて思い付いた。ブレザーのポケットを漁れば目的のは直ぐに指先に當たった。取り出して朝日に差し出す。
「朝日これやる。お守りだ」
「え?」
差し出したのは先輩からもらったあの魔除けの水晶だ。キーチェーンの先に親指の先ほどのサイズの丸い水晶がぶら下がってる。よくよくき通った水晶はまるで水のような明で向こう側をけさせている。
「水晶は魔除けとなるらしい。これを持っていれば悪魔からの干渉も防げる……、かもしれない」
ぼそっと付け足しは小さく。何、鰯の頭もなんとやら。本來お守りってプラセボ期待するようなもんだし。信じる者は救われる、てな。
唐突な俺の奇行に戸う朝日へと無理矢理に渡した。現狀では解決の確約だって出來ないから苦の策だ。これを持っていれば安心!なんて詐欺的な手法だが、僅かでも不安の解消に繫がれば儲けものだ。
「え? で、でもこれは先輩のじゃ……」
「いや、蘆屋先輩からの頂きだから気にするな」
「そこで素直にもらいだって普通言う??」
気にすることないと暴したら間髪れずに樹本からツッコミが。ここで俺が用意したとか言う方があれだろ。そもそも俺がお守りとか準備する人間に見えるのか。
「……」
「ただ待つのは怖いかなと思う。朝日は実害だってけたからな。だからお守り持って待っていてくれ。俺たちでどうにか解決してみるから」
「……せ、先輩だって危ない目に遭いましたよ? 私と一緒で危険なんじゃ……」
「俺はまぁ、もう慣れてるし。何度もコックリさんだってやってるだから今更が強い。それに當事者の一人くらいは現場にもいた方がいいんじゃないか?」
「だ、だったら私も……!」
「いや、無理するな。朝日は階段からも落ち掛けてる。下手に近付くと本當に今度は危険なことにもなるかもしれない」
流石にそれはと拒否しとく。どうせ危ない目に遭うなら被害はない方がいいだろう。そしてその被害は朝日がけるより俺がける方がマシなのは誰から見ても明らかで。
泣きそうな顔でこっち見る朝日に迷いが生まれそうになるけども、そこは頑として固く言い聞かせた。
「こっちは任せて、朝日は俺たちを信じて待っててくれ。大丈夫だ。変な噂の解明やらでこういう事態も慣れっこなんだ。こっちには蘆屋先輩に嵩原とエキスパートも著いてる。何も心配は要らない」
はずだ。今度は口には出さずに心の中で呟いとく。時には見栄を張る必要だってあるもんだ。なんか外野から「他人頼り」とか軽く罵倒も飛んできた気がするが、ここはしでも説得力増やすのが最良だろうが。俺は俺を拠に大言吐けるほど自分を信じちゃいないぞ。
「……本當に、大丈夫なんですか?」
「ああ。問題ないだろう。(先輩と嵩原を)信じろ」
「今なんか」
止めろ、鋭く行間読むな。ここで朝日の説得失敗したら凄く面倒なことになると何故理解しない。
一瞬ひやっとしたけども、朝日は信じてくれたようで泣き笑いの表で俺の言い分にこっくりと頷きを返した。
渡したお守りも両手で大事そうに包み持ってる。これでしでも不安が解消されたらいいな。多くの目がある中、実に俺らしくなく優しい言葉重ねてめたんだ。周囲の目も気にせずに朝日のメンタルの安定を重視した、その甲斐くらいはあってしい。
「ふふ。頼りにされているのならその期待には応えねばならないね。任せてくれたまえ。直ぐに事の元兇は突き止めてみせよう」
ダメ押しに先輩も頼もしく快諾してくれた。嵩原に檜山、樹本もあとに続く。
朝日と、そして自分のためにもさっさとこの不自然な巡り合わせをどうにかしないと。そのためにもあの鏡をもう一度調べる必要べきだろうな。あれが本當に元兇なのかどうか、そこからはっきりさせなければ。
全員目標を新たにさせた所で晝休みも終わりを迎えた。どこかスッキリした様子の朝日を見送って各自教室へと戻っていったのだが、その道中に先輩に実は朝日の分のお守りもあったと明かされた。何も俺が出張る必要はなかったと力したのはまた別の話。
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8 166クリフエッジシリーズ第四部:「激闘! ラスール軍港」
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